kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

今後の日本は「新保守」と「ネオリベ」の二大勢力中心の時代を迎える

英フィナンシャル・タイムズの記事の翻訳が日経のサイトに出ている。


[FT]世界中で富裕層に逆風 格差は縮小に転じるか :日本経済新聞

[FT]世界中で富裕層に逆風 格差は縮小に転じるか
2012/8/8 7:00
(2012年8月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


 政治家が納税者の愛国心に訴え始めるのが、良い兆候だったためしはない。フランスのピエール・モスコビシ経済相は、所得税の最高税率を75%に引き上げることを決めたフランス政府の決定を擁護して、ルモンド紙にこう語った。「これは懲罰的な措置ではなく、愛国的な措置だ」。同氏いわく、金持ちはフランスの財政問題の解決に「特別な貢献」を果たすチャンスを与えられたのだ。富裕層はさぞ感謝しているに違いない。

■欧米から中国まで広がるトレンドに

 フランスは税率を近隣国よりはるかに高い水準に引き上げることで、明らかに大きな危険を冒している。しかし、オランド政権を時代遅れの社会主義者として描くのは間違いだ。フランスの新政府は、新しい世界的なトレンドの極端な事例なのだ。富裕層に対する国際的な逆風が、欧州や米国、中国で政治を変えつつある。

 英国のデビッド・キャメロン首相は税金を逃れて移住してくるフランス人を、赤じゅうたんを敷いて歓迎すると語った。だが、最高税率が45%の英国ですら、富裕層への敵意が広がりつつある。保守系の政治家でさえ、銀行幹部の報酬を擁護しようとはしない。

 一方、米国では、バラク・オバマ大統領が「百万長者や億万長者」に対する増税を掲げて選挙運動を繰り広げている。確かにオバマ大統領が望む増税は、フランスの標準からすると笑えるほど小幅だ。大統領は現在35%の最高税率を39.6%にすると同時に、キャピタルゲインと配当金にかかる税率の引き上げを求めている。

 だが、オバマ大統領の発言には、オランド大統領がフランスで成功を収めた選挙運動と紛れもなく同じ響きがある。フランス社会党は、ニコラ・サルコジ氏の「きらびやかな」ライフスタイルと、大富豪との友達づきあいをことさら強調した。同じようにオバマ陣営は、税金を逃れる「1%」の代表者としてミット・ロムニー氏を攻撃し、ロムニー夫人が競技馬を所有していることをからかった。

■格差に敏感になる世論

 米国人は伝統的に、金持ちを妬む代わりに称賛すると言われており、こうした作戦は危険に見える。だが、オバマ陣営は世論調査の数字を読んでいる。64%対33%の割合で、米国人の大半が年収25万ドル以上の層への増税を支持している。

 富裕層とそれ以外の格差という政治的に敏感な問題は欧米に限った話ではない。お金と権力を持つ人々のライフスタイルは、今や中国の政治で最もデリケートかつ危険な話題だ。最近、ブルームバーグニュースのウェブサイトが中国で遮断されたのは、近く中国の国家主席になる習近平氏の一族の財産について記事を掲載したことに対する処罰と言われる。

 数週間前にあった啓東市の汚染を巡る暴動では、地元の共産党幹部が着ている洋服のブランドを教えろと抗議者が要求して事態が悪化した。英国放送協会(BBC)は「高価なイタリアブランドだと知ると、彼らは幹部の服をはぎ取り、上半身を裸にさせたと言われる」と報じた。

 なぜ、こんなことが起きるのか?エコノミスト誌のザニー・ミントン・ベドーズ氏が最近書いたように、「世界の市民の大多数は今、金持ちとその他の格差が1世代前より格段に大きくなった国々に暮らしている」からだ。そのトレンドが最も極端だったのが欧米だ。同氏が指摘するように、米国では「富裕層の上位1%に流れ込む国民所得の割合が、1970年代の8%から2007年の24%へ3倍に拡大した」。

