「Googleアカウントを削除してもマイマップやカレンダーを削除できなくなる」のは規約上はOKだった

高木先生が、Googleアカウントを削除するとマイマップやカレンダーを削除できなくなる、と警告している。
自分の手を離れても、宙ぶらりんのデータだけが残り続ける。恐ろしい話だ。
んで、ブクマで

Bookmarker Bookmarker , , アカウントを削除する前に各サービスのデータを削除する必要があるのか。マップ・カレンダーは公開前提のサービスって事にしても嫌なシステムだな。;Google利用規約の11.1と13.5が関係? 2008/11/30

というコメントを見かけたので、規約に初めて目を通してみた。もうアカウント持ってるから、今さら読む、ってのも変な話ということになるんだけど。

そしたら、規約上は削除されなくてもなんの問題もない*1と読める規約だった。一度マイマップやカレンダーを作成したら、消せなくても文句は言えなそうだった。


規約に同意したが最後、表示する権利はGoogleへ

アカウントを作成している以上、
Google 利用規約には同意したはずである。

マイマップやカレンダーを作成・編集した時点で、規約に基づき「再生、翻案、修正、翻訳、出版、公衆実演、公衆展示、および配布するための無期限、取消不可、全世界で適用され、ロイヤルティ無料の、かつ非独占的なライセンス」がGoogleに渡っている。

11.1 ユーザーは、本サービス上や本サービスを通じて提出、掲示または表示する本コンテンツについて既に保有する著作権およびその他の権利を保持します。本コンテンツを提出、掲示または表示することにより、ユーザーが本サービス上や本サービスを通じて提出、掲示または表示する本コンテンツを、再生、翻案、修正、翻訳、出版、公衆実演、公衆展示、および配布するための無期限、取消不可、全世界で適用され、ロイヤルティ無料の、かつ非独占的なライセンスを Google に提供していただきます。このライセンスは、Google が本サービスを表示、配布およびプロモーションすることをできるようにすることを唯一の目的としており、本サービスの追加条項に定義する一部の本サービスについては撤回される場合があります。

(強調表示は私がつけたもの)

ここでいう「本サービス」は1.1で定義されていて*2、マイマップやカレンダーも当てはまる。

マイマップやカレンダーを作成・編集しているときにデータを入力してやる作業というのは、Googleのサービスを通じて行っている。
だから、作成したマイマップは「ユーザーが本サービス上や本サービスを通じて提出、掲示または表示する本コンテンツ」に含まれる。そして、「再生、翻案、修正、翻訳、出版、公衆実演、公衆展示、および配布するための無期限、取消不可、全世界で適用され、ロイヤルティ無料の、かつ非独占的なライセンス」はGoogleに渡してしまっている。
Googleは公衆展示、配布する権利を持っている。この権利で安心して世界中にマイマップをばら撒ける。

アカウント閉鎖だけでは、規約は終了しない

この規約は、Googleアカウントを閉鎖しただけでは絶賛継続中である。

13. Google との関係の終了

13.1 本規約は、ユーザーまたは Google のいずれかが以下に定める方法によりその関係を終了させるまで、適用されます。

13.2 Google との法的な契約を終了させたい場合、ユーザーは、(a)いつでも Googleに通知し、かつ(b)Google がオプションを提供している場合にはユーザーが利用するすべての本サービスのアカウントを閉鎖することにより、終了させることができます。ユーザーからの通知は、書面により、本規約の冒頭に定めるGoogle の住所に送付するものとします。

アカウントの閉鎖というのは、ここの(b)にしか当てはまらない。Googleとの関係は持続している(加えて、Googleに複数アカウントを持っている場合は全て閉じる必要がある)。
(a)を達成するには、お手紙を送らなければいけない。冒頭に定める住所、というのは第1条に載っている。

Google, Inc.
1600 Amphitheatre Parkway
Mountain View, CA 94043

この住所に「Googleさよなら」というお手紙を送って初めて、Googleとの関係を絶つことができる。そして規約の適用を終了させることができる。

しかし、第13.5項に定められている通り、全ての関係を絶てるわけではない。

13.5 本規約が終了した場合、ユーザーおよび Google が享受し、適用を受けた(もしくは本規約が有効であった間に時間と共に発生した)または無期限に継続すると明示されたすべての法的権利、義務および債務は、上記中止により影響を受けないものとし、かつ第20.7項の規定は、引き続き上記権利、義務および債務に無期限に適用されるものとします。

無期限に継続すると明示されてる権利もろもろは、Googleとの関係を終了させてもそのまま続く*3。Googleがマイマップを世界にばら撒く根拠となっているライセンスは

再生、翻案、修正、翻訳、出版、公衆実演、公衆展示、および配布するための無期限、取消不可、全世界で適用され、ロイヤルティ無料の、かつ非独占的なライセンス

である。無期限であると明示されている。

したがって、書面でお別れを伝え、全アカウントを閉じ、規約を終了してGoogleとの関係を終了させても、ライセンスは継続する。
Googleはこの継続しているライセンスに基づき、マイマップやカレンダーを表示することができる。

アカウント閉鎖は最悪の行為

そういえば、高木先生はアカウント閉鎖しか行っていないようだ。
この場合、Googleとの関係が続いているのだから、自分でマイマップやカレンダーにアクセスして真っ白に上書きする権利くらい残っているのではないか?
ところが、アカウントの閉鎖に伴い、この権利を失っていた。

4.4 ユーザーは、Googleがユーザーに対してアカウントへのアクセスを無効にした場合、本サービス、ご自身のアカウントの詳細、またはご自身のアカウントに含まれる如何なるファイルもしくはその他のコンテンツへのアクセスができないことがあることを了承し、これに同意するものとします。

自らの意思でアカウントを閉じたということは、Googleにお願いしてアカウントへのアクセスを無効にしてもらったということだ。アクセスできないことがあってもいい、と同意しているので、真っ白に上書きするためのアクセスができなくても文句は言えない。

結局、自主的にアカウントを閉じるという行為は、そのアカウントで作ったデータに自由にアクセスできないことがあってもいい、というだけの話である。また、Googleはアクセスできなくする義務を負っていない。
アクセスできない「ことがある」から、編集や削除目的でのアクセスができない。表示目的では不特定多数(アカウントを閉じた本人を含む)がたまたまアクセスできる。それだけである。

アカウント閉鎖するだけ、という行為は、Googleとの関係は継続しつつ、アカウントに自由にアクセスできなくしただけ、という最悪の行為である。

Googleとの関係を終了させる場合の要件を満たしたいとき以外、自主的なアカウント閉鎖には利点はない。

じゃあどうしたらよいのか

規約読んだけどさっぱり対策がわからない。カリフォルニア州法に基づくとか言ってるし。ユーザに一方的に不利な内容だと思うが、もしかしたらあっちの国にはユーザ保護法なんてのがあるのかも知れない。だけど俺は素人だ。わからない。

終わりに

「俺はこう読む」ってヤツだから、正しさは保証しない。法律とか規約とかさっぱりわからない素人がこんな風に読みました、ただそれだけ。むしろ間違っててくれないと、Google中毒であるところの俺が困る。

リンク

Google 利用規約

*1:人の道としてどうかは別として

*2:1.1 ユーザーがGoogle のプロダクト、サービス、ソフトウェアおよびウェブサイト(別個の書面による合意に基づきGoogle がユーザーに提供するサービスを除きます。以下、本文書で総称して「本サービス」といいます。)をご利用になる場合、Google とユーザー間での法的な契約の条件が適用されます。

*3:第20.7項はカリフォルニア州法に準拠する、というはなし