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【NEW IT, NEW ITIL】RPAはBotsともAIとも違う

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ITILとの絡みを話す前に、RPA(Robotic Process Automation)とは何か、確認しておきしょう。

RPAに似ている技術として、BotsとAIがよく引き合いに出されます。すべて、「自動的」というキーワードで括られがちなため、区別なく話題に登場することもありますが、その本質は大きく異なります。

ルールベースのRPA、判断ベースのAI

何かを自動処理させたい場合、「人の手によって処理フローをすべて定義するか」、「蓄積された内部データと照らし合わせて都度システムが判断するか」のいずれかで実現します。このとき、前者をルールベースの自動化、後者を判断ベースの自動化とよびます。

判断ベースの自動化では、人の手によってデータ判断ルールを実装する方法と、システム自体がそれ自身で判断ルールを見つけていく方法に分かれます。前者によって生み出された技術の典型例がチャットボットであり、iPhoneのSiriが該当します。音声を取り込み、それを自然言語処理によって文意を抽出し、パターンマッチングで最適な回答を返します。また、後者はAIという言葉が意味する一般的な対象であり、IBM Watsonが有名です。

世の中では、機会学習を行うAIまでを含めてRPAとする考え方もありますが、本エントリーでは、狭義のRPAを「ルールベースの自動化」による範囲と定めます。そして、ビジネスの現場で今活用が急速に広まっているのは、この狭義のRPAです。

図示すると次のようになります。

itm-RPA_Bots_AI.JPG

RPA:

人間が行うデスクトップ画面上の操作を、ルールにもとづいて自動的に再現する技術(ロボティック・プロセス・オートメーション)です。各システムで操作が閉じることなく、ウインドウをまたいでコピー、貼り付け、システム間のデータ交換が可能です。RPAを実行するためのシステム環境(OSバージョン、Javaや.NETなどのランタイムバージョン)が保たれるよう、ユーザーやIT管理者によるメンテナンスを必要とします。

(例)
・三菱東京UFJ
・オリックス
・日本生命(ロボ美ちゃん):請求書データ入力に活用
・リクルートコミュニケーションズ:メルマガのコンテンツチェックに活用
・三井不動産リアルティ:スタッフ報告受理対応に活用 


Bots:

人間の会話や行動をシミュレートするコンピュータプログラム(チャットロボット)の略称です。チャットボットは実際の人と通信しますが、2つのチャットボットが互いに通信できるアプリケーションも開発されています。ボットが動作するためのシステム環境が保たれるよう、IT管理者によるメンテナンスを必要とします。

・Apple(Siri)
・Line(Lineボット)
 →フロムエー(パン田一郎)
 →マイクロソフト(りんな)
 →ヤマト運輸
 →ローソン(あきこちゃん)
・Facebook(Facebookメッセンジャーボット)※CNNボットなど
 →フロムエー(パン田一郎)
・LOHACO(マナミさん)
・WOWOW(コンシェルジュ)
・ライフネット生命(ラネットくん)
・クラララボ(クララ):会議調整ボット
 https://claralabs.com/
・マイクロソフト(Microsoft Bot Framework)

※チャットボットを大量に収集・紹介しているサイト
https://chatbot-list.userlocal.jp/


AI:

人工知能(AI)は、大規模なデータセットを感知し、理解し、行動し、学ぶことができるアルゴリズムでできています。AI技術は、結果を提供するために大量のデータ(コンピュータビジョンや写真/ビデオなど)を組み合わせ、紐づけて分析できます。AIは人間よりも効率的にタスクを実行できます。AIは自己学習機能を持ちます。IT管理者によるコーディングとメンテナンスが必要です。

(例)
・IBM(Watson)
・マイクロソフト(コグニティブサービス)
 ※ミズ・パックマンを史上最高得点でクリアしたのは同社AI
・IPSoft(Amelia)
・SAP(Clea)
・Oracle(AIA)
・Salesforce(Einstein)
・日立ソリューションズ(リテシア)


狭義のRPAについては、アクセンチュアの信方さんが寄稿している記事がよくまとまっていました。

The Finance『RPAとは?業界屈指の導入実績から見えた導入の落し穴と成功の秘訣』
https://thefinance.jp/fintech/170601


AIの先にある「インテリジェント自動化プラットフォーム」

ひとつの整理方法として、RPAからAIまでを同一線上に並べた時、ビジネスシーンでの活用には、さらに「インテリジェント自動化プラットフォーム」というレベルで業務量の増減に対応できる存在にまで昇華することができるものと考えられます。

①プログラムによる処理:
都度作成される一時的な小規模自動化ツール(例 スクリプト、マクロ、バッチ、ミニボット)

②RPAによる自動化:
通常業務レベルに耐える自動化を実現するツール

③AIによる自動化:
機会学習、自然言語処理によって自動応答するシステム

④インテリジェント自動化プラットフォーム:
業務量の増減に対応した柔軟な体制を支える自動化基盤

itm-RPA4phase.JPG

将来目指すのはインテリジェント自動化プラットフォームですが、その前に実現しなければならない壁があります。それがRPAです。

ITILの考え方に沿ってRPAを受け入れるには、初期設定にもとづく運用だけではなく、キャパシティ管理にもとづくRPA用リソースの増減を管理し、必要に応じてシステムリソースの自動増強を図る必要があります。この振る舞い自体をプロビジョニングのRPAとして実装することは、②から一足飛びで④を簡易的に実現するアプローチになるでしょう。

RPAに関する事前知識はこの程度にして、次エントリーからはITILとの絡み方を考えてみます。

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