2012年03月04日
2001年9月11日、アメリカ同時多発テロが勃発した。長い時間をかけて綿密に練られた計画に従い、テロリストによる致命的な攻撃が迅速に正確に遂行された。わずか2時間の内にテロリストは4機の民間機をハイジャックし墜落させた。19人のテロリストが、33人の乗務員と、213人の乗客と、2,730人のニューヨークとバージニアの地上にいた人々を殺害した。何千人もの人々が負傷した。
4機の航空機が次々と消息を絶ち、墜落していく9月11日は、管制官にとっても最も長い日となった。その日は『ユナイテッド93』として映画化されたのでご覧になられた方も多いと思う。そして、事件から10年を経て、ニューヨーク・タイムズは当時の管制官たちのテープ録音を公開した。
音声と共にスクリプトがスクロールし航空機の現在位置が変化していくインタラクティブなコンテンツとなっている。しかしながら、当然のことながら会話はすべて英語であり、英語が分からなければ何が起こっているのか知ることができない。それはあまりにも惜しいので、本エントリではテープ全編を和訳した。上記サイトで音声を再生させながら、当時の混乱ぶりを確認してみて欲しい。
理解の助けとするために、同じくFBIが10周年を記念して公開したThe FBI Since 9/11のThe Flightsから、ハイジャックされた4機の航空機の軌跡を表した図(public domain)を引用し、以下に解説もあわせて翻訳しておくので参照されたい(冒頭の一節は図右下に記載されている文に依った)。
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ハイジャックの一報を受け、空軍は早期にF-15をスクランブルさせるが、指揮官もパイロットもどこに向かえば良いのか分からなかった。4機の航空機が同時にハイジャックされるという前代未聞の事態を前に、情報も分断、錯綜し、航空機の取り違えがずっと訂正されないまま独り歩きするという有様だった。ハイジャックされたすべての航空機が墜落した後になって、副大統領が撃墜命令を出すところでテープは終わっている。
世界中で最も危機管理体制が充実していると考えられる米国でさえもこんな状態だったのだ(現在では911の教訓を元に改善されていると考えられる)。日本ならば、福島第一原発事故の対応を引き合いに出すまでもなく、より酷い対応しかできないだろう。起きてしまったことはもうどうしようもない。重要なのは、過去の事例を詳細に分析し、客観的事実の把握、当時の対応の検証を行い、体制構築を含めた改善策の徹底した実施を行うことだ。
訳出にあたっては管制用語、軍事用語などに注意したが、誤訳なども含まれると思われる。もしお気づきの点があれば、@LunarModule7までご連絡いただければ対応したい。また、過去エントリ「2001年9月11日、ワールドトレードセンタービルの102分間」においては、2機の航空機に突撃された、ワールドトレードセンター内の1万4000人以上の男女の奮闘の様子を扱っている。あわせてそちらも参照されたい。
目次
テープ記録
8:13 AM | ボストン連邦航空局管制官のPeter Zalewskiは、アメリカン航空11便に何度か交信を試みるが失敗する。 |
ボストン管制 | アメリカン航空11便、高度35,000フィートへと上昇せよ。 |
ボストン管制 | アメリカン航空11便、高度35,000フィートへと上昇せよ。 |
ボストン管制 | アメリカン航空11便、こちらボストン。 |
ボストン管制 | [不明瞭]……Mike Lima、聞こえるか? |
Mike Lima | こちらMike Limaだ。よく聞こえる。 |
ボストン管制 | アメリカン航空11、交信中のアメリカン航空、こちらの声が聞こえるか? |
アテネセクター | こちらアテネ |
ボストン管制 | こちらボストン、アメリカン航空を左20度旋回させ(訳注:右旋回の誤り)、上昇させるつもりだったが、今のところ全く応答がない。 |
アテネセクター | 右旋回しているようだ。 |
ボストン管制 | ああ、右20度旋回させた。 |
アテネセクター | ならOKだ |
ボストン管制 | 11便は、思うに、方位29に向いているようだ。 |
アテネセクター | OK |
ボストン管制 | さて |
アテネセクター | よし、問題ない。 |
ボストン管制 | しかし、こちらは交信ができない。 |
アテネセクター | 応答は無いだろう。11便はNORDO(無線連絡不能)のようだ。了解、ありがとう。 |
ボストン管制 | ……[不明瞭] Mike Lima, パイロットの判断で高度24,000フィートまで降下せよ。 |
Mike Lima | ……24,000フィート、これより対応する。Mike Lima |
ボストン管制 | アメリカン航空11便、こちらボストン。 |
ボストン管制 | アメリカン航空11便、もしボストンセンターの声が聞こえるのなら…… |
他の航空機 | ボストン、683便。高度21,000フィート、23,000フィートに上昇中。 |
ボストン管制 | [不明瞭] 683便、こちらボストンセンター、了解。高度31,000フィートに上昇せよ。 |
他の航空機 | 高度31,000フィートに上昇する。 |
ボストン管制 | アメリカン航空11便、もしボストンセンターの声が聞こえるのなら、トランスポンダをIDENTにセットするか、応答せよ。 |
ボストン管制 | (43秒の沈黙) |
ボストン管制 | アメリカン航空11便、もしボストンセンターの声が聞こえているのなら、127.82MHzでボストンセンターに再交信せよ。アメリカン航空11便、12782だ。 |
8:19 AM | ボストン発ロサンゼルス行のアメリカン航空11便のフライトアテンダントのBetty Ongは、航空機後部の座席の背の無線電話を用いて、ノースカロライナ州カリーにある南東部予約オフィスにいるアメリカン航空の予約代理人と話し、そしてアメリカン航空航行担当であるNydia Gonzalezと話す。 |
Betty Ong | 後部座席担当のNo.3です。操縦室は応答がありません。ビジネスクラスで誰かが刺され、催涙ガスが撒かれたようで息ができません。わからないけど、ハイジャックされたようです。 |
AAL | どちらの便ですか? |
Betty Ong | 12便です(訳注:11便の誤り)。 |
AAL | どちらの席におられますか?[沈黙] マム、もしもし? |
Betty Ong | はい。 |
AAL | どちらの席におられますか?[中断] マム、どちらの席におられますか? |
Betty Ong | ボストンを出発したところで、空を飛んでいます。 |
AAL | 承知しています。 |
Betty Ong | ロサンザルスに行く予定でしたが、操縦室は電話にでません。 |
AAL | はい、しかし、どちらの席におられるのですか?座席番号は何ですか? |
Betty Ong | はい、今は補助座席に座っています。3Rです。 |
