前々回,前回に続きまして,クリームの4枚組のボックス・セット『グッバイ・ツアー・ライヴ1968』です。個人的な好みもあるのですが,エリック・クラプトンさんの名盤/好きなアルバムについて考えると,ライヴ・アルバムばかり思い浮かびます。『ファイヴ・ライヴ・ヤードバーズ』,『クリームの素晴らしき世界』(ディスク2),『グッバイ・クリーム』,『ライヴ・クリーム VOL・2』ってね。デレク&ザ・ドミノズの『フィルモア・イースト・ライヴ』もあるし,ソロになってからの『ライヴ・イン・ザ・セヴンティーズ』もある。
それだけじゃない,『平和の祈りをこめて』(これはジョン・レノンさんのプラスチック・オノ・バンドだ),デラニー&ボニーの『オン・ツアー・ウィズ・エリック・クラプトン』,ジョージ・ハリスンさんの『ライヴ・イン・ジャパン』だってあるぞ。ちょっとしか登場しないけれど,やはりジョージ・ハリスンさんの『バングラディシュ』やザ・バンドの『ラスト・ワルツ』だってあるじゃないか。全く,何とも凄いですね。あ,それで,前回の続きで,楽曲単位で,色々とセット・リスト順に書いています。
3曲目はディスクによって違うけれど,ディスク2~4が「うれしい気持ち/アイム・ソー・グラッド」なので,多数決でこれ(笑)。ライヴ・ヴァージョンとスタジオ・ヴァージョンで全く違いますが,同じなのはイントロだけですね(笑)。もう格闘技みたいなインタープレイ,こんなの毎晩だと疲れるだろうなあ。でも,ライヴでは,思い切り映えますよね。それから,「クロスローズ」だけじゃなく,これだってスキップ・ジェイムズさんのデルタ・ブルーズがオリジナルだったです。それは,そこは,忘れないで下さい。
4曲目もディスクによって違いますが,多数決でディスク3と4で演奏された「トップ・オブ・ザ・ワールド」で,これも古いデルタ・ブルーズ。ハウリン・ウルフさんが名曲にしましたが,さらにロックっぽくしたのがクリームです。もうここまで来るとデルタ・ブルーズをロックで表現するのが,クリームの十八番と言えます。ちゃんとオリジナルに敬意を表しているのが良くって,レッド・ツェッペリンみたくパクッて自分達のオリジナルみたいに言わないのもエラいと思います。
5曲目からはディスクによって全く違うので,ここは代表曲の「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」といきましょう。全英25位・全米6位のヒット曲ではあるものの,あまりライヴで演奏されなかったらしい。今回は,全てのディスク収録ですがね。ピート・ブラウンさん作詞でジャック・ブルースさん作曲かと思いきや,作曲にエリック・クラプトンさんもクレジットされています。ここで登場は,代表曲「クロスローズ」。多分これで,クリームの演奏によって,誰もがロバート・ジョンスンさんを知ったのです。それが,何より素晴らしいでしょ。
「ホワイト・ルーム」や「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」に匹敵する名曲で,ロック史上に残した功績は,クリームにとって最大のものですね。毎回登場の「列車時刻」は,ジャック・ブルースさんのハーモニカをフィーチャーしたラグタイム・チューン。クリームのすてじーにおける,言わばチェンジ・アップ。ディスク1だけに収録された「時は過ぎて」は,ジンジャー・ベイカーさんのドラム・ソロをフィーチャー。ドラム・ソロの入った曲が多過ぎて途中から却下されたんじゃないかと思うのは,ちょっと穿った見方かな(笑)。
これまたディスク1にだけ収録された「荒れ果てた街」,これはハード・ロックですね。いや,ヘヴィ・メタルっぽいわ。粗っぽいんだけれど,それが逆に奏功してスリリングなロックンロールになっています。「いやな奴」は,唯一,ジンジャー・ベイカーさんのオリジナルです。だから,これもドラム・ソロが入っていて,途中で,これと「時は過ぎて」が入れ替わったんじゃないですかね。ディスク2とディスク3でクロージング・チューンとなったのは,「スプーンフル」です。毎回15分を超えるのですが,これまた壮絶なインタープレイの応酬です。
『クリームの素晴らしき世界』に入っていたヴァージョンも,今回のボックス・セットでも「お約束」と言えるジャムでしたね。ラストはディスク4にだ入っていた「ステッピン・アウト」,好きな曲だから他のディスクにも入っていてほしかったってところですかね。おお,これで全部です。しかも,丁度ウマい具合に終わりとなりそうです。クリームは思っていた以上に多くのコトを教えてくれていた,それを再認識させてくれた素敵なボックス・セットでした。クリームを聴くと,他のエリック・クラプトンさんのアルバムも面白くなります。
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それだけじゃない,『平和の祈りをこめて』(これはジョン・レノンさんのプラスチック・オノ・バンドだ),デラニー&ボニーの『オン・ツアー・ウィズ・エリック・クラプトン』,ジョージ・ハリスンさんの『ライヴ・イン・ジャパン』だってあるぞ。ちょっとしか登場しないけれど,やはりジョージ・ハリスンさんの『バングラディシュ』やザ・バンドの『ラスト・ワルツ』だってあるじゃないか。全く,何とも凄いですね。あ,それで,前回の続きで,楽曲単位で,色々とセット・リスト順に書いています。
