ニュース

「レベル2自動運転セレナ」のモビリティサービス実証実験が11月に横浜市でスタート 「日産が移動サービスに挑戦する意義深い一歩」とイヴァン・エスピノーサ社長

2025年10月3日 開催
自動運転モビリティサービス実証実験で使用される「セレナ L4技術検証車両」

 日産自動車、BOLDLY、プレミア・エイド、京浜急行電鉄の4社は、横浜市において2025年度に共同で実施する自動運転モビリティサービス実証実験について発表。10月3日に神奈川県横浜市の日産グローバル本社ギャラリーで記者発表会を開催した。

 また、新たな自動運転モビリティサービスで使用される「セレナ」をベースとした自動運転車両も公開している。

実証実験で使用されるセレナは運転席にセーフティドライバーが乗車する「SAE レベル2相当」で運用される
2~3月に実施された「ドライバーレス自動運転」実証実験で走行したセレナの設計をベースとしつつ、新たな車両を使って新規に生産された車両。今回の実証実験では最大20台が運用されるため、従来のようなワンオフに近いスタイルではなく、量産コストなどを考慮して使用するセンサー類などの選定が行なわれたのことで、現時点では13台がロールアウトしている

 2025年度の実証実験は横浜市のみなとみらい・桜木町・関内を含む市街地エリアを舞台として、11月27日から約2か月に渡って実施。セレナをベースとして日産が開発した自動運転車両を運転席にセーフティドライバーが乗車する「SAE レベル2相当」で運用するほか、運行に必要な遠隔監視を行なう専用管制室をみなとみらい地区の「PLOT48」に設置。日産が従来から運用している「Easy Ride」のWebサイトを利用して同日から一般モニターの募集を開始して、配車サービスを実際に動かし将来的に必要となる運用体制の課題抽出、サービスエコシステムの構築を行なっていく。

一般モニター募集要項

募集人数:約300人
応募期間:2025年10月3日~31日
応募方法:専用Webサイトに用意されている入力フォームに従い申し込み
参加費:無料
参加条件:事前説明会への参加、参加同意書への署名、アンケート調査への協力(応募時、実証実験期間中)

実証実験では「安全な運行」「事業を成立させる効率のよい運行」の2点を検証

日産自動車株式会社 執行職 総合研究所 所長 土井三浩氏

 発表会では日産自動車 執行職 総合研究所 所長 土井三浩氏から実証実験の概要説明が行なわれた。

 土井所長は「自動運転モビリティが走る日常の可能性を広げること」が今回の取り組みのテーマとなっており、自動運転モビリティサービスを実現することで地域に活力を与えて住民のクオリティ・オブ・ライフを高め、同時に公共交通として持続可能であることが非常に重要だと説明。そのためには「安全・安心であること」、「地域と連携して事業性が確保されていること」が求められるとした。

 このような自動運転モビリティサービスを実現するため、日産ではEasy Rideというサービス名称のもとに2018年2月から取り組みを始め、さまざまな検証を行ないながら自動化のレベルを高めてきた。2月には日本国内で初めて一般車両も混走する公道でのドライバーレス自動運転を実現して、技術レベルは完全無人化に向けて進化していると述べた。

「自動運転モビリティサービスが目指す姿」
日産では「リーフ」「e-NV200」やセレナを使い、自動運転の開発を進めてきた

 将来的は日本国内だけでも数万台~数十万台規模で自動運転モビリティが走行するようになると予想しており、そのような状況を実現するために、まずは車両を提供できるようになること、そして数万台規模の車両が24時間体制で走り続けるための安全確保が必要となり、どちらも並大抵のことではないと説明。また、事業化にあたっては事業効率の面も無視できないポイントだとの考えを示し、11月からスタートする実証実験では「安全な運行」「事業を成立させる効率のよい運行」という2点について検証することになるという。