AAL | はい、あなたはフライトアテンダントですか? ごめんなさい、フライトアテンダントだとおっしゃいましたか? |
Betty Ong | もしもし? |
AAL | もしもし、あなたのお名前は? |
Betty Ong | すみません、もう少し大きい声でお願いできませんか? よく聞こえません。 |
AAL | あなたのお名前をおっしゃってください。 |
Betty Ong | OK, 私はBetty Ongです。11便のNo.3です(訳注:客室乗務員にNo.が振られており、No.で呼称している。パーサーがNo.1で、彼女はNo.3にあたる)。 |
AAL | はい。 |
Betty Ong | 操縦室に電話はつながりません。ビジネスクラスでは誰かが刺されたみたいで、息もできません。誰かが催眠ガスか何かを撒いたみたいです。 |
AAL | ビジネスクラスのその人のことをもう少し詳しく教えてもらえませんか? |
Betty Ong | 私は後部座席に座っていて、ビジネスクラスから誰か戻ってくるみたいです。少しの間待っていただければ、彼らが戻ってきます。[不明瞭] 誰が刺されたか誰か知りませんか? |
後方で | [不明瞭] わからないが、KarenとBobbyが刺された。 |
Betty Ong | No.1が刺されました。パーサーが刺されました。ええっと、ビジネスクラスでは息ができないので、たとえビジネスクラスに行ったとしても誰が刺されたか確かめることはできません。No.1はたった今刺されました。No.5、ファーストクラスのお客様の、ええっと、ファーストクラスギャラリーフライトアテンダントと、パーサーが刺されました。操縦席には行くことができません。ドアは開きません。もしもし? |
AAL | はい、すべての情報を記録しました。こちらでは、もちろんあなたも御存知の通り、録音しています。それで、今のところ? |
Nydia Gonzalez | こちら航行担当です。どの便について話をしていますか? |
AAL | 12便です。 |
Nydia Gonzalez | 12便、OK。 |
Betty Ong | いいえ、11便に乗っています。11便です。 |
AAL | 11便です。すまない、Nadine。 |
Betty Ong | ボストン発ロサンザルス行きです。 |
AAL | はい |
Betty Ong | No.1が刺され、No.5が刺されました。(訳注:周囲に呼びかけ)誰か操縦席に近づくことはできますか? 誰か操縦席に近づくことはできますか? ……私たちは操縦席に入ることすらできません。誰が操縦席にいるかもわかりません。 |
AAL | 賢明ならドアを開けないでしょう、そして…… |
Betty Ong | ごめんなさい? |
AAL | ステイラルコックピット(訳注:3,000m以下の低空域を飛行中に、操縦に集中できるように、フライトアテンダントから操縦室への連絡を原則として禁止すること)を維持していないのでしょうか? |
Betty Ong | ハイジャック犯は操縦室に侵入していると思います。彼らはもう操縦室に到達していて通路を塞いでいるか、何かしていると思います。操縦室に電話は繋がらず、内部に入ることもできません。 |
(沈黙) | |
Betty Ong | まだ繋がってますか? |
AAL | はい、繋がってます。 |
Betty Ong | OK、回線はつなげたままにしておきます。 |
AAL | OK |
Nydia Gonzalez | 予約窓口に電話をかけているのは誰ですか? フライトアテンダントの一人でしょうか? あなたは誰? |
AAL | 彼女はBetty Ongと名乗りました。 |
Betty Ong | はい、私はNo.3です。No.3。そしてファーストクラスの…… |
Nydia Gonzalez | No.3ですか? |
Betty Ong | はい、それで…… |
Nydia Gonzalez | 11便ですか? どこからどこへの? |
Betty Ong | 11便です。 |
Nydia Gonzalez | 誰かに電話をかけた人はいますか? |
Betty Ong | いいえ。誰かが医者を呼び出していますが、医者を見つけることができません。 |
8:21 AM | アメリカン航空の航行専門家であるNydia Gonzalezは、アメリカン航空11便から、フライトアテンダントとパイロットが刺されたと報告した、フライトアテンダントのBetty Ongとの会話内容を伝達する。 |
AAL | アメリカン航空緊急回線です。緊急事態を報告してください。 |
Nydia Gonzalez | こちらアメリカン航空のNydiaです。通話内容を監視していたところ、11便のフライトアテンダントから当方にパイロット、みんな刺されたと連絡がありました。 |
AAL | 11便ですか? |
Nydia Gonzalez | はい |
Nydia Gonzalez | 操縦室に入ることができないと聞きました。 |
AAL | OK、私が話しているのはどなたですか? |
Nydia Gonzalez | すみません、私はアメリカン航空ローリー予約センターのNydiaで、航行專門家として勤務中です。 |
AAL | すみません、お名前をもう一度。 |
Nydia Gonzalez | Nydia |
AAL | Nydia、ラストネームは? |
Nydia Gonzalez | Gonzalez、G-O-N-Z-A-L-E-Z。 |
AAL | ローリー予約センター、OK |
Nydia Gonzalez | 私は当方の代理人の一人とフライトアテンダントが電話で話しているところを聞きました。 |
AAL | OK, それで彼女はなんと電話を? |
Nydia Gonzalez | 予約センターを通して回線を回して、こちらからフライトアテンダントに質問することができます。 |
AAL | OK, うむ、彼らは非常事態(エマージェンシー)を宣言したと認識した。A.T.C.(訳注:航空交通管制)と連携を取るので、少し待って欲しい。 |
Nydia Gonzalez | [Betty Ongに向けて] 誰かと連絡は取れました? 私はセキュリティと一緒にいます。OK、Betty? あなたはとても良い仕事をしたわ。どうか落ち着いて、大丈夫? 私たちは絶対…… |
AAL | OK, 今パイロットたちとコンタクトをとっている。また、A.T.C.ともコンタクト中だ。 |
Nydia Gonzalez | OK |
AAL | 他にフライトアテンダントから聞いたことは? |
Nydia Gonzalez | ええっと、私が聞いた限りでは、No.5のフライトアテンダントが刺されたようですが、息はあるようです。No.1はかなり深く刺されたようで、床に横たえられています。彼女が意識があるかどうかは分からないようです。その他のフライトアテンダントは、後方に退避していると言ったところが私の知るかぎりです。エコノミーの乗客は今何が起こっているか気づいていないように見受けられます。 |
AAL | その2人の乗客はファーストクラスから来たのか? |
