【塩山芳明】漫画表現への都条例改悪による弾圧の本質は、納税者いじめにこそあり。"青少年保護”を錦の御旗に、公金をしゃぶり尽くそうとする裏金ハレンチ役人の腐臭まみれの魔手から、打出の小槌をただちに奪い返せ!!
編集長から、“性愛描く漫画 都条例議論大詰め”なるリードの、『朝日新聞』12月7日付け紙面のコピーを渡される。12月13日の都議会総務委員会で最大会派の民主党の賛成により、可決が確実視されている、”親馬鹿慎太郎漫画弾圧条例”をめぐる記事だ(本会議での議決は15日)。岡雄一郎記者の署名入り。都議会で前回(6月)に否決された条例との相違、条例の歴史的推移等が優等生風に要領良くまとめられているが、一番のポイントが欠落。青少年犯罪は増えてるどころか確実に減少している今、何ら緊急性のない言論・表現の弾圧条例が、執拗に提出され続ける事の政治的背景だ。
ズバリそれに回答しているのが、同一グループ発行の、『週刊朝日』12月17日号での保坂展人の記事、「ファッショ石原慎太郎知事が画策するマンガ規制条例可決?の愚」だ。国会の質問王として知られる、元衆議院議員の貧相なオッサンだが、官僚に舐められ続けた怒りは未だ覚めやらぬ模様で、策動の本質をピントピッタリで把握(「国会の質問王 保坂展人前衆議院議員が現場を歩く」の、連載第11回目)。長いが引用する。
“この条例の陣頭指揮をとる、都青少年・治安対策本部についても、「出版物の規制を、警視庁の出向者が加わった部署が担うのはおかしい。かつて青少年条例は生活文化局の所管でした。少なくとも、治安組織から条例の所管を外し、別の部局に配置換えすべきです」(長岡氏)/ちなみに、現在、都青少年・治安対策本部長を勤める倉田潤氏は、06年に公職選挙法違反の架空調書をデッチあげた志布志(しぶし)事件(03年)が発覚した際に、鹿児島県警本部長を務め「自白の強要はなかった」と答弁していた人物だ”。(注釈・談話に登場する長岡氏とは、62年福島県生まれのフリーライターで、元『新文化』記者の長岡義幸。出版物に対する国家権力の干渉の歴史への造詣が深い。姿勢も官憲の御用聞きに等しい出版業界の自主規制ブローカー、清水英夫などとは異なり、原則的で腰が座っている。近刊の平凡社新書『マンガはなぜ規制されるのか』は、関係者や問題に興味ある人は必読の書だ)
判検交流なる素人にもわかる愚行の果てに、裁判での有罪率99%以上なる、世界的恥さらしの醜態に陥ったのは知っての通り(なら全国の裁判所は全部廃止、“公正で清潔な検事様”に司法も全面的に任せろ。世界初のニ権分立に伴い、日本国赤字財政の大幅好転間違いなし!)。都庁も警視庁と類した交流を始め、結果的にかつての青少年健全育成課は、仰々しい現在の名前に名称変更した頃から、裏金警察官僚の植民地と化した(無論この動きは99年の、親馬鹿エセ右翼チンピラフーテン爺さん、石原慎太郎の都知事就任と連動)。天下り役人がする事は、どの分野でも昔から相場が。右上がりの予算確保だ。無修整映像が自宅でタダで見物出来る時代に、本植民地では公費で毎月エロ本を数百種類は買っている。呆れ果てた景色!即廃止すべき部署筆頭なのは、おしめを引きずる赤ちゃんにもわかる。
しかしそれでは、かつて無辜の鹿児島県民に暴力的に罪を着せた上、議会では厚顔にも偽証答弁を行い、ばれても逮捕はなく免職にもされず、平然と高給(裏金付き)を盗み続け、都に天下った(出向も含む)ハレンチ漢共は大いに困る。そこでひねり出したのが、思想信条に無関係に俗受けする、眼に見えない究極の公共事業だ。“青少年の健全育成”、あるいは“児童保護”は、連中には予算確保を保証する上での、永遠の打出の小槌なのだ(公安部門での“テロ防止”に当たる)。猥褻場面を“不等に賛美・誇張して漫画化している”と役人が勝手に規定出来れば、警察や検察他の(彼等には当然な)裏金にケチをつけるような、反抗的納税者はことごとく別件逮捕可能だ。徐々に条例を強化すれば、理想的官僚独裁社会が実現すると、窃盗役人共は真面目に考えている(白面で!)。
昨年始めだったと思う。筆者担当の隔月コンビニ漫画誌、『本当にあった禁断愛』(業界唯一の近親相姦専門漫画誌!)に、都条例の悪書指定が。今は成年マーク付き雑誌ほとんどなので(付けてると指定されない。同時にコンビニでは全く扱ってくれない)、久々の体験。本来出頭義務はないが、版元(一水社)の顔を立て、都庁の治安なんだらかんだら本部にアバタ面を出す(2年振りくらい)。驚いたのは職員の態度がでかくなってた点。まるで容疑者扱い。一般社会人に白い眼で見られるのは仕方ないが(業界入り前までは筆者も同様だった。エロ本は暴力団が作ってると、今でも信じてる人も)、民間に比べて給料がべラボーに高いからって、威張んじゃねえよ裏金まみれの警官もどきが!!(一応、態度には極力出さず)
