真夏のカメラマンガレビュー3連発!! 「スマイルfor美衣」「ピントぴったし」「ピンボケ写太」

真夏のカメラマンガレビュー3連発!! 「スマイルfor美衣」「ピントぴったし!」「ピンボケ写太」






カメラもマンガもブレないのが大事!
スマホのカメラの進化で世の中にカジュアルな写真が溢れるようになってきました。まだデジカメがない時代、J君のようなカメラのド素人が気軽に撮ろうとしたら、写ルンですとかを買って撮らなければいけなかったわけで、フィルム式ですから27回しか撮るチャンスがないわけです。その点スマホやデジカメだったら容量の許す限りいくらでも取れますよね。J君はスマホで同じラーメンの写真をあらゆる角度から舐めるように30枚ぐらい撮ったりするわけですが、もしフィルムカメラだったら中身が全部ラーメンで埋まります。これはキモいですよ。まあどうでもいい話なんですけど。

そんなわけで皆さん夏に入ってより一層、パシャパシャカメラを撮ってることと思いますので、これを機会にJ君が所有するカメラマンガを一挙蔵出しレビューしたいと思います。


当サイトで過去にレビューしたカメラマンガは唯一「ジャスピンくん」というのがあるのですが、これはカメラの世界に「ゲームセンターあらし」や「とどろけ!一番」の要素を持ち込んだお子様向けバトルマンガでした。


ジャスピンくん

そして今どきのカメラマンガといえば「東京シャッターガール」のようにエレガントすぎる女子高生が一眼レフを持ちつつ東京の由緒ある町並みを撮るという、そこにはギャグやオチはなく、ある意味「孤独のグルメ」に通じる侘び寂びの世界感を持ったマンガが登場しています。このマンガのおかげで今までのマニアックなカメラのイメージを覆して「一眼レフカメラ=オシャレ女子のマストアイテム」「理想のデートスポット=暗室」みたいな方向性になりつつあります。掲載誌が漫画ゴラクなのにオシャレ!実に革命的ですね。


東京シャッターガール

ちなみに当サイトがこれからご紹介するカメラマンガは、そんなオシャレになりつつある雰囲気を再び混沌としたカメラマニアの世界に引きずり戻すような、いかにも昭和なカメラマンガですのであらかじめご了承ください。

■スマイルfor美衣


タイトルがなんとも昭和っぽい

最初にご紹介するのは「スマイルfor美衣」という作品。タイトルのダジャレ的センスがいかにも昭和なムードを醸し出しています。1987年から1989年にかけて週刊少年サンデーで連載されていた作品ですが、女の子が主人公のカメラマンガというのは当時としては珍しいところです。

主人公の女子高生、星野美衣がプロカメラマンに憧れ、写真週刊誌の駆け出しカメラマンとして日々スクープを探してハッスルするという話です。フライデー襲撃事件とかがあった時代ですから、当時カメラといえば写真週刊誌の記者という設定になるのは自然かもしれません。


そういえば写ルンですのCMしてましたね


中の人などいないはずですが・・・

例えば「吾輩は悪魔だ」といって憚らないダーモン大暮の素顔を撮るために追っかけます。


ダーモン・・・普通の人すぎる

美衣はなんとダーモン大暮が入院している病院まで押しかけて見事スクープ。


悪魔も人の子です

正体のバレたダーモン大暮は実家の母ちゃんに怒られるハメに。


フィルムもったいない・・・

そうかと思えば、お忍びデートをしている芸能人のスクープ写真を撮ってみたものの、とてもかわいそうな事情があったということでフィルムを破棄したり・・・と、女の子らしい情に厚い部分もあります。まあダーモン閣下の時は容赦なかったんですけど、悪魔ですからしょうがないです。

作品前半はこんな感じでカメラマンちょっといい話みたいなほのぼの人情マンガ風なのですが、中盤以降はカメラバトル的展開が中心になり、後半になるとかなりハードコアで殺伐とした雰囲気のマンガに変わってきます。

日本一のカメラマンを決める「AJPC全日本カメラ選手権」という大会に出場することになった美衣。
決勝戦では白骨島という戦時中に日本軍が要塞にしたという無人島を舞台にカメラバトルを行います。ルールはジャングルの中で相手に自分の姿をカメラに撮られたら脱落、最後まで残った者が優勝、つまりカメラ版のサバイバルゲームなのです。こんなバトルでカメラマン日本一を決めていいんでしょうかね・・・。