Nydia Gonzalez | OK、……私は……ねえ、Betty? パイロットと共に操縦室に入った男の[不明瞭]に関して何でもわかっていることはありませんか? 彼らはファーストクラスから来たのですか? 彼らは2AとBに座っていて、パイロット共に操縦室にいると。 |
AAL | 誰が助けているのか? 機上に医者はいるのか? |
Nydia Gonzalez | 飛行機の中に医者はいますか?Betty あなたを助けてくれる? 機上に医者は一人もいない……と、OK。すべてのファーストクラスの乗客をファーストクラスの外に出したのですね? |
AAL | すべての乗客をファーストクラス外に出したのか? |
Nydia Gonzalez | ええ、彼女は今そうしたと言いました。彼らはエコノミークラスにいます。何が起こってるの? OK、飛行機は再び不安定になっている。とてもふらふらと飛んでいる。彼女はファーストクラスのすべての乗客はエコノミークラスに移ったと言ったので、ファーストクラスは空になっています。あなたの方はどうなっていますか? Craig? |
AAL | A.T.C.に連絡を取った。彼らはこの件をハイジャックと断定している。そこでA.T.C.は全ての航空機を11便の進路からどかしているところだ。 |
Nydia Gonzalez | OK |
AAL | 11便はトランスポンダ(訳注:航空機に搭載されている自動応答装置。航空機の位置などを知らせるのに用いられる。)を切っている。そのため、正確な高度を知ることはできないが、A.T.C.はプライマリ・レーダーに捉えていると考えているようだ。A.T.C.は11便は降下しているとみているようだ。 |
Nydia Gonzalez | OK |
AAL | OK, Nydia? |
Nydia Gonzalez | はい、もしもし? |
AAL | OK, こちらには運行管理者がいて、機に残っている燃料量を把握している。 |
Nydia Gonzalez | ええ。 |
AAL | 我々はいくつかのプロファイルを走らせていて |
Nydia Gonzalez | OK |
AAL | 正確に11便の航続時間を見積るためだ。 |
Nydia Gonzalez | OK |
AAL | 彼女は── |
Nydia Gonzalez | 彼女はファーストクラスにいたかもしれないその他の乗客については誰かも分からないそうです。明らかに彼らは何かを散布しました。そのため息をするのも、その場所に入るのも苦しいみたいです。 |
Nydia Gonzalez | 何が起こってますか? Betty? Betty、話して。Betty、そこにいるの? Betty? [不明瞭] 彼女を見失った?OK、そう、回線はオープンにしておきましょう。どうも私たちは彼女を見失ったみたいです。 |
AAL | OK |
8:24 AM | F.A.A.(連邦航空局)ボストン管制官はアメリカン航空11便のハイジャック犯が「我々は複数の航空機を掌握した」「我々は空港に戻る」と告げるのを聞く。 |
ボストン管制 | アメリカン航空11便はコールしているか? |
Mohamed Atta | [不明瞭] 我々は複数の航空機を掌握した。大人しくすれば問題は起きない。我々は空港に戻る。 |
ボストン管制 | 私に呼びかけているのは誰か? |
ボストン管制 | アメリカン11便、コールしようとしているか? |
Mohamed Atta | 誰も動かなければ、全てがうまくいく。もし少しでも変な動きをすれば、お前自身や航空機は無事でいられない。静かにしてろ。 |
8:37 AM | F.A.A.(連邦航空局)ボストンセンターの航空管制官Joseph Cooperは北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)の北東防空区域(NEADS)のJeremy W. Powell軍曹を呼び出し、アメリカン航空11便のハイジャックの疑いについて警告する。 |
Powell軍曹 | ハントレスウェポン、Powell軍曹だ。 |
Cooper | もしもし、ボストンセンター、T.M.U.(航空管制ユニット)、問題が発生した。航空機がハイジャックされ、ニュー……ニューヨークに向かっている。F-16あたりを複数機スクランブルさせて我々を支援することを要求する。 |
Powell軍曹 | 本物か?それとも訓練か? |
Cooper | いや、これは訓練ではない。試験ではない。 |
Powell軍曹 | OK、少しこのまま待ってくれ、OK? |
Cooper | ああ。 |
Powell軍曹 | ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、ヘイ、真面目に聞け、[不明瞭] 真剣な話だ [不明瞭] |
8:38 AM | 北東防空区域(NEADS)の識別担当官(ID Tech)のStacia RountreeとShelley Watson とMaureen Dooleyは、ボストンのF.A.A.(連邦航空局)から、アメリカン航空11便がどこに向かっているか把握しようとする。しかし、誰も確実なことは言えない。電話に答えているのは、ボストンの軍事作戦専門家であるColin Scogginsである。 |
ID Tech 1 | 何? |
ID Tech 2 | 何これ? |
後方で | 本当に起こっているの? |
Dooley | 本物のハイジャックよ。 |
Watson | クール。どこで? |
Watson | ボストン? |
Watson | 回線開きます。 |
Scoggins | こちらボストン、ミリタリーデスクだ。 |
Watson | ああ、こちらハントレス。あ、ハイジャックされた航空機について。 |
Scoggins | ああ |
Watson | もし出来るなら、そちらからの情報を確認したいの。 |
Scoggins | OK、何が知りたい? |
Watson | まずコールサインと機種を教えて。 |
Scoggins | アメリカン航空11便だ。 |
Watson | アメリカン航空11便? |
Scoggins | 機種は、767だな。 |
Watson | 何人乗っているか把握してる? |
Scoggins | うーん、わからないな。少し待って。ヘイ、Dan、搭乗者数は分かるか?他になにか分かってることは? |
Scoggins | いや、他にわかっていることはない。 |
Watson | それで全部なのね? |
Scoggins | 航空機の位置は把握している。ケネディの北およそ40マイルだ。 |
Watson | ケネディの北40マイルね? |
Scoggins | そうだ。 |
Watson | モード3(航空機のトランスポンダから発信される追跡情報。ハイジャック犯は既にOFFにしている)はどう? |
Scoggins | だめだ。プライマリ・ターゲット(航空機をプライマリ・レーダーのみで追跡できる。通常より難度が高い。)だけだ。 |
Watson | プライマリ・ターゲットだけ? |
