AppleInsider: iPhone 4 と iOS vs. Android: ハードウェア機能

原文: iPhone 4 and iOS vs. Android: hardware features

By Daniel Eran Dilger
Published: Monday, June 21, 2010 06:00 PM EST
今週後半の Apple のスマートフォンの第四世代のリリースが近づいているが、Motorola Droid や HTC/Google Nexus One、HTC Droid incredible、 HTC EVO 4G などの、 Google の Android OS を利用した代替機種に興味をもっている購入者もいるのではないだろうか。 ここでh、シリーズ第一弾としてハードウェアの観点から両者を比較してみよう。

これはすべて以前たどった道
一年前 iPhone 3GS が発表された際、対抗馬として新しい Palm Pre が存在した。これによってそれ以前の半年間にわたって市場の熱気が高められていた。 それでもなお、Apple の新しい携帯電話が発表されると、Pre をめぐる熱狂は崩れ去る一方で、Palm 初の新しい webOS スマートフォンにあるような派手な新機能はほとんどなかったにもかかわらず、iPhone 3GS は売上げ記録を更新した。
Apple の iPhone 3GS には、専門家らが Palm Pre を差別化する重要なものとして予測していた、ウェブベースのマルチタスキングもなく、誘導性のワイヤレスチャージャーもなく、スライド式の物理キーボードもなく、交換可能なバッテリーもなく、さらには LED カメラフラッシュもなかった。 その一方で Apple の次世代電話は、エンドユーザにとって重要だと思われる機能で Pre に双肩ないし上回っていた: プロセッサスピード、カメラ品質、バッテリー持続時間、グローバル検索、そして Bluetooth ステレオサポートだ。
昨年の iPhone 3GS のリリース以降、webOS ベースの Palm Pre は鳴りを潜め、iPhone との競争は Motorola や HTC が発表した Google の Android OS を実行する一連の新しいスマートフォン -- HTC Hero/Droid Eris、Motorola Verizon Droid、HTC/Google T-Mobile Nexus One、HTC Droid Incredible そして HTC Sprint EVO 4G へと引き継がれていった。

十分、それとも良すぎる?
Google が Android OS 2.2 "Froyo" をリリースしたことも iPhone に対する競争に油を注ぐことになったが、Apple は暦年 2010 年第一四半期には iPhone の売上げで記録を更新し、そのほとんどの注意を第二四半期の新しい iPad へと注いでいた。 Apple が iPhone 4 の発表へと準備を進めている今、問われているのは: Apple の新しいスマートフォンは Android ニュースに溢れている市場で際立つことができるほど優れたものになるだろうか、あるいは Android デバイスによる追い上げは iPhone 4 が市場に登場した際に打ち砕かれることになるのか? 
15 年間にわたって Microsoft Windows という単一文化によって支配されてきた PC とは異なり、ほとんどの消費者市場は直接的でオープンな競争にさらされている: 自動車、オートバイ、冷蔵庫、テレビ、その他の消費者製品では数多くの競合する製造企業が存在するため、スマートフォンにおいても複数の製造者がいたとしてもまったく問題ではないはずだ。 誰もが製品を市場に送り出し、購入者を見つけられるべきなのだ。もし彼らの製品が十分に優れているのであれば。
その一方で Apple は過去 10 年間にわたって競争相手(より大きく、より経験を積んだ、そしてすでに確固たる地位を築いた企業を含めて)が太刀打ちできないような製品を投入し続けてきた。 iPod の導入から 10 年近くが経過しても、Apple は引き続き Sony からも Microsoft からもほとんど意味のある競争を仕掛けられないまま成長し、実質的にハードドライブベースの MP3 プレーヤーの市場を創りだし、それをフラッシュメモリーベースの MP3 プレーヤー市場へと引き継ぎ、その後に iPod touch をリリースした。その間、誰からもほんとうの意味での競争は仕掛けられなかったのだ。 iPhone と iPad も似たような軌跡を辿り、Apple の不況を打ち負かすような売上げ記録をへこませることさえしないような、脅威ともいえないような一連「キラー」製品を相手にしてきた。

