※この先、本作の重大なネタバレを含む為、閲覧注意!
「星野ルビー」
「美人に育ったね」
「流石 君と僕の子だ」
概要
CV:宮野真守
“星野アイの生前の愛人”にして、同時に“星野アクアと星野ルビーの実の父親”。
更に“アイ殺害事件の黒幕”と思われる人物でもある。
作品開始当初よりアクアが復讐相手として追いかけていたものの、その動向は第六章『プライベート編』より明らかになり始める。
『プライベート編』中盤、ルビーはアイの墓参りの帰りに帽子とサングラスをかけた男性とすれ違うが、その男性は星野家の墓前で上記の「ルビーはアイと自分の子」である旨を呟く。
その後、宮崎でルビーに対して不思議な子どもが語った「アイドルが極秘出産しその担当医が亡くなった日、近くに不審な大学生位の男と中学生位の男の子が居た。大学生は数年後のアイドル殺害犯でもう一人は…」という話から、ゴローの死にも関与していることが明らかになる。
その後は第七章『中堅編』終盤で黒川あかね新人俳優賞授賞式の場にそれぞれ一瞬だけ登場するなど目立った動きはなかったが、第九章『映画編』より本格的にストーリーに関わってくる。
容姿
あかねが一瞬勘違いをしてしまうほど、その姿はアクアと瓜二つ。
更に感情が高ぶるとアイ達親子同様両目に星状のハイライトが入る(ただし色は黒)。
人物像
物腰穏やかで常に笑顔を絶やさず、悩んでいる人間にも優しくかつ的確に助言できる、非常によくできた性格の好青年に見える。
実際あかねも「彼との出会いがアイの破滅的行動を改善させた」と分析している。
が……
「ああ……。価値ある君の命を奪ってしまった僕の命に重みを感じる」
その本性は“自らが価値を見出した存在が滅びゆく様”に悦びを感じる生粋の人格破綻者にして連続猟奇殺人鬼。
第九章『映画編』が始まった直後の原作第109話、彼に酒場(まるちゃんバー)で相談を持ち掛けてきた女優・片寄ゆらを山登り中の事故死に導いた(他に目撃者が居ない状況だったため、ゆらが本当に足を滑らせ致命傷を負ったのか、彼が直接手を下したのかは不明。しかし、後述の通り今際の際に「人殺し」と言っているため後者の可能性が高い)ばかりか、息も絶え絶えの彼女から「人殺し」と罵倒されても全く動じず、上述のセリフを呟きながら満面の笑みで彼女が力尽きていく様を見届けるというサイコパスぶりを読者に見せつけた。
なお、アイの妊娠当時の彼は15歳の中学生でまだ未成年だったが、ララライの現団員でアクア・ルビー兄妹の異母兄とされる姫川大輝は彼が11歳の時の子供、というとんでもない事になっており(もしかして……)、一足先に事実に辿り着いたあかねは「当時の芸能界の暗黒面」に絶句していた。
これに関しては、姫川の(戸籍上の)父である上原清十郎の「女性関係のだらしなさから引き起こされた心中事件」という形で関係者の口が封じられており、表沙汰にはなっていない。
星野アイや片寄ゆらの件も併せ、「自身に疑いが掛からないよう狡猾に立ち回り、時には平気で他人をスケープゴートにして諸共に始末する」苛烈さも描写されている。
片寄ゆらを始末した際も前日に彼女の口からルビーの名が出た時に何やら反応している描写があるように、実の娘のルビーの成長とその動きに注目しているようだが、その真意は不明。
ルビー本人は元々『アイは処女受胎した』と考えている等父親に対する娘としての意識は皆無(それどころか猛烈な殺意すら抱いている)である上、カミキとすれ違った時も全く気付かなかった(彼が帽子とサングラスを身につけて顔が分からなかったからという理由も考えられるが)。
余談
テレビアニメ第2期22話終盤にて登場したが、ネタバレ防止のためか、声優は未発表であり役名も「サングラスの男」と伏せられていた。
その声質から、一部視聴者からは担当声優は宮野真守ではないかと予想されていたが、第2期最終話(24話)にて予想通り宮野と判明した。
実写版においては、第7話ラストと第8話ラスト、ファイナル予告にて二宮和也、黒川想矢(少年期)が演じる事が発表された。
二宮は「ニノ」の愛称で知られてるが、ご存知の通り本作にも「ニノ」という愛称を持つ新野冬子がいるため、余計にややこしくなる事態が発生。実際、作中でのカミキとニノの関係や推しの子でのニノについて検索サイトなどで調べようとすると、実写映画の情報が検索結果として出てきてしまうという事態も発生している。