中でもいかにも粗暴で知性のカケラも感じられない、M・Tなる係長の対応には呆れ果てた。規定内脳味噌量が大幅不足中のこのゲス野郎、担当職員が審議会に候補雑誌を諮問、指定決定に至るプロセスに触れた所、いきなり大声でわめき出した。「決定するのは石原慎太郎知事です!」「それは建て前でしょう。確かに書類上はそうでも、実質は審議会が決める訳で…」「そ…そうじゃありません!ちち…知事が全部決めるんです!!」「じゃあ審議会は何で存在するのよ?」「ちょっと参考にするだけです!」脇の職員がウンザリ顔。職場の鼻つまみ者らしいが、幹部の受けは別かも。
ナチス党唯一の青年組織、ヒトラー・ユーゲントは戦前、日本を公式訪問して“帝国の友邦”として大歓迎を受けた(靖国神社にも参拝、都民の大群衆が「ハイル・ヒトラー!」のポーズで応えた)。大元帥・天皇裕仁以下の大日本帝国を参戦させるための、既にソ連戦線で行き詰まっていた第三帝国による、博打的大プロパガンダであった(結果は皆様御存知!)。M・Tを観察、「こういう“慎太郎ユーゲント”みたいなウスラ馬鹿が、都庁ではでかいツラしてんだろう」との懸念を抱いたが、悪い予感は適中した。
裏金警察の植民地と化す以前から、確かに都条例の運用は問題だらけ。大手版元の出版物は特別扱い、中小の少部数刊行物のみに指定していた例はその筆頭だ。ただ、30年以上関わって来た者として正直に言うなら、わずかな救いも。以前の青少年健全育生課時代は、担当職員(2~3年で交代)が本当に恥ずかしそうに仕事をこなしてた事だ。愛想いい者も尊大な糞野郎もいたが、誰もが“馬鹿げた仕事ですが、これも生活のためです”と、黙って全身で語っていた。検閲官まがいの仕事をしていれば、並の知性と羞恥心ある人間はそうなる。役人先導の小手先仕事で、子供の不良化が本当に防げるのならば、児童相談所も警察も裁判所も少年院も要らない。
今は違う。自分達のブルジョア生活を永遠に安定させるための、公共事業(観念的箱モノ)の予算執行をしているのだ。青少年の健全育成・児童保護の建て前さえあれば、ほとんどの党派は反対しない。記者クラブ大マスコミは、公金取材体制を保証さえすれば、後から黙ってついて来る。更なる都条例強化の果てには、小型書店がほぼ滅亡した今、立ち入り権を持つ各コンビニチェーンも、都青少年・治安対策本部職員の有望な天下り先になると目論んでる(福岡県でで県警が、暴力団問題で繰り返してコンビニにケチをつけてるのも、本来の目的はコレ)。
思い上がった官僚から公金を自由に引き出せる、打ち出の小槌を取り上げるのは政治家の職務だ。しかし“国民生活第一”から“役人生活第一”に舵を切った馬菅直人に、そんな基本的仕事が出来ようはずもない(だから足元の都議団も、トンデモ条例に早々に賛成した)。40近いプータロー豚児、源太郎は親のコネで見事に政策秘書に就職したし(年収1千万!)、愚妻“出しゃばり伸子”も、毎夜の豪華外食で御満悦の酒と薔薇の日々。後はお役人様のごきげんを取りながら、私財蓄財に励むのみ(貯金2億の福島瑞穂なんかに負けるか!俺は総理だ3億だ!!)。
つまり、再度、再々度の都条例改悪が既に用意されていると考えるべきだ。更に今回の漫画弾圧条例は、検察&大マスコミによる、一連の小沢一郎フレームアップ報道の延長線上にあると捉える必要が。でないと冒頭で触れた朝日の岡雄一郎記者の記事のように、上っ面だけなぜた無意味なモノに。保守とか革新ではなく、官僚あるいは納税者のどちらの側に立つかという、単純だが基本的選択からこそ、連中の打出の小槌を奪い返す可能性と手段が(小沢は既に小槌に手を掛けた。それゆえ無法な反撃に遭っている)。
ただ筆者はもう飽きたよこの問題には。34年も悩まされ続けたら誰でもそうなる。未だ現役ゆえに弱音を吐きたくないが、昔話はいくらでもするけど、実践的反対運動はヤンガーゼネレーションに任せるって。最後に『本当にあった禁断愛』誌だが、都条例指定後に表現を自粛したら返品が急増、たちまち廃刊に。大幅減収になり、約20年働いてくれた右腕も解雇せざるを得なくなる。1年チョイ前の話。先日久しぶりに彼に再会、近況を尋ねると、結局仕事は見つからず、知り合いの植木職人の仕事を時々手伝ってると。ブルジョア裏金役人の狂った民業圧迫が、どれだけこの大不況に油を注いでいる事か!出版業界は長い不況に喘いでいるが、今後は“慎太郎不況”がこれに加わるのだ。負けられませんが!
■塩山芳明…雑誌版『記録』にて『奇書発掘』を連載。エロ漫画編集者。著書に『出版奈落の断末魔~エロ漫画の黄金時代』(アストラ)、『嫌われ者の記』『現代エロ漫画』(共に一水社・絶版)、『出版業界最底辺日記』(ちくま文庫)、『東京の暴れん坊』(右文書院)がある。
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