in between days

表参道で働くシニアのブログ

江渡浩一郎『パターン、Wiki、XP 』刊行記念トークセッション「時を超えた創造の原則」に行ってきた

メディアアーティストの江渡さんが初の単著『パターン、Wiki、XP』を出されて、その刊行記念トークセッションが先日開催された。

インフォメーション:7月9日に,ジュンク堂書店池袋本店にて『パターン、Wiki、XP 』(江渡浩一郎著)の刊行記念トークセッションが開催|gihyo.jp … 技術評論社

で、行けたので、twitterで中継したんですが、公式タグが「#patternwikixp」ってことを知らないで書いてたのであまり読んでたひとも少なかったかも。ということでまとめてみました。どうぞ

パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

第一部

[]7
12 PM[]:角谷「今日は、本を全部読んだひとはまだ会場にいないはずなので、本の内容を踏まえて勝手なことを語る回。江渡さんにまず想いを語ってもらいます」
[]7
13 PM[]:江渡「2007年のオブジェクト倶楽部の講演がきっかけで、技評の稲尾さんにぜひやりましょう!とさそわれる」
[]7
16 PM[]:江渡「2008年春にプロジェクト開始。いろいろな方にインタビューして「よし書くぞ」と始めたが、秋頃かなり行き詰まってたいへんだった。2009年春に角谷さん懸田さんにレビューしてもらって、かなりよくなった。2部と3部が入れ替わるなどかなり大きな改造」
[]7
17 PM[]:江渡「たくさんイベントやります。まず今日。17日のRuby会議でLT「Rubyとの関わり」/31日にアーバンコンピューティングシンポジウムで濱野さんと。8/8に「Wikiばな」」
[]7
20 PM[]:江渡「なぜこの本を書くことにしたのか。Wikiに興味があった。自分でも作った(qwikWeb)。このときにいろいろなひとと議論をすることが役に立っている」
[]7
22 PM[]:江渡「機能を追加していくと、機能を追加したことで、(全体が)悪くなることがある。良い機能追加と、悪い機能追加がある。Wikiの本質を強化する機能追加は良い機能追加。では「Wikiの本質」とは何か?」
[]7
23 PM[]:江渡「もうひとつ、デザインパターンという定石集にも興味があった。」
[]7
23 PM[]:江渡「アレグザンダーの「パターンランゲージ」とプログラミングの「デザインパターン」には違いがあるんじゃないか。大切なものを取り落としてるんじゃないかという疑問があった。」
[]7
24 PM[]:江渡「原点に当たってみると、「コンピューターユーザーは、自分自身のプログラムを書くべきである」と書いてある。(いまのいわゆる)「デザインパターン」はそこからから離れてしまっているのではなかいか」
[]7
24 PM[]:江渡「もうひとつXPにも興味を持っていた。」
[]7
26 PM[]:江渡「パターンランゲージ」をプログラミングへの再輸入が「XP」。XPが生まれた土台は「Wiki」という議論の場だった」
[]7
27 PM[]:江渡「問題意識がつながっていたので、「パタンランゲージ」「Wiki」「XP」は非常に密接につながっていた。それをまとめたのがこの本です」
[]7
29 PM[]:江渡「まずアレグザンダーの建築理論の変遷をまとめた」
[]7
29 PM[]:江渡「デザインすることはクリエイティブなことと思われがちだけど、初期のアレグザンダーはあえてその「デザインっぽい」ことを、数学で表現できるような問題に落とし込むことをした。」
[]7
31 PM[]:江渡「やがて、人口都市は都市の深みを持っていないというようなことを言うようになる。そして、利用者が参加することによって建築を進めていきましょうということを言うようになる。」
[]7
34 PM[]:江渡「何が変わったか。自然都市のあり方を建築に取り込むために「利用者が建築に参加する」という実験を行い、その本を書き、そのために使ったものが「パターンランゲージ」だった」
[]7
34 PM[]:江渡「「無名の質」という概念が出てきて、これは説明が難しいが、敢えて説明するなら、人口都市と自然都市の対立。人口都市には自然都市にあるような「良い感じ」がない。それが「無名の質」と呼んだ」
[]7
35 PM[]:江渡「これは本に書いてないことですが、『科学の方法』を書いた中谷宇吉郎がいっているが、「形」を科学の対象とするのは難しい。「パターン」はそれにトライしようとしている」
[]7
36 PM[]:江渡「アレグザンダーは人間が制御可能な方法でそれを実現するにはどうすればいいかにトライした。」
[]7
37 PM[]:江渡「書いてみての発見。いろいろなことがわかった。ベックとカニンガムは「デザインパターン」にも深く関与している。2人も参加したコミュニティの議論の成果物として「デザインパターン」がある。」
[]7
39 PM[]:江渡「Wikipediaについても発見があった。WikipediaはWikiを「道具」として使っているだけで(思想としては)関係ないんじゃないかと思っていたが、調べていくうちに、Wikiの考え方とWikipediaは関係あるということもわかった」

第二部

ここからは角谷さんと懸田さんが壁に大きな紙を貼ってブレスト的というかアジャイル的にどんどん話を掛け合いで進めていったので、まったくサマリーできていません。部分的なサンプリングです。発言者が空白になっているのは誰の発言とも言い難い発言です。