なおカミキヒカルの演者は撮影現場でも一部のスタッフのみが知るトップシークレットだったらしく、鏑木役の要潤も「台本にも当日の撮影香盤表にも演者が記載されてないから懐疑的に思っていたら、まさかのニノだった。」とコメントしている。
その投稿を見た二宮も「あの時の焦った表情、可愛かったぜぇ」と反応している。
ちなみに、アニメ版演者の宮野と実写版演者の二宮は同い歳で同じ月生まれであり、バラエティ番組でも度々共演して親交を深めている。
二次・三次創作小説
此方では最初から善人として描かれる作品もあり、展開によってはアイと晴れて夫婦になり、子供達とも良好な関係の家族円満に暮らす作品もあり、彼のあり得た未来の一つかも知れない。
関連タグ
黒幕 諸悪の根源 全ての元凶 悪のカリスマ 殺人鬼 サイコパス
ネタバレ
※ここから先は物語中盤以降のネタバレとなっております。
原作未読・アニメ勢の方はブラウザバックを推奨します。
プロフィールと動向
- 本名 神木輝
- 芸能事務所『神木プロダクション』及び『株式会社メディアEYES』の代表取締役
- 年齢31歳
- 7月27日生まれ
- 神奈川県出身
- 身長178cm
- プライベートでもスーツを愛着
- 理学部 大学卒業
- 『劇団ララライ』OB(劇団ララライには10~16歳の6年間所属)、以降の活動は不明。
原作109話での登場以降はしばらく姿を見せることは無かったが、原作132話より徐々にストーリーの本筋に関わりはじめる。
アイを超える存在なんて、娘だとしても絶対に許せないですもんね
でしょ?
カミキヒカルさん
旧B小町のメンバー・ニノと関わりを持っていた事実が判明。
ただし、カミキヒカルさんと「さん」付けで彼を呼称していることから、二人が出会った時期が成年以降と推測されること、(45510のブログの執筆者がニノと仮定した場合)、アイを殺害したのがカミキと認知していない可能性はある上、アイの妊娠についても知らない風であった(体調不良と認識していた)。
一部の読者からは「ニノを通じてアイのスケジュールを把握していたのでは?」と考察されている。
いずれにせよ、カミキはアイの通う病院まで特定できているところから、彼女経由如何によらず彼独自の情報網を獲得していたことは確かである。
また、原作138話では明確に姿を現し…
まさか君がスポンサーになってくれるとはね 予算もギリギリでやっているもんだからありがたいよ
ええ、鏑木さんにはお世話になりましたから
お世話…… ね
分かってるんだろう? この映画がどういうものなのか
この作品は色んな人の名称使用許可を得てる 訴訟されても困るからね
けれど、君には許可を取っていない
カミキヒカル 君をこの作品では少年Aと呼んでいる この意味が分かるかい?
ええ もちろん
(斜体はカミキ 太字は鏑木)
鏑木勝也とも関わりを持っていたという事実が判明。
カミキが「お世話になった」と話しているが、カミキは過去に劇団ララライに所属しており鏑木も同様にOBであるためそこで接点を持ち始めたのでは?と推測されている。
鏑木の真意は不明だが、作中序盤で有馬かなを「便利使いのできる都合の良い役者」と宣っていたり、アクアをはじめとした周囲の関係者に対して不得要領な態度を取ったりと、彼がアクアの純然たる味方ではなかったこともまた事実である。
とはいえ、映画が公開されればすぐに少年Aがカミキヒカルであることは突き止められるということを理解した上で出資するカミキに対し、隠蔽するような圧力をかけているわけでもないあたり、それまで読者が予想していた『自己保身の権化』といったわけではないこともうかがえる(どころか発覚することを望んでいるとすら言える)。
15年の嘘で明かされた過去
作中作『15年の嘘』に満を持して中学2年生のカミキヒカル(演:星野アクア)が登場。
今の、ともすれば不気味なまでのオーラやカリスマ性は存在せず、確かに眉目秀麗なルックスではあるが、その印象は年相応に狼狽える、人畜無害で純朴な少年そのものである。
作中の描写より、彼もまたアイと同じく親の愛を知らずに育ったと考えられる。
