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日本HP、“自働化”機能を備えたエントリー向け小型サーバー「MicroServer Gen8」

専任管理者不在のオフィスに対し運用品質向上を支援

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は18日、x86サーバー「HP ProLiant Gen8」のラインアップに、1ソケットのエントリー向け小型サーバーの新モデル「HP ProLiant MicroServer Gen8(以下、MicroServer Gen8)」を追加すると発表した。価格は6万6150円からで、同日より販売を開始している。また今回は同時に、1ソケットの1Uラックサーバー「HP ProLiant DL320e Gen8 v2」とタワー型サーバー「HP ProLiant ML310e Gen8 v2」、HP ProLiant Gen8と連携可能なレイヤ2スイッチ「HP PS1810-8Gスイッチ」「HP PS1810-24Gスイッチ」も発表された。

HP ProLiant MicroServer Gen8
MicroServer Gen8の内部構造

 クラウドサービスが普及した影響で、タワー型サーバーの市場は縮小するという見方もされているが、「IDCの予測によれば、1ソケットの国内タワー型サーバーは、2013年の15万台からさほど減少せず、今後も継続してタワー型サーバーは提供されると見込まれているし、当社のビジネスも特に減っていない」(サーバー&ネットワーク製品統括本部 インダストリースタンダードサーバー&ネットワーク製品本部 宮本義敬本部長)のだという。

 この理由として宮本本部長は、エントリークラスのタワー型サーバーがPCのように手軽に購入できる、アプリケーションの選択やカスタマイズの自由度がある、セキュリティ面の懸念からサーバーを手元に置いておきたい意識がある、といった3つを挙げる。特に国内ではこうした傾向が強く、ワールドワイドと国内の市場を比べた場合、ワールドワイドでは、2013年第1四半期の出荷台数に占める1ソケットのタワー型が13.3%にすぎないのに対し、国内では29.1%にも達しており、依然として大きな市場になっていることがわかる。

 一方、エントリークラスのタワー型サーバーの利用シーンを見ると、企業の部門や各店舗・拠点に設置される業務用サーバー、SOHOでのサーバー、業務特化型のアプリケーションを組み込んだサーバーパッケージの構成要素などとして採用されることが多い。こうした場合、往々にして専任の管理者がいないところで利用されるケースが多いものの、重要な業務で利用されるシーンも多く見られており、エントリー向けながらも、止まっては困るとの要望も寄せられているという。

サーバー&ネットワーク製品統括本部 インダストリースタンダードサーバー&ネットワーク製品本部 宮本義敬本部長
エントリークラスのタワー型サーバーの活用用途。いずれのケースでも、専任管理者は不在のケースが多いという

 そこで日本HPでは、HP ProLiant Gen8シリーズで提供してきた“自働化”機能を生かし、MicroServer Gen8を製品化した。従来の“自働化”では、大量のサーバーを運用するデータセンターにおいて、運用負荷を軽減することに主眼を置いている。それに対しMicroServer Gen8では、iLO4(HP Integrated Lights-Out) Management Engineなど、同じ“自働化”機能を搭載しながらも、運用品質を向上するためにそれを利用している。

 例えば、専任管理者のいないオフィスでは、「アップデートなどをするために別途ツールを用意するのが面倒だという要望がある」(サーバー&ネットワーク製品統括本部 インダストリースタンダードサーバー製品企画部の中井大士部長)。このためMicroServer Gen8では、本体にメンテナンスツールを内蔵しており、ファームウェアなどのアップデートをWebから自動取得するほか、監視システムも内蔵しているため、電源を入れればすぐに監視を開始できる。

 また、日本HPが提供しているクラウド型の統合管理サービス「Insight Online」にも対応しているので、サーバーからクラウド上へステータスを自動アップロードすることで、設置場所が点在していたとしても、一元的な管理を可能にしている。また、自働通報サービスにより、「障害が起きたら自動的にサポートセンターへ通知が行く。専任でない運用担当者が気が付かなくても、当社がプロアクティブに対応できる」(中井部長)点もメリットといえる。