 運用されるセレナは「L4技術検証車両」としてレベル4自動運転に対応するため開発された車両になるが、今回の実証実験は前出のように運用面が中軸となることもあり、運転席にセーフティドライバーが乗車して、利用者の乗車定員は3人までとなる。今年度中は5台の運行が行なわれ、2026年度からは最大20台まで運行台数を拡大。「多台数をどのように運行していくか」を検証する。

 また、実証実験が行なわれる横浜市のみなとみらい・桜木町・関内を含む市街地エリアにはオフィス地域やレストラン街、住宅街などが隣接しており、エリア内に26か所の乗降ポイントを設定して、このようなエリアの移動でどのように利用されるかも検証で見定めたいと説明した。

 具体的な運用方法としては、乗車専用のアプリを使ってオンデマンド予約を実施。指定した乗降ポイントにやってきた車両のスライドドアに設定された2次元コードをアプリで読み取って車両の認証を行ない、車両に乗り込むといったスタイルになる。

2025年度における実証実験の概要

 自動運転の車両と並んで実証実験のキーとなるのが、複数台の車両の運行状況を見守る遠隔監視センター。ここでは自動運転システムの作動状況のほか、どのようにユーザーのところに車両を配車するか監視するフリートマネジメント、将来的に完全無人化された状況を想定して、車内に入ったユーザーのケアなどを実施する。

 4社の役割分担としては、BOLDLYが自動運転サービスの遠隔監視や乗客対応、対応記録の一元化などを行なう自動運転車運行プラットフォーム「Dispatcher」の提供、プレミア・エイドが運行中にスタックしてしまった車両や乗客の体調不良といったデジタル技術だけでは対応できないトラブルが発生した場合の駆けつけ対応、京急電鉄が交通事業者視点での運行・運用体制構築の支援、地域開発や地域モビリティ開発で培ってきた知見の共有などを想定している。

 日産は実証全体の企画・運営主体を務め、自動運転車の提供と運行を行なうほか、横浜市と連携して地域の移動ニーズを探っていく。実際の車両運行は日産と三菱商事が共同出資した「Moplus」に委託して実施される。

 このような取り組みをつうじて、自動運転の車両を使った移動について、横浜に留まらず全国的に知ってもらい、現在も日本各地で実証実験として限定的に行なわれている自動運転が将来的に広い面をカバーする公共交通になっていく未来像を感じてもらいたいと土井所長は説明。これに加えて今回の計画後半では最大20台の同時運行を計画しており、多数の自動運転車を同時に運行する状況で「移動設計」「安全設計」「効率設計」といった3つの課題に取り組む必要があり、実際に始めてから見えてくる問題も多いと想定。また、4社連携の取り組みでもあり、会社間で統一感のある対応を行なうためのマニュアル作成、教育・トレーニングの実施で運用ノウハウを構築していくことが実証実験のハイライトになると位置付けた。

アプリを使ってオンデマンド予約から車両の認証まで完結させる
遠隔監視センターでは自動運転システムの作動状況のほか、フリートマネジメントやユーザーのケアなどを実施
BOLDLY、プレミア・エイド、京急電鉄の担当領域
日産が実証全体の企画・運営主体を務める
実証実験の狙い

「日産にとって移動サービスという新しい領域に挑戦する意義深い一歩」とエスピノーサ社長

日産自動車株式会社 代表執行役社長兼CEO イヴァン・エスピノーサ氏

 土井所長による概要説明に続き、実証実験に参加する4社の代表者があいさつを実施。日産自動車 代表執行役社長兼CEO イヴァン・エスピノーサ氏は冒頭でプロジェクトの推進で支援を受けた経済産業省、国が支援する「レベル4 モビリティ・アクセラレーション・コミッティ」のメンバー、パートナー企業の4社とプロジェクト推進で連携する横浜市に感謝の言葉を述べてからあいさつを行なった。