作中では、彼の背中を愛撫する姫川愛梨の姿が映るが、この時点での彼の表情はまさしく恐怖のそれであり、その後の描写により彼が誑かして愛梨の子を孕ませたのではなく、むしろ愛梨の側から誑かし、致した事が判明し、カミキはその方面でも傷を負っていた事が判明した。
愛梨もまた、現在のカミキの人格形成に深く関わっていると捉えることが出来る。
…一方でカミキの、人畜無害で純朴な少年という印象は周囲に受け入れられるための嘘であった。
愛梨との関係を気持ち悪いと思いながらもお小遣いをもらい、生きていくための処世術として純朴な少年を演じ続けていた。
またカミキ自身が愛情に飢えていた様子も描かれており、アイと出会い徐々に惹かれていく中で愛梨と決別しようとする。
だが愛梨から「大輝は貴方の子供なのよ?私からは一生逃げられないんだからね?」「どうしようもなく空っぽな貴方が誰かに愛されるなんてないんだから」と告げられ、その言葉を不安を感じたカミキは、アイに「ボクのこと愛してるよね?」と尋ねる。
しかしアイから返ってきたのは、あくまでも彼女らしい無情な答えであった。
「うーん…君には嘘が通じないから素直に言うよ?」
「分かんない」
その後、その足で上原の下へ赴き、愛梨の痴情を暴露。
その結果上原家の一家心中を引き起こす。
またこの時点では詳細不明だが、アイから拒絶され発狂するような様子も描かれている。
…以上、ここまでは「15年の嘘」撮影の様子である。
そして場面は現実へと代わり同話のラスト。
神社で手を合わている間に大粒の雨が降り始め、傘を持っておらず困っている女性へ、黒無地の傘を差し出すカミキ。
「お困りですか?」
「よかったらご一緒にどうです?」
その女性は、かつてアイの墓前ですれ違った実娘――星野ルビーであった。
カミキはルビーの「祈り」の内容を聞き出そうとする。
ルビーの話は、要約すると「理屈抜きに絶対に許せない(アイやゴローの命を奪って、なおものうのうと生きている)相手がいて、その相手を許すか許さないかの選択を委ねようとした」ということ。
カミキはそれを「自分の中で悩むこと」であり「神様に尋ねることではない」とした上で、「神様はそんなことより君の本当の願いを知りたいんじゃないかな」と誘導。
ルビーの本当の願いは「母親を超えるアイドルになる」ということ。その両目には綺羅星が瞬く。
カミキはそれを価値ある命とし、ルビーを殺害しようするが、すんでのところで黒川あかねに阻止される。
このまま「15年の嘘」が公開されれば、「大衆の悪意」による犯人探しが行われる。
カミキは腹を括り、年貢を納める前に、とある事を遂行しようとする。
どこかの会議室でとある男性にインタビューをするカミキ。
「どうしてそこまで自分を押し殺すんだい?」
その男性は、自分の実の息子――星野アクアだった。
「演じることは僕にとっての復讐だから」
「カミキヒカル」
「僕たちから母親を奪ったアンタへの」
なお、この場面でアクアのセリフからカミキヒカルの漢字名「神木輝」が判明するが、「輝」の名は息子に当たる「姫川大輝」にも含まれており、ここでも姫川愛梨のカミキへの執着ぶりが明らかになった(さらに「木」と「大」も似た字であるといえる)。
また、作中序盤に描かれていた「15年の嘘」に関わる人々へのインタビューはカミキが行っていたことも併せて明らかにされた。
カミキはアクアに対し、「アイは自分を深く愛しておらず、自分が一方的に依存していた」「本当の自分はもっと愛情に飢えていた」、そして自分の罪を認め社会的に抹殺されるつもりであると告げた。
しかし部屋を出る直前、アクアにこう言われた。
「アイのついた15年の嘘がなんなのか本当に分からないのか?」
「この作品はフィクションなんかじゃない」
カミキの回想によれば、カミキは容姿にしか価値を見出されない愛情を受け続けた結果、本当の愛とはなんなのかが分からなくなってしまっていた。
そんな中、出会ったアイは自分のことを本当の意味で受け入れてくれた。
「アイには僕しかいない、僕にはアイしかいない…二人で支え合って生きていたい」そう思うようになっていった。
しかし…
「だから、うん」
「私達、もう会わない方が良いかなって。」
アイにそう告げられた瞬間、彼の世界が壊れる音がした。
