岩井俊二insideout2011年11月8日、映画監督岩井俊二氏が、BS11「Inside Out」に出演した。ドキュメンタリー作品「friends after 3.11」(公式サイト)に関するインタビューだ。

その中で興味深い発言をしています。

専門家ではなく、政治家でもない、岩井俊二氏の語り口は、私たちに新たな視点を与えます。

動画


20111108 岩井俊二監督が語る震災後の絆 投稿者 PMG5

この動画の後半部分に興味深い箇所がありましたので、文字に起こします。

※初稿です。誤字脱字は随時修正していきます。

=====(文字おこし、ここから)

岩井「巨万の富を得た側が、こう……貧しき人から1円ずつむしりとっていう感じっていう……そんな、ドキュメンタリーでしたけど。とか、あとアップルのアイフォーンに関する…まあショッキングなパフォーマンスをしているアメリカ人がいてなんて話を、こういう情報がまた入ってきて。なんか巡り巡ってなんかあの……最初のドキュメンタリーつくりはじめたときは、僕も原発、はね、他の、要するに、あの……火力とか他の代替品もあるので、まあそこを取り除けばいいだけじゃないかというぐらいに考えてなかった節もないんですけど。あの……」

司会「日本からひとまず原発がなくなればっていう」

岩井「ってぐらいだったんですけど。どうも根が深いし。その……自分たちが、こう、敵だーって思って見ているその背中をよーく見ると、自分の背中が見えてくるような感じ……感覚に陥っていくって言うか。え? 僕も? みたいな、なんか(苦笑)。」

司会「実は取り囲まれてるっていうですか?」

岩井「なんかこう、ループになっていて。結局、いったいどこに答えが、ってのが、そのなんて言うんですかね……あの……まあ、物を作る側、売る側、買う側っていうのがあって、それが小さい規模で行われていれば小さな結果しか起きないけど。だんだんだんだん膨らんできて、こう……巨大化していくとモンスターになっていくって言うんですか。で……モンスターになっていくともうその流れは止められなくなるんだけど。意外と、なんかあの、高価なものよりも、本当にこう、些細な水とか。そういったもののほうがモンスター現象が起きやすい気がするんですよね。」

司会「あの、身の回りにこう……空気のようにあるもの」

岩井「そうですね。ってことはつまり僕らが何気なく払っている1円5円10円みたいなところ……が1つの巨大な温床になっているんじゃないかっていう、気がしてくるんですよね」

司会「エネルギーだったり水だったりって言う」

岩井「ええ。だから、それが自分たちもそういう意味で、たかだか1円5円の共犯者になっているというような気がしてくるというか。」

司会「知らないうちに共犯者になってしまっている姿を、こう、浮き彫りにしたというか、明らかに……」

岩井「なんか、僕自身がそこにだんだんたどり着いてきちゃった感じで。そうすると誰が悪いとかっていう……簡単になんかこう言えなくなっていくというか。みんながその、今、そういう文明の中にいて。まあ犠牲になりつつもなんか加担しているというか。うーん。本当に辞めたいんだったらその1円も払うべきじゃないし。だけど気がついたらふと渡されちゃうんですよね、新しいものを

司会「快適さとか。利便性とかいったもののなかにもうすでに、詰め込まれてるっていう」

岩井「ええ。まあ僕も、あの、アップル大好きなんで、すぐアイフォーンとかアイパッドとか。受け取っちゃうんですけど。そのことが、まあ、その、気がついたらレアメタルなんて問題が後ろに隠れてたり、色んな問題が隠れてるって、知らずに受け取るじゃないですか。

原発もそうで。あの、なんか、あの、みんな許容して認めたたんだって言うけど。ほとんどの人は知らなかったはずだし。本当はなんか、知ってるほうが正しいんじゃなくて、本当は知らなくて済むんだったら……まあもっと言えばそれはなければ誰もこんなこと考えたり悩んだり苦しんだりしなくてよかったわけですよね。」

司会「でももうやっぱり3.11以降、そうしたものを見過ごすわけにはいかない現実的な問題として浮上してきてる」

岩井「そうですね。みんながそれは……こう……なんかこう……霧に包まれてた中から、ぐおんとみえちゃったんだと思うんですよね。見てしまうと、う……やっぱり考えてしまうっていうところに多くの人がいったんだろうなあと思うんですけどねえ。」

=====(文字おこし、ここまで)

NOW and THEN 岩井俊二―岩井俊二自身による全作品解説+50の質問
岩井 俊二
角川書店
売り上げランキング: 65802

 

六月の勝利の歌を忘れない 日本代表、真実の30日間ドキュメント DVD-BOX
ポニーキャニオン (2002-11-20)
売り上げランキング: 5415

 

 

=====(管理人の考えていること)

岩井俊二監督の考えていることは、まさに現代の搾取の構造をはっきりと言い当てているのではないか、僕は感じました。

貧しいものから1円をむしりとるという構造です。

例えばユニクロでしたら、安い労働力で作られた衣類を、貧しい人に安く売る。僕はユニクロの全貌を勉強していないので、ユニクロを批判するわけではありませんが、安い商品を多売する仕組みがどんどん広がっていくということを考えるときに、例として、思いつくのがユニクロです。