3曲目はディスクによって違うけれど,ディスク2~4が「うれしい気持ち/アイム・ソー・グラッド」なので,多数決でこれ(笑)。ライヴ・ヴァージョンとスタジオ・ヴァージョンで全く違いますが,同じなのはイントロだけですね(笑)。もう格闘技みたいなインタープレイ,こんなの毎晩だと疲れるだろうなあ。でも,ライヴでは,思い切り映えますよね。それから,「クロスローズ」だけじゃなく,これだってスキップ・ジェイムズさんのデルタ・ブルーズがオリジナルだったです。それは,そこは,忘れないで下さい。
4曲目もディスクによって違いますが,多数決でディスク3と4で演奏された「トップ・オブ・ザ・ワールド」で,これも古いデルタ・ブルーズ。ハウリン・ウルフさんが名曲にしましたが,さらにロックっぽくしたのがクリームです。もうここまで来るとデルタ・ブルーズをロックで表現するのが,クリームの十八番と言えます。ちゃんとオリジナルに敬意を表しているのが良くって,レッド・ツェッペリンみたくパクッて自分達のオリジナルみたいに言わないのもエラいと思います。
5曲目からはディスクによって全く違うので,ここは代表曲の「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」といきましょう。全英25位・全米6位のヒット曲ではあるものの,あまりライヴで演奏されなかったらしい。今回は,全てのディスク収録ですがね。ピート・ブラウンさん作詞でジャック・ブルースさん作曲かと思いきや,作曲にエリック・クラプトンさんもクレジットされています。ここで登場は,代表曲「クロスローズ」。多分これで,クリームの演奏によって,誰もがロバート・ジョンスンさんを知ったのです。それが,何より素晴らしいでしょ。
「ホワイト・ルーム」や「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」に匹敵する名曲で,ロック史上に残した功績は,クリームにとって最大のものですね。毎回登場の「列車時刻」は,ジャック・ブルースさんのハーモニカをフィーチャーしたラグタイム・チューン。クリームのすてじーにおける,言わばチェンジ・アップ。ディスク1だけに収録された「時は過ぎて」は,ジンジャー・ベイカーさんのドラム・ソロをフィーチャー。ドラム・ソロの入った曲が多過ぎて途中から却下されたんじゃないかと思うのは,ちょっと穿った見方かな(笑)。
これまたディスク1にだけ収録された「荒れ果てた街」,これはハード・ロックですね。いや,ヘヴィ・メタルっぽいわ。粗っぽいんだけれど,それが逆に奏功してスリリングなロックンロールになっています。「いやな奴」は,唯一,ジンジャー・ベイカーさんのオリジナルです。だから,これもドラム・ソロが入っていて,途中で,これと「時は過ぎて」が入れ替わったんじゃないですかね。ディスク2とディスク3でクロージング・チューンとなったのは,「スプーンフル」です。毎回15分を超えるのですが,これまた壮絶なインタープレイの応酬です。
『クリームの素晴らしき世界』に入っていたヴァージョンも,今回のボックス・セットでも「お約束」と言えるジャムでしたね。ラストはディスク4にだ入っていた「ステッピン・アウト」,好きな曲だから他のディスクにも入っていてほしかったってところですかね。おお,これで全部です。しかも,丁度ウマい具合に終わりとなりそうです。クリームは思っていた以上に多くのコトを教えてくれていた,それを再認識させてくれた素敵なボックス・セットでした。クリームを聴くと,他のエリック・クラプトンさんのアルバムも面白くなります。
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前回に続きまして,クリームの4枚組のボックス・セット『グッバイ・ツアー・ライヴ1968』です。ここのところ,毎日,我が家のステレオのターン・テーブルを独占しておりまして,ヘヴィーローテーションで流しっ放しの状態になっております。クリームのライヴは壮絶なインプロヴィゼーションの応酬が続き,曲も長尺になりがちです。それでもイイ演奏だから,全く飽きないんですよね。こういうボックス・セットでも,演奏は常に違うのでした。
ブルーズがベースでインプロヴィゼーション中心と言えばハード・バップ・ジャズ(ファンキー・ジャズ)がそうですが,ロックのジャム系バンド(ジ・オールマン・ブラザーズ・バンドなんかでもそうですが)だって同じですね。白熱した演奏から生まれるグルーヴ感,名盤とされるライヴ・アルバムに共通する醍醐味の1つでしょう。さて,今回は,それぞれのディスクを順番に追っていきましょう。
先ずはディスク1ですが,8曲を収録。これは1968年秋,このフェアウェル・ツアー初日(10月4日)の演奏です。今回のボックス4枚全てを聴いた後で振り返ってみると,この1枚,やや粗っぽいのです。クリームほどのバンドでも,ツアー初日となると難しいのですね。ただ,「ホワイト・ルーム」は,このディスクが最もイイのです。「荒れ果てた街」も,このディスクだけに収録。後で調べたら,両方とも,僕の大好きな名盤『ライヴ・クリーム VOL・2』に収録されているものと同じ演奏でした。