サバゲー風カメラバトル

もう、カメラ使わずにサバゲーでいいと思います。普通に。バトルは24時間ぶっ通しで行われるため真夜中にジャングルで一人で行動する必要があります。女だろうと容赦ありません。

姿をとられそうになったらストロボを焚いて目眩ましして逃げるとか、島中に鏡を設置して分身したように見せかけて相手をビビらすとか・・・姑息な手段使いまくり。


ヘタするとほんとに死にます

油断するとイヌワシの大群に襲われ瀕死の重傷を負います。ここまでしないとカメラマン日本一にはなれないのです。カメラマンの世界って過酷ですね。

日本一になった後は当然、世界一を目指すのがマンガの宿命。ということで、カメラマンのオリンピックと呼ばれるカメラマン世界一を決める大会「世界耐久フォトバトルGP」に出場することになった美衣。こちらはもっともっと過酷です。

なにしろルール無用。どんな汚い手を使ってもOK、毎年のように再起不能者や死者が出るというデンジャラスすぎるカメラ大会です。一体どこがカメラマンのオリンピックなんでしょうか。オリンピックの精神に全く則ってない気がしますが、参加しているカメラマンも世界レベルで濃い奴らばっかりでした。


何かというと拳法

中国代表拳法による攻撃や怪しげな雑技団風撮影テクを使ってきます。


マサイ族カメラマンも登場

東アフリカ代表はガチのマサイ族スタイルで超人的なフィジカルを発揮し・・・


実はピアノ線を使ってます

ルーマニア代表ヴァンパイアのコスプレで登場。しかも空中を自由自在に歩きまわります。さすが・・・世界のカメラマンたちは格段にレベルが違いますね。主にカメラ技術以外の部分で。

カメラバトルのお題も油断すると即死につながるヤバいやつばかりです。


超低空飛行のF14


こんなスタイルで撮ります

例えばマッハ(音速)で超低空飛行する戦闘機F14に接近して撮るというお題。その超スピードをピントを合わせてカメラに収めるだけでも常人には不可能に近いのですが、もっとヤバいのは音速でF14が通り過ぎた後、ソニックブーム(衝撃波)で周囲が地獄絵図になるところです。


待ちガイルどころの騒ぎではありません

さらに撮影大会中にF14のパイロットがミサイルを誤射したりとか。


しまった!!じゃねーよ

なんでミサイル積んでるんだよ。
その他のお題でも・・・


ハリウッド映画みたいな展開

カーアクションあり


なんでもやらされます

スカイダイビングあり


特撮じゃありません

ボートアクション?あり


ヒャッハー!

写真を撮るために村ごと焼き払ったり


誰も助けてくれません

猛獣に襲われたり


イモトよりすごい

トラに喰われそうになったり・・・


バラエティ番組か!

ラストの決勝バトルのルールも酷くて世界各国に散らばる「V・I・C・T・O・R・Y」の文字の形をした物を謎のポエムをヒントに探し出し、カメラに収めるのですが例えばTを敵チームに撮られていても、CとOを撮ったら、Tは自分の国のものになるというオセロ方式です。要するにVとYだけ取れば勝てるというバラエティ番組の大逆転クイズ並みのルールなのです。

最後の「V」は絶滅寸前の鳥を探しだして羽根がV字になる瞬間を捉えるという、水曜スペシャル藤岡弘、探検隊でも不可能そうな過酷な内容です。

単行本の中扉も初期の頃と最終巻を比べると


青春ぽい

初期の頃のフレッシュな表情が・・・


病んだ感じに

最終巻は「空きれい」とでも言いそうなうつろな目になっています。いかに途中から内容が別物になっているか伝わってきますよね。

■ピントぴったし!


Hなカメラギャグマンガ

「ピントぴったし!」が連載されていたのは1982年~1983年、掲載誌は奇しくも「スマイルfor美衣」と同じ週刊少年サンデーです。こちらは内容が激しくブレまくった「スマイルfor美衣」とは異なり、単行本にして8巻、最後までブレずにエッチなラブコメ&ギャグを貫いています。

カメラマンガでエッチな展開。つまり、被写体は終始一貫して女子・・・というか女子のパンツなのです。作品中の被写体はほぼ100%スカートの内側・・・今のご時世だったら即効で外部圧力が掛かりそうな内容ですが、昔は少年マンガ内でのハレンチ行為に対しては極めておおらかな時代でした。「変態」って言葉がほぼギャグ用語でしたからね。