■格差拡大の時代が終わりに

 最終的に、こうした変化は政治的な反発を招かずにはいられない。その引き金になったのは、一般市民の生活を圧迫する一方でトップ層の不正を暴いた「グレート・リセッション(大不況)」だ。オバマ大統領からオランド大統領まで、欧米の政治家はこの新たなムードをうまく捉え、導こうとしている。大不況の打撃がそれほど大きくなかったアジアでは、ほかの要素が働いているかもしれない。インターネットとマイクロブログの台頭で情報を広めやすくなり、追い詰められた労働者と大金持ちの格差に対して怒りをかき立てるのが容易になった。

 新たなムードが一層強まれば、70年代終盤に欧米ではマーガレット・サッチャーとロナルド・レーガンの両氏、中国ではトウ小平氏の政権獲得で始まった、減税と規制緩和、格差拡大の時代が終わりを告げるかもしれない。サッチャー氏が79年に首相に就いた時、英国の最高税率は83%だった。彼女はこれをまず60%、さらには40%へ引き下げた。この水準は金融危機まで続いた。前政権から70%の最高税率を引き継いだレーガン氏は、それを50%に引き下げ、最終的には28%にした。中国では、「金持ちになることは素晴らしい」と語ったトウ小平氏の言葉が時代の精神をうまく捉えていた。

■30年ぶりに訪れた激変期

 今や世界中に新たなムードが広がった。中国では、政治指導者が富を素直に称賛するのを控えている。欧米では、財政運営に苦しむ政治家が嫌われ者になった富裕層に熱心に増税を課そうとしている。大きな疑問は、グローバル化した世界でこれがまだ可能かどうかだ。キャメロン首相の軽率な赤じゅうたん発言が浮き彫りにしたように、税率をいきなり大幅に引き上げる政府は、資本と企業の逃避を引き起こす恐れがある。大金持ちは移動をいとわず賢明だ。

 だが、そこそこ裕福なだけの人は欧米各地の新たな増税措置を避けるのが難しいことに気づきそうだ。サッチャー氏が79年に破った当時の首相、ジェームズ・キャラハン氏は示唆に富んだ発言をしている。「恐らく30年に1度ほど、政治が激変する時がある」。サッチャー・レーガン時代の始まりからほぼ30年たった今、新たな激変期がやってきた。

By Gideon Rachman

(翻訳協力 JBpress)


「富裕層に逆風」というタイトルなど、「富裕層側」からの表現には敵意さえ覚えるが、記事の内容そのものは、まあそんなところだろうという感想。

しかし、いつも世界の「周回遅れ」である日本では、「富裕層増税」を異様に敵視し、消費税増税法案は、これまでのように所得税減税とセットにならなかったとはいえ、自公、特に自民党の強い圧力によって所得税増税などの当初の案は削られ、消費税に特化した増税になった。また、消費税増税には反対するが「減税」や「小さな政府」に傾斜する政党として、2009年8月に結党された「みんなの党」を皮切りに、「減税日本」、「大阪維新の会」といった地域政党、それに民主党から分かれた「国民の生活が第一」などの富裕層優遇を志向する新自由主義政党が次々と現れている。

おそらく、日本でも数年後には世界各国に影響されて「再分配強化」志向が主流になるだろうが、それに先立って、次の総選挙で民主党が壊滅、自民党が政権に復帰して、それに対抗する「みんな、維新、生活」連合という新たな対立構図が生まれるだろう。これは、すっかり極右化した「新保守」の自民党対新自由主義勢力の「みんな、維新、生活」(但し維新は強烈な「新保守」政党でもある)不毛の対立構図だ。この構図では天下がとれないから自民党を分裂させようとしているのが橋下徹だという穿った見方もあるが(田原総一朗など)、いずれにしても日本と政治と経済が今後数年、さらにひどいダメージを受ける時代が来ることは絶対に間違いない。上記FTの記事にあるように、世界各国が再分配政策で経済を立て直す中、相変わらず「トリクル・ダウン」理論に基づいて富裕層を優遇し続ける日本経済は、さらにこっぴどく低落するに違いないからだ。

このような状態を招いた3代の民主党政権の責任はきわめて重く、既に総理大臣を辞めた鳩山と菅は次期総選挙には立候補すべきではないと私は思っているが、自民党(あるいは自公民)や「維新、みんな、生活」によって痛めつけられていったん焦土と化す時期を経なければ再興できないであろうこの国は、つくづくどうしようもないと思う次第である。