思ったことをすぐ口に出す。何をやっても悪びれない。批判されても「別にいいじゃん」と気にしない。フラつきながらも、決して墜落しない安倍総理——これが「一億総ヤンキー」時代の政治家だ。
大切なのは気合と勢い
「たくさんの仲間と出会って、友情の絆を強めてください!」
夏の夕暮れに赤く照らされる、日焼けした少年少女たちの顔。「魂」や「和」と書かれたTシャツに身を包み、歓声を上げる。壇上には、笑顔で手を振る安倍総理の姿があった。EXILEのヒット曲『Rising Sun』が大音量で響き渡る。
8月2日、総理の地元・山口県で開催されたボーイスカウトの世界大会「世界スカウトジャンボリー」アリーナショーでの一幕だ。
この式典に参加するためだけに、安倍総理は安保国会の多忙をぬって日帰りで山口へ飛んだ。7月以降、都合3回も山口へ帰省した総理の行動を、番記者の間では「何かよほど理由があったのか」と訝る声すら出ている。
しかし、あるキーワードを当てはめれば、総理の行動、考え方に関する謎は氷解する。
「マイルドヤンキー」。
昨年の流行語大賞にもノミネートされたこの言葉。読者にもおなじみのいわゆる「ヤンキー」とは、実はまったく別の人々のことを指している。
昔のヤンキーといえば、リーゼントに短ランにボンタン。木刀を携えて改造バイクを乗り回し、ウンコ座りでたむろする。親が大嫌いで、矢沢永吉のごとく「いつか東京でビッグになる」が口癖。だが、こんな若者はいまやすっかり姿を消した。
典型的なマイルドヤンキーの若者は、あらゆる面で彼らと正反対だ。バイクではなくミニバンに乗り、休日はスマホでゲームをしたり、ショッピングモールで過ごす。「マジメ」だと思われたくなくて、ちょっと「ワルい」こともしてみたいけれど、平穏な暮らしを失うのはイヤ。家族・恋人・地元の友達が何より大切で、生まれ育った町を離れるなんて考えられない。