[]7
39 PM[]:江渡「ここからトークセッションです。XPについてすごく深く考えているお二人をお呼びしました」
[]7
41 PM[]:角谷「結論は出ないと思いますが、おもしろい話はできるとおもいますw。Wikiのはなしは今日はしません。Wikiバナでやるので。だからWikiの話をききたいひとはWikiばなの申し込み急げ!」
[]7
43 PM[]:懸田「沢田マンションはアジャイルだし、アレグザンダーがやりたかったことをやってるすごいマンション! でもその話は今日はしません(wikiばなで)」
[]7
44 PM[]:角谷「(本を手にとって)これもスゴイ本です! でも今日はこのはなしはしません」
[]7
46 PM[]:角谷「ジム・コプリエンという人がソフトウェアとパターンをつなぐ上で重要な位置にいる」
[]7
54 PM[]:江渡「確かにおっしゃるとおりで、「創造の原則」というサブタイトルは釣りです。「生成」というべきところ」
[]7
56 PM[]:江渡「アレグザンダーが言っていることは、近代における芸術のあり方、独特の発想、とかと正反対のベクトルを向いていて、それを理解するのに時間がかかった。」
[]7
56 PM[]:江渡「モダンな建築がちょうど生まれたその真ん中にいたにもかかわらず、それを全否定して、プレモダンに返って取り戻そうとした。そのために使われたのは「パターンランゲージ」」
[]7
58 PM[]:角谷「それで思い出したのは、アジャイルが好きなひとは、管理用のちゃんとしたツールじゃなく、模造紙の上に付箋紙をはるとか、こういう(前近代的な手法?)がなんか好きなんですよね」
[]8
01 PM[]:角谷「Rubyにも、説明できないけどなんかいいところ「無名の質」がなんかある。その「無名の質」を「Nature of Order」という本でついに説明しはじめる。」
[]8
02 PM[]:角谷「ちなみにこれ(分厚い「Nature of Order」を手に取って)はこの店の本棚にあるのを借りてきました。「ありますか?」と聞いたら「あります」って、なんでもある。ほんとにいい本屋ですw」
[]8
07 PM[]:江渡「どうやればパターンランゲージを作れるのかということはとても難しい。でもそれが一番大切なんです。自分でパターンを見つけ出すこと。見つけ出すための15のプロパティを書いたのが「Nature of Order」で」
[]8
08 PM[]:江渡「「Nature of Order」で、真面目な形の科学なので、直接なにかに応用するのは難しいんだけど、その背後にあることを真剣に考えた本です」
[]8
08 PM[]:江渡「C++のときはイテレーターはパターンとして書かれていたが、松本さんはRubyという言語を作ったときに、イテレーターをあたかも自然のもののように言語の中に入れてしまった。これが構造保存変換ですよ」
[]8
12 PM[]:「利用者のオーダーを受けて制作するソフトウェアの受託開発は、建築にすごく近い」
[]8
12 PM[]:「自然(=ハッカー)がやっていることを、人(普通のプログラマー)がどのように同じことができるのか」
[]8
16 PM[]:懸田「人間を造るときに、手を作って、足を作って、頭を作って、つなぎ合わせば人間になるかというとならない。赤ん坊はすごく小さいけれど手も足も髪の毛もすべてある。それの全体がそのまま大きくなっていく。構造保存変換ということはそういうものではないか」
[]8
18 PM[]:角谷「あと10分です」懸田「じゃあこのくらいにしとくか」
[]8
19 PM[]:「ハッカーが誰にも言われることなく身につけた「ハッカーらしいやり方」を、ハッカーではないひとも再現できるように言語化したものがXP」「ハッカーは息をするようにプログラムを“生成”する」
[]8
19 PM[]:「献本して(レビューしてもらって)わかったのは、すごいひと(レビュワー)は「生成」に気付く」「だてにサスペンダーをしてたり、WikiWayをホンヤクしてたりするわけじゃない」
[]8
20 PM[]:「生成(generative)」
[]8
22 PM[]:そういう意味でいま読むべき本は『アート・オブ・アジャイル デベロップメント ―組織を成功に導くエクストリームプログラミング (THEORY/IN/PRACTICE)
[]8
31 PM[]:江渡「アレグザンダーとはなんぞやに興味を持ったら『パタン・ランゲージによる住まいづくり』をまず読むとよい」
[]8
34 PM[]:懸田「(推薦は『パタンランゲージによる住宅の建設 (SDライブラリー)』で)コストコントロールとスケーリングは XP に無い。それをこの本は説明しているのが良い」
[]8
37 PM[]:角谷「(今日のメモ書きを見ながら)1冊の本からこれだけ広がるってスゴイことですよ。これだ全部畳み込まれてて、それがみなさんの心の中に広がる」
[]8
37 PM[]:江渡「アレグザンダーのところはとくに読んで「あーわかった!」とはならないかもしれないが、そのときは原著にあたってください」(会場笑い)
[]8
38 PM[]:江渡「ケントやカンニガムは、そのわけのわからないものをプログラミングに応用できないかとわからないなりにやってみた。それがエライ」
[]8
51 PM[]:客席から提示された結論てきなもの「メンテナンスしやすいソフトウェアは構造保存変換が成り立つようなソフトウェアであり、それを作るためにみんないろいろなことを考えているんだ」

当日はustされてて、その動画があとで技評のサイトにアップされるそうなので、それまでのつなぎにどうぞ。本はこれから読みます。

パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)