24 PM)

福島第一原発の1号機の原子炉内放射線量が8日の発表以降、新たな情報が発表されていない。8日0時の段階では100シーベルト毎時を記録した。この急上昇は、【1】計器の故障、【2】再臨界、のどちらかだと推測され、危惧されていた。その後、どうなっているのだろうか。調べてみると情報公開の方法に不審な点が見つかった。

1号機の原子炉内放射線量は、同日13時には、68.3シーベルトと若干下がった。この低下を受け、計器の故障ではないのではないか、と捉える人もいる。

だが、不思議なことにその後、1号機の原子炉内放射線量は発表されていない。

そんな中、毎日新聞が不思議な報道をしている。

『福島第1原発:7日の余震で原子炉の計器一部故障 1号機

東京電力は9日、7日に最大震度6強を記録した東日本大震災の余震で、福島第1原発1号機の原子炉の温度計など計器の一部が故障したと発表した。炉心の状態を知る重要な機器が使えない事態だが、周辺の放射線量などから「原子炉は安定している」とし、対策を検討している。

故障したのは、原子炉内の温度を管理する給水ノズル温度計と、核燃料の異常反応を監視する放射線検出器(CAMS)。余震後の8日午前6時、温度計は9時間前の前回より約40度高い260.7度に、CAMSは3倍以上の毎時100シーベルトに急激に高まった。』

福島第1原発:7日の余震で原子炉の計器一部故障 1号機 - 毎日jp(毎日新聞)

色々言いたいことがある。

まず記事のタイトルに危機意識を感じない。

「1号機、原子炉内の放射線量、計器故障で不明に」

これくらい言っていい。危機意識のない報道は、メディアの力を削ぐだろう。危機意識を保ち続けることもメディアの仕事だ。メディア側が危機を報道することに飽きている場合ではない。頑張ってほしい。

さて、こんなことなどどうでもいいくらい不思議なことがある。

2つの計器が故障。だが何故か一方だけ、測定値が公開され続けている

それは次の箇所だ。

『故障したのは、原子炉内の温度を管理する給水ノズル温度計と、核燃料の異常反応を監視する放射線検出器(CAMS)。』

2つの計器が故障したと報道している。故障前の数値は以下のとおり。

『余震後の8日午前6時、温度計は9時間前の前回より約40度高い260.7度に、CAMSは3倍以上の毎時100シーベルトに急激に高まった。』

では、それ以降、実際の発表はどうなっているか。

まずは、原子炉内放射線量をみる。

24 PM)

福島原発 1号機 / 福島原発原子炉の状態 原子炉の放射線量よりスクリーンショット。
有志が作った、福島第一原発の各号機の様子をグラフ化するサイトだ。

8日以降、グラフは止まっている。実際には、8日の13時には68.3シーベルトと若干下がっている。計器が故障したことが原因かは不明だが、このグラフには反映されていない。その後、公式の発表はない。

では、温度計はどうなっているだろうか。

38 PM)

※上記と同サイトより。

なぜか、8日以降も、原子炉内の温度は発表され続けている。計器は故障したのではなかったか。グラフでは、8日に260.7度を示した後に徐々に温度は低下してきている事を示している。

なぜ、2つの計器が故障したにもかかわらず、原子炉内温度は発表され続け、原子炉内放射線量は発表されないのか。

原子炉内の放射線量が、6日0時に100シーベルトに上昇した後に、13時には68.3シーベルトまで低下したことをうけ、計器は故障していなかったとの見方もできなくはない。

報道のとおり計器が故障していたとしても、その旨を伝えつつ、温度も放射線量もどちらも数値を発表すればよい。どちらか一方だけを発表しないという情報公開の仕方は、何かを隠蔽しているという憶測を呼ぶ。その憶測は、次のとおり。

「計器は故障しておらず、1号機はすでに再臨界に達している。数値が大きいため、余計な心配を与えないようにするために公表していない。」

計器故障の発表は、1番目のカードを切ったに過ぎないのか

私は、この計器故障の発表を次のように疑っている。

これまでの彼等の情報公開の順番は、まずは安心する情報を公開し、だんだんと悪い情報を伝えていくやりかただ。情報公開側は、常にいくつかの危惧の可能性を考えている。何かトラブルがあった場合、ひとつだけの原因しか推測できないで発表しているはずがない。

つまり、計器の故障の発表をするときには、かなりの可能性で、さらに悪い情報を握っている。

【1】計器の故障

【2】再臨界の可能性

【3】さらに悪い状況を示す情報

この3つの可能性を持ちながら、【1】のカードだけを切るのが原子力安全保安院の西山英彦氏のやり方だ。我々はなんども【2】まで想像しながら、【3】のカードを切られて驚いてきた。今回はどのようなカードを切ってくるのか。西山英彦氏は悪魔のディーラーだ。

追記.4/11.11:54)はてなブックマークコメントにて、資料を頂いた。

『新聞も当てにならないからソースとして使っちゃダメ。保安院発表の資料をみて記事を書かないとダメだろ。一応「ジャーナリズム」に入ってるんでしょ? http://bit.ly/f3IRZy」

リンク先で原子力安全・保安院が発表したPDF資料を読める。厳しい言葉に愛情を感じる。誠にありがとうございました。

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