イケメン風だが変態

主人公の光光一郎(ひかりこういちろう)は、三脚学園の転校生。そしてそのガールフレンドとして登場するのは写真部の部長である野鹿理子(やしかりこ)。ガールフレンドと言いながら終始一貫してパンツを撮られまくる役割です。


パンツを撮られるためだけに存在するヒロイン

このマンガの見どころは光光一郎によるトリッキーかつ天才的なパンチラ撮影テクのバリエーションがめちゃくちゃ豊富なところです。というかほぼそれだけのマンガです。だいぶサイテーなマンガですね。


天才的なカメラさばき


才能の無駄づかい


やったぜ!じゃねーよ

逆にカメラマンガらしくカメラの知識を披露しているシーンはものすごく貴重で、作品全体を通しておそらく3~4シーンしかないと思われます。むしろ主人公の使うカメラにちゃんと実在するカメラの設定がされていたことが驚きです。パンツしか撮らないのに。


マミヤって渋いですね

■ピンボケ写太


僕らのビッグ錠先生作品

最後は我らがビッグ錠先生によるカメラマンガ「ピンボケ写太」をご紹介します。マンガで職業に貴賎なしを体現する漢、ビッグ錠先生にかかればマンガ化できない職業はないと言われています。「料理人」「釘師」「サーカスの空中ブランコ乗り」「陶芸家」「ラブホテル経営者」そして「おにぎり師」など様々な職業マンガを描いてきた先生ならカメラマンのマンガなど造作も無いことと思われます。


まぐれなのに持ち上げられまくり

カメラを使ったことがなかった主人公、日狩写太(ひかりしゃった)がたまたま撮影した写真がプロもビックリするような素晴らしい写真で業界で大絶賛されるのですが、写太にしてみればビギナーズラックでたまたま撮れた完全にまぐれの写真なのに、天才新人カメラマンなどとマスコミで持ち上げられたあげく、カメラマン達からやっかまれてカメラ勝負を挑まれたり、まぐれだったことがバレて叩かれたり・・・マスコミに散々持ち上げられた挙句に落とされるという微妙なシンデレラストーリーです。

この作品最大の見どころですが、写太のライバルとして登場するゴーストカメラマン尾形一光のキャラがカッチョよすぎるところです。まず持ってるカメラがカッチョイイ!


殺し屋みたいです

何このライフルみたいなの!(カメラです)
撮影シーンももちろんカッチョいい!!


カッコよすぎる・・・

マシンガンを掃射するかのごとく写真を撮りまくり!フィルムがいくらあっても足りなそう!!


西部劇のならず者みたいな

写太との対決シーンではガンマンみたいなカッコで登場。カメラマンのくせにすごいデスペラード感です。


芸能人の囲み取材とかでありますね

さらに尾形の必殺技は、ファインダーを覗かずにカメラを撮る「ノーファインダー撮法」。ファインダー覗かなくていいんだから最強すぎます。

ちなみにゴーストカメラマンというのはゴーストライターのような感じで、人気タレントが撮ったとされる写真がど下手だった場合に、代わりに同じ被写体のちゃんとした写真を撮ってあげる人のことです。どこの世界にもゴーストっているんですね。クラシック界然り、マンガ界然り・・・。


ゴーストカメラマンなんているのか

あと、ストーリーと直接関係ないですが写太と尾形一光がカメラ対決するバトルの名前が「カメラファイト」というのですが、オープニングシーンがイカしてます。


カメラファイトのロゴがシュール

会場になんかカメラのオブジェみたいなものが立ってると思ったら・・・


この発想はなかった

なんとレンズのシャッターが開いて司会者が登場!ビッグ錠先生らしい豪快すぎる演出!なかなかこの発想はできません。

というわけで、真夏のカメラマンガレビュー3連発、いかがだったでしょうか?ひとりでも多くのプロカメラマン志望の方の参考になれば幸いです。実はこの他に、友達のパンチラ写真をブルセラショップに持ち込んで金儲けする女子高生が主人公の少女マンガ「シャッターラブ」とか、ナンパな青年が戦場カメラマンに憧れる劇画「カメラマン物語」などの作品も所有しているのですがとても紹介しきれないのでレビューは割愛させていただいております。

なお、カメラに全然興味ないのになんでこんなにカメラのマンガを持っているんだ?とか、真夏って言ってるけど・・・もうそろそろ秋だろ?といったツッコミは受け付けられませんので何卒ご了承ください。



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出典) 
「スマイルfor美衣」 里見桂/小学館
「ピントぴったし!」 石田まさよし/小学館
「ピンボケ写太」 ビッグ錠/集英社

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