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ろくごまるにの原稿進捗状況を淡々と記すブログ
別ドメインで南極研を始めました
新公式HP 南極研β版を始めました。
特に大始末記を消したりはしませんが、今後更新は向こうがメインになります。
二十周年記念書き下ろしはこっちの方にも引き続き掲載しますので、ゆるゆると移行していただければ幸いです。

のつもりでしたが、サーバーの維持費が払えなくて辞めました、かけそばいっぱいですがよろしいでしょうか?
嘘です。小銭はあります。PS5を買えるぐらいのお金はあります。でも買えない。お金じゃ買えない物ってあるんですねえ。いや嘘じゃない。放置が過ぎたんでnoteの方に集約する方向で! 何をやるにしろ、Twitterでは何らかの告知をしますのでよろしく。
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ろくごまるに、に小説を書かせてみたいという出版社の方、連絡をお待ちしております。
コメントにでも連絡先をいただければ、こちらから折り返し連絡いたします。

 2009年5月10日 ろくごまるに
ZV+4HCL 1
ZV+4HCL

『MZ80 ZRCL4刀、よりにもよってDA3LLと対峙し、回収3F2に助けを求む』
             ろくごまるに

 一 『余命二十四抄(しょう:約二十分)の爺様』
「うーむ困ったのう、3F2の回収者がこっちにやって来るようじゃのう。
 烏兎(うと)よ。お前を回収されたら人間が滅んでしまうかもなぁ」
 朝焼けが消えかかろうとする深い山の中、猿を思わせる赤ら顔の老人は、うめいた。
 老人は兎などの小さな毛皮を縫い合わせた暖かそうな服を着ている。その姿は熟練の猟師を思わせるが、弓や鉈などの武器は身に帯びていない。

 山の中に生える一際高い巨木の先端に近い枝の上に立ち、老人は遙か遠くを見つめている。その瞳に映るのは深い深い森だけのはずだった。
「へー、そうなんですか老師。
 こんな冗談みたいな山奥で毎日毎日飽きもせずに、あんな面倒な作業をしてたのは、人間が根絶やしになるのを防ぐ為でしたか。結構重要な作業をしてたんですね」
 呑気な声をあげたのは、老人の横に浮かぶ女だった。
 女の名は烏兎。
 どこか人間離れした整った顔立ちに、猫を思わせるつり上がった目を持つ若い女に見える。
 老人の隣でプカプカ浮いているだけでも異様だったが、さらに烏兎は半透明だった。
 烏兎の体を透かし青い空や、遠くの山並み、空を飛ぶ鳥の姿が見える。
 一陣の風が木の葉を巻き上げ、木の葉が彼女の体を通り抜けた。
 烏兎は実体のない半透明の姿で老人の横に浮かんでいる。少し短めの髪がそよいでいたが、その髪を動かすのが、先刻の風かどうかさえも定かではない。

 老人から人類の存亡と聞かされても烏兎には人ごとであった。
 そう。人ごとなのである。
 彼女は人ではない。彼女の正体は3F2、烏兎珠(うとしゅ)であった。
 
 3F2。
 仙人が作りし神秘の道具を3F2と呼ぶ。
 
 烏兎は言った。
「ところで老師。人間が消えてなくなると何か困るんでしょうか?」
「えー、何じゃい、お前は『この地に争いが絶えないのは人間のせいだ! 人間がいなければ平和になるのに! 人間なんか死んじゃえ死んじゃえ!』とか言っちゃう種類の人なわけ?」
 幻とはいえ人型をとれる3F2である。言っちゃう種類の『人』といわれたぐらいで、いちいち、自分は人ではなくて3F2であるという訂正を求めたりはしない。この手の軽い混同は珍しくもない。
「いえいえ、そういう面倒くさい性格はしておりません。ただの軽い好奇心で」
「お前だって人間がいないと困るじゃろ。使用者があっての3F2だろうに」
 いかに超越的な能力を持つ3F2とはいえ、本質は道具である。
 道具であるが故に、誰かに使われたいという無意識の欲求、道具の業を3F2は多かれ少なかれ持つ。
 老人の指摘はもっともなものであった。だが烏兎の返事の歯切れは悪い。
「どうも私の能力は人間との相性がよろしくないものでして」
 この返事は老人には意外そうだった。
「相性が悪い? そんなことないじゃろ、人にとって夢のような能力ではないか」
 言わんとすることは判らないでもない。
「老師は人間のことを判ってません。並の人間なら耐えられません、自分の余命が二十四抄(註:約二十分。限界までに水を貯めた大谷樽の底に、十源硬貨大の穴を空け、水が全て流れ落ちるまでの時間が一抄(約五十秒)誤差があるので正確な記録には使われていない)と知りながら平然としてる老師のような達観した人間なんて普通はいませんよ」
「そんなもんかのう」
「はい。夢のような贈り物であるから、それを奪われる恐怖に耐えられません。まあ、老師のような使い方に気がつかず、本来の使い方で数年使用とかなら大丈夫でしょうが。
 ……ところで先ほどの質問の答えは何でしょう? 老師はどうして人間を助けようとされているのですか?」
 老人はしばし考え答えた。
「ふむ。言われてみれば人間を助ける義理なんてこれっぽっちもないが、心情的にちょっとね。くだらん感傷といえばそれまでじゃが。まあ良い。作業に戻るぞ」