もう1曲,「政治家」も『ライヴ・クリーム VOL・2』に収録されていました。続いてのディスク2は,10月19日のLAフォーラムです。前回(昨日ですね)でも書いたように,アルバム『グッバイ・クリーム』に収録されているライヴ録音曲は,3曲(「うれしい気持ち」,「政治家」,「トップ・オブ・ザ・ワールド」)ともここでの演奏です。このディスクでの演奏は,最高にカッコイイですね。そうなんだ,この演奏ですよ。10代だった僕は,9分31秒の「うれしい気持ち」にガツンとヤラれたのですよ。
そして,ディスク3です。ディスク2の翌日(10月20日)で,サン・ディエゴ・スポーツ・アリーナです。しかも,です。このディスク3は全曲が完全な未発表音源で,しかも演奏だって素晴らしくイイのでした。今回のボックス・セットで,ベストのディスクは2か3だと思いますが,どうでしょう。どちらも演奏曲は同じ9曲で,曲順も殆ど同じです。ディスク3のほうが,ややコンパクトに纏まっている感じですかね。どちらも充実感がヒシヒシと伝わってきて,最高ですね。それで何と言っても,僕の大好きな「クロスローズ」がイイのですよ。
最後のディスク4(9曲収録)は,前回でも書いたようにモノラルでした。それで,モノラルである以前に音も悪いし,演奏がイイかどうかも「やや微妙」だったので,一度しか聴かなかった。それでなくても,1~3のディスクと比較したら,厳しいですよ。それで全体から受けた印象は,「やっぱり」とてもイイのです。素晴らしいブルーズ・バンドで演奏能力も高いけれど,デルタ・ブルーズをロックのスタイルで表現するというアイディア(それもジャズのようにインプロヴィゼーションもフィーチャーしてね)だって文句なしに最高だった。
前回の最初で書いたように,名演を堪能するより名曲を感じるコトのほうが優先するようなバンドなので,セット・リストに入っていた曲についても書いておきます。大体,曲順も同じような感じだったので,イイかなと思います。先ず1曲目は,大ヒット曲の「ホワイト・ルーム」で,このツアーでは必ずオープニングでした。全英では28位も,全米では5位まで上がったヒット曲です。全くブルーズを感じないロックンロールなのですが,それもまた側面の1つなんでしょうね。特にポップだとも思わなかったけれど,妙に(変に?)キャッチーです。
ピート・ブラウンさんの歌詞は文学的で,エリック・クラプトンさんのワウワウを活かしたギターも印象的でした。続いては「政治家」で,今回のボックス・セットでは,全てのディスクで2曲目でした。ディスク1収録のものが『ライヴ・クリーム VOL・2』に収録され,ディスク2収録のものが『グッバイ・クリーム』に収録されました。「ホワイト・ルーム」同様に,ピート・ブラウンさん作詞でジャック・ブルースさん作曲です。こちらはオリジナルですが,思いっ切りブルージーです。勿論,次回に続きます。
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ブルーズがベースでインプロヴィゼーション中心と言えばハード・バップ・ジャズ(ファンキー・ジャズ)がそうですが,ロックのジャム系バンド(ジ・オールマン・ブラザーズ・バンドなんかでもそうですが)だって同じですね。白熱した演奏から生まれるグルーヴ感,名盤とされるライヴ・アルバムに共通する醍醐味の1つでしょう。さて,今回は,それぞれのディスクを順番に追っていきましょう。
先ずはディスク1ですが,8曲を収録。これは1968年秋,このフェアウェル・ツアー初日(10月4日)の演奏です。今回のボックス4枚全てを聴いた後で振り返ってみると,この1枚,やや粗っぽいのです。クリームほどのバンドでも,ツアー初日となると難しいのですね。ただ,「ホワイト・ルーム」は,このディスクが最もイイのです。「荒れ果てた街」も,このディスクだけに収録。後で調べたら,両方とも,僕の大好きな名盤『ライヴ・クリーム VOL・2』に収録されているものと同じ演奏でした。
もう1曲,「政治家」も『ライヴ・クリーム VOL・2』に収録されていました。続いてのディスク2は,10月19日のLAフォーラムです。前回(昨日ですね)でも書いたように,アルバム『グッバイ・クリーム』に収録されているライヴ録音曲は,3曲(「うれしい気持ち」,「政治家」,「トップ・オブ・ザ・ワールド」)ともここでの演奏です。このディスクでの演奏は,最高にカッコイイですね。そうなんだ,この演奏ですよ。10代だった僕は,9分31秒の「うれしい気持ち」にガツンとヤラれたのですよ。
そして,ディスク3です。ディスク2の翌日(10月20日)で,サン・ディエゴ・スポーツ・アリーナです。しかも,です。このディスク3は全曲が完全な未発表音源で,しかも演奏だって素晴らしくイイのでした。今回のボックス・セットで,ベストのディスクは2か3だと思いますが,どうでしょう。どちらも演奏曲は同じ9曲で,曲順も殆ど同じです。ディスク3のほうが,ややコンパクトに纏まっている感じですかね。どちらも充実感がヒシヒシと伝わってきて,最高ですね。それで何と言っても,僕の大好きな「クロスローズ」がイイのですよ。