 エスピノーサ社長は「われわれ日産は経営再建に向けた取り組みを推進する一方で、将来に向けてよりクリーンで安全、かつ自由な移動を可能とするモビリティの革新を実現する活動にも取り組んでおります。その一環として、日産は2018年に『EasyRide』というサービス名称で自動運転を使った次世代モビリティの開発と実証を開始しました。その後に数回の実証を経て、今年2月には市街地においては日本初となる“運転席が無人の状態での走行”を実現するなど、安全・安心に注力しながら着実に技術を進化させてきました」。

「一方で、自動運転のモビリティサービスが運転手不足など社会課題に対して持続可能なソリューションとなるためには、技術に止まらず、事業化のための仕組み作りが重要です。今回の実証は国、地方自治体、交通事業者、パートナー企業の皆さまとビジネスエコシステムを構築することを主目的としています」。

「このプロジェクトは、われわれ日産にとって移動サービスという新しい領域に挑戦する意義深い一歩となります。今回参加いただく各社との連携を通じて2つの学びを期待しています。1つめは各社の分担と協業による安全な運行ノウハウ。もう1つはより効率の高い事業モデルの運営です。今回集まった各社が1つの目的に向かってチームとして課題にチャレンジすることで、新たな気付きを得て、将来に向けたアイデアに繋げることが、この横浜で実証実験を行なう成果になると思います」。

「日産は横浜を起点として、自動運転モビリティを拡大するロードマップを発表しています。すでに2026年1月から神戸で行なうプロジェクトが決まっており、横浜での学びは間違いなく神戸に活かされます。この活動を加速させるために、今年3月には三菱商事と『Moplus』という合弁会社を設立しました。国内に向けてデザインされた技術とサービスを全国の多くの地域、そして将来的には世界に広げていき、モビリティの革新につなげていきたいと思います」と説明した。

「多くの人に自動運転モビリティサービスを身近に感じてもらいたい」と佐治社長

BOLDLY株式会社 代表取締役社長兼CEO 佐治友基氏

 BOLDLY 代表取締役社長兼CEO 佐治友基氏は「自動車メーカー、交通事業者、遠隔監視の専門企業、そして運行管理システムのDispatcherを提供している当社BOLDLYという、異なる強みを持つ4社が力を合わせたということに大変大きな意義を感じております。今回の実証で弊社が提供するDispatcherですが、これは単なる遠隔監視のシステムではありません。車両機器の点検や点呼、リアルタイムの走行映像の確認と監視、緊急時の乗客との通話、各種対応の記録といったデータを一元的に管理する、そんな業務の中心となるワークスペースを担うプラットフォームで、レベル4自動運転の時代に必須の技術になると思います」。

「自動運転車は使い方や管理方法が非常に大切です。関わるスタッフの教育や日々の業務の引き継ぎといったものまで含め、あらゆる情報がDispatcherに記録されることで現場の業務改善にもつながっていきます」。

「Dispatcherはこれまでに40車種以上の車両と接続実績があり、多様な自動車メーカーさんの車両との接続を経験してきました。また、1人の遠隔監視者が複数の車両を遠隔監視する『1対n』の業務ができる設計となっております。さらに今回は国内にあるサーバー上でデータやり取りが完結するセキュリティ設計ともなっており、安全保障の観点からも安心してご利用いただけるよう考えております。すでにDispatcherのユーザーは全国で全国の交通事業者を中心に約1000人ほどいて、各地の実験で自動運転車を遠隔監視してきた実績があります」。

「今後については3000人の遠隔監視者が1万台の自動運転車をDispatcherで見守ることも計画しております。本実証では国内最大となる20台におよぶ自動運転車を同時に運行するといったインパクトもあります。この国内最大規模の挑戦に際して、BOLDLYはこれまでに全国で50台を超える監視実績で培ってきたシステムの開発力、運用ノウハウを活用して貢献したいと考えております」。

