滋賀県・嘉田知事が幸福の科学学園を認可＝住民「知事と私学審に説明求める」

認可された関西校の校舎

滋賀県大津市仰木の里学区に今春開講予定の「幸福の科学学園関西校」について滋賀県は2月12日、嘉田由紀子知事が学校設置を認可しました。学園をめぐっては、学校法人が土地を購入したことが発覚した2010年10月以降、周辺住民が反対運動を展開。学区内の世帯数の76%が反対署名を行う一方で、幸福の科学の教団内イベントで学園の副理事長が住民を「最強最大の敵」と発言するなど、完全対立していました。今回の認可について住民側は、嘉田知事や県の私学審議会に対して説明を求めていくとしています。

■住民無視の認可

校舎

幸福の科学学園は2010年10月、仰木の里学区内の土地約7万9000平方メートルを20億4090万円で購入。売主のUR都市機構も、当時の仰木の里自治連合会会長も、その事実を近隣住民に伝えておらず、地元新聞による報道で発覚しました。

そのため地元では当初から、学園開校の計画が住民を無視して進められていると受け止める住民が多く、URや市、県、学園に説明を求める動きが広まる一方、学園建設反対の署名活動が行われました。

校舎

やがて学園建設予定地が脆弱な「谷埋め盛土（たにうめ・もりど）」であることが専門家の調査によって判明。安全性の確認を求める住民側が市建築審査会に建築確認取消を申立てましたが、建築審査会は半年もかけて審査したにもかかわらず、住民が示した主張や根拠をほとんど検証せずに市側の判断などを根拠に住民の申し立てを却下。住民側は大津地裁に行政訴訟を起こし、現在も係争中です。

校舎

学園側は、住民への説明会において住民側から出された質問への回答を拒否していました。また複数自治会での合同説明会の開催を拒否して、一部自治会に対してのみ個別の説明を行い、その後は学園側が一方的に設定した日時での「対話会」を繰り返し開催して住民たちから無視され続けてきました。

校舎

さらに本紙既報の通り2011年6月、幸福の科学の信者向けイベント「教育事業成功大会」の中で、学園の林雅敏副理事長が反対運動をする住民（と言っても、学区内世帯数の76%が反対しているのですが）を「左翼」「唯物論」「最強最大の敵」などと罵って、住民に対する信者の敵意を煽っていたことが発覚。もはや学園の地域連携が絶望的な状況に陥りました。

寄宿舎

しかし学園側は、市の建築審査会の決定を根拠に「安全性は確認された」として施設建設を完了し、認可を得ないまま入学試験を実施（中学72人、高校101人が合格）。高校入試直後の2月6日に開催された私学審議会が、認可が妥当とする答申をしたことを受けて、嘉田由紀子知事が認可しました。

寄宿舎

結局、最後まで行政ぐるみで住民の主張を無視した形です。

■住民側「知事と私学審に説明求める」

今回の認可の発表と同時に、嘉田知事は以下のコメントを発表しました。

【2013年2月12日 嘉田由紀子・滋賀県知事コメント】
本日、幸福の科学学園関西中学校および高等学校について、設置を認可しました。
これらの学校の設置については、さまざまなご意見があったところですが、私立学校審議会において、厳正かつ慎重に審議いただいた結果を尊重し、国の設置基準および県の審査基準に定める要件を満たしていることから、認可の判断をしたところです。
幸福の科学学園においては、今後、教育活動その他の学校運営の状況に関する情報を積極的に地域に提供していただき、連携を推進していただきたいと考えています。

寄宿舎

しかし学園は、そのままでは地域連携など不可能なほどに近隣との関係を悪化させてしまっています。嘉田知事は学園に地域連携を求めるコメントを発していながら、その地域連携ができていない学園を認可するという、ちょっとよくわからない状態になっています。

当の学園も同日、以下のコメントを発表しました。

【2013年2月12日 学校法人幸福の科学学園コメント】
琵琶湖畔の風光明媚な場所で、信仰心を持ち企業家精神に溢れた生徒育て、地域の皆様の誇りとなるような学校を目指してまいりますので、何卒宜くお願申上げます。

寄宿舎

住民の76%に反対された状態を放置したまま開校して「地域の皆様の誇り」になるのは、なかなか難しそうです。

これに対して、仰木の里学区自治連合会・野田幸夫会長は同日、以下のコメントを発表しました。

【2013年2月12日 仰木の里学区自治連合会・野田幸夫会長コメント】
仰木の里学区自治連合会は、昨年6月に幸福の科学学園、行政、ＵＲ、建設会社等今回の問題に関連する組織や団体や審議会等に対し、仰木の里学区に居住する住民の意向に沿い、