「どうして…?」とヒカルがアイに尋ねると、アイは「妊娠した」とカミキに告げる。
カミキは「だったら結婚しよう」とアイに縋ったが、アイは「それは無理。一生一緒には私には荷が重いかな」「大輝君って君と愛梨さんの子だよね?私には背負えない」
「もうおしまい、私は君を愛せない」
と言い残し、アイはカミキの元から去って行った。
カミキは、アイを殺害した実行犯・菅野良介(リョースケ)にアイの現在の住所を教えたのは自分だとアクアに告白した。
ただし「ちょっと怖い目に遭ってもらって、あの時の僕の絶望を少しでも分かってほしかった。まさか彼がアイを殺すなんて思っていなかった」と言っており、アイの死はヒカルにとっても想定外だった模様(※1)。
「アイは僕の過去の行いを知っていたから僕の元から去った。それは当たり前だ。僕達が彼女に勝手な幻想を押し付けていただけで、彼女はどこにでもいる普通の人間だ。アイは僕を愛していなかった。今までと同じように」と、ヒカルは諦念を感じさせる言葉を呟いた。だが、アクアは「それなら、どうしてアイは僕達を産んだんだ?アイが僕とルビーを産んだその意味を、アンタはちゃんと考えたのか?」とヒカルに問いかけた。
アクアは「『15年の嘘』の初号試写は未完成だ。エンドロールの最後に『この映像』を入れるかどうか協議している」と、その映像をヒカルに見せた。
それは、アイがアクアに当てたビデオメッセージだった。
アイは「ヒカルは芸能界の闇に侵食されて、もう限界だった。私が妊娠した事で『これ以上はもうヒカルが耐えられない』と思った。だから、私達がいなくなればヒカルはきっと大丈夫だと思った。嘘は愛だと思う事にした」と、あの時ヒカルを突き放した本当の理由を話した。
「本当は産むのが怖かった。でも、産みたかった。愛がよく分からない私が初めて心から『愛したい』と思った人だから。彼と君達と一緒に未来を生きたかった」「お願いがあるの。もし、あの人が今も迷っているのなら、彼を救ってあげてほしいんだ。私と、君達で」
アイは確かにヒカルを愛していたのだった(※2)。
「この映画はあの時突き放してしまったアンタへの、アイからの時を超えたラブレターだ」
「そして、アイを理解しなかったアンタへの僕達からの復讐だ」
アイの本当の想いをヒカルに伝える事で、ヒカルに自らの所為で喪われてしまったアイの命の重さを思い知らせる。喪わせてしまった事を後悔させる。それこそがアクアの復讐だったのだ。
※1:要するにカミキは『アイを殺してくれ』と依頼した訳でなく、殺害はリョースケによる独断だった。しかし、住所を知られる恐怖と失恋による絶望が等号であるとは言えず、逆恨みもいいところである。さらにカミキはツクヨミが示唆したように雨宮吾郎の死体遺棄や隠蔽への関与、また片寄ゆらの殺害容疑や、ルビーも殺害しようとしており、一概に彼の言葉すべてが真実であるとは言えない。
※2:アイもまた一方的に別れを告げた挙句、数年後に「ヨリを戻す気はないが、子供に会ってほしい」「説明すれば、双子も自分たちの関係を理解してくれる」という自分本位なスタンスを取っており、カミキの立場をまるで鑑みていなかった(これらはカミキが闇落ちする要因となり、ひいてはアイ自身の死すらも招いている)。相対的に見れば両者いずれも大概である。
真実
「アイの為に、今の僕にできる事をしてくる」
アイの本当の想いを知ったカミキは、そう言って項垂れながら部屋を出ていった。ルビーはまだカミキに対して怒りが収まらず引き留めようとするが、アクアがルビーを制した。ヒカルを敢えて『許す』事によって、アクアとルビーの復讐は終わった。
しかし、まだ全てが終わったわけではない。「カミキが全ての元凶」では辻褄が合わない所が多すぎる。そう、アイの死に関わった人物は、もう一人いる。
「お星さまの引き立て役Bです」
「誰よりも強い君以外は認めない」
元B小町のニノこと、新野冬子である。
カミキはニノに対して「警察に自首する」旨を電話で伝えており、これで彼も苦しみから解放されきちんと罪を償うかと思われたが…
「なんの事?」
実際にはカミキは自分が犯した所業を全く反省しておらず、上記の電話によりニノがルビーに危害を加えるよう意図的に煽動していた。