「世の中が目指す将来像としては、モビリティサービスと量産可能なレベル4自動運転に対応した車両を組み合わせ、地域社会が主体となって新しい交通インフラとして実用していくことだと考えております。日本発の自動運転サービスを世界に誇れる形で展開し、社会に新しい価値を提供してまいります。本実証を通じて多くの人に自動運転モビリティサービスを身近に感じていただけるよう、参加各社と共に全力で取り組んでまいります」と語っている。

「都市の交通課題を解決し、より持続可能な社会を築くための重要な挑戦」と吉澤代表取締役

株式会社プレミア・エイド 代表取締役 吉澤成一朗氏

 プレミア・エイド 代表取締役 吉澤成一朗氏は「われわれプレミア・エイドは、1秒でも早くお客さまの元へという企業コンセプトのもと、命をつなぐオペレーションと迅速に情報をつなぐソリューションを提供しているアシスタンス事業会社です。私たちはさまざまな現場で助けを求めるお客さまに、もしものときの安心をお届けしています。当社の事業は緊急時における迅速な対応をつうじてお客さまが困難な状況に直面した際、お客さまの立場に立って寄り添いながら素早く対応するため独自のオペレーション方法を採用しております」。

「とくに映像を活用したオペレーションは当社の大きな強みです。昨今はドライブレコーダーやスマートフォンといった映像機器が普及しており、当社ではこれらの映像を最大限に活用し、現場の状況を迅速に、かつ正確に確認しながら必要な情報を救助機関と的確に共有するオペレーションを展開しています。この取り組みは今回の実証実験に弊社が参加することになった主な理由の1つとも考えております。緊急対応の経験を持ったオペレーターがタイムリーに自動運転車を監視することで状況を的確に把握し、可能性のあるリスクを早期に認識して必要な対応策を講じることができます。このプロセスに人の経験値を加えることで、より柔軟に、かつ迅速な対応が実現できると考えています。私たちはこの体制をつうじて自動運転車の普及を促進し、交通事故のリスクを減少させて社会全体の安全性向上に貢献していきます」。

「横浜のみなとみらい地区では未来の技術を社会に実装する取り組みが活発に行なわれています。今回の実証実験も単に便利な乗り物を造るというだけではなく、都市の交通課題を解決し、より持続可能な社会を築くための重要な挑戦です。ここで働き、学び、暮らす人々だけではなく、国内外から多くの人を引きつけるこの街のように、私たちも多様な企業と交流して新たな価値を生み出す挑戦を続け、安心・安全な自動運転の未来を第1に考え、自動運転サービスが交通インフラの課題解決に貢献することを期待しております。そして業界のサービスにさらなる付加価値を与え、ともに未来を造るパートナー企業の皆さまと新しいモビリティサービスを築き上げていけるよう務めていきます」と意気込みを語った。

「地域課題の解決には地域内でのきめ細やかな移動手段の確保が求められる」と川俣社長

京浜急行電鉄株式会社 取締役社長 川俣幸宏氏

 京浜急行電鉄 取締役社長 川俣幸宏氏は「今回の実証実験は横浜のみなとみらい、桜木町、関内といったエリアで行なわれますが、日産さまとは2019年から2021年にかけて、地形的な課題があるということで、横浜市の郊外になる金沢区の富岡というエリアで『とみおかーと』という名前で乗り合い型の移動サービスの実証実験を行なった実績もございます。地域に適した交通モデルを構築しようということで連携して取り組んでまいりました」。

「横浜という街は非常に起伏に富んだ丘陵地に住宅地が広がっていまして、私どもとしても駅やバス停からのアクセスに課題を抱える地域が多いというところもあります。とくに高齢者の方が移動を躊躇するとか、平らなところに移転されてしまうようなことも課題です。これがさらに空き家問題になって、積み重なることで地域の活力が低下していくといったことも地域としての課題で、解決するためには地域内でのきめ細やかな移動手段の確保が求められると認識しております」。

