じつは、地球にとって「二酸化炭素は悪もの」ではなかった

地球を「生命の住める星」にする存在

地球という惑星の進化は、水のはたらきを抜きにしては語ることができません。

じつは、水は地球の表層だけではなく、プレートテクトニクスと共に、地球の内部に取り込まれ、地質学的なスケールで大循環しています。しかも、今後6億年で、海の水はすべて地球内部に吸収され、海は消失してしまうという、驚きの最新研究もあります。

「水」を地球規模のスケールで解説した水の惑星「地球」 46億年の大循環から地球をみるから、興味深いトピックをご紹介していくシリーズ。地球の歴史を振り返りながら、「水」が地球の環境のなかで、どのような働きをしているのかを見ていきます。

今回は、地球環境に多大な影響を与えている二酸化炭素の働きを取り上げます。

*本記事は、『水の惑星「地球」 46億年の大循環から地球をみる』(ブルーバックス)刊行に際して、本書で語り尽くせなかったトピックを取り上げた、オリジナル記事です。

二酸化炭素があるから安定している

地球温暖化の原因とされる二酸化炭素は、地球にとって悪もののように扱われていますが、大気中に二酸化炭素があるおかげで地球は穏やかな気候に保たれています。

もし、大気から二酸化炭素がなくなってしまったら、地球の表面気温は氷点下となり、地球は丸ごと凍ってしまいます。

また、46億年の地球史を通じて、地球表層と地球内部のあいだで二酸化炭素のやり取りがあることで、寒冷期と温暖期をくり返しつつも、液体の水が安定で生命が育まれる環境がこれまで維持されてきました。

形を変えながら循環する炭素

炭素は、大気、海洋、堆積物、そして生物のあいだを形を変えながら動いています。そのため、大気中の二酸化炭素の濃度は常に一定ではなく、入れ替わり変動しています。現在は大気中の二酸化炭素が増えることで、海水中の二酸化炭素濃度も増えて酸性化が進み、サンゴや魚介類にも影響がではじめています。そのような地球表層での炭素循環は、比較的短いスケールで起こります。

そのいっぽうで、炭素は化学反応や生物の代謝によって鉱物に取り込まれ、そのような炭素は地球全体を通して循環しています。海底に固定された炭素は、プレートの沈み込みよって地球内部へとはこばれ、マグマに溶け込むことで火山噴出によって表層へと再びもどってくるのです。

【図】地球での炭素循環地球での炭素循環 figure by Ikuo Katayama

この地球内部での炭素循環は、地質学的な時間スケールでの気候システムと深いかかわりがあります。

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