最後のディスク4(9曲収録)は,前回でも書いたようにモノラルでした。それで,モノラルである以前に音も悪いし,演奏がイイかどうかも「やや微妙」だったので,一度しか聴かなかった。それでなくても,1~3のディスクと比較したら,厳しいですよ。それで全体から受けた印象は,「やっぱり」とてもイイのです。素晴らしいブルーズ・バンドで演奏能力も高いけれど,デルタ・ブルーズをロックのスタイルで表現するというアイディア(それもジャズのようにインプロヴィゼーションもフィーチャーしてね)だって文句なしに最高だった。
前回の最初で書いたように,名演を堪能するより名曲を感じるコトのほうが優先するようなバンドなので,セット・リストに入っていた曲についても書いておきます。大体,曲順も同じような感じだったので,イイかなと思います。先ず1曲目は,大ヒット曲の「ホワイト・ルーム」で,このツアーでは必ずオープニングでした。全英では28位も,全米では5位まで上がったヒット曲です。全くブルーズを感じないロックンロールなのですが,それもまた側面の1つなんでしょうね。特にポップだとも思わなかったけれど,妙に(変に?)キャッチーです。
ピート・ブラウンさんの歌詞は文学的で,エリック・クラプトンさんのワウワウを活かしたギターも印象的でした。続いては「政治家」で,今回のボックス・セットでは,全てのディスクで2曲目でした。ディスク1収録のものが『ライヴ・クリーム VOL・2』に収録され,ディスク2収録のものが『グッバイ・クリーム』に収録されました。「ホワイト・ルーム」同様に,ピート・ブラウンさん作詞でジャック・ブルースさん作曲です。こちらはオリジナルですが,思いっ切りブルージーです。勿論,次回に続きます。
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レコード・コレクターズ誌で,誰かが上手いコト書いていました。名演が多いのはジェフ・ベックさん,名曲が多いのはエリック・クラプトンさんってね。そうなんだよなぁ,それって「とっても」よく解る。ヒット曲の数だって,全く違いますもんね。多分,ジェフ・ベックさんのほうが通好みで,エリック・クラプトンさんのほうが一般にもウケるんじゃないかな。あ,それで,今回はクリームのライヴ・アルバムです。出たのは最近だけれど,発掘系のライヴ・アルバム。1968年の「グッバイ・ツアー」から収録された,4枚組のボックス・セットです。
タイトルは「そのまんま」,『グッバイ・ツアー・ライヴ 1968』です。このツアーからのライヴ録音と,この時点での最新アルバム『クリームの素晴らしき世界』のアウトテイクスから翌年の1969年に『グッバイ・クリーム』というアルバムが生まれたのです。このツアーは「所謂」解散コンサート・ツアーで,海外のバンドにしては珍しいコトじゃないでしょうか。「何で」って,海外のバンドの解散は大体,メンバーが死んだか,喧嘩別れでしょ(笑)。実際,ジャック・ブルースさんとジンジャー・ベイカーさんは,仲違いしていたらしいし。
クリームのフェアウェル・ツアーは、1968年10月4日から11月4日まで全米19会場で22公演,1968年11月25日と26日にロイヤル・アルバート・ホールで最後のフェアウェル・コンサートを行なったのです。この4枚組ボックスですが,そのツアーから4つのライヴが収録されています。つまりは,1枚1公演ですね。ディスク1は,1968年10月4日のオークランド・コロシアム公演からのものです(これは,初日ですね)。
ディスク2は,1968年10月19日のLAフォーラム公演からです(『グッバイ・クリーム』収録のライヴ音源は,全部この公演のもの)。ディスク3は1968年10月20日のサン・ディエゴ・スポーツ・アリーナ公演からのものです。ディスク4は,1968年11月26日のロンドン・ロイヤル・アルバート・ホール公演のもので,映像作品にもなっていますね。CD化は初めてであったらしいのですが,何とモノラル録音でした(流石に,ちょっと残念でしたねぇ)。何も無理をせずとも,3枚組でもヨカッタんじゃないのと思いましたがね。
ま,元々クリームのライヴ演奏って大好きなのですが,今回は大きな期待を抱いていたワケです。それと言うのも僕は最初に聴いたクリームのアルバムが『グッバイ・クリーム』でして,高校生の時,つまりティーン・エイジャーだったのですよ。最初はジョージ・ハリスンさん参加の「バッジ」に期待していたのですけれど,ライヴ演奏の3曲に痺れました。その時の衝撃(と言うか,快感に近いものだったけれど)と再会出来るかな,というのがありましてね。
それから後に大人になって,『ライヴ・クリームVOL・2』というアルバムが大好きになりました。それはベスト盤的な構成で,代表曲のライヴ・ヴァージョンをシッカリ堪能出来るというものだったのですよ。今回のも最後のツアーだから,代表曲は全部が演奏されているでしょ。『ゾーズ・ワー・ザ・デイズ』というボックス・セットでも代表曲のライヴ・ヴァージョンを全て聴けたけれど,寄せ集めのものと同じライヴでのものを聴くのって違うじゃん。
