「文化」という言葉

いわゆる人間の趣味に当たる行動に「文化」という言葉をつけると、実はなんでもそれっぽいものとなってしまう。便利な言葉である。文化として社会的に認められると、いろいろなメリットがあるので、ニコニコ動画もがんばって「文化」の仲間入りを目指している。文化と名がつくと文部科学省から補助金をもらったり(?)、大企業にスポンサーになってもらいやすい、などの効果があるようだ。
「萌え」も文化、ブログも確か文化、の名を冠している。音楽文化、お笑い、伝統芸能、さまざまな文化がある。文化というからにはそれなりの歴史と伝統、そしてそれをたしなむ人の人口も、決してメジャーじゃないにしても一定数いるんだろう。「文化」はそんなイメージを抱かせる。アフリカの奥地の、現代人から見たら奇異と見られる行動や様式がTVで放送されても、「これが文化です」と言われると、ああそうか、文化なら仕方がないと納得してしまう。
「iPod課金」は「文化を守るため」――権利者団体が「Culture First」発表
名前が実にカッコいい。文化を守る、まさにそんなこと言われたら逆らいようがない。文化が危機的状態にあるため、それを守らなければならない。なるほど確かに、そうなのかもしれない。見出しだけだったらうっかり誤解しそうな崇高なテーマである、「文化を守る」_____いやーいい響きだ。
さて、内容。
中身を見て思った。このニュース、論理構成がどこか飛んでいる、もしくは飛躍が大いに疑われる内容ではないかと思う。新手の詐欺ですか。夕刊の見出しじゃあるまいし・・・。

「文化の問題は、地球温暖化と根が同じ」(そうなのか?まあいいや、それは)
「世界に冠たる『文化』(Culture)が重要視される社会の実現を目指す。経済発展は情報社会の拡大を目的にした提案や計画が、文化の担い手を犠牲にして進められることがないよう」(崇高だ・・・)
華頂尚隆次長は「文化振興を語る上で、ソフトとハードを鶏と卵に例えることが多いが、文化の場合は作品が先に生まれ、複製機器が後で普及する。文化の担い手による作品がまずある。始めに文化ありき、だ」と強調する。
おお、DL違法化の時にもでてらした華頂さんだ。名前が特徴的なので覚えてしまった。なんかもっともらしいこと言って(ry、いや、みごとなご高説、拝伏いたしました。
「補償金が危機的状況に」何やら話がきな臭い方向へ。いよいよ本題に入ってまいりました。ふむふむ、要は他のハードウェアにも補償金支払わせて補償金徴収させろ、ということですね。
そういう形で話のペースをもっていかれるとそのままやられそうなので、軌道修正。
Webや、DVDデッキなどのハードウェアの出現は時代の進歩の産物であり、止めようはない。→だから補償金対象にしましょう、じゃなくて、→新たに文化が守られるような仕組みを考えていきましょう、の方向の方が、時代に合わせた形でいいんでないかなぁ、と思うことが一つ。
趣味の一つである将棋などの文化も今、新聞社からの収入によって大半がまかなわれている状況で、これから先どうなるのか、という不安はある。50年後に残っているかというと、正直疑問を感じる。
ただ、今回の話に関しては、JASRACが増し増ししたその補償金で、どこのどの文化をどのように守っていくのか。現在、JASRACによってどう具体的に守られているのか。そこら辺を詳しくJASRACに説明してほしいなぁ、とは思う。補償金の内訳グラフとか。そこが不透明だから、あらぬ疑い(?)や批判を浴びるのだと思う。あらゆる企業や団体が会計の透明化の流れになっているのだから、JASRACさんも是非消費者に積極的にアピールしてほしいところです。決してボったくってるわけじゃないですよって。
さんざん冒頭で皮肉っているが、別に文化という言葉が正しい使われ方をする限りにおいては、文化とは素晴らしいものだと思う。効率的ではないかもしれないが。文化は人の営みの中で生まれてくる、心の余裕や創造の部分の結晶であると私は思っていて、それはとても大切なものではあると思う。場合によっては保護する必要はあるものだと思う。
ただこのニュースに書かれてある「文化を守る」という言葉や、cluture firstは、文化という名を借りた文化利権団体の搾取行為のように見えて、連発されている「文化」という言葉がどうしても空々しく聞こえてしまう。時代が進歩するときは、いつだってこういう摩擦や論争が行われるのかもしれないが、新たなハードやサービスが次々と出てきた以上、既存の延長ルールで無理やり型にはめようとするとルールがきしむので、コンテンツや文化を新たにとらえなおし、ビジネスモデルを論議しなおすことから始めていった方が、これから何十年先という長期スパンで見ていった時には、その方が良いのではないかと思う。