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藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
わかりやすさ
「答え」を求めるか。「問い」を求めるか。ここには、大きな違いがあります。たとえば、多くの現代美術が難解だといわれるのは、それが「答え」ではなく「問い」だからです。

大方の現代美術作品は、芸術家の高尚な答えを聞いて、頭が良くなったような気分になりたい人には、たいてい失望をもたらします。

芸術はソリューションビジネスではありません。自分の代わりに誰かが出してくれた名解答ではありません。そこにあるのは「問い」です。問いを受けとめることは面倒なことです。答えは自分の頭で考えなければならないのですから。

投げかけられた問いに対する応えは、解決のための答えである必要がありません。問いを感じとり、さらなる問いを世界に投げかけること。必ずしも言葉で答えを考える必要はない。大切なのは、問いの波紋を広げ、共振を起こすこと。

そこにあるのは、わかりやすい/わかりにくいの問題ではありません。伝わるか/伝わらないか。伝わった結果と、行動を起こすか/起こさないか。

優れた芸術に出会えば、すぐ行動したい気持ちになるといった単純なものではありません。行動を引き起こすメカニズムは複雑で繊細です。伝わるためには、受けとめる側の準備も必要です。ある条件が整ったとき、受け手の心の中で何かが発動する。

頭を使わないで「答え」を受けとめ、頭が良くなる気分にさせるのが昨今の「わかりやすさ」。頭を使って「問い」を受けとめ、足を動かし「問い」を広げる行動を促すことが「わかること」。

最適解は問いである。それは優れたデザインでも同じことだと思ってます。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2008-02-28 10:06 | お気に入りの過去記事
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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