果たして,『グッバイ・クリーム』を初めて聴いた時の衝撃ですが,完全ではないけれど(そりゃ,そうでしょ)少しばかり呼び起こされるというのはありました。それからですね,『ライヴ・クリーム VOL・2』の再現もシッカリ楽しめました。これはもう,バッチリでしたね。ただ無論,それだけでは,なかったけれど(笑)。と言うのは,えーっとね,ディスクによって,曲によって,良し悪しの差が出るんですよ。好不調の波が,どこか見えるのです。ま,それは,仕方ないコトですけれどね。
あ,いや,不調は言い過ぎかな(笑)。「僕の好みから言えば」と言ったような主観的な話であって,ま,でもライヴだからそういうコトって,よくある話でしょ。だからこそライヴなのであって,いつも同じなワケがない。そういう微妙な違いやらが,多分,そうですね,面白いんじゃないでしょうか。それにしても,内容的な話が全く出来ていない。そのあたりについては,次回に回すとしましょうか。間違いないのは,色んな面で流石ですよ。それでは,次回に。
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タイトルは「そのまんま」,『グッバイ・ツアー・ライヴ 1968』です。このツアーからのライヴ録音と,この時点での最新アルバム『クリームの素晴らしき世界』のアウトテイクスから翌年の1969年に『グッバイ・クリーム』というアルバムが生まれたのです。このツアーは「所謂」解散コンサート・ツアーで,海外のバンドにしては珍しいコトじゃないでしょうか。「何で」って,海外のバンドの解散は大体,メンバーが死んだか,喧嘩別れでしょ(笑)。実際,ジャック・ブルースさんとジンジャー・ベイカーさんは,仲違いしていたらしいし。
クリームのフェアウェル・ツアーは、1968年10月4日から11月4日まで全米19会場で22公演,1968年11月25日と26日にロイヤル・アルバート・ホールで最後のフェアウェル・コンサートを行なったのです。この4枚組ボックスですが,そのツアーから4つのライヴが収録されています。つまりは,1枚1公演ですね。ディスク1は,1968年10月4日のオークランド・コロシアム公演からのものです(これは,初日ですね)。
ディスク2は,1968年10月19日のLAフォーラム公演からです(『グッバイ・クリーム』収録のライヴ音源は,全部この公演のもの)。ディスク3は1968年10月20日のサン・ディエゴ・スポーツ・アリーナ公演からのものです。ディスク4は,1968年11月26日のロンドン・ロイヤル・アルバート・ホール公演のもので,映像作品にもなっていますね。CD化は初めてであったらしいのですが,何とモノラル録音でした(流石に,ちょっと残念でしたねぇ)。何も無理をせずとも,3枚組でもヨカッタんじゃないのと思いましたがね。
ま,元々クリームのライヴ演奏って大好きなのですが,今回は大きな期待を抱いていたワケです。それと言うのも僕は最初に聴いたクリームのアルバムが『グッバイ・クリーム』でして,高校生の時,つまりティーン・エイジャーだったのですよ。最初はジョージ・ハリスンさん参加の「バッジ」に期待していたのですけれど,ライヴ演奏の3曲に痺れました。その時の衝撃(と言うか,快感に近いものだったけれど)と再会出来るかな,というのがありましてね。
それから後に大人になって,『ライヴ・クリームVOL・2』というアルバムが大好きになりました。それはベスト盤的な構成で,代表曲のライヴ・ヴァージョンをシッカリ堪能出来るというものだったのですよ。今回のも最後のツアーだから,代表曲は全部が演奏されているでしょ。『ゾーズ・ワー・ザ・デイズ』というボックス・セットでも代表曲のライヴ・ヴァージョンを全て聴けたけれど,寄せ集めのものと同じライヴでのものを聴くのって違うじゃん。
果たして,『グッバイ・クリーム』を初めて聴いた時の衝撃ですが,完全ではないけれど(そりゃ,そうでしょ)少しばかり呼び起こされるというのはありました。それからですね,『ライヴ・クリーム VOL・2』の再現もシッカリ楽しめました。これはもう,バッチリでしたね。ただ無論,それだけでは,なかったけれど(笑)。と言うのは,えーっとね,ディスクによって,曲によって,良し悪しの差が出るんですよ。好不調の波が,どこか見えるのです。ま,それは,仕方ないコトですけれどね。
あ,いや,不調は言い過ぎかな(笑)。「僕の好みから言えば」と言ったような主観的な話であって,ま,でもライヴだからそういうコトって,よくある話でしょ。だからこそライヴなのであって,いつも同じなワケがない。そういう微妙な違いやらが,多分,そうですね,面白いんじゃないでしょうか。それにしても,内容的な話が全く出来ていない。そのあたりについては,次回に回すとしましょうか。間違いないのは,色んな面で流石ですよ。それでは,次回に。
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さて,前回に続きまして,東京・新宿のSOMPO美術館での「カナレットとヴェネツィアの輝き」です。この2024年を振り返ると,我々は,今回も含めて計4回,美術展覧会に足を運びました(どれも文句なしに,素晴らしい展覧会でしたよ)。その4回の内,何と半分に当たる2回がSOMPO美術館だったので,少し意外と言えば意外です。これって,何ですかね,相性みたいなものもあるのか知らん。2024年に限っては,僕達のラッキー・ミュージアムだったのかな。