Apple 製品と Android 製品との比較
Apple のスマートフォンと Android を実行する代替機との比較をする上での難点は、そのふたつが異なるものだということだ。 例えば、iPhone のハードウェア機能を Android モデルと比較することはできるが、iPhone 4 の価値はハードウェアだけにあるのではなく、そのハードウェアとそれを使いやすくしている iOS ソフトウェアとの統合、メディアとアプリ管理、ソフトウェアアップデート、プッシュメッセージング、リモート管理、その他の機能のための Apple の iTunes と MobileMe クラウドサービスとの統合にあるからだ。
逆に言うと、iPhone 4 を使うということが、例えば合衆国ではユーザが済んでいる地域を満足にカバーし切れていないようなキャリアーに縛られているというように見なしたとしたら、iPhone 4 の価値はすべて排除することもできる。 そのようなシナリオでは、目標が実際に通話を行うことになる訳で、機能面ではるかに劣る携帯電話と比較しても、そちらの方が優れたものであることになってしまう。
それは、ある特定のユーザにとってもっとも意味をなす個々の環境や好みの色といったようなものだ。 しかし、世界史上において製品全般の魅力を見ることも大切なことである。というのも、もし Apple がリードを維持し続ければ、AT&T の穴だらけのカバー率といった問題も、ネットワークの拡張や合衆国での他のキャリアーで iPhone が利用できるようになれば解決されることになるからだ。 その逆に、もし十分な数のユーザが Android へと流れれば、Apple もベストなサードパーティ開発者らの主要な注意を惹きつけられてきたそのリードをやがては失うことになるだろう。
将来に向けての勢いがどの方向に向いているのかを理解するにあたって、このシリースでは、iOS と Android との比較を、ハードウェア機能、デスクトップとクラウドとの統合、モバイルキャリアー、OS 機能、サードパーティ製アプリ、市場シェアの観点から見ていくとともに、こうした違いから明らかになるもの、現在の製品がどの程度競争力のあるものなのかだけでなく、これらが今後の iOS と Android の現実的可能性にどう影響するのかを見ていくことにする。

Android はハードウェア機能でリードしているか?
Android に当てはまる主要なアドバンテージのひとつは、さまざまなハードウェアメーカーの間でより競争力のある選択肢が可能となるはずだ、というものだ。これは言い換えると、ハードウェアの革新においてより早い進歩という結果につながるはずだ。 これはこの半年間を振り返ってみると特に当てはまる。新しい Android デバイスが次々と発表されていたにもかかわらず、Apple の iPhone 3GS は対照的に時代遅れの感を増していたからだ。
他の市場でもあるように、Android ベースのリリースはハードウェアサイクルとソフトウェアリリースの両面でスローダウンする可能性が高い。それはちょうど車が一年ごとのサイクルで市場に送り出されるのと同じだ。 Apple は新しい iPod や iPhone を毎年リリースしていると人々が不満を口にしていたのはそれほど前のことではない。 当然のことながら、新しい Android 携帯電話が三ヶ月のサイクルで送り出すというのは簡単に維持できることではない。
しかし全体的な話としては、「プラットフォームのオープン性」が自動的により優れたハードウェア機能につながるというアイデアは、Android が一時的なアドバンテージを得たというだけのことでもある。それは今や iPhone 4 の投入によってなってしまった。というのも iPhone 4 の方が、インターフェースの洗練や利便性だけでなく、Android エコシステムが力を発揮すると考えられているまさにその分野であるハードウェア仕様においてもトップの Android 携帯電話を大幅に上回るペースを維持しているからだ(下図参照)。
例えば iPhone 4 のカメラは、多くの Android 携帯電話にはないフロント側のキャプチャーと HD 録画能力の両方を提供するばかりでなく、今日のハイエンド Android デバイスの 20 fps ビデオではなく実用に堪える 30 fps ビデオでキャプチャーできる。 Apple はまたより高速な 802.11n Wi-Fi ネットワーキングをサポートし、高度な 6 軸モーションセンサーを iPhone 4 の新しい ジャイロスコープ[和訳] でデビューさせている。 この新しい携帯電話はまた、マイクのための複数のノイズキャンセレーションも提供している。この機能は、もっともお洒落な Android 携帯電話でもほとんど装備されていない。
さらに iPhone 4 のビデオ iPod からのレガシーのおかげで、iPad の 1024x768 というビデオプロジェクタやモニターに対応した VGA スタイルの出力だけでなく、コンポジット(RCA)以上の解像度をもつアナログビデオにも対応している。 HTC Incredible は基本的なコンポジットビデオ出力(2005 年の 5G iPod から装備されているテクノロジー)をサポートするのみで、一方の HTC Evo は HDMI のサポートを盛り込んでいるにもかかわらず 限られた画質のビデオ出力 しか実現しておらず、アナログビデオはまったく出力できない。 その他の最新 Android 携帯電話は、ビデオ出力機能をいっさい備えていない。 生のハードウェア機能におけるリードと言う噂もかなりのものだ。

