善意のブログパーツ二次配布問題

ブログを賑やかにしてくれるブログパーツを紹介するブログは数多くある物だけど、Yahoo!ブログのソレがちょっと面白い。

一部例外はあるものの、多くのブログパーツ提供元は改変や再配布を禁じている。

改変されちゃうと提供者が意図した通りに表示されなくなっちゃうかもしれないし、再配布をされると提供元のウェブサイトを訪問することなくブログパーツだけが利用されちゃうから、自サイトの訪問者を呼び込むメリットが消滅しちゃうだろう。

そういうことで、ブログパーツ提供サイドが「改変・再配布の禁止」という項目を利用規約に盛り込むのは当然のことだと思う。

そういう規約を設けないサービスもあるだろうけれど、それはそれで「いよッ！　太っ腹ッ！」と言っておけば良い。

最近Yahoo!ブログで話題になっているのがこれ。

Yahoo!ブログではHTMLタグの使用制限が厳しく、装飾の多い記事を書く為には独自のwiki文法を使わなければならないのだけど、多くのブログパーツはscriptタグでの提供となっている。このため、Yahoo!ブログ他、いくつかのブログサービスでは利用できないことが多いけど、Yahoo!ブログの場合、ちょっとした裏技が用意されているのだ。

Yahoo!ブログのヘルプ・Wiki文法についてで説明されている通り、[[item(http://～)]]という記法で動画や音声ファイルを貼り付けることが出来ることになっていて、Yahoo!ブログでブログパーツ紹介記事を書いている人の多くは、これを利用してブログパーツを貼り付け、具体的なwiki記法と共に紹介しているようだ。

この「他人が作成したブログパーツを、Yahoo!ブログで表示可能な文字列に置き換えて、それを紹介する行為」が是か非か、というのが今回の争点。

「自分にとっては無益で構わないから、出来るだけ多くの人にブログパーツを利用してもらいたい」と考える提供者の場合は、こうした独自記法の紹介を喜んでいるのかもしれないけれど……

さて、ここで登場するのが2年前「善意の転載」問題で取り上げさせていただいたＯＹＡＪＩさん。（「善意の転載」問題については「善意の転載問題」　これまでの流れ・『「善意の転載問題」　これまでの流れ』以降の流れとそのリンク先を参考に）

「ブログパーツの改変・再配布禁止」という利用規約に対する彼の解釈が面白いので紹介。

以下、ＯＹＡＪＩさん・阿檀さん・ekkenの間で交わされた会話の要約（敬称は略）。参考になるリンクリストは阿檀さんがお金儲けは不純な動機ですか？ - てんさい よりも もっといいのなかでまとめているので、ここでは省略。

誤解の無いように書いておくと、ＯＹＡＪＩさんには一片の悪意もなく、面白いブログパーツを多くのYahoo!ブログユーザーに知ってもらいたいという善意に基づいている行動のようだ。僕にはそう見えるし、彼自身、彼に向けられた疑問に対しての応答に善意を持ち出している。

しかし転載問題の時も書いたように「善意」の行動が批判の対象にならないとは思えないし（参考：ウェブサイト上の「善意」に関する雑感）、ある集団への善意の提供は、他方にとっては悪意となりうる。そもそも「自分の行動は善意による物だ」と主張する人の「善意」は独善でしかない。

ＯＹＡＪＩさんは言う。「過去にそのブログパーツを提供しているブログのコメントのやり取りで、Yahoo!ブログユーザーが同様の紹介方法について許諾をしている。だから自分の方法は規約的に問題ない」

なるほど、それはずいぶんとポジティブな解釈だけど、しかし利用規約と読み比べると明らかに規約に反しているようだし、その人への許諾は特例なのでは？

「あの人に許諾したんだから、同じ内容の記事を書く自分も許可してください」と求めるのなら話は分かるけど、ＯＹＡＪＩさんは前例から「自分も許可されるはず」と推測しているに過ぎない。何の利害関係もないＡ氏に許諾を出しておきながら、Ｂ氏（この場合ＯＹＡＪＩさん）には許諾しないということは考え難いので、ＯＹＡＪＩさんは予め自身で問い合わせをすれば良かったのだけど、善意で二次配布を行う彼は、ブログパーツ提供者も自分に対しては善意に満ちているとでも思ったのだろうか。

そのブログパーツを多くのYahoo!ブログユーザーの間に広めることは、あるいは提供者のメリットになるかもしれない。

しかしそのパーツを表示する為のタグ（wiki文法）が、提供者のウェブサイトを訪問することなく取得できてしまうのでは、提供者にとってのメリットが極めて少ないと思う。

ＯＹＡＪＩさんが真に善意に基づいて行動を起こすのなら、自分のブログでのwiki文法の配布を行う前に、ブログパーツ提供者に向けて「Yahoo!ブログではこのブログパーツが表示されないので、[[item(http://～)]]というタグを配布ページに加えてもらえないでしょうか」という要請をするのが筋なのではないか。