外国人として、はてなのどこが面白い?

どうも、しおです。

ちょっとこのブログの歴史的な話から始まるけど、3人の外国人が日本語でブログを書こうとすると、どうしてはてなダイアリーにしたの?っていう、聞かれた質問ってわけじゃないけど、聞きたい人もいるかなー、と最近思った。

で、実はね、はてなにするってことは僕の考えだったよ。最初にこのグループブログを一緒にやろうって考えていた時に、どのようなブログを書けばいい、という点についてはよく迷っていた。つまり、どのブログサービスを使えばいい、ということ。

そこで、今回のエントリーのタイトルにも書いたように、「はてなダイアリー」に決めた。それは私の考えだったので、どうしてはてなにしたか、ということについて説明したいと思います。

実はよく考えると、「ブログサービスを決める」ことは、技術的な話はともかく、「コミュニティを選択する」ことと近いとも言えるでしょう。つまり、例えばはてなダイアリーにすると、当然人気なエントリーになるとはてなダイアリーのホットエントリーになって、色々なはてなのページ(はてなダイアリーやはてなブックマークのトップページなど)に出てくるわけ。そこではてなのユーザーがだんだん僕たちのブログに訪問して、コメント欄やはてブにコメントを書いてて、自分たちのブログで反応の記事も書く。

このブログを始めたときに、そういう流れに目指していたわけ。だからはてなダイアリーにした。

でもそういうことは確かに、他の日本のブログサービスでも可能なわけ。じゃ、はてなは何が特にいい?

以下にいくつかを並べてみた。

1) 日本社会の裏にあることを覗くことができる。

これは、一年半ぐらい前にid:kusamisusaさんというはてなのブロガーのエントリーを英語に翻訳したときによく感じたこと。id:kusamisusaさんは『「うわべだけ規則に従って、規則違反はコッソリやるべし」という規律は、「健全な社会」にとって極めて重要である。((炎上と、< 他者>のメンツを立てること)』(今プライベートモードに設定されている)というエントリーで、「うわべ」と「コッソリ」という(あの時に始めて見た)日本特有の概念を説明して、それからインターネットと炎上についてこういう細かい観察をした:

インターネットの普及が、「うわべ」と「コッソリ」の間を、パブリックとプライベートの境目を、奇妙な形に捻じ曲げてしまった。炎上は、この捩れがもたらす混乱として在る。

実は、英語圏のブロガーの中でも、日本のインターネット文化や炎上などについて色々な議論があるけど、id:kusamisusaさんがこの上に書いた観察はいかにも日本社会の「裏」にあること、というふうに私は思う。つまり、海外の本やブログをどこまで読んでも、「うらべ」と「コッソリ」の間に何があるなんていう話、当然出てこないわけ。

一方で、はてなダイアリーには、こういう話があふれている感じがする。他の僕に印象的だった例は、id:kohekoさんの「「今何してるの?」という質問は禁句となっていた」(英訳)、id:boiledemaさんの「人間までカンバン方式」(英訳)、id:ta26さんの「どうしてここまで『ゲゲゲの鬼太郎』は人気があるんだろう」(英訳)、id:michikaifuさんの「毎日新聞問題は「セクハラ問題」であるとの認識」(英訳)など、数えられないほどいっぱいある。もちろん他のブログサービスでも日本の「裏」にあることについて書いている人がいないわけではないですが、はてなダイアリーのほうがはるかに多いと思う。


2) 世界についてのセオリーを発想するブロガーが多い。

この「世界についてのセオリー」というのは広い意味で使っている。つまり、「今日はこれをした」や「今日の新聞にはこういう話があった」など、日常的な話ではなく、「こういう現象はこういう背景から生まれてくるかも」というような、まわりの世界についての「セオリー」とも言えるような深い内容のある記事、という意味。例として次の二つが頭に浮かぶ。

一つ目はアンカテのid:essaさんの「キャズムの向こう側」という記事。上のid:kusamisusaさんの丁度一ヶ月後にこの記事を翻訳したけど、id:kusamisusaさんの記事と同じように、かなり印象的だった。「単細胞生物と多細胞生物」、「飼い主と犬」、それから「キャズム」という幅広いメタファーを使って、id:essaさんがインタネットのアーリーアダプターと他の人を比べて、こういう予言をした:

人類全体に対するネットの普及率がある閾値を超えると、全ての人にキャズムを渡ってもらおうと無理しなくても、アーリーアダプターだけで相当な人数になり、そこに充分な複雑さが生まれ生態系が回るようになる。

その世界を認識できる人とできない人は、それぞれ別の世界に住むようになるかもしれない。

言語や文化、歴史などの壁もあって、日本語のブログを読むと当然疲れるわけ。僕は最近まで、読むことに止まらず、英訳もして、文脈も付けて、日本語のブログにある話題を海外の人に紹介していた。それをやりながら色々な面白いことが分かってきたけど、やっぱり辛い日もあった。