さて,第2章からですが,カナレットの作品の最大の見所は,線遠近法を駆使した都市空間の精緻な表現や,細部まで描かれた豊かな人物表現でしょう。これらの技術は,幼少期に父について学んだ舞台美術の影響を強く受けているそうです。特に評価が高いのはヴェネツィアの中心部を流れるカナル・グランデで行われるレガッタや昇天祭などの祝祭を描いた作品群ですね。観客の熱狂が画面から生々しく伝わるだけでなく,当時の文化風俗を正確にとらえているというコトで一級の歴史資料とも捉えられるそうです。
カナレットがヴェドゥータを描き始めたのは1719年頃からとされ、当初は光と影の効果を重視した雰囲気の描写が特徴的でした。それが次第に,すっきりと澄んだ空に,定型的な水の波紋、定規を用いて堅固に描かれた建物といった画風が定着していきます。また,彼は画面のあちらこちらに様々な仕草の人物を好んで描くようになりました。ヴェネツィアに生まれヴェネツィアに没したカナレットの描く,整然とした街並み,輝く水面,華やかな祝祭の情景は,同地の典型的イメージとして定着するほど絶大な人気を博しました。
この第2章は,好きな作品ばかりですね。特に「カナル・グランデ:パラッツォ・バルビから北東にリアルト橋を望む」,「サン・マルコ湾:北を望む」,「サン・ヴィオ広場から見たカナル・グランデ」,「サン・マルコ広場」の4つは,本当に気に入りました。また,カナレットはヴェネツィアだけでなく、パトロンからの需要に支えられ,ローマやロンドンなどでもヴェネツィア同様に観光スポットや景勝地を描いています。
古代遺跡から文化の香り漂うローマ,のどかな水辺や田園風景が美しいロンドンなど、カナレットの描いた都市景観から、約200年前のヨーロッパ各都市の違いを見比べるのも楽しいものです。「ロンドン・,ヴォクスホール・ガーデンズの大歩道」や「ナヴォナ広場の景観」なんて実にイイですね。続く第3章は,「カナレットの版画と素描―創造の周辺」と題された創造の秘密についてですね。カメラ・オブ・スキュラと呼ばれる、カメラの祖先となる原始的な光学機器には興味なかったけれど,版画やデッサンは素敵でした。
そして第4章「同時代の画家たち,継承者たち-カナレットに連なる系譜の展開」ですが,カナレットの活躍により時代が動いた後のコトです。その画風に倣ったフォロワーたちも続々と活躍の場が与えられることになります。ウィリアム・マーロー,フランチェスコ・グアルディなんて,実にイイですね。カナレットに続くヴェドゥータの名手たちの作品も,次々と披露されています。先駆者の作風を踏襲しながらも,少しずつカナレットとは違う個性の表出も感じられます。水と都市の風景,どれも美しい。この第4章も,ホントに気に入りました。
ウィリアム・マーローです。
フランチェスコ・グアルディです。
「カナレットの遺産」と題された最終章では,風景画の世紀とも言える19世紀の英仏の画家たちに焦点を当て,カナレット以後のヴェネツィアの表象の変遷を辿ります。ロマン主義的思潮を背景に,裏町や狭い水路などヴェネツィアの「裏」の顔を切り取る画家も登場しました。ドラマがあって,これもまたイイ。以上,こんなところですが,もう思う存分に楽しむコトが出来ました。今年2024年に訪れた展覧会は全て,もう一度行きたいと思いましたね(残念ながら,実現しなかったけれども)。
帰りは「いつも通り」というコトで,ミュージアム・ショップでポスト・カード数枚を買い求めました。でも,種類は少なかったですね。やっぱり,日本では(なのかな?),無名みたいなんですよね。知る人ぞ知るとか,そんな感じなのですかね。あ,それでね,後で調べたのですが,東京ディズニー・シーの水辺に「リストランテ ディ・カナレット」というイタリアン・レストランがあるそうです。そんなコトは露知らず,帰りに僕達は「しゃぶしゃぶ」を「お腹イッパイ」に食べたのでした。
さて,第2章からですが,カナレットの作品の最大の見所は,線遠近法を駆使した都市空間の精緻な表現や,細部まで描かれた豊かな人物表現でしょう。これらの技術は,幼少期に父について学んだ舞台美術の影響を強く受けているそうです。特に評価が高いのはヴェネツィアの中心部を流れるカナル・グランデで行われるレガッタや昇天祭などの祝祭を描いた作品群ですね。観客の熱狂が画面から生々しく伝わるだけでなく,当時の文化風俗を正確にとらえているというコトで一級の歴史資料とも捉えられるそうです。
カナレットがヴェドゥータを描き始めたのは1719年頃からとされ、当初は光と影の効果を重視した雰囲気の描写が特徴的でした。それが次第に,すっきりと澄んだ空に,定型的な水の波紋、定規を用いて堅固に描かれた建物といった画風が定着していきます。また,彼は画面のあちらこちらに様々な仕草の人物を好んで描くようになりました。ヴェネツィアに生まれヴェネツィアに没したカナレットの描く,整然とした街並み,輝く水面,華やかな祝祭の情景は,同地の典型的イメージとして定着するほど絶大な人気を博しました。
