2014年 06月 13日
南シナ海の紛争:悲観的なFTの社説 |
今日の横浜北部は朝から快晴です。昼過ぎには少しにわか雨がありましたが、真夏のように暑いです。
本当に久々の更新です。別に更新しないつもりではなかったのですが、たまった仕事に追われているうちにあっという間に時間がたってしまったというのが本当のところです。
さて、個人的に注目している南シナ海情勢なのですが、これについて一昨日のFT紙が興味深い社説を書いておりましたのでその要約を。
これはJBプレスの方には出てないみたいですね。
===
南シナ海に迫る紛争:中国とその周辺国との対立は危険なレベルに
by FT論説委員
●中国と周辺国の海洋紛争の緊張は、新たなレベルを迎えた。
●南シナ海では、北京がハノイやマニラと活発な領有権争いを行っており、これがロバート・カプランの本の題名のように「アジアの難問」になってきている。
●東シナ海では尖閣諸島をめぐる争いがとりわけ有害であり、双方の計算違いが発生する可能性は高い。日中の航空機は定期的に異常接近を繰り返しており、先月にはベトナムの漁船の乗組員が中国側の艦船に衝突されて沈められた後に海中から救助される事態まで発生している。
●すでに死者も出ている。北京が五月に石油の掘削用リグをパラセル諸島の近くに移動させた時、反中デモがベトナム全土で巻き起こったのだが、この時に死者が四人も出ている。
●日本の好戦的な安倍首相は、最近行われたシンガポールのシャングリラ・ダイアローグで、日本政府が航行の自由を脅かされている国に支援をすることを表明している。
●チャック・ヘーゲル米国防長官はさらに踏み込んで、北京を名指ししながら「威嚇と強制」を行っていると非難している。中国もそれに応答して、ヘーゲルの言葉は「覇権にあふれている」と述べている。これによって緊張は高まってきた。
●ではこの緊張はどのようにして緩和できるのだろうか?万能ではないが、それでも国際法は一定の役割を果たすことができそうだ。フィリピンはすでに中国との間で国連海洋法条約(UNCLOS)を通じた解決を求めている。
●この訴えの一部は、北京が南シナ海全域を主張しているように見える、いわゆる「九段線」の範囲と妥当性に疑問を呈するものだ。中国は「九段線」が一体何を意味するのかを正確に答えようとしていない。国際的な裁定者の誰かがこの問題について解決するのは歓迎すべきことであろう。
●ベトナムはフィリピンにつづいてUNCLOSの元に国際司法裁判に訴えることを考慮している。日本、マレーシア、ブルネイ、そして台湾も司法裁判に有利な形で持ち込むことができるだろう。
●ワシントンも自らUNCLOSを批准すれば、このような動きを援助できたはずであり、中国に国際的なルールに従うように圧力をかけられたはずだ。
●それでも訴えは訴えでしかない。そもそも歴史的な領有権の主張と国際法の区別がまず明確になっていない。UNCLOSは1982年にようやく締結されたのであり、中国のいくつかの主張は数世紀以上もさかのぼるものがあるのだ。
●また、厳密にいえばUNCLOSが主権争いを裁定できるわけでもない。その任務はある海洋面のものが島か岩かを判断することであり、それが200海里の経済的排他水域(EEZ)の主張の根拠になるかどうかを判断することだ。
●このような紛争は、より大きな動きから出てくる「症状」でしかなく、この事実をわれわれは認める必要がある。中国が強国化するにしがって、戦後の「パックス・アメリカーナ」は弱体化しているのだ。
●ここで確実に言えるのは、西太平洋で最終的に新しい秩序が生まれるのは避けられないということだ。
●もちろんアメリカやその他の国々は中国を永遠に封じ込めようとするだろう。ところが長期的に見れば、これは紛争を起こす原因となる。
●妥協は必ずしも領土主権の譲渡を伴う必要はないのだが、それでもこれは中国の権益が脅かされないと安心させるようなものでなければならない。これを行う最適な方法は、日本、インド、そしてアメリカを含む国々と中国を、地域の枠組みに拘束することだ。
●「東アジアサミット」はその一つの案であろう。ここには太平洋のすべての大国を参加させるのであり、安全保障面でも権限を持たせるのだ。このサミットの権限を強化することにも注力すべきだ。そのためには地域全般における信頼醸成の働きかけや、海賊対策や災害支援などでの協力も含まれるだろう。
●少くともここでは小競り合いのエスカレーションを防ぐための、効果的なコミュニケーションの場を提供すること――中国とベトナムの場合は失敗している――ができるはずだ。
●もちろんこの広域アジア安全保障ネットワークの実現のためには数年、いや数十年かかるかもしれない。しかし何かしらの地域的な努力がなければ、中国周辺の海の波は高くなるだけだ。
===
カプランの最新刊をネタにして書かれたような社説ですが、なんというか、南シナ海の将来についてやや悲観的ですね。
これについての私のコメントはメルマガのほうで。


