ロリコンに春は来ない

札幌市で、小学3年の女子児童が1月27日から行方不明となっていましたが、近所の男が監禁容疑で逮捕され、女児は保護されました。報道によれば、26歳の容疑者は取り調べに対して意味不明なことを言っており、責任能力の有無も調べられているとのこと。


で、決め手になった情報のひとつが、この容疑者を乗せたタクシー運転手による「少女漫画を持った不審な男」の通報だそうな。




「見た瞬間からおどおどした感じで、不審だった」
「軽いわりに大量の荷物と、付録つきの少女漫画を4冊も持っていた」


そのため、警察に不審者情報を提供したのだとか。これで、オタクの人が怒るのはわかります。少女漫画を持ってるだけで不審者扱いかよ、と怒りたくなるのはわかります。


でもね、失踪した少女の家からごく近所で、警察やマスコミも情報提供をおおいに呼びかけている現状で、不似合な少女漫画(おそらくは児童向けであろう)を大量に持った男がタクシーを利用したら、そりゃ運転手は怪しむでしょ。何もない地域で「少女漫画を持ってる男なんておかしい」つって通報したわけじゃないんですよ。女児が行方不明になった町の出来事なんだから、「何かあるんじゃないか」と思うのは不自然なことじゃないですよね。


とはいえ、容疑者にまつわるこの手の情報については、なるたけ慎重になりたいという思いもまたあるわけで。

きのうAmazonから届いて、一気に読んでしまった『殺人犯はそこにいる』。冤罪だった足利事件と、隠された真相に迫る本です。警察の捜査や、マスコミの報道についても批判しているのですが、無罪となった菅家利和さんは、逮捕された当初は「ロリコン趣味の持ち主」と報道されていました。当時の捜査幹部によれば、「優秀な駐在が、ロリコンのビデオをたくさん置いてある隠れ家を見つけた」とのことですが、疑問を持った清水潔記者が、押収され返却された133本のアダルトビデオを検品したところ、「『巨乳ベスト10』『Eカップ伝説』『オッパイの逆襲』『Gカップハリケーン』『妹はホルスタイン』」(本文中より)など、ぜんぶ巨乳ものでロリコンものは1本もなかったそうな。個人的にはふつふつと親近感がわいてまいりました。
ロリコンか否かは、犯人像の根幹を成す重要な要素のはずです。清水記者が、その疑問を元捜査幹部にぶつけたところ、

特に根拠を示さないまま、「まっ、ロリコンだよ」と押し切った。重ねてその根拠を尋ねると、元幹部はいよいよ面倒臭そうに私の顔をじっと見てこう言い放ったのだ。
「だってさ、殺害した相手はみんな幼稚園児なんだからさ。三人とも幼女だからね。ロリコンに決まってるさ」
 私は、相当の間抜け面でそれを受け止めたはずだ。根拠と結論が逆転していたのだから。

(本書63p〜64p)
こ、これは怖い。いくら巨乳好きで有名でも、ひとたび警察が目を付ければ、たちどころにロリコンの汚名を着せられるんですねえ。まず結論ありきで、根拠は後からくっつければいいという考え方で捜査してたんだなぁ。栃木県警内部では、誤った見込み捜査で冤罪を生んだことを反省せず、今でも若い警官に「菅家は実は本当の犯人だ」と教えているというからますます恐ろしい話です。


というわけで、オレはアイカツおじさんじゃないから大丈夫だ、と思っていても、決して安心はできないというお話なのでありました。