この態度に対し、アクアは完全に堪忍袋の緒が切れ、カミキを「自分の為だけに嘘を重ねた醜悪な嘘つきだ」となじりながら、ケリをつけるべく「完全な復讐」をする決意を固める。
- 要するに155話でのやり取りは、カミキを単独犯と仮定すると辻褄が合わない部分が出てくるということを表現したかった模様。「色々と辻褄が合わない」のは、ニノに対してのミスリードというより、事の発端がカミキの家庭環境や芸能界の闇など、複雑要因が絡んでいるためと思われる。
「何もしてないじゃないか」
カミキは、他人を操ることで自身は一切手を汚さずに人を殺すという狡猾な人間であった。
アクアとカミキのやりとりやツクヨミの独白からニノとリョースケがアイを憎むように仕向けたのはカミキ自身だったこと、ゴローの殺害現場にいたのはニノとリョースケで、カミキは居合わせていなかったこと、星野アイを超え得る者を殺すことで星野アイの重みが増すという妄執に囚われていたことが明かされた。
カミキへナイフを向けるアクア。
彼の覚悟を嘲笑うかのように「妹は【人殺しの妹】としての業を背負わされて人生を壊される」「メディアと世間は真実を求めない」と更に煽る。
その発言にアクアは自分の将来を想像しながらも、それでも「夢に向かって突き進む妹であるルビー(=さりな)の邪魔をさせない」「そのためにお前をここで止める」とナイフを突きつけた。
この行動は予想外だったのか、自身が危害を加えられる覚悟は無かったのか、動揺するカミキ。その直後、アクアは持っていたナイフで自身の腹部を刺してしまう。
そう、アクアの狙いは「映画の内容に逆上したカミキが脚本を書いたアクアを刺した」という筋書きで自身を犠牲にしてカミキを犯罪者として仕立て上げて社会的に抹殺、さらに刺し違える覚悟で息の根を止めることだった。
「メディアと世間は真実を求めない」、自身の言葉をそのまま返され動揺したままのカミキだが、そんなこともお構い無しにアクアはカミキを巻き込んで崖から落下していくのだった…。
海に沈みゆく中、生への執着やアイへの歪んだ想いが頭の中を駆け巡っていたが、それを許さないアクアが渾身の力で首を絞め、それに応えるかのようにゴローのような影を筆頭に、無数の黒い影と手が彼を海の底へと引きずり込んでいく…。
僕はね、アイと居る時だけ生きてる気がした
だけど、年を取る度に、希薄になっていく君の存在を
感じていたかった、それが、罪の重さでも
永遠に…
……残念だよ。ルビーを殺せてたら、もっと君を感じれたのに…
彼の死後、ニノが素直に警察の取り調べに応じたことで徐々に彼の余罪が明らかになった。
アクアやあかねも把握していないがニノやリョースケのように、自身のカリスマ性を以て思想を伝播、狂気を加速させられ手を汚した者が他に何人もおり、彼らの犠牲となった者も少なくなく、それらの事件が解明されることとなった。
しかし、どれも上記のやり方で直接的な殺害依頼の言葉を使わず実行犯の殺意を煽るだけだったため、殺人教唆の罪で被疑者死亡のまま立件できるほどの証拠は揃えられなかった。
とはいえ、アクアの目論見通り「カミキが逆恨みで無理心中した」と報道された以上、死んでも世間からのバッシングを受けるのは明白である。
その意味でアクアの決死の行動と犠牲は、結果として無駄では無かった事になる(ルビーも人殺しの妹でも数多くの殺人に関わった疑惑の人物の娘でもなく、そんな男に双子の兄を殺された悲劇のヒロインとなった)。
もしかしたらゴローと共にカミキを引きずりこんでいた無数の黒い影と手の正体はカミキの狂気に踊らされた者によって命を奪われた犠牲者の無念の思いかもしれない。
余談2
第二章序盤(原作十二話、アニメ・実写ドラマ二話)でアクアがスカウトに変装した際、『神崎光』という彼によく似た偽名を使っている。予め伏線として張られていたのか否かは不明だが、アニメ放送後は「業を感じる」といった意見も見られた。
あかねのプロファイルによれば「プライベートでもスーツの愛着している」とのことだが、これはサイコパスが社会的に高位な人物らしい服を好む傾向に当てはまっている。また、彼はプロダクションの社長なのだが社長という職業はサイコパスが就きやすい職業第一位だったりする。