iPhone 4 vs htc droid incredible evo nexus one

プラットフォームにおける単一文化は必ずしもハードウェア面での革新を促進しない
オープンなプラットフォームではハードウェア面での革新を促進するはずだというアイデアは、PC 分野から生まれでてきたものではない。 特定の PC モデルは、より優れたグラフィクスオプションを提供し、時には例えば Apple の Mac よりも高速なプロセッサを投入することもあったが、Mac は長きわたってより品質の高いコンポーネント、より優れたインダストリアルデザインを実現し、まっ先に新しい機能(USB、FireWire、Gigabit Ethernet、オプティカルデジタルオーディオ、緊急モーションセンサー、バックライトキーボード、DisplayPort、など)を導入・普及させることも多かった。
最近では、PC メーカー間での熾烈な競争によって、主により低価格を実現する(ハードウェア面で切り詰めたり、古いテクノロジーを採用して)という方向へ努力が向けられ、その結果としてネットブックでの短期的なブームが起こった。 Apple は Mac でのバーを高いまま維持することで、結果的に高価格で高品質を維持することになった。 これによって、価格そのものが市場から外れてしまうのではなく、Apple の Mac の売上げは PC 市場全体のおよそ四倍ほどの勢いで伸びることになった。 しかしスマートフォンの分野では、Apple は品質と価格とのバランスを同等かやや低めに設定している。これは同社が何千万台という iPod を売り上げたことによって生まれた経済規模のおかげだ。
iPhone は、他のどの携帯電話が提供してきたよりもはるかに大きなストレージメモリーを備えて 登場し、巨大なシステム RAM とオンボードストレージメモリーとを詰め込んだ iPhone 4 でのその分野でのリードを保っている。 Apple はまた、iPhone 4 の A4 アプリケーションプロセッサ(CPU、GPU、サポートされるチップセットロジック、そして RAM をまとめた「システム・オン・チップ」)のために、自社独自のカスタムシリコンを開発するだけのリソースを手にしている。 同社はまた、Android 携帯電話が今年市場にもたらした高解像度ディスプレイを大幅に越える、iPhone 4 の新しい Retina ディスプレイ 高解像度 IPS スクリーンといった最高のテクノロジーを見いだして独占的にアクセスできるだけのリソースも持っている。

ハードウェアのロック解除
Apple はまた、新しい FaceTime[和訳] のように新たなカメラハードウェアを高度ながら簡単に利用できるビデオ通話をサポートするソフトウェアとを結びつけるといった、高度なハードウェアとソフトウェアを統合するテクノロジーポートフォリオを構築するためのリソース(そして関心と動機)も持っている。
Android 界隈では、ハードウェアメーカーがフロントカメラや高解像度カメラを含めることがあるかもしれないが、そのカメラを駆動するソフトウェアとの統合は不十分なままだ。これは、Motorola Droid(良い写真が撮れないひどいソフトウェアとペアになっている非常に高いメガピクセルカメラ)や新しい HTC EVO 4G(サードパーティが提供する現実には何もできないような問題を孕んだプロプライエタリソフトウェアに依存せざるを得ないフロントビデオチャットカメラ)の両方のケースで見てとれる。
Apple の iPhone 4 は、錯塩の 3GS と同じく、ビデオを撮影するだけでなく、ビデオのトリムや配布も簡単にできるようになっている。 非常に高度な(しかし 5 ドル)iMovie app for iPhone 4 を作るという Apple の関心から、革新的なソフトウェアを利用するハードウェアを追い求めるという同社の関心の程度が伺える。 これは、Windows PC と Android モバイルデバイスの双方に著しく不足しているもので、使いやすさとか実際的な機能とは関係なくハードウェアの仕様がひとり歩きしてしまっている。
同様に、Android 携帯電話メーカーは、Apple の iPhone 4 の数ヶ月前から高解像度スクリーンと新しいスクリーンテクノロジー(OLED ディスプレイなど)を導入しはじめていたが、既存のサードパーティ製タイトルが見栄え良く、サポートしているさまざまに異なる解像度をもつすべてのスクリーンに適切に表示されるようなソフトウェア面でのサポートを送り出せないでいた。 Apple は iPhone の解像度を均一に四倍師、既存のアプリ内にあるテキストやユーザーインターフェース要素を最適な解像度で自動的に描画する開発者サポートを提供した。
Apple はまた iOS 4 でグラフィクスハードウェアアクセラレーションのための最新 OpenGL ES スタンダードをサポートするにあたってもリードを広げ、ゲーム開発者らが見栄えが良くパフォーマンスに優れた高度なタイトルを生み出せるようにしている。 その一方では、サードパーティソフトウェアで、ソフトウェアの盗難を積極的に押し進めている、大規模な App Store を利用するように動機付けすることもしている。
たとえ Google が同じようなソフトウェアサポートを提供して、パートナー企業が携帯電話に搭載している高速な GPU ハードウェアを最大限に活用するようにしたとしても、開発者らの注意をひくことはできない。なぜなら、同社のストアは週末プログラマ向けであって、商業開発者向けではないからだ。 これは、コンテンツのためにお金を払いたがらないユーザがソフトウェアを「オープン」に盗んでいくことに対して、Google が開発者らを保護する手だてをほとんど講じていないことにもよる。
iPhone 4 は、開発者らが実際にそれを活用できるような CoreMotion API とともに初めてスマートフォンにジャイロスコープを導入するなど、他の領域においてもソフトウェア経由でハードウェアの最新技術を活用し続けている。
CoreLocation や Accelerate といった他の Apple のソフトウェア API 同様、iOS 4 にあるこの新しいモーションコントロールフレームワークは新旧の iOS デバイス間にあるハードウェアの差異を切り離し、新しいモデルが特定のハードウェア機能を導入する(あるいは導入を失敗する)たびに Android が経験する細分化問題を回避している。 その結果、Apple の iOS ではサードパーティが実際に新しいハードウェアを利用しやすくなっているのだ。
この記事の次のセグメントでは、デスクトップおよびクラウドサービスとの統合において、Android 製品は iOS 4 にどう対抗しているのかを見ていくことにする。