1.学校法人という組織の公共性から、学園建設に関し、充分に議論し、住民に理解され、住民との連携が達成されること。

2.防災という観点から、地盤について、専門家による検証が充分なされ、地域住民、及び学園関係者の安全性の確保がなされること。

これらが満たされるまで、仰木の里学区自治連合会は「幸福の科学学園の仰木の里学区での設置及び認可は容認できない」ことを表明する。

と決議いたしました。

地盤については尊い生命に関わることですので、今後も引き続き確認していきたいと思います。

国からの依頼で大津市が大規模盛土を調査しています。その結果、大津市で125箇所。仰木の里に10箇所。そのうち幸福の科学学園に3箇所が認められましたが、これから調査が行われようとしているところです。

東日本大震災、阪神大震災において大規模盛土地帯が軒並み地すべりを起こしており、この学園所有の大規模盛土の土地についても、未だに安全が確認されておりません。

以下が法令ですが、嘉田知事、私学審議会において、これらの条件を満たしているのか検討されたのか疑問に感じております。

＜中学校設置基準第７条、高校第１２条＞
学校施設・設備は、「安全上及び管理上適切なものでなければならない。」

＜滋賀県私立中学校(高校)の設置認可等に関する審査基準＞
学校の位置は、「教育上および安全上適切な環境にあること。崖崩れ等自然災害に対して安全であること。」

＜中学校施設整備指針(抜粋)　文科省＞
「危険な高低差、深い池などが無い安全な地形であること」、「地滑り、がけ崩れ、陥没、泥流等の自然災害に対して安全であること」、「建物、屋外運動施設等を安全に設定することができる地質及び地盤であること」が重要である。

尊い生命に関わる問題ですので、嘉田知事並びに私学審議会に対し、学園設置認可の住民に対する説明会開催を求めていきたいと思っています。

学園側の住民への説明責任が果たされていないため、住民が学園に対して不信感、不安をいだいているため「学園設置認可反対のぼり」が900本以上立てられています。これらについては、学園の責任において住民へ理解していただくための説明会を求めていきます。

なお今回の認可の経緯について2月12日付けMSN産経ニュースは、＜住民の一部が「教育内容が不明」「建設予定地の地盤が弱い」などと反発＞と報じています。

しかし2010年11月から翌年8月にかけて地元の住民団体「仰木の里まちづくり連合協議会」が行った学園建設反対の署名活動では、仰木の里学区内では全世帯数の76%にあたる8,007筆の署名（大津市内、滋賀県内の住民のものを加えると全30,999筆）が集まっており、嘉田知事に提出されています。また開校に反対する自治連合会の決議は、加盟する17自治会（住民1万2000人が加入）で決定されたものです。

幸福の科学側は反対運動を「住民の一部」によるものとしていますが、これだけの数の住民と自治会が反対しているものを、いちおう報道媒体である産経ニュースまでが教団と同様の報じ方をするとは、理解に苦しみます。

■地元が警戒する教団の“前科”

問題の「聖地・川島特別支部」

幸福の科学の施設をめぐるトラブルは、教祖・大川隆法総裁の出生地である徳島県川島町でも起こっています。川島町では、教団が住民に対して「休憩所を作る」と説明しておきながら、2003年に「聖地・川島特別支部」という完全な宗教施設を建設。これに反発する看板を設置していた住民を教団職員が恫喝したり、住民宅の敷地に教団職員が勝手に入って看板を破壊するなどしました。

そんなことをしておきながら、川島町に転入してきた教団の支部長は自治会への加入を要求。自治会が拒否すると、個別の住民を訪問して切り崩し、結果、自治会は解散を余儀なくされました。そのため現在も支部と周辺住民との対立は解消されていません（本紙：幸福の科学の“住民対策実績”と大津市の学園問題）。

加えて教団は現在、同じ川島町内に「聖地・エル・カンターレ生誕館」や職員寮の建設のため新たに土地を入手。再び緊張が高まりつつあります。

仰木の里の住民の間には、川島町と同様の問題が仰木の里でも発生するのではないか、との危惧もあります。実際、2011年に教団は学園予定地のすぐそばに新たな土地を購入し、教団の新支部を開設しました。また学園の寮に入居する職員とおぼしき人物について、本人ではなく学園関係者が地元自治会への加入を求めてきています。教団幹部が「仰木の里を宗教都市にする」と発言したとの情報もあることから、住民側の警戒感はさらに高まっています。

仰木の里には、こうしたのぼりが900本以上も

現在、学園の周辺に計900本が立ち並ぶ建設反対ののぼり等については、今後も設置が継続されるのかどうか未定です。しかし設置が継続されれば、川島町のケースから考えて、学園や教団が強固に撤去を要求してくることも予想されます。

嘉田知事が学園を認可したことで、今年4月の開校は確実となりました。しかし今後、開校の是非を巡る対立とは別の新たな問題が発生することが懸念されます。

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