Scoggins | そうだ。 |
Watson | OK, どこから来てどこに向かっているか分かる? |
Scoggins | いや、分からない。11便はボストンを離陸して、元々は、ええっと、ロサンザルスに向かっていた。 |
Watson | ボストンからロサンザルス? |
Scoggins | ああ、元々の航路はね。そのとおりだ。 |
Watson | いまどこに向かっているか分からない? |
Scoggins | 不明だ。今はケネディに向かっていて、速度は落ちているようだ。確かなことはよくわからない。誰も本当のところは分かっていない。 |
Watson | あなた、管制局? ニューヨークにあるの? |
Scoggins | ボストンセンターだ。 |
Watson | ボストンセンターね。 |
Scoggins | 今はな。11便はまっすぐニューヨークセンターに向かっている。 |
Watson | 軍事支援は要請されている? |
Scoggins | ああ、実際F-15を数機向かわせようと…… |
Watson | F-15を上げたいと。 |
Scoggins | ああ、オーティスからF-15が上がる。 |
Watson | しかし、11便のどんなモードもコードも使えない……と。 |
Scoggins | たしかに、今、今は、無い。どんなモードCもダメだ。 |
Watson | 11便はJ.F.K.に着陸するの? |
Scoggins | いや、分からない。 |
Watson | つまりどこに向かっているかまるで分からないと? |
Scoggins | 11便はハイジャックされ、パイロットは難しい状況に置かれている。つまり、我々は11便がどこに向かうつもりなのか分からない。11便はケネディに向かっているが、11便は、私が言ったように、今はケネディの北およそ36マイルの地点を367ノットで飛行中だ。 |
Watson | OK |
Scoggins | 11便がどこに向かうつもりなのかわからない。 |
Watson | もし何か分かったら、こちらに知らせてくれたら嬉しい。 |
Scoggins | OK, 対応は始めている。おそらく操縦室に賊が何名か入り込んでいて、パイロットは…… |
Watson | 根拠は? ごめんなさい。 |
Scoggins | ああ、なにか分かったらすぐ連絡する。 |
Watson | ありがとう |
Scoggins | どういたしまして |
Watson | OK |
8:40 AM | 北東防空区域(NEADS)の北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)指揮官であるJeremy W. Powell軍曹はマサチューセッツ州ケープコッドのオーティス空軍基地において、2人のパイロットに対し即時待機を指示、しばらくして、手続き上必要とされる国防長官の正式な承認が無いまま、離陸を指示した。 |
入域管制 | こちらケープコッド入域管制、待機中 |
管制塔 | 管制塔、待機中 |
Powell軍曹 | Giant Killer |
Powell軍曹 | こちらハントレス、Panta 45、46に即時待機を指示する。繰り返す。時刻1241(グリニッジ標準時)即時待機だ。以後、H(ホテル)、R(ロメオ)と呼称する。すべての部隊はイニシャルで識別する。以上、指揮所。 |
Powell軍曹 | Giant Killer, 管制塔 |
管制塔 | [不明瞭] |
Powell軍曹 | 入域管制 |
入域管制 | T(タンゴ)、J(ジュリエット)、コールサインを繰り返せ |
Powell軍曹 | Panta、P(パパ)-A(アルファ)-N(ノーベンバー)-T(タンゴ)-A(アルファ)、45, 46 |
入域管制 | T(タンゴ)、J(ジュリエット) |
Powell軍曹 | J(ジュリエット)、P(パパ)。全部隊投下可能。 |
8:42 AM | 北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)は戦闘機をどこに向かわせばよいか分からなかった。ハイジャック犯がトランスポンダを切っていたため、11便を追跡することが困難になっていたからだ。作戦班指揮官(MCC)のKevin Nasypany少佐は指示を迷うJames Fox少佐と話す。 |
Fox | 演習でもこれだけ多くのことが起こったことなんて無いぞ。 |
後方で | Deskins [不明瞭] |
Fox | Steve, 緯度経度、41だ。 |
不明 | 了解 |
不明 | あれは何だった? |
不明 | (雑音) |
Fox | OK、見つけた |
Nasypany | よし、41だ。 |
Nasypany | ああ、確認した。 |
後方で | 1443(訳注:11便が最後に利用したトランスポンダのスクォーク(識別コード)と思われる) |
Nasypany | 1443、探し中……と見つけた、OK、モード3、1443が最後に確認されたコードだ。いや、これは演習ではない。OK、配置についた。 |
後方で | Z地点を確認。サー。 |
Nasypany | 11便を最後に見失った地点は正確にここZ地点だ。その時方位は190、高度29,000フィートで下降していた。目下Z地点周辺空域を捜索中。 |
MCC/T | SDMCC, オーティスよりスクランブル。 |
Fox | 理解した。ミッションを告げよ。 |
Fox | MCC, 彼らをどこにスクランブルさせるべきかわからない。方向、目的地が必要だ。 |
Nasypany | OK, Z地点を与える。ちょうどニューヨーク市の北だ。 |
Fox | Z地点は緯度経度41157436から7346か。 |
Nasypany | Z地点に向かわせろ。 |
Fox | 了解した。 |
8:46 AM | アメリカン航空11便がワールドトレードセンター北タワーに激突。❺ |
8:47 AM | ワールドトレードセンターの火事についての最初の報告。 |
ニューヨーク管制 | みんな聞いたか? |
ハーンドンセンター | もう一度繰り返してくれ |
ボストン管制 | ケネディの西20マイルほどでプライマリ・ターゲットをロストし、そのエリアでELT(訳注:航空機用救命無線機)の報告を受けた。おそらく沿岸警備隊の活動を要請することになると思う。 |
不明 | ああ、こちら側もロストした。 |
不明 | ボストン管制、こちらニューヨーク、アメリカン航空の機種は何か? |
ボストン管制 | 767だ。 |
ACI監視 | こちらACI(空戦情報)監視。11便の追跡をロストしたかどうか繰り返してくれ、オーバー。 |
ボストン管制 | ボストンは追跡をロストした。こちらの周波数でテープ[不明瞭]ハイジャックの脅迫を受信した。 |
ニューヨーク管制 | ニューヨークも同様にロストしたことを確認している。ロスト周辺エリアでELTの報告を受けた。 |
ニューヨーク管制 | ケネディ管制塔の報告によれば、本当に? ケネディ管制塔はワールドトレードセンターで火事が起こったと報告している。そして、ここは、ここは11便をロストしたエリアだ。 |
