まだまだペンキぬりたて

ライトノベルの感想

“菜々子さん”の戯曲 小悪魔と盤上の12人

  • ストーリー

高校に入学した宮本剛太は、とあるアクシデントから“菜々子先輩”と出会う。
彼女が所属する映画研究部に入った剛太は、ある日、映研が盗撮写真をばらまいているという噂を耳にする。
疑いを晴らすため、調査を始めることにする剛太だったが……。


1巻で見事な終わり方を見せ、続刊が出るなんて思いもしなかった本作品。
どのように続けるつもりなのか不思議でしたが、語り手を変え、高校という新たな舞台を設定して乗り越えてくれました。
全体的に暗いイメージだった前回とは違って、一見普通の学園ものと勘違いしてしまいそうな雰囲気。
そんな中で菜々子さんが時折見せる陰険っぷりを思う存分楽しめる1冊になっています。


語り手の剛太は菜々子さんのひとつ下の学年で、美しい菜々子さんに一目で心を奪われてしまう。
「偶然出会った」その先輩に助けられ、「ひょんなことから」映研に入部することになる。
学校生活の中で「たまたま」いくつかの謎に遭遇し、それを解いていく。
普通の物語なら言葉通りの流れですが、そこに菜々子さんが絡むとそうはいきません。
もしかして一連の流れの裏で全てを操っているのはあの人なのではないか。
そう気付いた頃にはもうすっかり菜々子さんの手の平の上……ああもう、たまらない。
可憐な容姿とにこやかな笑顔の裏で、彼女はこの展開をどこまで読み、どこまで計画に入れていたのでしょうか。
剛太はなかなか頭の回る人間のようで、菜々子さんが仕掛けたヒントを用いて見事に謎を解いてみせます。
そんな剛太が、ふとした時に謎の裏でうごめく菜々子さんの影を見つける。
そのたびにシナリオの上で踊らされていた剛太に気付かされる。背筋がゾクリとします。
なんと危険で甘美な女の子なのでしょうか。どこまでも魅力的だ。


サブキャラも一新されました。菜々子さんの交友関係を見るのはちょっと新鮮な気分です。
それぞれユニークな映研の部員や文芸部の部長、クラスの友人たちなど、豊富な登場人物が物語に彩りを添えてくれます。
副題にある「盤上の12人」、つまり菜々子さんに知らぬ間に操られていた12人とは誰のことなのかと考えてみるのも一興ですね。


1巻では重要な設定だった菜々子さんの本名アレルギー(?)ですが、どうやら今は治っているようです。
それでも本名は巧妙に隠され、登場しないのですが、新たなヒントは与えられました。
前回出てきたヒントと合わせ、未だに明かされない本名を探り当ててみたいところ。


今回でミステリ連作のような流れになったので、続編にも期待できると思います。
この稀有な魅力の持ち主が、次はどのような陰険さを見せてくれるのか。周りはどのように彼女に操られ、踊らされていくのか。
今から楽しみでなりません。