汚染の現状◆「放射性物質っていうのは基本的に消えなくて、移動してくだけなんで。どこに出るかが変わっていくだけなんです」 ――放射性物質の生活システムへの影響
――では少し話を現実に生じている放射能汚染の方に向けたいと思います。お仕事は水処理関係ということでしたが、お仕事面で今回の事故の影響はありましたか?
そうですね、汚泥問題で関係してきます。あれは…、5月ごろでしたね。測定したのが4月終わりなので。汚泥は毎日出て溜まっていきますからね。放射性廃棄物なんで、こちらのほうではどうしようもない。法律で移動が禁止させられているものですから。上からの指示待ち。
(放射性物質を検査するようになったのは)事故以降です。汚泥の水質検査というのはしていたんですが、放射性物質という項目がなかったような気がします。
下水汚泥からの濃度は下がりつつあるので、収束には向かっているんですけど。でも土壌から来ているものなので、しばらくは続くと思いますね。
放射性物質っていうのは基本的に消えなくて、移動してくだけなんで。どこにでるかが変わっていくだけなんです。
――稲藁だったり、汚泥だったり、木の皮だったり、がれきだったり…片付ければ放射性ゴミですからね。上水道でも出るんですか?
出ますね。土砂とかの有機物を最初に除去するんですけども、最初の汚泥にセシウムが含まれている。
でも下水のほうが多いです。雨降るたびに入ってくる。雨水と生活汚水を一緒に処理するタイプだと、建物や道路をあらった水が入るので濃度は高くなる。
生活汚水のみのタイプだと、汚染は少ない。汚染は少ないのだけど、服についたホコリが洗濯で流れたりとか、野菜洗った土とかから下水に入りこむんです。あとは人間の屎尿からも出ます。もうそれは体内に取り込んだもので、いわゆる内部被曝というやつですね。
福島県内の某市では、屎尿処理した汚泥を肥料に使っていたんですよ。それも放射性物質が出たらできなくなるとすると、屎尿処理じたいに支障が出る状況ですね。
地味ですけど、汚泥問題はかなり大問題で。
――そうした放射性物質の処分ということでいえば、いま事故原発の場所が廃棄物の中間貯蔵場所になるという話もありますよね。
原発あるとこが事故にあったら、そこが最終処分場になるという前提で、作るしかないですよね。それを条件で運転再開を認めるかどうかとか。どこにも持っていけないですから。六ヶ所村がありますけど、でもそれも問題がある。六ヶ所村の人から見たら、六ヶ所村はゴミ捨て場じゃないよってなりますよね。
あとは各自治体の除染ゴミですね。あれも処分の問題があるので。
――福島や郡山の除染ゴミももうかなりあるのではないですか?
それが、除染はあんまりまだやっていないんですね(筆者注: インタビューは7月の終わり)。最近までガイドラインもなかったので、除染は自粛してくださいって言うことだったんですよ。
最近ガイドラインが出たんですが、ゴミ処理場の問題があるので、まだ進んでないですね。県外の人が思っているほど、除染は進んでいないのが現状です。
あと、問題は土壌の汚染なんですよね。土壌汚染が。この辺は森林地帯なので、樹木の汚染と土壌とがひどいんです。
だから、林業も仕事できない状態ですね。いま。林業でも、製材の過程で皮が出ますよね。それも放射性廃棄物になるので。それ処理もできない。皮、枝、葉っぱ、そういうところに付着してしまっているので、それさえ取りのぞいてしまえば材木じたいは問題ないのですが、やはり樹皮が問題なんですね。
放射性物質はなくならないで移動していくだけ。
報道などでもすでに言われていることだが、放射能汚染がたとえチェルノブイリ原発事故の何分の一であったとしても、これだけの密度で人間が生きている場所で事故が生じれば、下水、屎尿、農業等々の循環のシステムのいろいろな断面のどこを切っても、金太郎飴のように放射性物質が出てくることになる。今回、たまたま水処理関係のお仕事をされているS川さんのお話を聞くことができ、一見変わらずに進行していく日常のなかでも、いろんなところに放射性物質の「たまり場」のようなものができてしまっていることを理解できた。汚泥問題、除染ゴミ問題はこれからの課題である。
取材日時: 2011年7月30日 場所:白河市内 聞き手:FF取材班 編集: @ecua