書物蔵

古本オモシロガリズム

件名問題(2)政治的に正しい標目変更

業界誌『図書館雑誌』2月号をちょっとのぞかせてもらう。
常務理事会(2007.1.12)記録に

7. ハンセン病の件名について  (略)件名の採用はそれぞれの図書館が判断して行うものであり、協会としてそれを指示するべきことではない。(p.129)

(しかるに各館はあわてて削除するだけで「ライ病」から引けなくしたりして)「図書館の自立性にもかかわる」という。
だけどこーゆー正しすぎるスタンスだと、各館の現場は困っちゃうんじゃないかな。おなじ号の別のとこ(p.71)で認めちゃってるように、「多くの図書館では購入時のMARCデータに手は入れず」という現実があると図雑がいってるし。だとすれば現在の公共図書館(とくに中小の)に、MARCにある標目を独自に判断して調整するチカラはないとみるべきで*1。
そうすると、たしかに「協会としてそれを指示するべきことではない」かもしれないが、各館では書誌データに限っていえば自立性はないのだから、「件名の採用はそれぞれの図書館が判断して行う<べき>もの」ではあるが、これからは標目形の変更があった際には、

  • 政治的にドーデモいい標目変更:累積データの変更は任意。ほっといて可 例)架空索道→ロープ・ウェイ
  • 政治的に正しい標目変更:累積データまで変更要。変更しない場合は各館相応のご覚悟を 例)ライ病→ハンセン病

の2つを分けて現場に教えてあげなければ。もちろん、個々の標目変更だけでなく*2、版が変わるときにはそれぞれ一覧表が必要になってくる。はたして件名委員会は政治的正しさに耐えられるだろうか。
しかしなぁ。
累積書誌データまで標目を変えると、当然、旧標目からはフツーのOPACじゃ引けなくなるよね。典拠ファイル(せめてモドキ*3)を咬ませなきゃ、参照形から引くなんて芸当はできんのでは。
と、BSHをつかうのが正しいという仮の前提*4をおいても、なかなかにイバラの道。
でもまあ、中央の委員会は勝手に正しい標目形に遷移するから、現場は勝手についてこい、というのであれば(表現悪いがそういってんのと同じ)、そこで出てくるのは件名全廃論ですな(・∀・) べつにそこまでしてつきあう義理は現場にないわい。
3版から4版になるとき、政治的に間違った標目を正しくしたが、「それについて広報せんかったのは、正直スマンカッタ」ぐらいのことは言うべきでは。
しかし政治的正しさバナシをすると、『1984』のダブル辛苦、じゃなかたシンクみたいな気分がつのるのぅ。あるいは未来世紀の情報省官吏の気分。

おまけ:来月は図書館史特集

来月号(2007.3)(通号1000号)が3/20発行されるという予告(p.127)もあり。
1000号記念として図書館雑誌そのものが特集となるよし。創刊時は石山洋氏、戦中期は東條先生、戦後期は奥泉氏が担当。ふーむ(゚〜゚ )

*1:ただ、この現実は現在只今あるだけじゃなくて、もう20年以上そうなんじゃないの? そう、公共図書館にMARCが普及する最初からとわちきはにらんどるですよ。

*2:そんなものがBSHにあった憶えはないが

*3:いちばん簡単なのは、累積書誌に隠し件名として非表示の件名をブラ下げることですが… これも素人目には糾弾の対象になりそ。「差別表現を隠して保有」なんて形式論理的に正しすぎる見出しが新聞に載るよ(・∀・)。

*4:わちきは件名(概念索引法)存続論者だが、BSHの歴史的意義は終ったとみておる。