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「事業のエキスパートをAIの世界に入ってこられるようにする」Dataiku CEOが創業時から掲げる“AIの民主化”への道筋

住友ゴムは全社分析プラットフォームに採用

 毎日食べるパンのように、AIを人々の当たり前にしたい──2013年にフランスで起業したAIプラットフォーム企業「Dataiku」の共同創業者で、現在もCEOを務めるフロリアン・ドゥエト(Florian Douetteau)氏は、同社がコーポレートビジョンとして掲げる「Everyday AI」に込められた思いをこう表現した。ITの世界では“誰でも使える”という意味で民主化というキーワードが使われるが、最近は“AIの民主化”という言葉を聞く機会も少なくない。そしてDataikuの提唱するEveryday AIもまさにAIの民主化を表すフレーズであり、創業時から変わらない同社のゴールでもある。 ここ1、2年の生成AIブームで急速に事業を拡大したDataikuは、現在、日本市場にも力を入れており、10月にはドゥエト氏自身が来日し、顧客やパートナーと意見交換を重ねてきた。「日本企業のAIへの強いモチベーションとパッションを改めて実感した」と話すドゥエト氏だが、Everyday AIは日本で本当に実現できるのだろうか。今回、多忙な来日スケジュールの合間を縫って直接ドゥエト氏にインタビューする機会を得たので、その内容を紹介したい。

一気通貫の「ユニバーサルプラットフォーム」にこだわる理由

──大企業がDataikuを利用するメリットは何でしょうか。日本では大企業であってもデータサイエンティストやデータアナリストといったAI・データ分析の専門家を確保することが難しく、それがAI導入のボトルネックの1つになっています。

 データサイエンティストが足りないのは日本に限った話ではありません。AI分析のニーズが急激に高まっているのにもかかわらず、AIやデータを専門的に扱える人がいないというのは世界共通の課題です。我々はこれを「AIの逆さピラミッド」と呼んでいます。ビジネスパーソンの数に対し、データサイエンティストやデータエンジニアの数は圧倒的に足りないのです。この状況を改善するには、データサイエンティストの数を増やすことも大切かもしれませんが、もっと確実な方法として「AIを使えるビジネスパーソンを増やす」ことがより重要です。そしてDataikuはそのためのプラットフォームを提供しており、これが多くのエンタープライズ企業に支持されているのです。

画像を説明するテキストなくても可
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──Dataikuは創業時からユニバーサルプラットフォームの重要性を提唱しています。ユニバーサルプラットフォームは、ワンプラットフォームでAI分析で求められるすべてのプロセスをカバーしていることが最大の特徴と理解していますが、AIプラットフォームがユニバーサルであることのメリットは何でしょうか。

 おっしゃる通り、一口にAI分析といってもそこには様々なプロセス──分析に必要なデータの収集に始まり、前処理、可視化、機械学習、AIアプリケーション構築、LLMや自社モデルの管理、モニタリング、ガバナンスの徹底など、非常に多くの作業が求められます。当たり前ですが、これらのプロセスを一人で担当できるデータサイエンティストもビジネスパーソンも存在しません。逆にいえば、異なる専門知をもつメンバーがそれぞれの得意分野を担当し、他のメンバーとコラボレーションを図ることができるプラットフォームがあれば、そこから様々な価値を引き出すことができるのです。

 私はよく「AI分析はチームスポーツ」という表現を使うのですが、チームスポーツではメンバー間の協力が勝利の鍵を握ります。AI分析というストリームを分断することなく、メンバーがそれぞれの役割を果たしながら互いに助け合うことで、今まで思いつきもしなかった相乗効果が生まれる可能性も高くなるでしょう。AI分析の流れを止めないこと、メンバー全員が参加できること、それがユニバーサルAIプラットフォームの原点です。ユニバーサルプラットフォームがあるからこそ、AIの民主化(Everyday AI)も実現に近づくと信じています。

──1つのプラットフォームに全員が参加することでコラボレーションが活性化し、その効果でセレンディピティが生まれ、イノベーションの継続につながっていくというイメージでしょうか。専門家のためのポイントソリューションではなく、チーム全員が参加できるプラットフォームこそがAIの民主化の起点であると。

 データサイエンティストやデータエンジニアといったコーディングスキルを有する専門家のためだけのAIプラットフォームも必要でしょうが、Dataikuが目指すものはそれではありません。「データサイエンティスト(コーダー)もビジネスパーソン(クリッカー)も使えるエンドツーエンドなAIプラットフォーム」をビジネスに役立ててもらう、これが我々のフォーカスするところです。1つの組織内に複数のAIプラットフォームが混在すれば、必ずサイロが発生します。AIに限らず、サイロ化されたIT環境下ではプロジェクトのスケールも、パフォーマンスの最適化も、コストの削減も難しいということはほとんどのエンタープライズ企業が理解しているでしょう。

 誰もが使えるプラットフォームにするために、たとえばユーザーインタフェースを工夫しているところもポイントです。Dataikuではコーディング用インタフェースとビジュアライズされたインタフェース(GUI)の両方を提供しています。データ加工もモデル作成もGUIで行うことができますが、さらに作成したモデルやアルゴリズムの中身を確認することも可能です(透明性の担保)。ビジネスユーザーが作成したモデルを、データサイエンティストがカスタマイズするといったこともできるので、それぞれが得意な分野を担当することが容易です。もちろん、モデルやコードを共有するダッシュボードやノートブック、Webアプリケーションといったコラボレーション環境も充実しています。

 こうした事例の1つとして住友ゴムのケースを紹介しましょう。同社はデータドリブンなカルチャーの醸成に向けてDX人材の育成を急ピッチで進めており、データ活用のための全社分析プラットフォームの一角としてDataikuを採用しています。住友ゴムはもともと、タイヤの製造現場などでBIツールを活用し、データの見える化による情報共有やそれによるアクションの迅速化などを進めてきたのですが、Dataikuを導入することで分析の高度化やより精緻な予測が可能になりました。また、エンドツーエンドなユニバーサルプラットフォームであることが「全社的な分析プラットフォームを構築する」という同社の思想と適合したとも聞いています。

 まずは製造現場から導入を開始し、今後は人材育成の進展にともなって様々な業務領域で使っていくとのことです。ビジネスの専門知をもつ現場の人々が課題解決や業務改善を図るために自らデータを扱う、そのためのプラットフォームに選んでいただいたことを本当にうれしく思っています。

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エージェントAIの活用で“生産性10倍アップ”も目指せる

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五味明子(ゴミ アキコ)

IT系出版社で編集者としてキャリアを積んだのち、2011年からフリーランスライターとして活動中。フィールドワークはオープンソース、クラウドコンピューティング、データアナリティクスなどエンタープライズITが中心で海外カンファレンスの取材が多い。
Twitter(@g3akk)や自身のブログでITニュース...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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