「一方で、現代はバスやタクシーを運転する働き手の不足が深刻になっていまして、本当なら路線の拡張や増便、増車などを行ないたいのですが、今現在は非常にそれが困難な状況になっております。そんな状態で、今回の取り組みとなる自動運転による移動の実現にわれわれも非常に期待を持っております」。

「当社グループの役割としては、エリアマネージメントという活動をしておりますので、これに基づいて地域特性に応じたモビリティの整備、そして交通事業者という視点での運行や運用体制の構築に向けて尽力してまいりたいと考えております」と語り、自動運転モビリティによる地域活性化に期待を見せた。

「自動運転はわが国のモビリティの未来を形作る重要な柱」と伊藤氏

経済産業省 製造産業局自動車課長 伊藤政道氏

 また、実証実験を支援している経済産業省の製造産業局自動車課長 伊藤政道氏も来賓としてあいさつを行ない、「自動運転はわが国のモビリティの未来を形作る重要な柱であり、交通安全の向上、地域交通の維持、そして新たなモビリティサービスの創出に向けた鍵となるものでございます。とくに都市部における移動の効率化、過疎地域での交通手段の確保といった社会課題に対して、自動運転は現実的、かつ持続可能な解決策を提供する可能性を秘めていると認識しております」。

「今後、自動運転タクシーという新たなモビリティを全国展開していくために、サービスを提供する上で必要な要件や知見をまとめた標準モデルの構築が必要であり、今年度に経済産業省が実施している事業には日産自動車さまにも参画いただいているところでございます。今般のこの実証の取り組みが今後の日本における自動運転タクシーのモデルケースとなると共に、経済産業省の事業における標準モデルの構築にも貢献していただけることを期待しております」。

「また、自動車業界においては自動運転など先端技術の実装が急速に進展しており、SDVの開発競争も激化しております。さらには本年1月に米国で発表されたコネクティッドカー規制など、地政学的リスクもこの分野で顕在化しており、グローバルに自動運転サービスの展開を始めた海外プレーヤーも出てくるなど、自動車を取り巻く環境は急速に変化している状況でございます。こうしたなかで経済産業省としても、本年6月に昨年まとめた『モビリティDX戦略』をアップデートしました。モビリティDX戦略で掲げたSDVのグローバル販売台数における日系シェアを3割にするという目標を現実のものとするべく、エンドトゥエンドによる自動運転の社会実装や半導体の確保、データの利活用などを促進する具体的な取り組みを政府としても進めていきたいと考えております」とコメントしている。

4社の代表によるフォトセッション

セレナ L4技術検証車両の細部をチェック

会場には計6台のセレナ L4技術検証車両が展示された

 発表会後には会場内に展示された6台のセレナ L4技術検証車両を見学・撮影する時間が用意され、車両解説員から説明を聞くこともで来た。

 セレナ L4技術検証車両のデザインコンセプトは「どこでもドア」。側面にあるスライドドアに各車両のテーマカラーに応じた枠が追加され、ここを通過することで「横浜のエリア内を自在に移動できる」ことをイメージしている。

 車両設計は2~3月に実施された「ドライバーレス自動運転」の実証実験で走行したセレナをベースとしつつ、今回の実証実験の内容に合わせてセンサー類などを変更。また、ドライバーレス自動運転のセレナでは自動運転を制御する車載コンピュータが3列目シートエリアをすべて使うサイズとなっていたが、その後の技術進展によってコンパクト化に成功。今回のセレナ L4技術検証車両では助手席空間に収まるほど質量を抑えており、従来は助手席のセーフティドライバー+乗員2人だったところから、今回は運転席のセーフティドライバー+乗員3人に定員を増やしている。さらに車載コンピュータ自体が軽量化され、消費電力の抑制も実現しているという。

