『チーム・バチスタの栄光』のひどさ

 映画を観たのである。というのも、ツタヤ・ディスカスでは、上位にちゃんと観るべき映画を挙げていても、下位のほうにある、何もなくなったら観るか、と思っているのを送ってくるからである。もっともこの映画を入れておいたのは、さる精神を病んでいる知人が絶賛していたからでもある。
 絶賛でふと思い出したが、書店へ行くと本の帯に「誰それさん大絶賛」などと書いてあるが、見苦しいからやめてほしい。「絶賛」だけで既に最上級なのに、それに大をつけるなバカ。こないだは「大推薦」なんてのがあったが、もう知能指数50か、ってところだ。最近では「大」じゃなくて「神展開」とか「ネ申」とか書いて自分のバカさをさらけだしている奴がいる。
 しかし『バチスタの栄光』はひどかった。売れた割に直木賞候補にもならなかったが、かつて瀬名秀明の『パラサイト・イヴ』を黙殺した時と同じく、伊達に直木賞じゃないなと思ったものである。海堂とかいう医師も瀬名も理系だが、理系ってやっぱりバカなの? という偏見を抱きかねない代物である。
 といっても原作は読んでいないのだが、売れたものだからネット情報だけで、主要人物が男から女に変えられたことと、ここで論じる点は原作どおりであることを確認した。で、世には「ネタバレ」とかいうのを気にする奴がいるが、こんな下らないものどうでもいいことながら、少しあけて書く。

「東京新聞」に平川先生の著者インタビューがあったが、「率直」に異論を提示、ってどこが率直なのか。天皇崇拝家でしょう、という問いに一度も答えないで人を誹謗する人の、どこが率直であるか。
















 だいたい、半ば目が見えなくなった医師が手術、しかも極めて難しい手術を続行して患者を死なせるなんて、立派な業務上過失致死で、三人も殺しているんだkら死刑だぞ、これ。それに手術をする医者が患者を殺すなんてありえない。
 だが問題にしたいのは、海堂という奴の作家倫理である。
 『パラサイト・イヴ』はSFホラーだが、そこに、現実に存在する病気で苦しむ少女の描写を入れているのが、私には小説道の倫理に反していると思えたので批判した(『軟弱者の言い分』)。『バチスタ』もそれに近い。手術中に患者を殺す医師なんぞ描いたら、一部の患者に恐怖心を与えるではないか。そもそも、医療というのは、軽々に推理もののネタなどにしてはいけないのである。この世には、さまざまな難病を抱え、また手術を繰り返す人々がいるのである。ノンフィクション、ないしは事実小説であればよい。だが、こんな下らない、ありえない展開に、そうした難病を素材として使うのは、倫理的に問題がある、と私は考える。