ノートの作り方(私家版)

togetter.com

可積分系の研究者 takey_y さんによる、数学書の読み方、数学を勉強するときのノートの作り方。数学以外の(ちょっと難しいと感じる)科目にも応用可能と思われます。こういう骨の折れる作業を怠る人、怠らない人。これが数学や物理学を好きになるかならないかの分岐点な気がします。

Tsukuba.R #7 でたまたま「パターン認識と機械学習(PRML)」のお勉強に使っているノートを広げて話す機会があって、そんなノート作ってんのと驚かれたことに驚いたのだけど、この Togetter 見て、なんか納得した。
技術者界隈では時折「写経」って言葉が使われてるけど、本当に手でノートに写している人って実は少ないのかな。まさか本に載ってるコードを打ち込むことを「写経」とは言わんよなあ……。
逆に、他の人はどうやってこの手の本を勉強しているんだろう。


以下、自分流のノートの作り方。
PRML を例にしているけど、他でも大して変わらない。

とりあえず、本に出てくる定義・命題・補題・定理を、一字一句そのままノートに書きうつしてください。自分なりにまとめたりせず、とりあえずそのまま書く。本に書いてあることを、なぜ写すのか、無駄に思えるかも知れないけど、写すことでいろんなことに気づきます。これはやってみると分かる。(続

PRML は定義をちゃんと定義として書いてくれていなくて、文章として書かれている*1。なので、丸写しせず、要点をまとめている。
用語はできるだけ英語表記。論文を英語で読むときに、その方が助かるから。


論文を読むときは定義・定理はだいたい一字一句写している。
さすがに論文は、おおむね定理は定理として書いてくれているからね。

で、そのときに登場している単語(用語)の定義を言えるかどうか、ひとつひとつ自分でチェックする。もし言えないようなら、後ろに戻って復習する (ここをサボらないことが大事です)。もし忘れてたとしても凹まないこと。それが普通です(笑)。何度でも何度でも復習すればいいのさね。(続

定義を忘れた場合は、振り返って定義を確認するだけじゃあなくて、ノートの今書いている場所に写す。
同じ定義がノートに何度も登場することになるが、全然気にしない。
ベイズの公式とガウス分布の定義式はいったい何回書いたことか。


ただし PRML の場合は、そもそも定義が書いていなかったり、曖昧だったりすることもままある*2。
PRML 読書会で一緒している人は、「また未定義で言葉使って!」とプンスカしている n_shuyo を目撃したことがあるんじゃあないかと(苦笑)。
でも、未定義で言葉を使われても特に何とも思わないって、言葉の定義を気にしてない=明確に意味がわかってない言葉が残っている(ことに気づいていない)わけで、それで理解していると言えるのかな?

それできちんと理解できたら、もとの分からなかった一文に、自分なりの解説をつける。この解説は、その時点での自分のために書くのではなくて、将来その本の内容を忘れちゃってるかも知れない自分がノートを読み直して分かるように書く。自分を気づかって書くんだから、誰の目を気にすることもなく(続

わかりやすいように書き直す。
注釈を付ける(特に数式)
重要なところや疑問点を協調する。
動機。なぜそういう定義を考えるか、何が嬉しいか。
自分で例を考えてみる。
そして、落書き。
そういう本に載ってないことをガンガン書き込む。


ただ、後で見返すことは全く考えずに書き殴っているので、ノートはとても汚い(苦笑
さらに、余白が残っているのが気に入らない貧乏性なので、書き込みが密度高め。
上や下の余白も書き込みで埋まっていたり、他の文章の上に別の数式が書いてあるなんてことも……。

こういう作業をしてると、本を読むのにとてつもない時間がかかると思うでしょう。それで良いんです。それが普通です。数学書は燃費が良いんです(笑)。でも、たとえ一冊でもそういう作業をすれば、自信が持てるし、二冊めからはもっとスイスイ読めるようになります。是非お試しを。終わり。

補足ですが、@noricoco 先生もおっしゃっているように、本というのは、本気で読むと、絶対に時間がかかります。悪戦苦闘して、七転八倒して読んだ本の内容は、必ず身につきますし、忘れません。数学の人は、みんな実体験として知っています。あせらずあきらめず楽しんで、頑張りましょう!

「たとえ一冊でもそういう作業をすれば、自信が持てる」「数学の人は、みんな実体験として知っています」
おっしゃられているとおりです。すばらしい。


証拠写真。
汚い……けど、これでも一番見やすいページだったり。他のページはちょっと見せられない……。

*1:数学書ではないので……

*2:数学書ではないので……