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虚しさだけを残して――漫画版「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」感想

機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 (KCデラックス)

 漫画版「機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争」を読了。同名のOVAを池原しげとがコミカライズしたものであり、僕にとってのファースト・ガンダムでありファースト・ポケ戦なのですが……見返してみると展開が荒いってもんじゃないな!? バーニィが終盤、自分がエースだなんて嘘で本当はMSを1機も落としたことがないと明かしますが、そもそも漫画版だと自分がエースだとアルに語る場面自体が存在しないという……シミュレーターで「ビームサーベル!」と叫ぶクリスとかも本編からは想像できん。
 全体に登場人物の造形がものすごくバッサリと剪定されています。凄みや優しさが薄くコミカルなミーシャとガルシア、バーニィと会うこともないクリス、サイクロプス隊に本気で作戦を遂行させるつもりでいて失敗すれば自ら艦に乗って核を撃ち込みに行くキリング(そして漫画版では撃沈される、南無)などなど……アルの父親も別居ではなく単身赴任の類だし。ぶっちゃけ今ポケ戦を未視聴の人に「漫画版読めばいいよね?」と聞かれたら僕は全力で止めに入るでしょう。
 ただ、そういう造形はかつて読んだ幼い僕にとって「愛嬌」を感じさせるものだったのかなと思います。サイクロプス隊の面々はアニメ以上にあっさりと死に(倒されるのではない)、バーニィは彼らの死に涙を流す。子供心に「ガンダムはヒーローでしょ?」という心と「バーニィ達は悪人じゃない」という気持ちが混ざって、その事が僕に本作から目を離させませんでした。ジオンは敵だ、と級友にバカにされた後、クリスに頼んで連邦軍の取材をさせてもらうよう頼み込んだ時の「ジオン軍が悪いやつなんて しんじないぞ バーニィみたいないい人がいるんだ」というアルの台詞は、正しく僕の気持ちを代弁するものだったのだと思います。

 嘘つきをクローズアップされないバーニィはただただアル達を守るために無駄な戦いをして死ぬ。そして、バーニィが倒そうとしたアレックスに乗っていたのはクリス。誰が悪い!と怒りをぶつける相手はもちろん、何かを貫いた美しさもありません。ただただそこには、「戦争は良い人でも関係なく傷つける」という虚しさだけが残る。エピローグで校長の終戦に関する演説がクローズアップされているのは、本コミカライズなりの1本の筋なのでしょう。

 Amazonで古本を探して久しぶりに本作を読んだ事はある意味で魔法が解けるようなところもありましたが、一方で当時自分が感じたことを整理させてくれる経験でもありました。

関連:
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 第1話「戦場までは何マイル?」
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 第2話「茶色の瞳に映るもの」
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 第3話「虹の果てには?」
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 第4話「河を渡って木立を抜けて」
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 第5話「嘘だといってよ、バーニィ」
機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争 第6話(最終回)「ポケットの中の戦争」

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