労働需要の縮小、内向き、そしてベーシックインカム。

いつものRSSリーダ+はてブ巡回*1。
ここしばらくこの記事のタイトルの単語の入った記事が著名ブログ周辺で出ていたが、今日は特に目に付いたように思えたので覚書程度にまとめ。

労働需要の縮小(池田信夫blogでの一連の記事)

最初に、技術が進めば便利になってGDPは下がる、という話。

たとえばNTTの固定電話収入は1996年には5兆7000億円だったが、昨年は1兆8000億円になった。その代わりISPが増えたが、この収入は全社あわせて8000億円にすぎない。つまり狭義の通信産業の規模は、GDPベースでは半減したのだが、ユーザーはそれによって不幸になっただろうか?もちろん逆である。この10年で通信トラフィックは数百倍になり、ダイヤルアップとは比較にならない快適な環境が実現した。

だから「コンテンツ産業が*兆円ビジネスになる」という類の政府や御用コンサルタントの常套句は嘘である。狭義の通信産業やメディアが高い収益を上げていたのは、インフラ独占によるレントであり、ITの発達によってそういう超過利潤は減るのだ。次のターゲットは、無線通信である。携帯電話業者の莫大な利潤は電波利権による独占レントだから、ホワイトスペースを免許不要帯に開放すれば、無料で携帯電話サービスを提供する業者も出てきて、超過利潤はゼロに近づくだろう。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/688b42c0750735640aa670bad99f4d0c

その他

で、特に現代日本社会の労働システム周辺について厳しい意見の自説を展開。タイトルも過激目。
そして特に最後の記事で

当ブログで何度も書いているように(労働需要が飽和した特殊な場合を除いて)賃金が下がれば労働需要は必ず増える。利潤も増えるかもしれないが、それだけということはありえない。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/762afce0f2b08c10bd909dde481a2b73

とした。労働需要をあげるためには賃金を下げる手がある。との論。ただしその前提として「経済成長は必ずしも必要ない」という認識でいらっしゃると思われる。
 
これに対して、小飼弾氏。

賃金が上がれば労働需要が減る

は事実でも、

賃金が下がれば労働需要は必ず増える

は事実でないような気がする。
 
(中略)
 
それでも雇用減にそう簡単にはならなかったのは、それをも上回る需要増があって、そこで雇用が吸収されていたからだけれども、今回の世界バブル崩壊は、今度こそ

(労働需要が飽和した特殊な場合を除いて)

が顕在化したという実感がかなりある。

404 Blog Not Found:技術が上がれば労働需要が減る

私個人の意見としても、いろんな要因があるとはいえ、日本の国内の状況でいえば今後労働需要が縮小していくことは間違いないだろうと実感しています。

内向き(内田樹先生からの、問題提起)

こんな判りやすいタイトルで、しかしかなり厚めの文章量の記事を内田先生がアップしてくれています。

先日、苅谷剛彦さんと対談したときに、日本のように「国内に同国語の十分なリテラシーをもつ読者が1億以上」というような市場をもつ国は世界にほとんど存在しない、ということを指摘していただいて、「ほんとにそうだよな」と思ったことがある。
「国内に同国語の十分なリテラシーをもつ読者が一億以上」いるということは、言い換えると、「日本語を解する読者だけを想定して著作や出版をやっていても、飯が食える」ということである。
日本人が「内向き」なのは、要するに「内向きでも飯が食える」からである。
「外向き」じゃないと飯が食えないというのは国内市場が小さすぎるか、制度設計が「外向き」になっているか、どちらかである。

「内向き」で何か問題でも? - 内田樹の研究室

先生としては、そんなに慌てるなよみんな、とユーモア交じりに意見を出されたように思われる。
 
これに対して、今度はわかりやすく噛み付くような格好で小飼弾氏。売文家って(汗)釣りかしら?