 烏兎は老人の視線の先にある物を見ようとしていた。
「作業に戻るって、2H2Uたちがやってくるんでしょ? どこに居るんです? 目はいい方だと思うんですが、2H2Uたちどころか人間の姿も見えません」
「まだ地平線の向こう側だから視認は出来んよ。ここに来るのに速くて四日ぐらいかかるじゃろう。気長に待てばよい」
 余命二十四抄の老人はそう言って、下の枝に飛び移った。老人の動きに合わせ、烏兎も降下する。

「ついでに質問です、老師。人間が根絶やしになるとは具体的にどうなるんですか? 疫病の類いでしょうか」
 ガサガサと枝を揺らせながら、老人は下の枝へと次々に飛び移っていく。地面までにはまだまだ距離がある。
「言い方が悪かったな。人間だけが滅ぶってわけじゃない。この世界に厄介な破壊が起きるという意味じゃな」
「いったい何が起きるというのです?」
「具体的にどうなるかは判らん。が、内容的にはUF6による惨界と同質の破壊じゃよ。……あれよりは小規模だが、阻止しようとする者も来なければ、始末を付ける役者もなし」
 烏兎が口を挟む。
「老師、『UF6による惨界』って何ですか? あの腐れ仙人のUF6が人間界に3F2をばらまいた例の事件でしょうか?」
「違う違う。あれは回収者、2H2Uとかいう元仙人の不始末じゃろう。UF6による惨界とは、
……えーと説明が面倒じゃのう」
「あぁ、だったら説明はいいですよ」
 ここら辺が人間と違い、3F2の扱いやすさだと老人は考えた。好奇心に心迷わされ道を踏み外すことがない。さっきの人間を助ける理由を知りたがったのも、雑談の域を出ているのではない。
 この扉を決して開けてはならぬ! と言われれば、はいそうですかでしまいだ。
 道具として自分の使命を果たすことが第一なのである。
 UF6による惨界に隠すべきことはないが、とかく説明がややこしい。理解されるか怪しくて、理解されても信じてもらえるかも定かではない。
「面倒といえば、こうやって枝をつたって降りるのも手間じゃのう。よし、ちょっともったいないが」
 そう言い、老人は木の幹を蹴った。途端、巨木全体が大きく震える。
 反動で老人の体は巨木から大きく離れ、宙を舞う。
 支える物のなくなった老人の体は、風を斬りながら烏兎と共に落下した。

 そして爆発音にも似た壮大な音をたてて老人は地面に激突し、土煙やら木の葉やらが周囲に散乱する。
 激突の衝撃で出来た大きな穴から老人が顔を出した時も、驚いた鳥たちの羽ばたきざわめきは続いていた。
 穴から這い上がり、老人は自分の隣でプカプカ浮かんでいる烏兎に言った。
「どうじゃ? 五十八日ぐらいとみたが?」
 烏兎は笑う。
「ご冗談でしょ、七十六日ですよ」
「いまだに、これの感覚がよく判らんのう」
南極研2016/12/24
南極研。すなわち南河内極限執筆研究所の略であります。
とまあ、変な名前ですがただの新着情報および説明コーナーであります。
いやね、解説なしにおっぱじめると『やつめとうとうくるいやがったか!』的な代物を公開しちゃうので一言入れときたいのですよ。

はい、お待たせいたしました、二十周年記念書き下ろし短編を公開いたします。注意点は二つ。
1 一気に公開じゃなく、不定期連載風に公開します。たぶん二十一周年までには終わるだろうぐらいの感覚で。
2 諸般の事情で、非常に読みにくくなっております。エディタの置換機能必須レベル。まあ、ぶっちゃけると下手に固有名詞を使って訴えられるのが嫌なので、無意味な英数字に置き換えてあります。エメラルダー的な変換よりは無機質な変換の方が良いと思いまして。

果たしてこのような無様な形にしてまで公開する意味があるのかと、かなり悩みましたが、悩んでいるうちに「アハハハ、ナァンダソウカ」と面白くなってきたりして(`・ω・´)
電子書籍本日配信
 はい、壮大なる紆余曲折を華麗なドリフトテクニックで切り抜け、封仙娘娘追宝録および食前絶後!! の電子書籍版が本日より配信になっております。(LapTime 一年と五ヶ月と二十日。下り最速である)

で、これってどこで配信してるかの連絡は出版社から一切ないんで各自頑張って探そう! (´・ω・`)
主要なとこはたぶん全部押さえてると思われるのでお使いの媒体で探していただけると幸いです。

紙の本だと出版社から送ってくるんだけど、電子書籍は自腹で買わないといかんようね。