出川哲朗のリアル


現在発売中の「hon-nin vol.07」の吉田豪によるインタビュー連載「hon-nin列伝」のゲストは出川哲朗。

・裕福だった少年時代、一転して借金を背負い高校卒業とともに「俺が働くから」と親族の前で宣言。
・名店の吉兆に入る前提で、半年間、尼寺で庵主と二人っきりで修行。
・自衛隊入隊の筆記試験で満点を取って幹部候補に。
・自衛隊入隊を結局断ると、「幹部を約束されている」と引き止められる。
・映画専門学校時代、(校長の)今村昌平に「あんた学校来ないクセに、こんなときだけ来てなんか言うな!」と噛みつき気に入られる。
・卒業式で金八先生の加藤優ばりに「頂点取ったる! まあ、見とけや!」と宣言。

このような、デビュー前の話も面白かったが、やはり凄いのは、リアクション芸人としての出川哲朗の覚悟だ。


出川は「笑のためなら死んでもいい?」と問われあっさりと答える。

それは嘘でもなんでもなくて、現場で死ねたら一番いいし、死んじゃったら……それはそれでしょうがない。

出川は以前、ウッチャンナンチャンの番組中の事故で、タレントの死を目前で目撃している。そして、最愛の盟友である内村がそのことで打ちひしがれているのを目の当たりにしている。そんな、出川が「死んだら、しょうがない」と語る、その言葉は、とても重い。

僕は子供ができても考えは変わらない気がするんですよ。(結婚した)いまも全然変わらないし。怖いし、痛くて嫌なこともいっぱいありますけど、やっぱ打ち合わせしてても「いや、これもっといきましょうよ」っていまでも言っちゃうし。
                (中略)
現地の名人は「絶対ダメだ、絶対落ちるから、危ないから素人はやらせない」って言ってたんですけど僕が「絶対大丈夫だから。絶対死なないから。絶対責任は僕が負うからやらせてくれ」って言って、やりました。撮影が始まったら、やっぱりカメラはなによりの薬になるなって。カメラがあると(腰の)痛みが止まるんですよ。


リアクション芸人を代表する3人として挙げられる出川哲朗と山崎邦正、そして上島竜兵。
その違いを土田の言葉を借りて、出川本人が分析しているのが興味深い。

竜さん(上島竜兵)とか俺とか山崎邦正がリアクション3みたいな感じで「アメトーーク!」に呼ばれたりするんですけど、土田(晃之)がこのあいだ言ってたんですよ。「この三人の確実な違いは、竜さんと山ちゃんは怖がる」って。それはどっちがいいかわかんない、怖がったほうがおもしろい場合も、もう一歩踏み込んで行ってハプニングが起きておもしろくなる場合もあるけど。「でも、もう一歩のときに絶対あの二人は怖がっちゃって行けないけど、出川さんの場合は行けるすごさがある」と。
(それが、死を覚悟しているから)
はい。たぶん違いはそこだと思うんです。べつに営業妨害で言ってるんじゃなくて、痛いことを嫌がるところがあるんですよ、美味しいのに。「いや、それ痛いから嫌だ」とか。
               (中略)
でもそれは、それぞれのよさだから、どっちが正解かわかんない。ただ、僕はどんなに痛くてもどんなにつらくても、結果、笑いさえ起きればOKなんですよ。笑いがここで絶対起きるって確信が持てるんだったら、やっぱ行っちゃうんですよね。


尼寺での修行時代、何度も読み返したという矢沢永吉の「成りあがり」。
その影響を大きく受けて、自分の好きな映画という世界で役者になる夢を抱き、20年後には頂点を取ると宣言した学生時代。
その夢は、芸人たち同士の深い愛情を知ることで、少しずつ変わっていった。

みんなでリアクションして、爆笑取ってシャワー浴びて「よかったね」って言ってる瞬間がホントにリアルに一番幸せなんで。
             (中略)
(死ぬまで熱湯風呂に)入りたいですね。そこでかわいそうと思われたくないです。でもそれをやれたら……新しい何かが作れるような気がするんですよね。

今日の動画:山崎邦正の狂気


吉田豪によれば、山崎邦正がピアノを習い始めたのは、映画『時計じかけのオレンジ』の「雨に唄えば」を歌いながらレイプするシーンを観て、この曲が弾きたいと思ったからだそうだ。


■Singin' in the Rain - A Clockwork Orange(※閲覧注意!)

狂ってる。て、思います。