9:01 AM | 2機目の航空機、ユナイテッド航空175便も消息を絶ち、F.A.A.(連邦航空局)のニューヨークセンターのマネージャは、バージニア州ハーンドンのF.A.A.司令部に、即座に軍に警告を発するよう告げる。 |
Mulligan | NOM(運用管理者)に確認を取ってくれ。戦闘機をスクランブルさせる準備を誰かが終えたかどうか分かるか? |
Bell | [不明瞭] |
Mulligan | いや、いくつかの事態がここで同時に進行中だ。まさに最悪の事態に発展しつつある。軍の協力が必要だ。 |
Bell | なぜ? 何が起こってる? |
Mulligan | 誰か空軍戦力を動かせる権限を持っている者につないでくれ。 |
Bell | 了解した。伝える。 |
9:02 AM | 担当官たちは航空機が急速に降下し、ユナイテッド航空175便がワールドトレードセンターに突撃するのを見る。 |
不明 | なあ、今窓から外が見えるか? |
レーダー管制 | ああ |
不明 | 4,000フィートぐらいで、空港の5マイル東に今航空機が見えるか? おそらく、…… |
レーダー管制 | ああ、見える。 |
不明 | 航空機はビルに突っ込むように降下しているように見える? |
レーダー管制 | 猛烈な速度で降下してる、ああ。 |
不明 | つまり、その…… |
レーダー管制 | 今4,500フィート。たった1、1走査間に800フィート降下した。 |
不明 | もう一つの事態が進行したようだ。 |
不明 | どの種類の航空機か分かるか? |
レーダー管制 | 分からない。ちょっと調べてみる。 |
後方で | もう1機がビルに衝突した。 |
後方で | ワオ |
後方で | [不明瞭] ワォ、もう1機が激突した。もう1機がワールドトレードセンターに激突した。 |
レーダー管制 | ビル全体が、ああ、もたない。 |
後方で | オーマイゴッド |
不明 | なんてことだ。わかった、みんな忙しくなるぞ。 |
レーダー管制 | OK |
9:03 AM | ユナイテッド航空175便がワールドトレードセンター南タワーに激突。❻ |
9:06 AM | F.A.A.(連邦航空局)は、アメリカン航空11便のハイジャック犯が"plane"ではなく、"planes"と言っていたことを確認する。 |
FAA | [不明瞭] テープを確認したところ、彼らは「我々は複数の航空機を掌握した(we have planes.)」と言っていたことが確認された。 |
9:07 AM | ロングアイランド沿岸の外れにある軍事作戦空域に派遣された戦闘機パイロットはマンハッタンに振替される。Kevin Nasypany少佐は作戦班指揮官(MCC)である。 |
Nasypany | OK, Foxy(James Fox少佐)、これはその、これは我々がやらなければならないと予期していたことだ。F.A.A.と話す必要がある。事態は進行中で、我々は戦闘機をマンハッタン上空に派遣する必要があるかどうか告げなければならない。OK? |
不明 | サー |
Nasypany | それが最も良い方法だ。今できるベストだ。F.A.A.と調整して、そこに我々が知らない何があるのか告げ、マンハッタン上空に向かい、少なくともそこで何かを成すのだ。 |
9:11 AM | インディアナポリスセンターの運用管理者は、アメリカン航空の運行管理者であり、アメリカン航空11便がハイジャックされたことを確認したJim McDonaldとコンタクトを取る。 |
アメリカン航空 | アメリカン航空運行管理者、Jim McDonaldです。 |
インディアナポリス | こちらインディアナポリスセンターです。あなたがたまたまアメリカン航空77便と連絡を取ったのですか? |
アメリカン航空 | いいえ、サー。しかし2機目の航空機がワールドトレードセンターに衝突したとの未確認情報を得ました。そして、[不明瞭] |
インディアナポリス | 繰り返してもらえますか? |
アメリカン航空 | 御存知の通り、こちらはハイジャックによりアメリカン航空11便をロストしました。11便はもともと、えー、ボストンからロサンゼルスに航行予定でした。 |
インディアナポリス | 了解です。しかし、あなたがなんと言ったのか良く聞き取れませんでした。アメリカン航空11便と言いましたか? |
アメリカン航空 | はい、ハイジャックされました。 |
アメリカン航空 | 11便はボストンからロサンゼルスへの便でした。77便はダラスからロサンゼルスへの便でした。そして、2機目の航空機がワールドトレードセンターに今しがた飛び込んだとの未確認情報を得ました。 |
インディアナポリス | [不明瞭] |
インディアナポリス | ありがとうございました。それでは。 |
9:21 AM | アメリカン11便が未だ飛行中でワシントンに向かっているという報告が飛び交い、バージニア州ラングレー空軍基地を飛び立った戦闘機は北に転進し、ボルティモアに向かうよう指示される。 |
後方で | OK, 3番目の航空機がハイジャックされて、ワシントンに向かっている。いや、[冗談ではない] |
Nasypany | OK, アメリカン航空11便は未だ飛行中だ(訳注:誤情報。11便は既にWTCに衝突済。アメリカン航空77便との混同)。11便、最初のやつだ。ワシントンに向かっている。OK、ラングレーからすぐにスクランブルさせる必要がある。わ、私は、オーティスから戦闘機を上げ、11便を見つけたら追跡させる。 |
Nasypany | ああ。 |
Nasypany | 確かか? |
Nasypany | OK, 11便の向かう先はラングレー、というよりもむしろワシントンというべきだろうな。アメリカン11便、最初のヤツは未だ飛行中だ。まだ[不明瞭] |
Nasypany | こちらは配置についた。そちらは? |
後方で | [不明瞭] 本物のハイジャックだ。またな。 |
Nasypany | OK |
Nasypany | Foxy, スクランブル ラングレー。ワシントンエリアに向かわせろ。 |
Fox | 了解。 |
Nasypany | アメリカン航空……。今そいつのコードを取得する。テールナンバーを確認。これは── |
Nasypany | うん、あれ? これは……うーん、テールンバーは何だった? |
後方で | Panta 45, 46 |
Dooley | N(ノーベンバー)、3、3、4、A(アルファ)、A(アルファ) |
Nasypany | N(ノーベンバー)、3、3、4、A(アルファ)、A(アルファ)。もし見つけることができたら、モードを取得、取得する、取得するよう務め、ヤツの位置を確認する。つまり、[不明瞭] そして、追い込む。 |
Nasypany | ああ、OK、バイ |
後方で | OK |
9:28 AM | ユナイテッド航空93便の通信から争う物音が聞こえる。 |
クリーブランド管制 | ユナイテッド航空93便、他機が1時の方向12マイル東飛行中。高度37,000フィート。 |