この第2章は,好きな作品ばかりですね。特に「カナル・グランデ:パラッツォ・バルビから北東にリアルト橋を望む」,「サン・マルコ湾:北を望む」,「サン・ヴィオ広場から見たカナル・グランデ」,「サン・マルコ広場」の4つは,本当に気に入りました。また,カナレットはヴェネツィアだけでなく、パトロンからの需要に支えられ,ローマやロンドンなどでもヴェネツィア同様に観光スポットや景勝地を描いています。
古代遺跡から文化の香り漂うローマ,のどかな水辺や田園風景が美しいロンドンなど、カナレットの描いた都市景観から、約200年前のヨーロッパ各都市の違いを見比べるのも楽しいものです。「ロンドン・,ヴォクスホール・ガーデンズの大歩道」や「ナヴォナ広場の景観」なんて実にイイですね。続く第3章は,「カナレットの版画と素描―創造の周辺」と題された創造の秘密についてですね。カメラ・オブ・スキュラと呼ばれる、カメラの祖先となる原始的な光学機器には興味なかったけれど,版画やデッサンは素敵でした。
そして第4章「同時代の画家たち,継承者たち-カナレットに連なる系譜の展開」ですが,カナレットの活躍により時代が動いた後のコトです。その画風に倣ったフォロワーたちも続々と活躍の場が与えられることになります。ウィリアム・マーロー,フランチェスコ・グアルディなんて,実にイイですね。カナレットに続くヴェドゥータの名手たちの作品も,次々と披露されています。先駆者の作風を踏襲しながらも,少しずつカナレットとは違う個性の表出も感じられます。水と都市の風景,どれも美しい。この第4章も,ホントに気に入りました。
ウィリアム・マーローです。
フランチェスコ・グアルディです。
「カナレットの遺産」と題された最終章では,風景画の世紀とも言える19世紀の英仏の画家たちに焦点を当て,カナレット以後のヴェネツィアの表象の変遷を辿ります。ロマン主義的思潮を背景に,裏町や狭い水路などヴェネツィアの「裏」の顔を切り取る画家も登場しました。ドラマがあって,これもまたイイ。以上,こんなところですが,もう思う存分に楽しむコトが出来ました。今年2024年に訪れた展覧会は全て,もう一度行きたいと思いましたね(残念ながら,実現しなかったけれども)。
帰りは「いつも通り」というコトで,ミュージアム・ショップでポスト・カード数枚を買い求めました。でも,種類は少なかったですね。やっぱり,日本では(なのかな?),無名みたいなんですよね。知る人ぞ知るとか,そんな感じなのですかね。あ,それでね,後で調べたのですが,東京ディズニー・シーの水辺に「リストランテ ディ・カナレット」というイタリアン・レストランがあるそうです。そんなコトは露知らず,帰りに僕達は「しゃぶしゃぶ」を「お腹イッパイ」に食べたのでした。
今年2024年,美術館に行くのも今回が最後になるでしょう。本当はスケジュールが忙しいので来年2025年に回すつもりだったのですが,今回行った展覧会が12月28日までであると知ったのです。だから,急遽,行くコトとしたのです。普段だと,我が家は3連休の時に行くのですよ(いつも真ん中の休みに行くのです)。ところが,年末まで3連休ナイですからね。土曜日に出掛けるコトとした次第です。少し寒かったけれど,よく晴れたイイ日でした。
僕と家人は昼過ぎに家を出て,木場駅まで歩きます。木場駅から一駅だけの東西線,門前仲町から大江戸線に乗り換えました。いつも思うコトですが,何で大江戸線の乗り心地は「あんなに」素晴らしいのでしょう。寝てしまいたくなるだとか,いつまでも乗っていたくなる。と,そうこうしている内に,都庁前駅に到着です。少し風が強くもあったけれど,僕達は「ノンビリ」と歩いて到着。美術館の周辺で,写真を撮っていらっしゃる方々も多くおられます。
東京・新宿のSOMPO美術館で「カナレットとヴェネツィアの輝き」がスタートしたのは,2024年10月12日からでした。僕は始まる前から,絶対に来ようと決めていたのです。それというのも,そのポスターに強く心惹かれたからです。ジョヴァンニ・アントニオ・カナレット(以下,カナレット)という画家については全く知らなかったけれど,間違いなく好きになるであろうと思いました。時代的には,僕の好きな印象派よりは,かなり前です。ロマン主義よりも,まだ前なんじゃないかな。
何でもカナレットはヴェネツィア出身の巨匠というコトらしく,日本で本格的に取り上げられるのは今回の展覧会が初めてであるとのコトです。展示されているのは,カナレットの絵画作品を中心とした約70点の絵画や資料。これらを通して中世から19世紀後半頃に至るヴェドゥータ(景観画)発展の系譜を辿っていくのがコンセプトだとか。おっと,ヴェドゥータ(景観画)というのは,都市の景観をきわめて精密かつ大規模に描いた絵画または印刷物のコトです。カナレットは,その発展に大きく貢献したのだとか。
全部で5つの章に分かれていますが,第1章は,「カナレット以前のヴェネツィア」です。ここでは,カナレット以前にヴェネツィアの街並みを描いた作品が紹介されます。つまり,カナレットに先立つ都市のイメージ,および18世紀当時のヴェネツィアを伝える作品が紹介されます。イタリアでは多くの画家が神話やキリスト教をテーマとした歴史画を描いてきたわけですが,純粋な風景画は殆ど存在しなかったのだとか。