どうして2年間それを続けたかというと、id:essaさんの上のような記事の影響が大きかったわけ。考えてみたら分かると思う。自分の生まれてきたところから概念的に遠く離れてて、言葉も、参考も、内容も馴染みではなく、理解しようとしてもどうしても分からない場合もある。それはもちろん1)で書いたような日本の「裏」のこととつながっている。つまり、例えばid:boiledemaさんの「人間までカンバン方式」を分かるために、最初から「派遣」という現代の言葉が分からないともちろん理解できないわけ。

でも、id:essaさんが書いたような「セオリー」は、もちろん日本のことに限らない。世界の人に対応するわけ。でも、id:essaさんの連想の流れ、その「セオリーを発想すること」自体は、やはり日本っぽいとも言えるでしょう。(少なくとも、アメリカやカナダのブログの中では、こういう記事は一回も見たことない。)つまり、コンテンツは対象として日本に限らないけど、スタイルはやはり日本特有。

そういう「セオリー的」なエントリーも、はてなダイアリーには多い気がする。もう一つの例としては、id:Wakiさんの「iPhoneの面白さとリーマンの破綻は似たようなもんだと思う」という記事。id:Wakiさんはこの記事で、「iPhoneが世界的に注目されているということ」と「リーマン・ブラザーズが破綻したこと」、この二つの間には共通点がある、という立場を取る。共通点は「不自然から自然へ」という傾向、つまり不自然な金融から、自然なWiiã‚„iPhoneへ、ということ。これはまた、軽い意味で「セオリー」とも言えるでしょう。


3) コミュニティの規模は人間的

3番目のこのポイントははてなのコミュニティに関すること。はてなダイアリーは全体として、いっぱいのニッチに分けられて、ニッチの規模が小さい、ということはよく感じる。これは(アイドルや芸能人のブログを除いて)日本のブロゴスフィアについても言えることだと思うけど、はてなダイアリーの場合には本当に特徴的、のではないですか。

HatenarMapsの地図を見るとそれはよく分かる。id:finalventã‚„id:takerunba、id:shi3zなど、有名なブロガーもいるけど、全体像としてはいろいろな小さいニッチがあって、結局は有名なブロガーよりニッチの方が形に重要。これは多分アメリカのブログと比べると、まぁアメリカのブログについて詳しくないけど、少なくとも例えば「political blogs」を見ると、二つのグループに分けられっちゃう。


アメリカの政治的なブログ (Ethan Zuckermanのブログ)


はてなダイアリーの地図 (HatenarMaps)

これはあくまでも私の印象だけど、この「アメリカのブログが二つの大部分に分けられる」ことと、「日本のブログが色々な小さいニッチに分けられる」こと、というパターンは、ブログだけではなく、色々な面でも見えるアメリカと日本の違い、というふうに思う。

でもとにかく、「コミュニティ」の感じが強い。はてなのユーザーの数はある意味大きい(TopHatenarによると18万人9万に越えている)けど、結局、HatenarMapsでも見えるように、人気のブロガーは100人ぐらいいて、ダイアリーをしばらく読み続くとその有名なブロガーの名前が覚える。でもそういう「有名」な人は、まぁ本当に有名な人(梅田さんなど)もいるけど、確かにそのほとんどは「芸能人」のような有名なわけじゃない。

だからこそ、普通の人でも、参加したら何かできるかな、って感じる。僕にはそれが魅力的だった。

そしてコミュニティの雰囲気には、確かにはてなブックマークの影響もある。自分のエントリーを書くことだけではなく、お互いにブックマークしたり、そのブックマークにコメントも付けたりするわけ。西洋のブログと比べると、やはり日本語のブログのコメント数のほうがずっと低い、というのは間違っていないと思うけど、それはコメントがないわけではなく、別のところに隠れているからだ。もちろん例えばdeliciousやredditなど、英語のブックマークサービスもいっぱいあるけど、コミュニティ作りの面からみると、やっぱり違うわけ。



この3つのポイントの他には、色々なはてなの面白いところもあるわけだけど、上に書いた点は僕には一番魅力的だと感じる。

で、最後に、はてなダイアリーという話で、今回は(特にはてなユーザーの)読者に聞きたいことがある。僕達3人でこのブログを書いてて、お互いに応援するおかげで、このブログを続けていきたいと思うけど、やはりできるだけ他のブロガーとつなげていきたい。特に他の日本語で書いている外国人がいたら、連絡したい。

でもいるのかな?もし読んだことのある読者がいらっしゃいましたら、ぜひぜひ教えてください。