UA93 | 視認できない。探している。ユナイテッド航空93便。 |
UA93 | ヘイ![ハイジャックが始まる。叫び声] |
クリーブランド管制 | 誰かクリーブランドを呼んだか? |
AA1060 | 了解。アメリカン航空、ええっと、1060。高度37,000フィート。遅延により減速している。もし可能なら東に回りたい |
クリーブランド管制 | あれはアメリカン航空1060か? |
UA93 | (叫び声) |
クリーブランド管制 | ユナイテッド航空93便を捕捉したか? |
クリーブランド管制2 | ユナイテッド航空93便、チャードンの南? 降下した。 |
クリーブランド管制 | 何が起こってる? |
クリーブランド管制2 | 93便は降下したようだと言った。 |
クリーブランド管制 | ユナイテッド航空93便、高度35,000フィートを確認。 |
クリーブランド管制2 | ユナイテッド航空93便、こちらクリーブランドだ。 |
クリーブランド管制 | どうぞ |
クリーブランド管制3 | チャードンの南のユナイテッド航空93便を捕捉しているか? |
クリーブランド管制4 | 変な物音が聞こえた。補足しようとしているが、そちらで捕捉しているか? |
クリーブランド管制3 | いや |
クリーブランド管制4 | ありがとう。ユナイテッド航空93便、こちらクリーブランド。 |
クリーブランド管制 | ユナイテッド航空1523便、数分前そちらでもこの周波数で何か混信のような、叫び声を聞いたか? |
UA1523 | ああ、聞いた。797。しかし、アレが何だったのかは分からない。 |
クリーブランド管制 | OK。ユナイテッド航空93便、こちらクリーブランド。もし聞こえるなら、トランスポンダをIDENTにセットせよ。 |
AA1060 | こちらアメリカン航空1060便、先の交信と同様だ。 |
クリーブランド管制 | アメリカン航空1060便、そちらもあれを聞いたのか? |
AA1060 | イエッサー、2度。 |
クリーブランド管制 | 了解。我々も聞いた。ありがとう。あれが何かの混信でなかったことを確認したい。 |
9:28 AM | 北東防空区域(NEADS)の識別担当官(ID Tech)は、ワシントンはこの状況に気づいていないのではないかという懸念をもつ。(警告:クリップには過激な表現が含まれる) |
ID Tech | ハイ、こちらハントレス。ああ、作戦班指揮官(MCC)からあなたにあらゆる情報を伝えるように言われたの。ボストンを飛び立った3機の航空機が行方不明になり、明らかにその内の2機がワールドトレードセンターに激突した。そして残り1機がワシントンに向かっている。この情報は把握してた? |
クリーブランド管制 | ええ。 |
ID Tech | アメリカン航空11便は激突したヤツじゃない。11便はまだ飛行中よ。これについては? |
ID Tech | 今気づいたところ。 |
ID Tech | 正確な位置については把握していない。ワシントンの方向に向かっていたというのが最後の情報よ。 |
Dooley | ワシントンも電話にこの出たほうがいいよ。 |
ID Tech | ええ。しかし誰かが大統領に連絡を取らないといけない。これはやばいよ。 |
Dooley | [後方へ] コイツを探し始めたほうが良さそうね。 |
ID Tech | ええ、そうね。今は行き詰っていて、ここであまり多くのことを言うつもりはないわ。でも、お願いだから注意して。ええっと、アメリカン航空11便かその他のことについて何か分かったこと無い? |
Dooley | ねえ、聞いて、まともな、いまいましい情報を寄越して来たのはボストンだけよ。 |
ID Tech | もう一つ、もう1つだけ言いたいわ。ワシントンって、このことを深刻に捉えてるかどうかは分からないじゃない。もしセンター等から情報を収集していなければ、深刻に捉えていないでしょう。彼らに警告を発して、これは── |
ID Tech | ワシントンセンター、まだ、全然終わっていないよ。OK、サー? |
Dooley | アメリカン航空について何か見つけないと。 |
後方で | ラングレーからスクランブルさせた。 |
Dooley | 見つけた? |
後方で | もう見つけたかどうかは分からない。しかしラングレーは[不明瞭]を阻止するためにスクランブルし、[不明瞭]ワシントンに向かっている。戦闘機は[不明瞭] |
ID Tech | [不明瞭] 彼らと話したところよ。 |
Dooley | どこにいようと飛行中の大統領を見つけ出すよ(訳注:実際に大統領専用機が飛び立ったのは9:55)。 |
ID Tech | 今ボストンがワシントンを呼び出している。 |
Dooley | どんな感じ? |
ID Tech | あー、ボストンは航空機がどこにいてどこに向かっているのか全く手がかりがなく、ワシントンセンターに事態は非常に深刻であることを伝えてる。 |
Dooley | いいね。 |
ID Tech | だって、あそこでは誰も真剣に動いてないんだから。 |
Dooley | ヤー、ファッキン! |
ID Tech | それで |
ID Tech | ヘイ |
後方で | アメリカン航空はD.C.に向かった[不明瞭]。 |
ID Tech | 緯度経度を確認する。 |
Dooley | ねえ、誰か数学得意?最後に確認された緯度経度から290ノットで移動すると…… |
ID Tech | 3番目のコールサイン分かる? |
Dooley | 移動方向はワシントンね。 |
Dooley | Z地点はアメリカン航空のヤツね。 |
Dooley | いいえ、最初、最初のZ地点。ええ。それが、アメリカン航空で、その緯度経度。 |
9:32 AM | ユナイテッド航空93便のハイジャック犯が「席から動かないように。我々は爆弾を持ち込んでいる」と告げるのが聞こえる。 |
Ziad Jarrah | 席から動かないように。我々は爆弾を持ち込んでいる。そこで── |
クリーブランド管制 | ああ、クリーブランドセンターへの呼びかけだが、判別不能だ。ゆっくり繰り返して欲しい。 |
9:32 AM | 北東防空区域(NEADS)の識別担当官(ID Tech)は、F.A.A.(連邦航空局)のワシントンセンターを呼び出し、アメリカン航空11便がワシントンに向かっているという誤った助言をする。その通話中にF.A.A.は、アメリカン航空77便もまた消息を絶ったということを軍に初めて伝える。 |
ID Tech | 回線開いた。 |
ID Tech | ハントレスID非秘匿回線。 |
ワシントンセンター | ハントレスID、こちらワシントンセンター、運用管理者だ。 |
ID Tech | どうぞ、サー |
ワシントンセンター | OK、そちらから何回か連絡をもらったようだが、直接話したことはなかったな。しかし、もし君たちが必要としていることがあって、私に出来ることがあれば、今知らせてくれると嬉しい。 |
ID Tech | OK, ええっと、今何が起こっているか、あなたに伝えたいのだけどいいかしら、サー? |
