柿

夫は若い女に興味がないと言う。「女は腐る直前がいい」んだそうだ。
「柿でもな、腐る直前が一番うまいんだ。なんでか知ってるか」
「糖分がいっぱい出るからでしょ」
「なんでその時に糖分がいっぱい出るか」
「なんで?」
「腐る直前に思い切り甘い匂いを出して、鳥や昆虫に「早く食べて食べて」とアピールしてるんだ。それで種をあちこちにバラ撒けるから。下に落ちて腐ってまってからじゃ遅いだろ」
「ふーん‥‥そうすると、私なんかは今「早く食べて食べて」とアピールしてることになるわけね、時期的に」
「いやもう手遅れになりつつある」
「なに? じゃ食べたらあたるんかい」
「腹痛と下痢に苦しむ」
「どうせ渋柿だから最初から食べられませんよだ」
「じゃあ干し柿にすればいい。軒に吊るして寒風に晒すとどんどん水気が蒸発してシワシワになってカビが‥‥」
「それ以上言うな」





言うと暴れるぞ。