セレナ L4技術検証車両のデザインコンセプトは「どこでもドア」
従来のドライバーレス自動運転のセレナでは3列目シートエリアに設置されていた自動運転を制御する車載コンピュータが助手席位置に移設され、利用者は1度の3人まで乗車可能となった
セレナ L4技術検証車両の運転席
セーフティドライバーの視界を遮らないよう、助手席位置に置かれた車載コンピュータはウィンドウの高さまでに収められている
車載コンピュータはe-POWERの駆動用バッテリと補機用バッテリの両方から電力供給が可能
遠隔監視センターとの通信にはセルラー回線を利用しており、通信が途絶することのないよう4回線を利用。助手席のウィンドウ脇には通信用アンテナが各2本ずつ並んでいる
システムを緊急停止させるスイッチは運転席右前方のカップホルダーに美しくレイアウト
車載コンピュータ後方に設置された大型ディスプレイでは乗車した人に利用方法を説明したり、現在走行している周辺の情報などを紹介。また、日産のPRメッセージなどの表示を予定しており、将来的にはサイネージとしての利用も想定している
運転席の背面に設置されたタッチパネルディスプレイは利用者が表示された提案などのなかからタッチ操作で選択するためのもの
車内にルーフトリムには利用者の体調不良などをチェックする複数のカメラが埋め込まれている
インパネ中央の「NissanConnectナビゲーションシステム」の画面の上から追加ディスプレイを固定。自動運転のステータス情報や制御などで必要となる情報が表示される
歩道側のスライドドアに、トラブル発生時に周囲の人が遠隔監視センターと会話するためのパネルが設定されている

 このほか、車両自体も従来は2024年モデル、今回は2025年モデルとなっており、基本的には市販されているセレナを踏襲しているものの、自動運転中に発生したトラブルに対応できるよう冗長性を強化。セレナの特徴ともなっているラックアシスト式電動パワーステアリングに別系統からの制御で操舵できるシステムが追加され、ブレーキではVSCの制御を介して緊急時に停車できる制御ソフトが盛り込まれているという。

 外界認識を行なうセンサー類はルーフ上に追加される「センサーセット」に加え、前後バンパーやフロントウィンドウ、フロントグリルなど車体の各所に設定され、純正装着品の「インテリジェント アラウンドビューモニター」のカメラも自動運転の制御に活用しているという。カメラは16個、LiDARは6個、ミリ波レーダーは9個搭載してフュージョン制御を実施している。

 とくにカメラは数が多くなっており、フロントウィンドウ内の運転席上方には6個のカメラを組み合わせてレイアウト。このうち3個は遠近さまざまな距離にある信号機を認識する専用となっており、信号の変化をしっかりと検知してよりスムーズで安全な自動運転を実現できるようにしている。

 また、前後バンパーにはマイクも埋め込まれ、緊急車両のサイレンの音を拾って遠隔監視センターに通知。センターのスタッフが判断して状況に応じて緊急車両に道を譲る。もちろん、今回の実証実験では乗車しているセーフティドライバーでも対応できる部分だが、将来的なレベル4自動運転を見据え、遠隔監視センターで対応する仕組みをこの段階から構築しておくとのことだ。

車体の各所にセンサー類を設定。一般的なADASで利用されるカメラやミリ波レーダーなどのほか、緊急車両のサイレンを検知するマイクも追加されている
ルーフ上に追加される「センサーセット」には主にLiDARを設置。突き出している円筒部は回転するLiDARを内蔵して、自車側面の周囲を監視している
運転席上方には6個のカメラのうち、3個を使って遠近さまざまな距離の信号機を認識
センサーセット後方のダックテール形状となった部分にもLiDARが設定されている
ドアミラー前方にあるカメラは、従来のドライバーレス自動運転のセレナで助手席に座るセーフティドライバーがデジタルミラーとして利用していた名残。今回は自動運転の制御に利用しているとのこと
ミリ波レーダーは9個設置。見えているもの以外にもフロントグリル内に埋め込まれて搭載されている