そういう市場が二重の意味で少なく小さくなってきたから問題なのだ。

404 Blog Not Found:「内向き」で問題ないのは売文家ぐらい

 
さらに、池田先生も一言。

結論からいうと、「2009年はたぶん日本は『内向きシフト』舵を切るようになると私は推察している」(原文のまま)という彼の意見に、私も賛成だ。ただ私はこの記事を皮肉だと思ったのだが、どうやら内田氏は本気で内向きがいいことだと信じているらしい。
 
(中略)
 
トヨタを筆頭とする輸出産業が総崩れになった日本経済は、結果的には「内向きシフト」をとるだろう。そのためにマイナス成長が続いたら、まっ先にあおりを食うのが私立大学で、すでに半数が定員割れだ。内田氏の勤務する大学がどうかは知らないが、一般論としていえば女子大の経営状況は最悪なので、彼が飯を食えなくなるリスクは、彼が思っているほど小さくない。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/ec32a60c32d34a92fb9026e3c1d1a9bf

て、手厳しい。河童はこの前

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で

これも読んだせいか、やっぱり外国との経済や外交の関わりを考えると日本だけの内向き孤立主義ではジリ貧だよなー、と不安になります。池田先生の意見に賛成したいかしら。

ベーシックインカム、負の所得税(意外な人も含めて、皆が意識しはじめたのかしら?)

そして上記の方々がちょっとずつ触れ始めた「負の所得税」「ベーシックインカム」の話にたどり着く。
二つは別物らしいですね。

根本的な問題は、生活保護が働かないで貧しい人を対象にしており、働いても貧しい人を救済する制度がないことだ。働くより生活保護を受けたほうが高い所得を得られ、少しでも働くと生活保護の支給が打ち切られることが、労働のインセンティブをそいでいる。

この問題の解決策も、フリードマンが45年前に提案している。負の所得税である。これは課税最低所得以下の人に最低所得との差額の一定率を政府が支払うものだ。たとえば最低所得を300万円とし、あるフリーターの所得が180万円だとすると、その差額の(たとえば)50%の60万円を政府が支給する。これなら最賃を規制しなくても最低保障ができるし、働けば必ず所得が増えるのでインセンティブもそこなわない。アメリカでは、これに似た勤労所得税額控除(EITC)が1975年から実施されている。

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/855d2fe7c6f54dda2eeb83eab2e0178e

実は、私もベーシック・インカムには賛成だ。
その理由は、ただ一つ。
それはベーシック・インカムが、受給者、すなわちこの場合は全ての人々に、選択権を与えることと同様だからだ。

404 Blog Not Found:ベーシック・インカムに賛成するのに十分なたった一つの理由

でも実は、こんな方々まで話題にしている。

ちょっと前の話だけど。この仕組み実現できたら、面白いと思う。
だけど、財源がちょっとたりない気がするなあ。
定額給付金みたいに一回こっきりではなく、どうせならずっと配れよ!ということです。

ベーシックインカムの話 | 堀江貴文オフィシャルブログ「六本木で働いていた元社長のアメブロ」

では日本のもつ「弱み」を「強み」に変えてしまうような挽回の策はないのかというと、あるような気がしていて、そのようなことを考える中で頭から離れないのがベーシック・インカムという制度構想のことです。これは生存するのに必要な最低限のお金を全国民に無条件で与えるというアイデアで、同様のものに「負の所得税」というのもあります。これぞ、国家によるパターナリズム全開の、いかにも日本らしい(?)草食動物っぽい仕組みになるような気がしています。

謹賀新年2009:Kenn's Clairvoyance - CNET Japan

小飼弾氏も上記の二人も 「ベーシック・インカム」を支持します - 評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」 に触発されたらしい。
 
本格的に検討すべき時代が来たのだろうか。
もうちょっと考えたい。

*1:まだ職場での年始直後のドタバタが収まりを見せず、このネタしか更新できないという事情は棚に上げておくとして