ワシントンセンター | もちろん、それはいいアイデアだ。どうぞ。 |
ID Tech | OK, 3機の航空機がボストン管制の追跡から消えた。今ボストンと話をしたところだなんだけど、彼らは3番目の機体のコールサインについてはわからないけど、1番目と2番目については把握している。その内の1つはユナイテッド航空175便。 |
ワシントンセンター | うむ。 |
ID Tech | もう1機はアメリカン航空11便。ボストンはアメリカン航空11便は、ユナイテッド航空175便と同じく、ワールドトレードセンターに衝突したと考えていた。でも、アメリカン航空11便は衝突したやつじゃない。彼は、アメリカン航空11便のパイロットが彼と話をして、何が起こっているのか苦労の末伝えてくれたと言った。コクピット内に非常事態が発生した。これが私達が得た最初のハイジャック情報。アメリカン航空11便、767、ボストン発ロサンゼルス行。11便が交信を断った時、J.F.K.の方向に向かっていた。でも11便はワールドトレードセンターに激突した航空機じゃない。 |
ワシントンセンター | OK |
ID Tech | これがボストンの言っていたこと。彼、少なくとも最後に話した時には、私もどこで聞いたのか覚えていないのだけど、他の人が電話しているのを人づてに聞いた所では、アメリカン航空11便はワシントンに向かっていたみたい。そしてただひとつ言えることは── |
ワシントンセンター | どこに向かってたって? |
ID Tech | ワシントン |
ワシントンセンター | OK |
ID Tech | そう、あなたのA.O.R(担当区域)よ。注意して。 |
ワシントンセンター | OK, 分かった。 |
ID Tech | こちらで把握しているアメリカン11便の最新の緯度経度は、プライマリ・ターゲットだけだけど、北緯40'38''、西経074'03''よ。 |
ID Tech | 最後の── |
ワシントンセンター | OK、続けて。 |
ワシントンセンター | OK |
ID Tech | でも、もう一度、ワールドトレードセンターにどの航空機が激突したのかについて何も確認されていないことを忘れないで。もう一つはワシントンに向かっていたという情報よ。 |
ワシントンセンター | OK、君たちに伝えることがある。ずっと探しているのだが、アメリカン航空77便も消息を断った。 |
ID Tech | アメリカン航空77便。 |
ワシントンセンター | もしもし? |
Dooley | OK, アメリカン航空77便をロストしたと。 |
ID Tech | どちらに向かってたの? サー? |
ワシントンセンター | OK, 77便もロサンゼルスに向かっていた。 |
Dooley | 77便もロサンゼルスに。 |
ID Tech | 77便がロサンゼルスに向かっていた。 |
ワシントンセンター | ここで、うむ── |
ID Tech | どこから出たの? サー? |
ワシントンセンター | ああ、77便もボストン発だったと思う。今── |
Dooley | ボストン発ロサンゼルス行。 |
ワシントンセンター | ここで一つ話そう。ああ、インディ、インディアナポリスセンターがコイツに対応していた。 |
ID Tech | コイツって? |
ワシントンセンター | アメリカン航空77便だ。 |
ID Tech | OK |
ワシントンセンター | 高度35,000フィートを飛行中に── |
Dooley | インディアナポリス![後方で] |
ワシントンセンター | 彼らは77便をレーダーロストし、交信も途絶した。全てをロストし、いったい77便がどこにいるのか、何が起こっているのかまるでわからなくなった。そこで、我々がセンター周辺でやったことは、皆に制限されたコードか、プライマリ・ターゲットか、どちらかを注意深く探すよう告げることだけだった。 |
ID Tech | OK |
ワシントンセンター | これが最後に、およそ15分前にインディアナポリスセンターの運用管理者と話した内容だ。 |
ID Tech | 航空機の機種は分かってる? |
ワシントンセンター | おそらく767だと思う。 |
Dooley | 767ね。 |
ID Tech | OK、ああ、そうね。インディアナポリスに連絡してみる[不明瞭]。 |
ワシントンセンター | 誰か他の人が話しているようだ。すまない。後ろがうるさくてよく聞こえない。 |
ID Tech | ええっと、あと必要なのは緯度経度、767の最後の位置。 |
ワシントンセンター | ああ、私にはわからない。それはボストン、インディアナポリスセンターに聞いてくれ。しかし、彼らはどこか言っていたな。最後に彼らと話した時、彼らはニューヨークの東だと言っていた。それがどんな状態だったかも分からない。 |
ID Tech | OK, サー、ええっと、私はとにかく彼らに連絡をとってみることから始めるわ。 |
ワシントンセンター | OK |
ID Tech | ありがとう、サー |
ワシントンセンター | どういたしまして。 |
9:37 AM | アメリカン航空77便がペンタゴンに激突。❼ |
9:38 AM | ある軍用輸送機からリーガン国際空港(DCA)の管制官に対し、アメリカン航空77便がペンタゴンに衝突したことが伝えられる。 |
Gofer 06 | ああ、ワシントン、こちらGofer 06 |
DCA | Gofer 06、どうぞ。 |
Gofer 06 | イエッサー、航空機が墜落した。我々の12時の方向で、ああ、現時点では飛行場のちょうど北西のようだ。サー。 |
DCA | Gofer 86(訳注:06の誤り), ありがとう。降下して高度2,000フィートを維持せよ。 |
Gofer 06 | OK, 2,000フィートまで降下する。あと、ええっと、こちらはGofer 06だ。航空機がペンタゴンに衝突したようだ、サー。 |
DCA | Gofer 86, Gofer 06, ありがとう。 |
9:39 AM | ラングレー空軍基地を飛び立った戦闘機パイロットは、海洋を超えて東に飛び出した。そこで、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)指揮官は、「(訳注:戦闘機の衝撃波で)何枚窓を割っても良い」と、出来る限り早くワシントンに戻るよう告げる。 |
Nasypany | [不明瞭] 必要なら、何枚窓を割っても良い。 |
不明 | ラングレーは386[不明瞭] |
Nasypany | なぜそんなところに? |
不明 | Giant Killerがそこに送り出したんだ。 |
Nasypany | くそっ! |
Nasypany | OK, Pat? すぐに呼び戻せ。 |
10:00 AM | 飛行中の別のパイロットは、ユナイテッド航空93便が翼をロックしていることに気づく。これはハイジャック犯が突進する乗客たちの体勢を崩しておこうとしていたと考えられる。 |
ハーンドンセンター | ユナイテッド航空93便だが、 |