AppleInsider: iPhone 4 の内側: ゲームで Apple を一歩抜きん出たものにするジャイロスコープ [Page 4]

原文: Inside iPhone 4: Gyro spins Apple ahead in gaming [Page 4]

By Daniel Eran Dilger
Published: Wednesday, June 16, 2010 09:50 PM EST
モバイルゲームにおける Apple のリードを広げるジャイロスコープモーション
ゲームその他の用途のためにはじめて携帯デバイスにモーションコントロールを組み込むことで、Apple は自社の iOS プラットフォームをカジュアルゲームのために適したものにするだけでなく、むしろ、専用ゲームでバイスのインタラクティビティを上回り、ゲーム分野でその他のスマートフォンプラットフォームに対する大幅なリードをさらに大きくしようという意図をしめしているのだ。 つまり本質的には Nintendo が自らの土俵としているモバイル分野で打ち負かそうというのだ。
ゲームプラットフォームに高度な機能を追加するにあたっての問題は、歴史的にいって、追加のアドオンデバイスを消費者相手に売り込むのが難しいようであることだ。 iPhone 4(およびほぼ間違いなく今秋の iPod touch 4)にジャイロスコープへのサポートを組み込むことで、Apple は開発者らがターゲットにできるジャイロスコープの環境が整った iOS デバイスの何百万という大きなインストールベースをまたたく間につくりあげることになる。 CoreMotion でジャイロスコープのデータを活用するようデザインされた数多くのゲームは、以前の iPhone や iPod touch デバイス上のより精確さに劣る 3 軸コントロールをサポートするようにもうまくグレードを落とすことができるはずだ。というのも、iOS の Core Location は GPS を持つデバイスと位置決定に Wi-Fi 三角測定法しか使えないデバイスとの間のハードウェアのギャップを橋渡ししているだけだからだ。
この新しいジャイロスコープはまた、統合にたいして「オープンさ」を売り込んでいるライバルのプラットフォームを どうやったら Apple は上回れるのかという例でもある。 Google はすぐには自社の Android パートナーに対してすべての携帯電話でジャイロスコープを追加するようには働きかけられないし、Android で新しく高度なモーション API を開発することにもさほどの興味はないはずだ。そうした機能は同社がより多くの広告を販売する上であまり助けにならないだろうからだ。 Microsoft は最初からは Windows Phone 7 にジャイロスコープのサポートは追加してこないだろうし、Symbian のインストールベースはあまりにも巨大で、新しい携帯電話にジャイロスコープを追加しても、ジャイロスコープベースのゲームのための対象市場にはつながらないだろう。というのも、もうすでに高度な Symbian 向けタイトルの可能性が限られてしまっているからだ。
RIM や HP の場合はそもそも、iOS プラットフォームと肩を並べられるような基本的なユーザ機能のアップグレードをはじめとする、はるかに深刻な問題を多数抱えている。 さらには、新しいタブレットデバイスに対する基本的なサポート、 そして、そもそもアプリ開発を維持できるようなビジネスモデルの問題もそうだ。 こうしたことから、Apple は高度なゲームやその他のアプリという点でスマートフォンでのトッププラットフォームとして自らのリードを売り込みつつ、従来型のハンドヘルドデバイスの両陣営からモバイルゲーマーらを惹き付けるにあたって優位な立場を取れるのだ。

