スピリチュアルなパワーストーンの力でひきこもりも治るらしい。

細木数子がテレビでひきこもりやニートを大殺界と絡めて語った後に、職業に貴賎はないのだから何でもいい、とにかく働きなさいとカメラ目線で訴えるのを観て、ああそういえば『ツキを呼ぶ「パワーストーン」』(越智啓子+森村あこ)という本を読んだっけ最近、パワーストーンによって引きこもりも解消するとか書いてあったなと思い出した。


タイトルから分かるとおり、この本は「クリスタルヒーリング」によって「ツキと幸せ」を手に入れるというもの。パワーストーンとは「地球誕生以来の長い時間をかけて形成された、いわば『地球の細胞』」であり、「スピリアチュアルな面」で「とても大きな働きをしてくれ」るという。「患者さんのパニックや不安が治まりガンまで消えた」「腹痛や頭痛が治った「自営の仕事がグングン好調になっていった」「怒りや恐れの感情が感謝に変わり、心の病が好転した」「年下のステキな彼ができた」「不思議と検証や宝くじに当たるようになった」「夫婦仲がよくなった」「至急の病気が軽快した」などなどと、「喜びの報告が続々と届いて」いるみたいです。


「喜びの報告」は一般人だけでなく、青田典子さん、眞鍋かをりさん、さかもと未明さんの3名が有名人としてパワーストーンの体験談を語っている。例えば青田典子さんが、自分が「バブル青田」として成功したのは「2つのパワーストーンが関係して」いるとか、眞鍋かをりさんは「冷え性体質まで改善」したとか、さかもと未明さんは「前より冷静な対応が出来るようになったと思う」とか。てか、なんで突然さかもと未明なんだろ? 


同書では、「編集部でパワーを大検証!」というコーナーがあって、その効果を検証しようとしている。大検証というからには色んな統計データや実験が参照にされるのだろうかと思ったら、「検証」の作業はたったの3つ。

「肌に張りと潤いをもたらすといわれる」ローズクオーツを「約一時間持つことで」「20代から40代の5人の女性に協力をお願いし、高精度な肌専用の水分計を用いて計測した結果」「なんと、全員の肌の潤いが増しました。」


サンプル少なっ! 

「何もいれずにそのまま食費尿保存袋に入れた食パンと、小さなピンクトルマリンをいっしょに保存袋に入れた食パンを用意し、カビの生え具合などを観察」したところ、6日後、「何も入れていない食パンにはカビが生えたが」、「ピンクトルマリンを入れたほうには、黒いカビが見られません。」


備長炭とかじゃだめなんだろうか。「ご飯も美味しく炊けました」とか書いてあるとよかったのに。

最後はオーラ写真を撮ってみるという実験です。
オーラという言葉はテレビの人気番組の影響もあり、かなり一般的になりつつあります。簡単に説明すると、オーラとは、人間を含めた生物全般に存在する「微弱な電磁エネルギー」のことです。
(…)オーラを見るための機械が「オーラカメラ」です。オーラカメラのしくみや詳細は、スペースの関係で割愛しますが(…リアクオーツという石を15分握ると、写真の)白い部分の分量がとてもふえています。


一番気になるところが割愛されちゃった。電磁エネルギーやオーラカメラの詳細を希望したいんだけど、大検証は以上で終わりのようです。大なのに。

一目瞭然の結果に、編集部一同も仰天! 科学的な検証には、何度も同じ条件で実験し、再現性を証明しなくてはなりませんが、今回の実験だけでも、石になんらかの作用や効果がある可能性は、じゅうぶん考えられるでしょう。


すっげー曖昧です。鰯の頭も信心からと言いますから、わざわざ「科学的」な信憑性を纏おうとしなくてもいいと思うんだけど。

今、それぞれの意志が持つ効能や癒しのパワーに注目する人が急増し、巷でもパワーストーンの人気が高まっているようです。


巷て(笑)。他にもなんか、雑誌の最後に掲載されているあの手の、日サロとか脱毛剤とか育毛剤とか包茎手術とか整形外科とかヤセサプリとかローンとか出会い系とか魔裟斗推薦のサンドバッグとか、あの辺のスペースで読んだことがあるフレーズが並んでます。


ちなみに、石にはそれぞれ色んな効果があるらしいのだけれど、気になったのは例えば次のようなもの。

ムーンストーン…「遠距離恋愛をサポートする」
タイガースアイ…「ギャンブルに強くなる」「ストーカーやセクハラ、嫌な人を退ける」
ガーネット…「冷めた夫婦仲を復活させる」
ローズクオーツ…「肌を美しくする」
カーネリアン…「引きこもりを解消する」
クリアクオーツ…「いじめを撃退」し解消する
アンバー…「肝機能を高めてくれる」
シトリン…「ダイエットをサポートする」
オブシディアン…「アルコール依存や喫煙の週刊を断ちたい人にもお勧め」
オレンジカルサイト…「婦人科系の不調を緩和する」
アベンチュリン…「自律神経のバランスを整えて精神を安定させる」


寺院によっては各仏像にそれぞれ役割があったり、テーマパークや遊園地にも「恋に効く泉」的なアトラクションがあったりするわけだから、「願掛け」みたいなものであれば別にいいと思うんだけど、「緑色のパワーストーン」は「ビタミンやミネラルのように、体の機能を微調整する作用もあります」とか、「黄色のパワーストーン」は、「主に腹部に働きかけ、食欲や消化吸収を高め、健康を維持・強化する働きもあります」とかいうのはちょっとどうなんだろうか。


で、特に気になるのが「ひきこもり」に効くという「カーネリアン」の解説。

勇気をもたらし引きこもりを解消する
ナポレオンといえば、誰でも勇猛果敢な将軍と言うイメージを持っていると思います。その彼が、生涯肌身離さず持っていたとされるのが、このカーネリアンです。この石が放つパワーは好奇心を刺激し、人を行動的にさせるようです。
また、無気力さを解消して、結城をもたらしてくれるともいわれています。積極性やバイタリティーが不足しているなと感じている人、引っ込み思案でいま一つ自分に自信が持てない人。そんな弱さを克服し、積極的な生き方を求める人に最適な石です。


ナポレオン>>>>ひきこもり。なんで突然ナポレオンとひきこもりが対比されるのだろう。「とにかく偉人」とか「とにかく伝説」みたいな感じなのだろうか*1。

*1:「とにかく伝説」といえば、以前「アルコフェリーチェ」という宝石販売のキャッチに声をかけられたとき、「インドでは戦いに行く際に身につけていた宝石を一番大事な人に贈るという風習がある。ロマンチックでしょ」とかなんとか言われたことがあった。そんな「アルコフェリーチェ」のHPでは、「ウェブサイトのリニューアルを記念してもれなく全員にネックレスをプレゼント!」というのを2年前くらいからやってる。いつまでリニューアルを記念してるのだろうか。