グーグルによってフラット化される世界の唯一の例外

はてなの大御所二人によってグーグルについて書かれたエントリが同時にホットエントリに上がっています。

書いた人がはてなの人で対象がグーグルであること以外に何の関連も無いように見えるかもしれませんが、私は、この二つに深いつながりがあると思います。

梅田さんは「グーグルへの入力を増やそう」と言っていて、naoyaさんはその入力をグーグルがどのように処理しているかについて書いています。

「グーグルを前提として知的生産術を再構成する」ということは、グーグルに入れるべきものを入れてないので、そこに無駄があるという意味です。梅田さんの意図は、全てを公開、共有するということではありませんが、再構成の前にはグーグルに入れる部分はほぼゼロで、再構成の後には、全てではなくてもグーグルに入れておく部分が一定の割合で存在するのですから、グーグルへの入力が増加することは確かです。

あらゆるジャンルのあらゆる「知」が「万人に開かれ」て、梅田さんが書いているような知的生産術の効率のみによるフラットな競争によって全てが決まるようになっていくのは間違いないでしょう。具体的な知的生産術の方法論には異論があるかもしれません。でも、これが全ての人に平等にオープンになってきていることに反論する人は少ないと思います。

知の世界は、これまで山や川や平原といった多種多様な地形があって、その地形の変化は目に見ることができないほどゆっくりなものでした。それがこれからは、海のようにフラットになるのだと思います。海は、近くで見れば平らではなくて、大小さまざまの波がありますが、その波の作り出す地形は目まぐるしく変化します。一瞬だけ屹立する大波はありますが、次の瞬間にはその波は消えさってしまいます。

特定のジャンルの専門家を集めて、独自の技術やノウハウを競争力の源泉としている会社はたくさんありますが、どの知識も急速にフラット化していて、それを専門とする企業の中の技術レベルと、Web上にある知識の差は縮まってきています。

グーグルもその例外ではなく、naoya さんの手際の良い解説に見られるように、グーグル独自の技術である大規模分散処理に関するノウハウも、急速に解剖されフラットに世界中に広がっているように思えます。

しかし、グーグルによる知的生産には、他には見られない独特の特性があります。私が「万人に開かれているフラット化された知的生産の再構成」を「グーグルへの入力を増やすこと」という無茶な要約をしたのは、そこを強調する為です。

これから、地球上のほとんどの人が「万人に開かれたフラット化された知的生産の再構成」に巻き込まれて、いやおうなくグーグルへの入力を増やしていく運命にあります。

あらゆる「知」がフラット化する中で、「Webデータのような対象のばらつきが大きいデータを対象とした大規模分散処理」という特定の「知」だけが、フラット化の例外となるのです。

はてなや楽天が、数百台の分散処理について理論的に研究している時、グーグルは数万台の分散処理で着実に実務経験を積んでいます。naoya さんが、はてなでMapReduceを実際に使えるようになったら、おそらくそれは、グーグルに対してより質の良いデータを与えることになります。

もちろん、この分野にもこれから多くのイノベーションが起こりますが、そのアイディアを本格的に試す場は、グーグルしかないでしょう。

「知」を囲いこむことによって稼いでいるあらゆる企業が、これからフラット化という大洋に飲みこまれていくのに対して、その同じプロセスがグーグルに作用すると、グーグルという大地の基盤はより強化されるのです。

全世界のあらゆる人とあらゆる組織を巻き込む完全に平等な競争の中で、グーグルだけが唯一の例外となるわけです。

これは、「知」のインフラというレイヤーとその上に乗ることになるコンテンツというレイヤーを混同した議論です。それぞれのレイヤーを個別に論じる人はたくさんいますが、一緒に論じる人はいません。

普通は、そういうレイヤーをまたぐような議論は混乱した議論だからです。

でも混乱しているのは私ではなくてグーグル、あるいはグーグルを含む世界そのものだと私は思います。

Googleとは、史上最大のカテゴリーエラーである。

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