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セイレン 第11話「カクセイ」
©高山箕犀/セイレン製作委員会



　寝不足の今日子は信号を無視したトラックに気付かず轢かれそうになってしまう。危機一髪そんな彼女を助けたのは……隔世の第11話、拡声の第11話。本作はすっ頓狂な想像と現実を繋げる作りを重ねてきて、またそれがこの今日子編では特に積み重ねられてきましたが（過程が抜けることで誤解が生まれる9話ですとか）、今回はそのねじれがまっすぐな方向に向かっていく回だったように思います。
　正一は自分が今日子に「隣のお姉さん」として見られている――つまり男として見られていないと感じていますが、実際のところ今日子は正一のことを男として見ている。外面と内面、あるいは外見や外聞と内実。2つの世界は隔てられており、その隔たりは個々人の想像力によって埋められています。

　想像力が不足していたり方向性が間違っていれば、それは正確なものには繋がりません。青信号だから車は来ない、手編みとくればマフラー、母や姉と一緒に買物して下着の流行も分かるはず、今日子からもらったパンツで弟が何をしていたか……などなど、正一や今日子に限らず、劇中のキャラの多くが想像によって判断を誤ります。クリスマスツリーの飾りが下着でできているなんて普通は想像しないし、今日子は自分の突っついた場所が正一の乳首だなんて想像もしません。最たるものはやはり正一で、彼は1度はクリスマスデートを断られたが故に「断られる痛み」を想像して今日子に迫る勇気を持てない。
　ですが、逆に想像力を正しい方向に導けばそれは現実を補完する道具になる。滑り台は処刑台やヒーローのお立ち台になり、クリムゾンサンタのマスクは正一の「俺も、お前みたいな男になりたい」という台詞の「男」の部分に「ヒーロー」というルビを脳内で振らせてしまう。真詩の揺れる胸や今日子のスカートの上からの下着は、服の上からでもその中身を想像させずにはおきません。そしてやはりこちらも要素は正一に結実し、彼は手編みのパンツが男物であることから自分が男として見られていないという誤解を打ち砕く。それはまさしく、想像力が外面と内面を正しく繋げた瞬間です。

　想像で補うしかない闇から光明を見つけた正一は、目一杯に声を拡げて決意を叫びます。さて、覚醒した彼が次回どんな姿を見せてくれるのか、突如として現れた水羽の役割とは。次回の結末を想像してみるのも楽しい……と言いたいが、おそらくおでんのためにしょうゆを借りに来た他校生とか何をどう想像しろと言うのかwww


　仕方ないのでここで映らなかったものを想像して来週まで待つことにしますね。

関連：
セイレン 感想リスト

セイレン 第1話「ケツダン」
セイレン 第2話「ヤマオク」
セイレン 第3話「オトコユ」
セイレン 第4話「ホシゾラ」
セイレン 第5話「コウカン」
セイレン 第6話「タイセン」
セイレン 第7話「ブラコン」
セイレン 第8話「モフモフ」
セイレン 第9話「カテイブ」
セイレン 第10話「オサガリ」



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