サーバー&ネットワーク製品統括本部 インダストリースタンダードサーバー製品企画部の中井大士部長
専任管理者の代わりに働く自働化機能

 さらに、今回同時に発売されるスイッチのPS1810-8GとPS1810-24Gでは、スイッチに接続されているHP ProLiant Gen8シリーズのiLO4と連携し、サーバーの死活、HDDなどのコンポーネントの障害情報といった健康状態をスイッチのWebコンソールから監視可能にしている。別途システムを用意しなくても、接続されているサーバーの統合監視を実現しているのは、大きな特徴といえよう。

 中井部長は、こうしたMicroServer Gen8が持つ自働化機能のメリットを、「運用品質の向上を助けるという、これまでのコンセプトとは少し異なる角度でサーバー活用を支援するもの。もっともエントリーのサーバーでも、きちんと対応できているのがポイントで、他社ではこうした動きは見られない」と述べ、大きく訴求していく意向を示した。

 標準では、CPUがCeleron G1610T(2.30GHz、2コア)あるいはPentium G2020T(2.50GHz、2コア)、2GBメモリ(最大16GB)、ディスクレス(3.5型ディスクを最大4台まで内蔵可能)、光学ドライブレス(最大1台内蔵可能)、OSレス、HP Dynamic Smart アレイB120i コントローラ(RAID 0/1)といった構成で、価格はCeleron G1610Tモデルが6万6150円から、Pentium G2020Tモデルが7万7700円から。

 スイッチは、1000BASE-T×8ポートのPS1810-8Gが1万7850円、同×24ポートのPS1810-24Gが3万8850円。PS1810-8Gについては、MicroServer Gen8の上部または下部にはめ込んで一体型にすることも可能である。

ネットワークスイッチにサーバー監視機能を統合している

中堅・中小企業市場の開拓にも自働化を生かす

 なお、MicroServer Gen8はそのまま直販などで販売される以外に、パートナーを経由したソリューションモデルとしての販売も期待している。専任の管理者がいないオフィスでは、導入や運用をSIerなど、出入りの業者に任せたいニーズも依然として大きいが、宮本本部長は、そうした日本HPのパートナー企業にも“自働化”の恩恵は大きいと指摘する。

 それは、保守に携わる人間の手間を相当減らせるからで、宮本本部長は、「従来のMicroServerは、SOHOなどのファイルサーバーや、大企業の部門・店舗サーバーとして利用されるケースが多かったが、MicroServer Gen8では、さらに中堅・中小企業市場を伸ばしたいと考えている。従来、こうした市場はパートナーが手厚いサポートを提供することで販売をしていた市場。MicroServer Gen8では、そうしたパートナーの負荷を減らせるし、最終的には、お客さまに費用対効果の面でメリットが出ると考えている」と狙いを述べた。

 加えて、エントリー型タワーサーバーの販売形態の1つである、サーバーパッケージへの採用も呼びかけていく考え。そのために、組み込みソリューションやグローバル展開を支援するためのHP Converged OEMプログラムにより、HP製造ラインでのブランドログの張り付け、構成のカスタマイズといった支援を行う。さらに、標準ではシルバーのベゼルを、2013年秋ごろからブルー、レッドなどの色も選択可能とし、サーバーパッケージとして販売する際のブランド化をしやすくするとしている。

 「現在、当社のサーバーは20%前後のシェアだが、残念ながら1ソケットサーバーは14~15%前後にとどまっている。こうした施策を通じて、なるべく早い内に、他のサーバーと同じ20%程度に伸ばしていきたい」(宮本本部長)。

サーバーパッケージ販売のための各種施策
カラーベゼルのオプション

1ソケットのタワー型、ラック型も更新

 今回、同時に発表されたDL320e Gen8 v2は、1ソケットのラック型サーバー。CPUに、最新のHaswell(開発コード名)世代であるXeon E1200 v3シリーズを採用したほか、従来の「HP ProLiant DL320e Gen8」と比べ、奥行きが約半分の40cmに短縮された。これに伴い、重量も8kgまで軽量化されている。価格は16万6950円から。

 一方、ML310e Gen8 v2は1ソケットのタワー型サーバー。こちらもCPUにXeon E1200 v3シリーズを採用し、省電力化を実現している。価格は15万3300円から。

石井 一志