アクアと対峙したカミキの語った内容は、宮崎でツクヨミがルビーに語った内容と矛盾するが、ツクヨミは終始語尾に「らしい」と付け、伝聞かのように言っていたため、自分自身が見たかどうかについては明かしていない。これはカミキという真犯人へと誘導するための嘘や情報統制とも考えられるが、一方でカミキの言葉もまた真実とは限らない。カミキの言葉には嘘が多分に含まれているうえ、160話でアクアがカミキに言い放った「それも嘘なんだろ」がゴロー殺害にもかかっており、実際には現場に居たという可能性はある。
- 実写映画版では「大学生くらいの男の子と綺麗な顔立ちの男の子」という目撃証言へ変更。殺害現場には居合わせていなかったことが判明したものの、川村の目撃情報からして何度か周辺を訪れていた可能性が高い。
- カミキがゴローを殺害した理由は一切不明なままだが、一介の産科医を殺すためにわざわざ宮崎に出向いたとも考え難く、最初からアイもしくはアイの子どもが標的であり、その道中で(恐らくはリョースケの独断で)雨宮吾郎に声を掛けてしまったと考えられる。
片寄ゆら殺害も結局、星野アイを超え得る者を殺すことで星野アイの重みが増すという妄執が動機であり、自らの思想・欲を満たすためだけの独りよがりな行為であった。ルビー殺害未遂もおそらくこの妄執によるものが大きく、たとえ自身とアイの娘であろうとアイを超えることは彼にとっては阻止しなければならないことだったと言える。
ただしそのアイもカミキがリョースケの殺意を煽ったために亡くなっており、片寄ゆらが亡くなった際の台詞も踏まえると、価値ある命を脅かす、あるいは奪うこと自体に快感を覚えていた節がある。
- 実写映画版ではその点がより強調されており、わざわざ『15年の嘘』のワールドプレミアで発煙筒による騒動を引き起こしてその混乱に乗じてルビーを誘拐しアクアをおびき寄せ、彼の目の前で最愛の妹を殺害することで絶望のどん底に落ちたアクアの顔を見て愉悦に浸るという原作以上に残忍な計画を実行しようとしていた。
なお、アニメ2期最終話では原作の時系列よりも早く片寄ゆらが殺害される場面が描写、崖の上にはニノらしき人物が描かれ直接手をかけたのは彼女であることが仄めかされている。
カミキがアイを殺した理由は結局最後まで明確には描かれなかったが、あるいはカミキの語った「リョースケが殺すとは思っていなかった」が真実であれば、両親から受けたネグレクトを発端に事態がどんどん悪い方へと転がっていき、アイの死を以て遂には壊れてしまったと思われる。
これはツクヨミの「かつての気高さは既に無く、人の命を奪わせる事で自らの欲を満たす壊れた魂」という独白からも、カミキが普通の精神状態ではなかったことがうかがえる。
劇中劇『15年の嘘』によればカミキは過去にアイから「私と同じ人を嘘つきの目、人を騙すのが得意な目」だと言われており、アクアに対し「自分で同じ嘘つきの目で何人もの人を騙し扇動してきた」と指摘する際には一瞬アイを連想ながら、アイから言われた台詞をほぼそのままアクアに言い放っている。しかし星の眼については過去に金田一が「役者にとって最高の素質」だとも語っており、結局は使い方次第で善にも悪にもなりうるものであった。
真の関連タグ
- ネグレクト、毒親の被害者:作中作『15年の嘘』でのカミキと姫川愛梨の言動やランドセルと共に屋外に放置されている描写からほぼ確定だと思われる。
- 鳴嶋メルト:モノローグで「中学に入学したばかりの時に3年生の女子から喰われた」と回想、明言しており、「周囲から“顔の良さ”しか見てもらえなかった」「10代前半の頃に歳上の女性に手を出されたことがある」という部分でカミキの境遇と重なる部分がある(アニメではよりその時の精神的なダメージが強調されていた)。そのため、見方次第ではカミキはアクアに出会わなかった場合のメルトと見ることもできる。
- 哀しき悪役:生い立ちや境遇を踏まえるとこのように解釈できる。
- メフィストフェレス:ゲーテの戯曲「ファウスト」に登場する悪魔。アニメ版のEDのタイトルの元ネタでもある。この悪魔の特技は巧みな話術で相手を意のままに操ること。奇しくもカミキが得意としていることと同じなため、彼の元ネタとなった可能性もある。
- ファタール:GEMNの楽曲であり、TVアニメ第2期OP。歌詞はカミキのアイに向けた歪んだ想いを体現しているとも言える。