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エド・フーベンは62人の生物学上の子供を持つ、欧州一子だくさんの男 PHOTO: ED ALCOCK / THE GUARDIAN

エド・フーベンは62人の生物学上の子供を持つ、欧州一子だくさんの男 PHOTO: ED ALCOCK / THE GUARDIAN

オブザーバー・マガジン(英国)

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Text by Emma John

彼らの精子ほしさに、世界中から女性たちがやってくる。なかには60人以上の子供を作った男もいるらしい。医療上の規制が行き届かない、インターネット上の精子提供サイトを舞台に、今日もまた「新しい生命」が生まれようとしている……。


エド・フーベンの家の狭いバスルームでトイレに座ると、ちょうど目線の高さに「マーストリヒトへようこそ」と書かれたポストカードが貼ってある。その一文のまわりには、オタマジャクシのようなものが数十匹、陽気に泳ぎ回っている。

これは、訪問客の笑顔を誘うためのちょっとした工夫だ。エドの家を訪れる人というのは、たいてい彼の精子を求めてやって来るのである──。

フーベンが精子ドナーになってから10年以上になる。最初は地元の精子バンクを利用していたが、提供できる精子量の法的な限度を超えると、インターネットで個人的に希望者を募るようになった。

「いつでも、どこでも、どんな方法でも」と書かれたTシャツを着たフーベンは語る。

「昔は精子提供のためにどこへでも出張していました。仕事に支障が出た場合は同僚たちが助けてくれていました。勤め先はオランダのマーストリヒトの観光局です。でも、最近は役職が変わって、社内にいなければならない時間が増えてしまった。だからいまでは、自宅に来てもらうようにしています」

フーベンの精子を求めて、女性たちは世界中からやって来る。彼の生物学上の子孫は、オーストラリア、イスラエル、カナダ、キプロス、ドイツ、ルクセンブルクなどの各国に散らばっている。彼の精子によって生まれた子供の数は62人。間もなく63人目が生まれる予定だという。

最もフーベンによると、米国のTV番組『オプラ・ウィンフリー・ショー』で200人の子供を持つ男が取り上げられたことがあるそうで、彼の子供がその数に達することはないだろうと語る。それでもフーベンはヨーロッパでいちばん子だくさんな男とみなされており、彼自身そういった評判に抵抗はないようだ。

40歳手前のフーベンは、どちらかというと肉付きのよいほうで、彼自身、自分の容姿については自嘲気味だ。しかし、彼の精子によって生まれたしわしわの赤ちゃんたちの写真を見ると、色白な子、浅黒い子、髪の薄い子などさまざまだが、意外とみな顔立ちが整っているようだ。

フーベンは親切で明るく、自分の関心分野の話になるとじつに機知に富んでいる。だが、妊娠したい女性たちに最も評価されているのは、彼の献身ぶりだろう。

20人以上の子供たちを集めて自宅でパーティー


取材がおこなわれた週、フーベンは3人の女性たちと会う予定があった。2人はスイス、1人はドイツから彼を訪ねてくるという。

彼は自分の精子の状態をしっかりと観察しており、精子の数やpHレベル、運動率などをすべて記録している。また、不妊治療に関する最新の研究にも精通しており、葉酸と魚油を摂るようにしている。

ヨーロッパでは精子の販売が禁止されている。だからフーベンにとって、精子提供は仕事ではなく、使命である。彼が“神のお召し”を受けたのは、1999年のこと。不妊治療を受けている友人たちの苦労や失意を目の当たりにしたのがきっかけだった。当時、オランダでは精子ドナーの数が劇的に減少していた。

1990年には900人いたドナーは、2002年には200人にまで落ち込んだ。こうした事態に悩まされた人々、とくに法的に精子提供を受けることが難しいレズビアンのカップルはインターネットに助けを求めるようになった。フーベンは、政府が定めている精子提供量の限度を超えたため、インターネット上に広告を載せるようになった。こうしてみつけた1人目の女性は見事に妊娠し、子供は現在7歳になっている。

フーベンは最近、初めて英国人のカップルに精子を提供し、年内には赤ちゃんが生まれる予定だ。そのカップルは、彼の噂を聞きつけて、フーベンと連絡を取るためだけに初めてコンピュータを購入したという。

先月、フーベンは例年通り、自分の子供たちを自宅に招く会を開き、20人以上の子供が集まった。この会合のために作ったTシャツには、「来た、見た、勝った」というカエサルの言葉が書かれている。

「子供たちには自分のルーツを知る権利があると思う」と彼は語る。そして自分がこうしてオープンになることで、精子提供に対する偏見を払拭(ふっしょく)できたらと願っている。

英国をはじめヨーロッパ諸国の多くは、精子ドナー不足に悩まされており、公的医療サービスで人工授精を受けることは難しい。順番待ちリストの下のほうにいる人や、独身の女性、同性愛カップルなど精子バンクを利用できない人々は民間の病院で高額な治療を受けるか、自分でなんとか方法をみつけるしかない。

こうしたなか、インターネットを利用した精子提供が着実に広まっている。

関連記事:愛する男性の遺体から「精子」を採取する女たち──「死後の体外受精」をめぐる世界的論争

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