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IT Initiativeスペシャル

クラウドの時代に広がる情報格差~野口悠紀雄氏に聞く企業IT戦略のあり方


 90年代のベストセラー『超整理法』が15年ぶりに刷新された。Gmailに代表されるインターネットのサービスの登場がきっかけだという。著者の野口悠紀雄氏は「この劇的な情報処理の世界の変化に適応できていないことが、日本企業の不振の原因」と指摘する。果たして日本企業は「クラウド・フォビア(恐怖症)」を克服することができるのだろうか。

日本企業の生産力低下を招いた情報を取り巻く環境変化への不適応

―今、企業と個人ではITの利活用の立場は逆転しています。個人がWebメールやブログ、SNSなどの環境が無料で手に入る時代なのに、会社の中ではなかなかそうはいかない。大企業や大組織ほど、モバイルやノートPCの活用に規制があったり、会社のメールサーバへの外部からのアクセスを禁じていたりします。もちろん「情報漏えい対策」「個人情報保護法」などの影響もあります。

 たしかに情報を中に囲い込もうとする企業は多い。社内外にVPNなどで専用の情報網を構築してシンクライアントにする。理由はコピーして外に持ち出せないようにするためという目的でしょう。しかしその発想はメインフレームと一緒で、中央集権型に戻っているのです。

早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授
野口悠紀雄氏
早稲田大学大学院ファイナンス研究科 教授  野口悠紀雄氏

 ユーザー側に選択の余地はないため、寡占や囲い込みの恐れがあり、ユーザーにとって不利益となる可能性があります。クラウドを阻害するのも、自社で構築しようとするのも、いずれにせよ、大企業の情報戦略は「クラウド・コンピューティング」によるオープンな情報活用とは逆の方向を向いているようです。

 だから日本企業は不振なのです。「情報活用力」が著しく低いことの影響は無視できません。特に日本のITを牽引すべき企業の生産性が、同業界の米国企業の1/4とも1/5ともいわれるほど低すぎる。IT企業はいまや経済界を牽引していく重要な業界ですから、差がつけば全体に影響するのは必然です。

次のページ
ロジカルに考え、本能から解脱し「フォビア」の克服を

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この記事の著者

伊藤真美(イトウ マミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの制作などを経て独立。ビジネスやIT系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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