そんな中,18世紀に入って,「グランド・ツアー」と呼ばれる旅行が流行します。グランド・ツアーとは,イギリスの裕福な貴族の子弟が,教育の集大成として行った,言うなれば修学旅行のようなもの。と言っても,そのスケールは大きく,数か月から1,2年ほど,長ければ5,6年をかけてフランスやイタリアを巡ったそうです。ここまで来れば,まぁ留学ですね。文化的に爛熟期を迎えていた海上都市ヴェネツィアは,ヨーロッパ屈指の観光地として多くの観光客を魅了していました。
この流れで,ヴェネツィアの街並みを正確に描いた「ヴェドゥータ」はお土産品として旅行客から求められるようになり,彼らのニーズに応えて一躍人気画家となったのがカナレットだったのです。えーっと,あ,それで第1章で気に入ったのは,そうね,ジョヴァンニ・パオロ・パニーニの「ローマ・ポルタ・サント・スピリト」ですかね。ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロの作品も多くフィーチャーされていてヨカッタですけれど,まっ,個人的な好みですよ。
そして,いよいよ第2章へと入っていくのですが,この展覧会のハイライトは,この第2章ですね。カナレットがヴェネツィアで活動を始めると,彼の作品はこの地をグランド・ツアーで訪れた英国人旅行客にとりわけ人気を博し,旅の記念としてこぞって求められるようになります。カナレットは,ジョゼフ・スミスをはじめとする同時代の有力な英国人のパトロンに恵まれるようになり,今も英国には数多くのカナレット作品が遺されています。言うまでもなく,次回に続きます。
僕と家人は昼過ぎに家を出て,木場駅まで歩きます。木場駅から一駅だけの東西線,門前仲町から大江戸線に乗り換えました。いつも思うコトですが,何で大江戸線の乗り心地は「あんなに」素晴らしいのでしょう。寝てしまいたくなるだとか,いつまでも乗っていたくなる。と,そうこうしている内に,都庁前駅に到着です。少し風が強くもあったけれど,僕達は「ノンビリ」と歩いて到着。美術館の周辺で,写真を撮っていらっしゃる方々も多くおられます。
東京・新宿のSOMPO美術館で「カナレットとヴェネツィアの輝き」がスタートしたのは,2024年10月12日からでした。僕は始まる前から,絶対に来ようと決めていたのです。それというのも,そのポスターに強く心惹かれたからです。ジョヴァンニ・アントニオ・カナレット(以下,カナレット)という画家については全く知らなかったけれど,間違いなく好きになるであろうと思いました。時代的には,僕の好きな印象派よりは,かなり前です。ロマン主義よりも,まだ前なんじゃないかな。
何でもカナレットはヴェネツィア出身の巨匠というコトらしく,日本で本格的に取り上げられるのは今回の展覧会が初めてであるとのコトです。展示されているのは,カナレットの絵画作品を中心とした約70点の絵画や資料。これらを通して中世から19世紀後半頃に至るヴェドゥータ(景観画)発展の系譜を辿っていくのがコンセプトだとか。おっと,ヴェドゥータ(景観画)というのは,都市の景観をきわめて精密かつ大規模に描いた絵画または印刷物のコトです。カナレットは,その発展に大きく貢献したのだとか。
全部で5つの章に分かれていますが,第1章は,「カナレット以前のヴェネツィア」です。ここでは,カナレット以前にヴェネツィアの街並みを描いた作品が紹介されます。つまり,カナレットに先立つ都市のイメージ,および18世紀当時のヴェネツィアを伝える作品が紹介されます。イタリアでは多くの画家が神話やキリスト教をテーマとした歴史画を描いてきたわけですが,純粋な風景画は殆ど存在しなかったのだとか。
そんな中,18世紀に入って,「グランド・ツアー」と呼ばれる旅行が流行します。グランド・ツアーとは,イギリスの裕福な貴族の子弟が,教育の集大成として行った,言うなれば修学旅行のようなもの。と言っても,そのスケールは大きく,数か月から1,2年ほど,長ければ5,6年をかけてフランスやイタリアを巡ったそうです。ここまで来れば,まぁ留学ですね。文化的に爛熟期を迎えていた海上都市ヴェネツィアは,ヨーロッパ屈指の観光地として多くの観光客を魅了していました。
この流れで,ヴェネツィアの街並みを正確に描いた「ヴェドゥータ」はお土産品として旅行客から求められるようになり,彼らのニーズに応えて一躍人気画家となったのがカナレットだったのです。えーっと,あ,それで第1章で気に入ったのは,そうね,ジョヴァンニ・パオロ・パニーニの「ローマ・ポルタ・サント・スピリト」ですかね。ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロの作品も多くフィーチャーされていてヨカッタですけれど,まっ,個人的な好みですよ。
そして,いよいよ第2章へと入っていくのですが,この展覧会のハイライトは,この第2章ですね。カナレットがヴェネツィアで活動を始めると,彼の作品はこの地をグランド・ツアーで訪れた英国人旅行客にとりわけ人気を博し,旅の記念としてこぞって求められるようになります。カナレットは,ジョゼフ・スミスをはじめとする同時代の有力な英国人のパトロンに恵まれるようになり,今も英国には数多くのカナレット作品が遺されています。言うまでもなく,次回に続きます。