まるも亜希子の「寄り道日和」
湘南の海辺とフォルクスワーゲン「ID.Buzz」
2025年10月9日 00:00
大学生のころ、当時としてもすでに20年くらい前の旧車に乗る感覚で、「ちょっとレトロでオシャレなクルマ」として人気があった、通称ワーゲンバス。後席にはヘッドレストもろくについてないし、窓は手動のフラップ式だし、走ればガタピシャとした振動や騒音が大きいし、快適性とはほど遠いものながら、なぜか乗ると楽しくて、みんなでキャンプやバス釣りに行った記憶はまさに青春の1ページとして残っています。
そんなワーゲンバスが、まさか電気自動車になって令和の時代に復活するとは。すでに試乗は済ませていたのですが、湘南の海辺という最高のロケーションで再び試乗できる機会をいただいて、喜び勇んで参加してきちゃいました。やっぱり、すっごく似合ってますね。お天気がよかったので海は早朝からたくさんのサーファーで賑わっており、撮影をしていると「海からずっと見えてていいなぁと思ったから見にきたよ」なんて、休憩にきたついでに声をかけてくれる人がいたり、これから海に入るという2人組の男性は、「前から気になってたんだよ〜。これ電気自動車なの? ガソリン車はないの?」とややガッカリしていたり(笑)。そのほか女性たちがスマホで写真を撮っていったりと、いずれにしてもID.Buzzの注目度の高さを実感したのでした。
ID.Buzzには2990mmのショートホイールベースと3240mmのロングホイールベースがあり、今回の試乗車はロング。ボディの中央部が引き伸ばされているので、スライドドアの長さが変わるんですよね。バッテリはショートが84kWh、ロングが91kWhという搭載容量で、2.5tオーバーの巨体でも一充電あたりの走行距離(WLTCモード)はショートが524km、ロングが554km。先日、モビリティリゾートもてぎで開催されたJoy耐の時にチームメイトが乗ってきていたんですが、東京からもてぎの往復と、ピットで1日中エアコンを効かせて控え室&仮眠室代わりに使っていても、一晩200Vの普通充電を行なっただけで帰路までバッテリがもっていたので、実用性は十分に高いと感じました。
ミニバンとして魅力的なのは、まず3列シートの明るく開放的な室内空間。フロアはフラットで、3列目シートでもゆとりがあります。静かなので運転席と3列目でも会話が普通にできたり、床下に置かれたバッテリのおかげで低重心なため、フラットな乗り心地が続くところも嬉しいポイント。ラゲッジには引き出し式の収納ボックスが2個並べてあって、二段にして使えるようになっています。
よく見ると、2列目シートのサイドや3列目シートのアームレストのあたりなどに、ID.Buzzのアイコンが刻印されているのを発見。運転席と助手席の間にはID.Buzzボックスというドリンクホルダーを兼ねた収納ボックスが置かれているのですが、その仕切り板を外すと1つは栓抜き、もう1つは冬場の霜取り用スクレーパーとして使えるのだとか。こうした、ちょっと遊び心があるところもいいですね。癒し系のミニバンとしても、多人数が乗れるBEVとしても、貴重な存在のID.Buzz。その昔、ワーゲンバスに憧れていたという人たちが、お孫さんが来た時に一緒に乗りたいと言って購入された例もあるそうで、すごく素敵だなと思います。