ネット家電の難しいところは「停止許容時間」と「ネットサービス終了方法」

身の回りの品々において、ネット接続機能がおかしくなった!時にあなたはどうする?のコピペからネット家電の難しさを考えてみる。

家電の場合

ここにWiFi内蔵のテレビがある。リモコンのあるボタンをおせば、今いちばん視聴率が高い番組が何かを、ネット経由でダウンロードして教えてくれる機能がついている。この機能がついていないテレビより、5000円ぐらい値段が高かったが、便利そうだったのでこのモデルを買ってみた。

ある日のゴールデンタイム、ボタンを押して見たら画面にこんなメッセージがでた

404 not found サーバーに接続できません

さて、あなたならどうする?
1. 説明書を読んで自己解決しようとする
2. あきらめてその機能を使うことをやめる
3. 説明書で番号を調べてサポートセンターに電話する

PCの場合

ここにWiFi内蔵のPCがある。キーボードとマウスを少し操作すれば、Googleという便利な機能を使うことができる。この機能がついていないPCはない*1。

ある日のゴールデンタイム、ボタンを押してみたら画面にこんなメッセージがでた

404 not found サーバーに接続できません.

さて、あなたならどうする?
1. 説明書を読んで自己解決しようとする
2. あきらめてその機能を使うことをやめる
3. 説明書で番号を調べてサポートセンターに電話する

自動車の場合

ここに3G内蔵の自動車がある。カーナビを少し操作すれば、ネット経由で車にいながら映画館の指定席を予約することができる。この機能がついていない自動車より、10万円高かったがこの機能のために購入した。

ある日のゴールデンタイム、ボタンを押してみたら画面にこんなメッセージがでた

404 not found サーバーに接続できません.

さて、あなたならどうする?
1. 説明書を読んで自己解決しようとする
2. あきらめてその機能を使うことをやめる*2
3. 説明書で番号を調べてサポートセンターに電話する

スリーナインぐらいで許してもらえる機能から進め!?

家電だとサポートに電話、PCや車だと(とりあえずその場は)諦める、という選択肢が結構多いのではないかと思う。でも、ここでよ〜く考えて見たい。先の例に出したテレビの便利機能。この機能のために\5000多く払ったとはいえ、この機能がないからテレビの本質が損なわれるかといえばそうでもない。

確かに便利さはそがれるが、本質はテレビ放送を見ることだから、チャンネルを操作して放送が見れればサポートに電話、というユーザーはそれほど多くないはずだ。


そういう意味ではテレビにVODというまったく新しい機能をネットサービスとして追加しようとしているアクトビラなどはかなりリスキーなやり方だといえるかもしれない。アクトビラVODのサーバーが落ちていること、それすなわち基本機能である「ビデオを見る」が使えなくなるということだからだ。

インターネットを使った情報送受信システムにおいて、フォー・ナイン、つまり99.99%の運用を保証するためにかかる費用はスリーナインに比べると莫大だ。安いコストでスリーナインを提供する、というスキームでお客様に納得いただける便利機能から手をつけていく、というのはネット家電にとって一つの重要なマイルストーンかもしれない。

それによって端末のネット接続率が向上したり、ユーザーのネット接続機能に対するリテラシーが向上すれば、中長期的に家電業界にいい影響を与えるはずだからだ。


ネットに繋ぐことで「ちょっとベンリになる」「でもそのベンリがヤミツキになる」「それでいていざシステムが落ちてもしゃぁないなぁ、で許せる」ネット連携型家電の機能とは一体何だろうか。



リモコンのBoooo!ボタンでテレビ番組に野次を飛ばせる機能、ぐらいならメンテで多少止まっても笑って許してもらえるだろうか?

このへんの温度感探りが企画・マーケティングの難しいところでもあり、やりがいを感じるところでもある。この読み方一つでコスト構造が根本的に変わり、ターゲットユーザーも変わり、コストを何でペイするかというビジネスモデルまで変わってしまうのだから。

家電向けサービスに求められる継続性

これは車も一緒だが、PCと違ってその機能があることを前提に+5000円を頂いた以上、当該ネットサービスを停止するわけにはいかない。これは家電向けネットサービスを語る上で常につきまとう問題だ。

とはいえ、利用者課金の仕組みでもなければ未来永劫のサービス運営は不可能。では、何年間運用すればお許しをいただけるのか。

家電メーカーの人たちと話をしていると、テレビや冷蔵庫向けのネットサービスをやるなら10年!という数値が出てくる。ネットサービスの進化のスピードを考えると、気が遠くなるほど長い数値だが、ネット接続機能を売りにした冷蔵庫を売った1年後にサーバを止めたら返金訴訟は避けられないだろう。


このあたりも、9年ならOKで8年ならダメという話ではなく、ビジネスモデルの作り方と機能の見せ方、撤退時の収束のさせ方などで5年にもなるし10年にもなると思っている。

撤退戦略含めてユーザーとのインタラクションをうまくコントロールできるメーカーが積極的にネット家電の領域を攻めることができるのだろう。そして恐らくこの先5年以内に、この領域で大失敗をこいて顧客の信頼を失うメーカーも、残念ながら出てくることだろう。



ただ、皆恐れて進まずという状況は何も生まないことだけは確か。特許で守る領域の話ではないので、業界内でノウハウを共有・蓄積しながらベストアンサーを探してゆければと思う。

おわりに

最初のコピペの意味あんまなかったかもorz あと、何も家電だけじゃなくてPCでも難しいじゃん!というのはそのとおり。ただ、銭払って専用ハードをばらまいてしまっている、という点ではやっぱり家電ならではの難しさが存在する。

*1:WiFiはさておきネットにつながってないPCなんていまどきないでしょ、という意味

*2:この場合、映画館に行って窓口で席を取る