"GameCasting"…? iTunesでゲームをPodCasting


マクロメディア Flashで作成したムービーをswfでパブリッシュせずに、QuickTimeとしてエクスポートするのです。それだけで、iTunesで再生可能なFlashの出来上がりです。

(中略)

ブログ等を利用して毎日ちょっとしたFlashゲームをiTunesへと配信するような、ゲームキャスティングとも言える新ジャンルにも光明が見えます。

この記事を読んで、なるほど!と思った。その手があったか。

PodCastingの仕組みでゲームをプッシュ配信出来れば、iTunesという共通のインターフェイス上に新しいゲーム配信*1のプラットホームが出来上がることになる。プレイヤーは共通のインターフェイス上で好みのゲームを検索し、ストックし、整理することが出来るわけで、現状のWEBのポータルサイトのようなごちゃごちゃとして、それぞれが独自の決まりで整理されている様子に比べればはるかに使いやすいものが出来上がる。

特に、独立系開発者とよばれるゲームインディーズ開発者にとって、優れた発表の場に成りうる。というのも、大手企業開発も個人開発も同じ土俵で、同じようにリストアップされ、サイトの出来不出来や宣伝に関わりなく評価される可能性が高いからだ。ただでさえ、現状では発表の場が少なく、たとえ合ったとしてもほとんどの場合人の目に触れないゲームインディーズである。このような仕組みは切望されている、と言ってもいいだろう。もちろん、大手企業にとっても、あたらしいゲームのプラットホームが出来れば(宣伝も含めて)ビジネスチャンスが広がるわけで、利点がある。

以前、iTunesでPDFが管理できる、と言うことを知って、「ああ、iTunesでFlashが再生できれば、GameCastingなんてのも可能になるだろうになぁ。」と残念がっていたのだが、既に再生できたとは盲点だった。

そんなわけでテストしてみた

そんなわけで、出来ると知ったからには早速やってみることにした。

まず、QuickTime(ver.7)で再生できるFlashはFlash 5までのFlashである。ここが一つ懸念材料なのだが、後述する。さらに、単なるSWF形式では駄目で、Flash MXなどでQuickTime形式(mov)でパブリッシュするか、QuickTime ProでSWFからMOVに書き出す必要がある。これが2点目の懸念材料なのだが、これもまた後述。私の場合は、以前に作った出来損ないのゲームをFlash 5に合わせてスクリプトを書き直し、QuickTime形式でパブリッシュしてサーバーにUPした。

次に、配信用のRSSをXMLで書く必要がある。そこで、元記事のサイトのPodCasting用RSS2.0の書き方についての記事を参考に、さくっとXMLを書いてupload。

gamecastingtest.xml[XML]

このXMLをiTunes 5で読み込ませると、見事以下のように購読できた。

iTunesのアートワークに表示されたFlashはそのままの形でプレイできる。もちろん左右キーで操作可能である。アートワークを直接クリックすると別ウインドウでプレイすることも可能だ。まずは成功のようである。

幾つかの懸念材料

さて、見事実験は成功した…のだが、必ずしも最高とはいえない懸念材料も幾つか見つかった。

Flash 5

iTunes(正確にはQuickTime)で再生できるSWFはFlash 5形式までのものである。これはいささか現状では古い。FlashLiteのようなロストテクノロジーほどではないものの、現状の最新のPlayerがver.8で、8.5の足音も聞こえてきているというのに未だ5までしか対応していないというのは色々とつらい面がある。アニメーションであれば問題ないのだが、スクリプトの比重が大きなゲームとでもなれば尚更だ。

Flash 5で何が問題化といえば、Flash 5スタイルでしかスクリプトが組めないという点である。このスタイルは初心者にはわかりやすいスタイルだが、コードがあちこちに散らばって、処理の流れが分かりにくくなり、非常にメンテナンスしにくくなる、という欠点がある。Flashでゲームを組む場合は、MX(ver.6)以降で実装されたフレームアクションで1フレームの中でほぼすべてのスクリプトを記述する方が便利である。私のように外部エディタでスクリプトを組む人間にとっては、非常に厄介な仕様であると言える。まして、MX2004以降で実装されたクラスベースのAS2.0などはもちろん望めない。FlashLiteほどではないものの、ややロストテクノロジーがかって来ている、といってしまってもよいだろう。

QuickTime書き出し

現状、QuickTime書き出しをするには、Macromedia Flash MX2004などのツールを購入するか、QuickTime Proを購入するかしないと不可能である。PodCastingやVodCastingは無料ツールの範囲でも十分可能なことを考えれば、これは参加する人にとって障害である。最近はSWFを吐き出せる無料ツールも増え、MTASCのようなオープンソース・コンパイラなども登場するなど、Flashにかつてあった価格でのディスアドバンテージが徐々になくなりつつある。だが、今回の場合はそうは行かない*2。すくなからずお金が必要というディスアドバンテージがあることは気をつけておいた方がよいだろう。

毎日配信?

引用もとの記事で、


ブログ等を利用して毎日ちょっとしたFlashゲームをiTunesへと配信する

と言う記述があるのだが、果たして本当に毎日配信可能かどうなのか疑問が残る。音声や映像と違い、ゲームの開発にかかる労力は少なくない。いくら、直感的なFlashツールの力を借りられるとはいえ、それなりのものを毎日開発して配信する、というのは骨の折れる作業だろう。テストに使ったレベルのゲームもどきならばさくっと毎日作れるが、おそらく大多数の人が考える「ちょっとしたゲーム」というのはもっとクオリティの高いものだろう。となると、毎日配信できる人は本当に限られてくるだろう。

となると、既にあるコンテンツを流用して…、となるのだが、Flash 5形式のコンテンツが現在どれだけ流通していて(さらに著作権などの問題もクリアして)共有可能になっているか、というとそう多くはないだろうと予想される。おそらく、Flash4ベースのFlashLiteコンテンツ(つまり携帯Flash)を除けばコンテンツの量が足りないだろう。まあ、この仕組みがポピュラーになれば解決しそうな問題ではあるのだが。当面はまとまった量は期待できず、FlashLiteコンテンツを保有するところだけがまとまった量を配信できる、という状況になりそうである。

まとめと感想

そんなわけで、非常に可能性を感じる反面、いささかイレギュラーなことをしているせいか、どうも懸念材料が拭えない。これが本格的に広まってゆけば、懸念材料の幾つかは払拭されるだろうし*3、もっと新しい可能性が出てくるかもしれない。

もっとも、Appleが可能性に気づく前に、Macromedia(+Adobe)は気づいていそう*4なのでどうなることやら。

*1:「配信」という言葉はなんとなくゲームには似合わないので個人的に違和感が残るが、代用の言葉が見つからないので便宜的に「配信」とする。

*2:ちなみに、無料ツールの類ではFlash 6以降のみ対応というものも多い。

*3:もしかすると、iRiver U10のようにiPod自体にFlash搭載なんて話も出てくるかもしれない

*4:FlashCastという技術だ。ゲームも配信できるプッシュ配信の仕組みだが、FlashLiteの仕様はゲームにとことん向いていない。Flash 7ベースのFlashLite2.0が出るまで、ゲームに限った話で言えばライバルにはならないだろう。