『常識破壊トレーニング -やわらか頭をめざす100のレッスン-』ジョン・ロイド&ジョン・ミッチンソン[著] 熊谷淳子[訳](早川書房)
- 作者: ジョンロイド,ジョンミッチンソン,John Lloyd,John Mitchinson,熊谷淳子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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あなたのまちがった知識に、華麗な飛び蹴りをくらわせます。 いざ、ご覚悟を。
世界最大の人工建築物は、万里の長城ではない。サンタクロースは北国出身ではない。ニワトリは首を切りおとしても死なない。蒸気機関を発明したのはワットではない。666じゃなくて616が不吉な数字かもしれない。 ……ということで、世の中で当たり前だと思われていることが、いかに真実と異なっているかを紹介します。破壊の衝撃で、脳の活性化が促される見込みがあります。また、世の中が案外テキトーだということを知り、少し大人になれます。
常識破壊トレーニング:ハヤカワ・オンライン
原題は『The Book of General Ignorance』。「一般には知られていないことに関する本」になるかな。
本書『常識破壊トレーニング -やわらか頭をめざす100のレッスン-』は要するにガセビア集。
普段わたしたちが「常識」だと思っていることが実はガセネタ(あるいは真偽不明なので断定できないレベルのネタ)であることを教えてくれる。その数100個。
中にはちょっとこじつけっぽいネタもあるけど、ほとんどは「えーそうなん?」と思ってしまうものばかり。
例えば、
『カメレオンはまわりに合わせて体の色を変える。』
という「常識」。子供から大人まで「カメレオン」といえばその特徴として必ず挙げるお話だと思う。
ところが、
カメレオンが背景に合わせて体の色を変えるという「常識」は、真っ赤な嘘だ。
カメレオンは、感情のちがいによって色を変える。それが背景の色と合っていたとしても、たんなる偶然にすぎない。(p.28)
カメレオンは恐怖を感じたり異性のカメレオンを見つけたとき、あるいは光や温度が変化したときに体色を変化させるそうな。
この迷信は古代ギリシアの作家が紀元前240年頃に書いたものに最初に登場し、その後ルネサンス期までにこの「背景説」はほぼ完全に廃れたが、なぜだかこの迷信は見事に返り咲いてしまった。その理由は本書には載せられていないが、なんとなく「その方が面白いから」といった感じの理由で誰かが掘り起こしてきたんじゃないかなと想像してみる。
その他、本書によって破壊された私の「常識」の一部。
- われわれの鼻の穴は、2つである。
- 世界でもっとも降水量が少ないのは、暑くて乾燥した大砂漠である。
- フランスの王妃マリー・アントワネットは、「パンがなければケーキを食べさせなさい」と言った。
- 山岳救助犬のセントバーナードは、首にブランデーの樽をくくりつけている。
- 蛾は、光に引きよせられてしまう。
- 666は不吉な数である。
- 宇宙は暗黒である。
- 火星は赤い。
- タイの首都はバンコクという。
- いくらネコでも、ビルのような高いところから落ちると怪我をする。
- シャンパンの泡が立つのは、二酸化炭素ガスのおかげである。
- はじめて世界を一周したのはマゼランだった。
- 人間は自分の脳を10パーセントしか使っていない。
- 人間は1日8時間の睡眠をとるのが理想である。
- エアーズロックは、世界最大の一枚岩である。
- イエスは馬小屋で生まれた。
- マラソンの距離である42.195キロは、ギリシアの史実にもとづく。
などなど。
これらが実際はどうなのかをここに記すことは重大なネタバレになってしまうので、それはカメレオン話だけにとどめたい。気になる方は一読をオススメします。
本書は100個の「常識」のみの紹介で終わっているが、これは明らかに氷山の一角なのだろう。もともと「常識」という言葉はあまり好きではないけど、これからはより一層そういった知識に対して慎重になりそうだ。