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AppleInsider: iPhone 4 の内側:ゲームで Apple を一歩抜きん出たものにするジャイロスコープ [Page 3]

原文: Inside iPhone 4: Gyro spins Apple ahead in gaming [Page 3]

By Daniel Eran Dilger
Published: Wednesday, June 16, 2010 09:50 PM EST
モーションをめぐるビデオゲーム・コモーション(騒動)
Apple の新しいジャイロスコープは、他のスマートフォンメーカーを市場で打ち負かすだけでなく、専用ゲームでバイスのモーションベースのコントロールにも先駆けるものだ。 Nintendo が自社の新しい Nintendo 3DS で加速時計とジャイロスコープサポートを加えるのは、2011 年 3 月のことだ。 昨秋リリースされた Sony の PSP Go は、どちらのタイプのモーションセンサーも内蔵されておらず、そのいずれも追加する計画はないとの声明を発表している(理論的には PS3 用の Sony 製 SIXAXIS コントローラで利用できるものの、現時点では誰もそうしたもののサポートは行っていないし、ハンドヘルドデバイスに別個のコントローラが必要だというのも意味をなさない)。
iPhone 4 でのジャイロスコープ導入は、E3 でゲームコンソールとして独自の新しいモーションベースのゲームテクノロジーをデモンストレーションしていた主要なゲームコンソールメーカーによる新しい発表と共鳴していた。
ビデオゲームのコンソールにおいて、加速時計ベースのモーションコントロールは Nintendo によって開拓された。それは 2001 年ごろのことで、Gyration による特許を同社のモーションセンサー PC マウスに応用したものだった。 それから 5 年後、同社は、片手コントローラのための革新的なデザインを完成させた。それは 3 軸加速時計と、据え置き型の「センサーバー」を利用して空間内でのコントローラそのものの一を特定するようにデザインされた IR カメラとペアリングさせたもので、これによって Wii Remote がどこに向けてポイントしているのかが決定できるようになっている。
同社はまず、この新しいコントローラを GameCube 並のライフスパインに拡張しようと計画したものの、製品を子供のおもちゃとしてブランドしてしまったことが原因で失敗し、その新しいコントローラは後に Wii を命名された Revolution コンソールを立ち上げるために利用された。 モーションコントロールのコントロールは Wii ゲーム体験を定義づけるものとなった。
Nintendo の Wii モーションベースの「Wii Remote」の発表からわずか数ヶ月後に、Sony は慌てて独自の SIXAXIS コントローラを PS3 用に送り出した。しかし PS3 向けタイトルのうち、そのモーションセンサー付コントローラを活用するものはほとんどなかった。 ほとんどの PS3 ゲームはより従来型のボタン操作を指向したもので、モーションベースのコントローラがプラットフォームの主要機能となっていた Wii とは対極的なものだった。 加えて SIXAXIS コントローラは「より多くの軸」で変化を検出するのにもかかわらず、Wii Remote のようには画面をポイントできないのだ。
Nintendo は昨夏 Wii MotionPlus をリリースした。これは、Wii Remote につないで 3 軸ジャイロスコープを追加するアドオンで、コントローラにはるかに精確な位置検出をできるようにした。 Wii Remote は、上下左右前後を検知できたものの、そのためにコントローラを素早く動かさなければならず、動きの異なる度合いには反応しない。 MotionPlus ジャイロスコープを追加することで、6 軸に沿った動きの微妙な度合いに対する感度が向上し、そのコントローラが空間内のどこにあるのかを精確に決定できるようになっている。
先週 Microsoft と Sony の両社は、新しいカメラベースのモーション検出機能である、Xbox Kinect と Playstation Move をデモンストレーションした。 Kinect は完全にカメラとマイクをベースにしたもので、ユーザの全身運動をスキャンする一方、Move はユーザの手のなかにあるコントローラの位置と動きを決定する磁気計とカメラセンサ用の LED スフィアに加えて、MotionPlus を組み合わせた Wii Remote のようなモーションベースのコントローラを利用する。 明らかに、業界全体がモーションベースのゲームは大事であると考えているのだ。

