次のビッグイシューはベーシックインカムだ!

前に取り上げた「民主党がとるべき道とは何か(インタビュー) - MIYADAI.com Blog」は、やはり選挙後に大敗した民主党への処方箋として提示されるべきものだったと思う。


「小さな政府」が「弱者切り捨て」を伴ってはいけないと主張し、「都市型弱者」である非正規雇用者やシングルマザーや障害者の支援を徹底的に訴える。「フリーターがフリーターのままで幸せになれる社会」をアピールすればいいのです。

出すタイミングに疑問があったが、内容には全面的に賛成する。というか、選挙の結果が出た今読むと、改めて「さすが宮台さん」と思う。小泉大勝利の要因はいろいろあるが、確かに「過剰流動性に対する不安」という要素は大きく、それは「不安」であるだけに不安定でかっこ悪い。そこが小泉自民党の弱点であるというのは正確な分析だと思う。

この宮台さんの政策ビジョンに従い、ビッグイシューで議論を捲き起こす小泉流の政治手法を使えば、民主党には充分出直すチャンスがある。

そして、その具体的なテーマとして「ベーシックインカム」がある。

ベーシックインカムとは

  • 年金、児童手当、失業手当てといった従来の社会保障を、所得水準のいかんを問わず、すべての市民に一律に保障される最低限所得保障によって置き換えようとするもの。
  • このように聞くと、寛容すぎて実現可能性が乏しいように思われるが、いくつかの経済効果も期待できる。
    1. 年金や失業手当の計算などにかかわる行政コストの大幅な削減。
    2. 職業訓練や生涯教育期間中の所得保障を提供し、労働市場の柔軟化を進めることが可能。
  • ベーシックインカムは、労働生産性が向上し、完全雇用が困難になった時代に、ある種のワークシェアリングを実現する制度として、注目を集めるようになった。
  • ヨーロッパではベーシックインカムを提唱する研究者・実務化の国際ネットワーク(ベーシックインカム欧州ネットワークBIEN)も活発な活動を展開中。

これから、生き方や価値観が多様化するので、「きめ細かく事情に合わせた行政」は不可能になる。福祉の優先順位決定について一般納税者の納得を得るには「どっちが可哀想か」という判定をきちっとしなくてはならない。だから、行政はその為の「可哀想さ」のアカウンタビリティを保証する為に、かなりコストをかける必要がある。生き方が多様化するということは「可哀想さ」も多様化するということで、それぞれに独自の深い事情とパーソナルヒストリーがあって、簡単に分類できない「可哀想さ」がたくさん発生するということだ。それを一律の価値観を前提とした既存の古い基準に無理にあてはめていくのは、事務作業としても負荷が大きいし、いろいろな歪みや利権も発生しやすい。

多様な「可哀想さ」を許容しないと、真に多様な生き方が可能な社会は実現できないが、今の行政システムのまま「事情」が多様化したら、支給金額そのものより行政コスト面で行きづまってしまうだろう。

その為の現実的な政策は、税制をフラットでシンプルにするのと同様、福祉もフラットでシンプルにすることだ。国民全員に無条件で生活保護を支給して、他の手当は原則全部カット。「生きていけることは保証するけど、それ以上は何も保証しない」という政府。

そうしたら税制をフラットにしても税率は上がるだろう。しかし、この政策が治安の向上に寄与すれば、金持ちはそのコストを喜んで負担するだろう。同時に税制をフラットにすれば、それほどキャピタルフライトは起こらないと私は思う。

またこれは、郵政民営化と同様、さまざまな利権を直撃するので、かなりの議論を起こす。複雑なシステムはたかりやすく、フラットなシステムはたかりにくいからだ。どうしても譲れない「反対勢力」がいきり立つので、政治的な効果も大きい。今回成功した小泉さんの手法をそっくりマネできるテーマになるわけだ。

さらに、ベーシンクインカムがあれば、多重副業ベースの人生設計も容易になる。それは起業を促し、経済効果も大きい。単に保険があるから冒険できるという意味ではなくて、最初から副業レベルの収入しか目指さない起業が可能になれば、非常に多様な一連の産業が起きて、経済を力強く下支えするに違いない。

私は小泉大勝利独裁化で景気は良くなると予想するが、1%の金持ちと99%の貧乏人の社会になると警告する人もいる。もしこの悲観的な予想が当たるとしたら、各種手当の支出が増えて、国民の大半が潜在的に何らかの福祉に依存するようになってしまい、国の負担としては実質的にベーシックインカムに等しくなってしまう。そうなった時には、この話はかなり現実味をおびるだろう。

小泉さんの「郵政民営化」のように今から頑固一徹で「ベーシックインカム」を唱え続ければ、何年後かにそうなった時、このテーマ一発で今回のような地滑り的大勝利を得ることも可能である。

悪くない賭けだと思うけど、誰かやりませんか?