あるいは岩井氏が言及している「水」もそうですね。この機会に水ビジネスについて勉強しようと思ってAmazonで早速本を注文しました。

ミネラルウォーター・ショック---ペットボトルがもたらす水ビジネスの悪夢
エリザベス・ロイト
河出書房新社
売り上げランキング: 77469

 

水ビジネスについては、先日の参議院予算委員会での佐藤ゆかり氏のTPPに関する質疑でも触れられていました。

奇妙なことに、ここで、岩井氏が追いかけてきた3.11以降の世界と、TPP問題が僕の中で絡み始めました。

佐藤ゆかりTPP質疑【全内容文字おこし】ーー野田総理がISD条項をさっぱりわかってない。「ASEAN+6」のほうがTPPよりメリット高い

ここより部分引用します。

=====(引用ここから)

649998a2-s

佐藤ゆかり「これから我が国日本もですね、すでに海外で水ビジネスを推進しています。え、そして国内的にはですね、海外の外国企業が日本の北海道や長野県の水資源の近隣の土地をですね、買収に入ってきてるという問題があるわけであります。

そういう中で、こういうNAFTAで実際に水ビジネスで訴訟が起きているという事例があるんですね。これはいかがお考えかということをですね。農水大臣鹿野大臣にお伺いしたいと思いますが。

今、水の安全保障で北海道や長野県で土地買収がおこなわれております。そういう絡みからこのISD条項がもしTPPに入るとするとですね、我が国としてどうやって守ることができるか。農水大臣のご見解をお願いします」

議長「鹿野農林水産大臣」

鹿 野「今の森林法におきましては、外国人であっても日本人であっても、森林所有のいかんを問わず、保安林の伐採や開発の規制、あるいは普通林の伐採および伐 採後の造林の届け出制度や、林地開発許可制度といった規制措置を講じております。そういう中で、えー、この訴えられるかどうかというふうなところは定かで はありませんけども、まさしく今申し上げたような規制をかけておるところでございます」

議長「佐藤さん」

佐藤「まあこの ISD条項とかですね、このTPPの条約というのはやはり悩ましいのはですね。先ほど小宮山厚労大臣からは、この患者さんの外科手術の特許についてお答え いただきました。今国内法でそういう特許は許されていないと。そしてまた鹿野農水大臣からはですね。まあ今こういう国内で外国企業を差別化するような法律 はないと、いう事を伺ったわけでありまして。

仮に今後ですね、日本が国内法において、『これは水の安全保障に関わる事案であるから、国内法 を設置して外国企業と国内企業によって水資源の近隣の土地の買収は何らかの差別化をするんだ』と、そういう事案を設けたとしてもですね。これは条約ですか ら、国内法が曲げられるんですよ。そのことをですね、野田総理いかがお考えですか? 総理、お伺いします」

議長「野田内閣総理大臣」

野田「あのーまさにこれ通商の交渉だけではなくて、あの社会的な影響が色々出る分野があるということをよく理解をしながら、踏まえながら対応していきたいと思います」

議長「佐藤さん」

佐藤「国内法が条約によって曲げられるという認識について、TPPの絡みでどう思いますか?

議長「野田内閣総理大臣」

野田「基本的には我が国の守ってきたその法律で、対応できるように交渉をしていきたいというふうに思います」

※略

野田「これですね。投資協定、えー、裁判管轄の問題を国際仲裁に判断に委ねる、そういうような場合ですね。うん。仲裁人が入ってきて、仲裁人によって決めていくということなんで。というプロセスがあるということで、よん、えー……」

※略

野田「あの、ISDSの話で、あの、話だったもの、もんですから、ちょっと私あまり寡聞にしてそこ詳しく知らなかったんで、充分な答えじゃ なかったんですが。あのその中で、あの、まさに条約と国内法との上下関係だったらそりゃ条約です。だから、だからこそ、この我が国が守ってきたもので、い いものだというものを条約を結ぶために、それを殺してく、壊してく事はしないというのが基本的な考え方でございます」

=====(引用ここまで)

水ビジネスにおいて、日本の国内のビジネスを海外の起業からどのように守っていくか、という観点での質疑の中で、野田総理がISD状況を条項を理解してなかったことが、バレちゃいました。

まさしく、TPPにおいても、水ビジネスが重要な論題になっているわけです。

安全な水を「安く」飲みたい、という市民の動機と、儲けたいという企業側が手をとりあって「水ビジネス」は、岩井俊二氏のいうところのモンスター化をしてきた、ということなのだろうなあと。

僕ら個人個人の経済活動はどういうふうになっているんだろうか。大げさに経済を論じるよりも、財布の中のレシートを見つめた方が感じるものはが大きいのではないか。電気料金もそうですね。

レシートや明細書には明記されていないが、僕らはすこしずつ搾取され、そして搾取しているわけです。

このエントリーをはてなブックマークに追加