ジャイロスコープ加速時計の歴史

ページ 4 / 4: モバイルゲームにおける Apple のリードを広げるジャイロスコープモーション

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AppleInsider: iPhone 4 の内側: ゲームで Apple を一歩抜きん出たものにするジャイロスコープ [Page 2]

原文: Inside iPhone 4: Gyro spins Apple ahead in gaming [Page 2]

By Daniel Eran Dilger
Published: Wednesday, June 16, 2010 09:50 PM EST
ジャイロスコープとは何か?
Apple の初代 iPhone は加速度計を普及させた。これは、x、y、z という 3 つの軸のひとつに沿って直線加速度を検出することで、デバイスの加速度、振動、衝撃、落下を検出できるようにしていた。この 3 つの軸とは 上下、 左右そして前後を指す。 同社は以前、床に落下することを予測してハードドライブを停止させ、落下にまつわるドライブへのダメージを防ぐことを目的に、自社のノートブックで「Sudden Motion Sensors」として加速時計を採用していた。
iPhone と iPod touch(そして最近の iPod nano)では、3 軸からなる加速時計によって水平・垂直モードの切り替えスイッチ、ゲームのための傾きコントロール、そして操作の取り消しや曲のシャッフルといったシェーク機能を実現している。 しかし、それらは直線運動しか測定しないため、コンパスの方向や重力にたいする微妙なひねり運動や回転は関知できない。
iPhone 3GS で Apple はデジタルコンパス(磁力計)を追加したが、これで地軸に対する磁気方向を検出できるようになった。 iPhone 4 のジャイロスコープは、 さらに X、Y、Z という 3 軸での角加速度を検出するための新しい電子センサーが加えられ、 勾配、偏揺れ、横揺れの正確な計算ができるようになった。
従来型の加速時計は、速度における変化(一定時間におけるスピードの増加あるいは減少)として、方向の変化とは切り離して直線加速度を測定する一方、ジャイロスコープは角加速度を計測する。つまり、 速度の方向の両方における変化を同時に計測するのだ。 iPhone 4 ではジャイロスコープによって、デバイスは回転の微妙な度合いを検出しながらも、その加速時計がそうした直線運動を検出しつつ、そうした直線運動や手の震えを排除することができるようになっている。
加速時計とコンパスからのデータを組み合わせることで、ジャイロスコープは空間内でのデバイスの 6 軸運動についての詳細で精確な情報を提供する。つまり、 ジャイロスコープの 3 軸を、加速時計の 3 軸と組み合わせることで、デバイスが空間内でどの程度遠くまで、どの程度速く、そしてどの方向に移動したのかを認識できるようにしているのだ。 Apple はこうした情報を、新しい CoreMotion API を通して開発者らが利用できるようにし、アプリにジャイロスコープサポートを追加するにあたって物理学の専門家になる必要から解放している。

加速時計とジャイロスコープ

ページ 3 / 4: モーションをめぐるビデオゲーム・コモーション(騒動)

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AppleInsider: iPhone 4 の内側: ゲームで Apple を一歩抜きん出たものにするジャイロスコープ