http://ch.nicovideo.jp/strategy

https://www.youtube.com/user/TheStandardJournal
本当に久々の更新です。別に更新しないつもりではなかったのですが、たまった仕事に追われているうちにあっという間に時間がたってしまったというのが本当のところです。
さて、個人的に注目している南シナ海情勢なのですが、これについて一昨日のFT紙が興味深い社説を書いておりましたのでその要約を。
これはJBプレスの方には出てないみたいですね。
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南シナ海に迫る紛争:中国とその周辺国との対立は危険なレベルに
by FT論説委員
●中国と周辺国の海洋紛争の緊張は、新たなレベルを迎えた。
●南シナ海では、北京がハノイやマニラと活発な領有権争いを行っており、これがロバート・カプランの本の題名のように「アジアの難問」になってきている。
●東シナ海では尖閣諸島をめぐる争いがとりわけ有害であり、双方の計算違いが発生する可能性は高い。日中の航空機は定期的に異常接近を繰り返しており、先月にはベトナムの漁船の乗組員が中国側の艦船に衝突されて沈められた後に海中から救助される事態まで発生している。
●すでに死者も出ている。北京が五月に石油の掘削用リグをパラセル諸島の近くに移動させた時、反中デモがベトナム全土で巻き起こったのだが、この時に死者が四人も出ている。
●日本の好戦的な安倍首相は、最近行われたシンガポールのシャングリラ・ダイアローグで、日本政府が航行の自由を脅かされている国に支援をすることを表明している。
●チャック・ヘーゲル米国防長官はさらに踏み込んで、北京を名指ししながら「威嚇と強制」を行っていると非難している。中国もそれに応答して、ヘーゲルの言葉は「覇権にあふれている」と述べている。これによって緊張は高まってきた。
●ではこの緊張はどのようにして緩和できるのだろうか?万能ではないが、それでも国際法は一定の役割を果たすことができそうだ。フィリピンはすでに中国との間で国連海洋法条約(UNCLOS)を通じた解決を求めている。
●この訴えの一部は、北京が南シナ海全域を主張しているように見える、いわゆる「九段線」の範囲と妥当性に疑問を呈するものだ。中国は「九段線」が一体何を意味するのかを正確に答えようとしていない。国際的な裁定者の誰かがこの問題について解決するのは歓迎すべきことであろう。
●ベトナムはフィリピンにつづいてUNCLOSの元に国際司法裁判に訴えることを考慮している。日本、マレーシア、ブルネイ、そして台湾も司法裁判に有利な形で持ち込むことができるだろう。
●ワシントンも自らUNCLOSを批准すれば、このような動きを援助できたはずであり、中国に国際的なルールに従うように圧力をかけられたはずだ。
●それでも訴えは訴えでしかない。そもそも歴史的な領有権の主張と国際法の区別がまず明確になっていない。UNCLOSは1982年にようやく締結されたのであり、中国のいくつかの主張は数世紀以上もさかのぼるものがあるのだ。
●また、厳密にいえばUNCLOSが主権争いを裁定できるわけでもない。その任務はある海洋面のものが島か岩かを判断することであり、それが200海里の経済的排他水域(EEZ)の主張の根拠になるかどうかを判断することだ。
●このような紛争は、より大きな動きから出てくる「症状」でしかなく、この事実をわれわれは認める必要がある。中国が強国化するにしがって、戦後の「パックス・アメリカーナ」は弱体化しているのだ。
●ここで確実に言えるのは、西太平洋で最終的に新しい秩序が生まれるのは避けられないということだ。
●もちろんアメリカやその他の国々は中国を永遠に封じ込めようとするだろう。ところが長期的に見れば、これは紛争を起こす原因となる。
●妥協は必ずしも領土主権の譲渡を伴う必要はないのだが、それでもこれは中国の権益が脅かされないと安心させるようなものでなければならない。これを行う最適な方法は、日本、インド、そしてアメリカを含む国々と中国を、地域の枠組みに拘束することだ。
●「東アジアサミット」はその一つの案であろう。ここには太平洋のすべての大国を参加させるのであり、安全保障面でも権限を持たせるのだ。このサミットの権限を強化することにも注力すべきだ。そのためには地域全般における信頼醸成の働きかけや、海賊対策や災害支援などでの協力も含まれるだろう。
●少くともここでは小競り合いのエスカレーションを防ぐための、効果的なコミュニケーションの場を提供すること――中国とベトナムの場合は失敗している――ができるはずだ。
●もちろんこの広域アジア安全保障ネットワークの実現のためには数年、いや数十年かかるかもしれない。しかし何かしらの地域的な努力がなければ、中国周辺の海の波は高くなるだけだ。
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カプランの最新刊をネタにして書かれたような社説ですが、なんというか、南シナ海の将来についてやや悲観的ですね。
これについての私のコメントはメルマガのほうで。


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by masa_the_man
| 2014-06-13 16:59
| 日記