FAA | ああ |
ハーンドンセンター | V, VFR(有視界飛行方式)航空機を追い抜く時のように翼をうねらしている。何の意味があるのかよくわからない。翼をロックしているようだ。 |
10:03 AM | ユナイテッド航空93便がペンシルベニア州シャンクスビルに衝突。❾ |
10:07 AM | ペンシルベニア州シャンクスビルで黒煙が上がってるのが観察される。 |
ハーンドンセンター | OK, ユナイテッド航空93便のことだ。 |
FAA | 了解 |
ハーンドンセンター | こちらが伝えた最後の地点で黒煙が上がっているのが確認された。ジョンズタウンの15マイル南だ。 |
FAA | それは、航空機から確認されたのか? それとも地上から? |
ハーンドンセンター | ああ、彼らは航空機からだと推測している。地面に衝突したというのも、彼らが、彼らが推測していることだ。あくまで推測に過ぎない。 |
FAA | OK. [後方で伝達] ユナイテッド航空93便がジョンズタウンのおよそ15マイル南かそのへんの地面に衝突したとの速報が来た。 |
ハーンドンセンター | インディアナポリス州警察[原文ママ]から報告されたアメリカン77便はどうなった? 何か分かったことは? |
FAA | [後方で] シャーリー[未確認]の近くで黒煙が上がっているとの報告が来た。[不明瞭] |
ハーンドンセンター | それは私は聞いていないと思うが? |
ハーンドンセンター | [後方で] それは当方からの情報では無いだろう? 何だ? |
10:09 AM | 戦闘機パイロットは航空機を撃墜する許可が得られているか知らない。指揮官は許可は与えられないと告げる。(警告:クリップの最後に口汚い罵り) |
Nasypany | 1527、モード3、追跡ナンバー2を確認しているか? 1527、モード3、追跡ナンバーを確認したか? |
Nasypany | OK, モード3を確認した、これは、ああ、ユナイテッド航空93便だ。 |
Nasypany | そこからの距離は?[ユナイテッド航空93便ではなく、ホワイトハウス上空のアンノウンへの言及] |
Nasypany | 北緯39'51", 西経078'46" [後方のDooleyから] |
Dooley | 爆弾を抱えているヤツよ |
Nasypany | 分かってる |
Nasypany | Toledoが探してる。追跡ナンバーが必要だ。 |
Nasypany | OK、おい、Brian[不明瞭] [Nagel大尉] OK, 2機のSyracuse bird(訳注:おそらくコード名)を20分以内に上げられるか? |
後方で | ピッツバーグ近く、モード3、1527。 |
Nasypany | 戦闘機は? |
Nasypany | 分からない、念押ししておく。 |
後方で | 爆弾を搭載した航空機への対応について確約は得られているのか? |
Nasypany | 許可を求めているところだ。どこにいるか分からない。追跡しつつある。 |
後方で | 戦闘機に伝える。 |
Nasypany | [Battle Cabへの電話で] ああ、OK, 分かった。[電話を切る] |
後方で | ユナイテッド航空93便、モード3、1527。 |
Nasypany | 駄目だ。発砲は許可できない。[ホワイトハウス上空のアンノウンに関して] |
Nasypany | Jaime? |
後方で | 1527 Brain. |
Nasypany | くそっ! Foxy? |
Fox | コードワードについてはあまりに気にしていないさ。 |
Nasypany | コードワードなんてクソ食らえだ。どうせすぐ古くなる情報だ。発砲は許可できない。機種とテールナンバーを確認するだけだ。 |
10:14 AM | F.A.A.(連邦航空局)のワシントンセンターは、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)の北東防空区域(NEADS)にユナイテッド航空93便が墜落したことを伝える。墜落の11分後のことである。 |
NEADS | 速報を伝えたいんだけど、ワシントン。 |
ワシントンセンター | どうぞ |
NEADS | ユナイテッド航空93便について、なにか分かったことはない? |
ワシントンセンター | ああ、もう飛んでいない。 |
NEADS | 飛んでない? |
ワシントンセンター | そうだ。 |
NEADS | いつ着陸したの? なぜなら確認── |
ワシントンセンター | 着陸はしなかった。 |
NEADS | ああ、墜落、墜落したのね? |
ワシントンセンター | キャンプ・デービッドの北東のどこかだ。 |
NEADS | [後方で] キャンプ・デービッドの北東 |
ワシントンセンター | これが最新の報告だ。正確な場所は分からない。 |
10:32 AM | 作戦班指揮官(MCC)は、戦闘機パイロットに民間航空機を撃墜する許可を与える。Dick Cheney副大統領から伝達された命令である。 |
音声1 | 今から言うことを読み上げろ。防空管区指揮官は、ターゲットがこちらの指示に従わない場合には、撃墜を許可すると宣言した。 |
Nasypany | OK, 戦闘機に伝える。 |
音声1 | OK |
Nasypany | 防空管区指揮官、防空管区指揮官は、ターゲットがこちらの指示に従わない場合には、撃墜を許可すると宣言した。理解したか? |
戦闘機 | 了解、サー |
Nasypany | そこで、もし転進指示に応じないものがいたら…… |
Fox | D.O. は駄目だと言っている。 |
Nasypany | 駄目? Foxy, これについて逆の指示を受けたか? ……先の指示に矛盾する命令を受けたか? |
Fox | 今のところ、無い、確認中だ。 |
Nasypany | OK |
音声1 | ヘイ |
Nasypany | OK |
音声1 | 副大統領からの命令を伝えたか? 副大統領は迎撃を許可── |
Nasypany | 副大統領は迎撃を行い…… |
音声1 | ああ。 |
Nasypany | ……そして、もし応答がない場合には撃墜を許可すると、CONR CC(米本土防空司令部)によって指示した。 |
参考文献
ユナイテッド93 [DVD] コリー・ジョンソン,タラ・ヒューゴ,クリスチャン・クレメンソン,ポール・グリーングラス ハイジャックされた4機のうちの1機ユナイテッド航空93便がハイジャックされてからペンシルベニア州シャンクスビルに墜落するまでを描く。修羅場と化した現場をまざまざと体験できる。 Amazonで詳しく見る |
9・11生死を分けた102分 崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言 ジム・ドワイヤー,ケヴィン・フリン,三川 基好 『2001年9月11日、ワールドトレードセンタービルの102分間』において取り上げた、あの日ワールドトレードセンターの中で起こったことを膨大な調査に基づいて再現する一冊。必読。 Amazonで詳しく見る |