原文: Inside iPhone 4: Gyro spins Apple ahead in gaming

By Daniel Eran Dilger
Published: Wednesday, June 16, 2010 09:50 PM EST
Apple は、昨年思いがけずモバイルゲームが iPod touch のキラーアプリであること発見したようだが、iOS 4 の Game Center とiPhone 4 の新しいジャイロスコープから、同社にとってモバイルゲームにおいて優位な地位ををリードする準備ができたことを示している。
CEO の Steve Jobs は WWDC の壇上、イベントを前にプロトタイプ版が盗まれ公然と分解されたことから、iPhone 4 の詳細をほとんど明らかにしないとみられていた。 しかし Apple にとって幸いなことに、プロトタイプ版のリーク者によってその主要な詳細はほとんど明らかにはされなかった。
新しい携帯電話にははるかに高い解像度のディスプレイが備えられているようだという以外、新しい Retina ディスプレイ についてはリークされることはなかった。解像度が高くなるということは、いずれにしても誰もが予測していたことだったからだ。 リークでは、A4 という頭脳とより高速な 802.11n Wi-Fi の存在が推測されていただけだった。 さらに、ステンレススチールによるシェルが Wi-Fi、Bluetooth、GPS そして 3G のためのアンテナシステムとしての役割もはたしているとは誰も想像しなかった。 リークでは、Apple によるスタンダードベースの FaceTime[和訳] ビデオ通話のいかなる詳細についても予測していなかった。
しかし最大の秘密は、新しい携帯電話のジャイロスコープだったのかもしれない。これは、Nokia の Symbian や Google の Android による高級携帯電話を打ち負かすような機能だ。 この半年の間に Verizon や Sprint が発売した Android 携帯を手にした人で、いずれは登場するジャイロスコープを備えた次世代モデルを手にするためだけに、350 ドルという早期解約金を支払う準備のできているひとはほとんどいないはずだ。 Microsoft もまた、Windows Phone 7 が今年後半に発表される際にもジャイロスコープやデジタルコンパスをサポートする準備は整っていないだろうことを 認めている。
つまり、Apple が新しい iPhone 4 の大規模発売に連動してジャイロスコープを導入したことで、 Apple のプラットフォームの差別化に大きく貢献しているのだ。 Jobs がジャイロスコープという新機能を発表すると、その意味を理解した WWDC の基調講演に出席していた何人かの開発者からは即座に熱狂的な歓声が起こった。 それ以外のすべての人に向けて、Jobs はまったく新しいモーションフィードバックが可能な 3D のジェンガスタイルのゲームを使ったデモンストレーションを用意していた。

ページ 2 / 4: ジャイロスコープとは何か?

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AppleInsider: Apple の iOS 4 の内側: Snow Leopard との新たな機能パリティー

原文: Inside Apple's iOS 4: new feature parity with Snow Leopard

By Prince McLean
Published: Friday, June 18, 2010 12:00 AM EST
Apple の iOS 4 は、同社が iPhone OS 2.0 を開発のために初めて解放して以来、開発者らにとって最大の基盤飛躍となっており、Mac OS X 10.6 Snow Leopard のコア機能に追いつきつつある。
Apple の計画に近しい開発者らが言うには、この新しい iOS 4 では iPhone OS 2.0 および 3.0 のコアを 2007 年の Mac OS X 10.5 Leopard レベルから今日 Snow Leopard を実行しているデスクトップならびにノートブック Mac のレベルへと移すような、一連の改善が仕込まれているという。
主な新機能には、C、C++ あるいは Objective C コードおよびデータを閉鎖あるいは機能オブジェクトにいくらか似た単一のオブジェクトへとカプセル化する Blocks が含まれている。 システムは Blocks を利用して、 それらの実行のために順番にならべスケジュールする Grand Central Dispatch をサポートしており、複数のプロセッサコア上で並列処理されるようになる可能性もある。
iOS 4 が Snow Leopard が借用しているもうひとつ別の機能コアセットは、テキストコンテンツのパターンマッチング、検索、そして置き換えのためのパワフルな正規表現ツールの拡張サポートがある。
新しい iOS 4 にはまた、IPv4 アドレスが枯渇するなかインターネットアドレシングのためのネットワークをモダンな新しい標準へと果敢に移行しようとしている中国や日本といった国々でますます必須となりつつある IPv6 アドレシングと DNS など、Snow Leopard と比肩する新しい主要なコアネットワーキング機能が含まれている。
Additional under-the-hood work in iOS 4 に施されたその他の隠れた仕込みは、Cisco および Juniper による新しい "Anyconnect" SSL VPN へのサポートだ。 この SSL をベースにした VPN は、NAT や他の複雑な事柄に関係なく、またクライアント側には IPSec VPN には付きものだった特別な装置やソフトウェアを必要とせず、あらゆる場所から企業ネットワークに接続するための設定、セキュアなアクセスが簡単にできる手法としてまたたくまに人気となりつつある。
基調講演では Mac OS X のために準備されている新しいテクノロジーに関連した話題には一切触れられなかったように、Apple の今年の Worldwide Developer Conference ではほとんどの話題が iOS 4 に集中していたのも、同社が自社のモバイルプラットフォームを機能面でデスクトップ版オペレーティングシステムに匹敵させようと作業してきたことを考えると納得がいく。
この動きはまた、Apple が複数コアプロセッサを活用して、利用可能なグラフィックコアにタスクを委譲するという可能性を開くものでもある。これは、同社が昨年の Snow Leopard リリース以降デスクトップで開拓している分野でもある。
Apple は、デスクトップからモバイルデバイスまで、洗練されたモダンなコアオペレーティングシステムでもって、オペレーティングシステムのアーキテクトとして独特のポジションを持っている。 対照的に Microsoft は、レガシー環境をサポートする必要から、大きく異なるカーネルとコアオペレーティングシステム環境を備えた、目もくらむほどのさまざまなバラエティーに富んだオペレーティングシステム製品を販売している:

  • デスクトップ PC 上の Windows 7
  • 他のデバイスのための XP をベースにした Windows Embedded Standard
  • XP と Vista という両バージョンをベースにした Windows Embedded Enterprise
  • Windows Mobile 6.x の Windows CE 5 の古いバージョンをベースにした Windows Embedded Compact
  • 来る Windows Phone 7 は最新の Windows CE 6 をベースにしているものの、この CE 6 は個別に Zune HD で採用され Kin デバイスとも一部を共有しているたものではあるものの、新しい Windows Phone 7 とも古い Windows Mobile 6 デバイスともアプリレベルでは互換性がない。

AppleInsider: ファーストルック: Apple の iOS 4 for iPhone、iPod touch [Page 3]

原文: First Look: Apple's iOS 4 for iPhone, iPod touch [Page 3]

By Daniel Eran Dilger
Published: Monday, June 21, 2010 12:00 PM EST
開発者向けの新機能
iOS 4 には、新しい機能を有効にしてシステムをより高速・堅牢にするコア OSの全般的な機能とともに、 サードパーティ開発者が自分たちのアプリを活用できるよう、目に見えない部分での仕込みが多数施されている。 Apple によると iOS 4 には開発者向けに新たに 1500 種類の API が用意されているという。 多くはかなり難解なものだが、ユーザに非常に目につくものもいくつかある:

  1. Blocks や Grand Central Dispatch、IPv6 ネットワークおよび SSL VPN へのサポートなど、iOS が Mac OS X Snow Leopard と 機能的に同等[和訳] になるようにしている新しい OS のコア機能だ。
  2. 静止画アプリケーション用の生ピクセルデータからフルビデオアクセスまでのカメラ機能への新しいアクセス、Apple が自社の新しい iMovie アプリで明らかにしたコア機能を提供する新しい AV Foundation フレームワーック。 iOS 4 にはまた、 adds enhanced new support ビデオのアダプティブライブ・オンデマンドストリーミングのための HTTP Live Streaming への新しく拡充されたサポートが追加されており、Media Library API を経由して写真やビデオへの豊富なアクセスを提供する。
  3. iPhone 4 における新しい ジャイロスコープ と並んで、加速度計や磁力計(コンパス)データを高度に利用するための CoreMotion。
  4. アプリがイベント情報を作成・処理できるようにする新しい Calendar Event Kit からカレンダーデータストアアクセスのサポート。 Apple はまた、カレンダーでの CalDAV 準拠のアカウント同期(Mac OS X Server の Calendar Server で利用されている)および連絡先での CardDAV 準拠のアカウント同期(Address Book Server で利用されている)をサポートするようになった。 開発者らはまた、自分たちのアプリに SMS 機能を組み込んだり、Quick Look サポートを追加したり、アプリに組み込んだ地図表示にルートを描いたりオーバーレイを追加したりするための Map Kit の利用環境も改善してきている。
  5. 新しい iAd は、携帯広告を単に見直して新しくした以上のものだが、実は深く iOS に統合されて、開発者がアプリ内で邪魔にならないような広告を簡単にサポートでき、最大限の受け取りを目指すものだ。 つまり、スポンサーなくしては存在しなかったかもしれないアプリにより多くの可能性を開くことになるのだ。
  6. 高度な投影、グラフィクスがスムースになるようなフルスクリーンでのアンチエイリアス、そしてパフォーマンスのための新しい最適化など、高度な OpenGL ES 機能への新たなサポート。
  7. 新しい Game Center は iOS 4 では、開発者向けプレビューとして提示されているが、今年後半にならないと成熟はしないだろう。 開発者らはアプリで Game Center に対応できるようサポートを追加する必要が出てくるはずだ。
  8. 信号処理ルーチン、高速フーリエ変換、基礎的なベクトルおよび行列演算、そして因数分解行列や一次方程式の解決システムのための業界標準の機能など、新しい Accelerate API には iPhone および iPod touch に最適化された何百もの計算機能が提供されている。

iOS 4 の機能

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