木走日記

場末の時事評論

深刻なモラルハザードを招きかねない理研の記者会見

 12日の時点で当ブログとして、小保方晴子さんは科学者として完全にアウトであるとエントリーにて指摘しています。

2014-03-12 学生時代からの剽窃常習犯である小保方晴子さんは完全にアウト
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20140312

 小保方晴子さんの、博士号を得るため早稲田大に提出した英語の博士論文に、剽窃(ひょうせつ,Plagiarism)、他人の技術的成果物をクレジット表示することなく論文に取り込むことですが、学術論文では絶対にあってはならない禁じ手が認められたのです。

 エントリーより抜粋。

 うむ、小保方晴子さんの、博士号を得るため早稲田大に提出した英語の博士論文の冒頭部分が、米国立衛生研究所(NIH)のサイトの文章とほぼ同じだったことが11日判明しました。

 20ページがほぼ同じ記述ということは、これは完全に剽窃(ひょうせつ,Plagiarism)であります、他人の技術的成果物をクレジット表示することなく論文に取り込むという、学術論文では絶対にあってはならない禁じ手であります。

 ネット上ではこの冒頭部分以外でも論文本体や写真、background(引用論文一覧)など多数の箇所に剽窃やデータ偽造が疑われています。

 下のまとめサイトが技術的にもよくまとめられていますのでご紹介。

小保方晴子の博士論文の疑惑まとめ
http://stapcells.blogspot.jp/2014/02/blog-post_2064.html

 続けて、理系の学生レポートを日頃チェックしている私自身の経験から、剽窃チェッカーなどのソフトを使用していることを説明してます。

 私は工学系大学などで講師をしている関係で主に工学系ですが学生の論文を読む機会が多いのですが、剽窃チェッカーでコピペはチェックしています。

 ほっとくと課題レポートなどコピペの巣窟(そうくつ)になってしまうので、最初にしっかりとチェックし学生に突き返し、コピペはバレることを知らしめるのです。

 たとえばこのようなのです。

剽窃チェッカー:レポートなどの文がコピペかどうかチェックします
http://plagiarism.strud.net/

 不正な写真捏造や他者論文の剽窃が指摘されている今回のSTAP細胞論文だけでなく、学生時代の博士論文ですでに剽窃が指摘を受けていることから、「小保方晴子さんは学生時代からの剽窃常習犯である」とし、「STAP細胞論文の取り消しどころか博士号の取り消しも視野に入っている」との推測で結んでいます。

 早稲田大学は博士論文に引用剽窃チェッカーをかけなかったのでしょうか、初歩的な疑問なのです。

 いずれにしても私の経験上の印象では、小保方晴子さんは学生時代からの剽窃常習犯であると思われます。

 学生時代からの剽窃手法を今回のSTAP細胞論文でも犯していたのならば、完全にアウトです。

 技術的内容の正誤の以前の哲学・マナーの問題で、科学者としてアウトです。

 早稲田大学の調査を待たなければなりませんが、STAP細胞論文の取り消しどころか博士号の取り消しも視野に入っていることでしょう。

 ・・・

 さて、今回の理研の記者会見の酷さには呆れてしまいました。

STAP細胞:理化学研究所の会見一問一答
2014年03月14日
http://mainichi.jp/feature/news/20140314mog00m040006000c.html

 野依良治理事長らは「論文の作成の過程に重大な過誤」はあったが「現時点では研究不正に当たる点はないと判断した」のだと説明しています。

 「現時点では研究不正に当たる点はない」とは甘すぎる判断です。

 川合真紀研究担当理事は記者会見で今回の論文が「科学者の良識から考えると常道を逸している」ことを認めています。

 Q 研究倫理に反するという発言は具体的に何を指すのか。

 川合 電気泳動の結果の画像を切り張りしてくっつけることは、研究者倫理にのっとっていないという指摘があるし、倫理的に正しくないデータ処理だと考えている。他者の論文を載せたことも倫理に反すると思う。また間違えたもの(画像など)を載せて気付かないというのも、科学者の良識から考えると常道を逸している。

 「結果の画像を切り張りしてくっつけること」も、「他者の論文を載せたこと」も、科学者として倫理違反は明確です。

 研究者倫理にのっとっていない論文が作成されているのが明確なのに、「現時点では研究不正に当たる点はないと判断した」とは甘いとしか言えません。

 また、石井俊輔・研究論文の疑義に関する調査委員長は博士論文の画像の転用について、「客観的にみてかなりレアなケース」と認めています。

 Q 博士論文の画像の転用について小保方さんの説明は。

 石井 だいぶ昔に、骨髄由来の血液細胞を使い、このような画像を得ていた。それを間違って使ってしまったという説明だ。

 Q そういうことはありえるのか。

 石井 客観的にみてかなりレアなケースだ。そこが調査継続中になっていることを理解してほしい。

 過去論文に掲載した実験写真を「間違って使ってしまった」などと説明する科学者など確かに「客観的にみてかなりレアなケース」でしょう、私から言わせていただければ、意図を持って転用しない限り「間違って」使用することなど有り得ません。

 このように論文に悪意ある剽窃や改ざんが複数認められているにもかかわらず、「現時点では研究不正に当たる点はないと判断した」とは、科学実験における学術論文のステータス・権威を著しく冒涜するものです。

 一般論で言えばここまで論文に不正があれば、実験そのものに「不正」がなかったとしても、科学的信ぴょう性はゼロです。 

 私は、日頃学生の剽窃行為には厳しくペナルティを課しています、科学レポートを学生に指導する立場から今回の理研の判断は甘すぎると言わざるを得ません。

 学術論文における剽窃は場合によっては、それだけでその実験全体の価値を無くしてしまうほどの「不正」行為なのです。 

 野依理事長は記者会見で次のように話しています。

 処分とは関係ないが、今回のように未熟な研究者が膨大なデータを集積し、ずさんに無責任に扱ってきたことはあってはならない。徹底的に教育し直さないといけない。こういうことが出たのは氷山の一角かもしれない。川合理事が言うように倫理教育をもう一度徹底してやり直し指導していきたい。

 「未熟な研究者が膨大なデータを集積し、ずさんに無責任に扱ってきた」と小保方晴子さん一人に責任を集約しているような発言をしていますが、これも理事長の立場としてまったくナンセンスな発言です。

 もちろん最終的には小保方晴子さんに説明責任はありますが、野依理事長は小保方晴子さんの属する組織のトップの立場です、最高責任者です。

 これでは昔、賞味期限の不正表示が発覚した際に記者会見で最初社員のせいにして顰蹙を買った社長と同じです。

 この不正な論文に対して誰も責任を取らない、ペナルティが課されないとすれば、学生たちに示しが付きません、深刻なモラルハザードになります。

 工学系大学の教育現場に携わるものの一人として、今回の理研の判断は酷過ぎると思います。



(木走まさみず)