講演で沖縄にきました。那覇の新都心は、沖縄らしさのかけらもありません。大都会です。
私はニッポン放送の携帯情報サイトで、毎週その週に起こったことを中心にコラムを書いています。今週から、一週間遅れで、その記事を公開しています。世の中の流れが速いので、だいぶずれてしまうこともありますが、ご容赦ください。なお、最新版は携帯電話からニッポン放送のサイトに行ってください(こちらは有料です)。
始まった・・・・。
総選挙のバタバタで、1週間更新できず、大変失礼しました。
その総選挙ですが、ご存じのとおり自民党だけで296議席、公明党を合わせると3分の2以上の議席を獲得するという小泉自民党の圧勝に終わりました。産経新聞はいち早く「自民党300議席をうかがう」と自民の圧勝を伝えていましたが、私自身、まさかここまで自民党が勝つとは思いませんでした。
ただ、この結果は恐ろしいシナリオを日本にもたらすことになると思います。小泉総理に逆らえる人は誰もいなくなってしまったからです。参議院で郵政法案に反対した造反議員は、一転法案賛成に態度を変えました。きっかけを作ったのは鴻池祥肇元防災担当相でした。鴻池議員は選挙前の9月9日に、与党が過半数を確保すれば郵政法案に賛成する意向を明らかにしました。そして、選挙で自民党が圧勝したことを受けて、13日に、通常国会での郵政法案否決の流れを作った参院旧亀井派会長の中曽根弘文元文相が、再提出される郵政法案に賛成する意向を表明しました。同派では、中曽根氏を含む12人が通常国会で郵政法案に反対しましたが、離党した荒井広幸議員を除く11人が賛成に転じることも明らかにしました。衆院でが与党が3分の2以上を占めたのですから、反対をしても意味がないのは事実です。しかし、政治信条をかけて反対したはずの彼らが態度を豹変させたのは、衆院で行われた小泉総理の造反議員への厳しい処分に震え上がったというのが、本当の原因でしょう。
もっとすごかったのが、衆議院の造反議員の動きです。衆院選で執行部の離党要請に応じず無所属で出馬し、当選した反対派は13人いましたが、その大部分が首相指名選挙で小泉首相を指名し、郵政法案にも賛成する見通しになりました。郵政民営化法案に反対の意向を表明している平沼赳夫元経済産業相も、首相指名では小泉総理を支持することを示唆しています。
自民党執行部は、衆院の造反議員を除名処分とする方針を変えておらず、またその自民党の公認から見放された選挙で勝ち抜いてきたのに、それでも自民党への復党の気持ちを捨てられないのでしょう。自民党という組織の力の強さを、彼らは選挙を通じて身にしみて分かったからなのかもしれません。
いずれにせよ、もはや小泉総理に逆らえる人は誰もいなくなりました。それを受けて、これから一体日本に何が起こるのでしょうか。
私は、①増税、②インフレ、③戦争の3つだと思います。
小泉総理は確かに公共事業を大幅に削減しましたが、行政改革にはほとんど手をつけませんでした。その結果、今年度末の国と地方を合わせた借金は774兆円、GDPの1.5倍にも達する見込みです。そのことに対して財務省は強い危機感を持っています。
福田赳夫元首相の書生から政治家人生を始め、衆院の大蔵委員長や大蔵政務次官も務めた小泉総理は、財務省の一番の理解者です。
小泉総理は、今回の選挙で手に入れた強いリーダーシップを財政再建に振り向けていくのは間違いないでしょう。選挙期間中、小泉総理は「サラリーマンをねらい打ちする増税はしない」と主張しましたが、谷垣財務相は早くも選挙後の13日に07年に定率減税を全廃する意向を明らかにしました。また、07年には税制の抜本改革が行われることになっています。今年6月に「個人所得課税に関する論点整理」を発表した政府税調は、07年の抜本改革に向けた答申を11月に出します。消費税増税や給与所得控除の圧縮など、サラリーマンは確実に大増税になるでしょう。しかしそれは仕方のないことなのかもしれません。それに反対した社民党や共産党を、国民は選挙で、さほど支持しなかったからです。
そして、私が密かに心配しているのが、もう一つの財政再建策であるインフレなのです。日銀は9月の金融経済月報で「消費者物価指数は年末にかけてプラス転換する」との見通しを示しました。原油価格高騰の影響で実際に物価上昇の兆しもみえています。税収を確実に伸ばせるインフレは、財務省の望むところなのです。問題は、それが景気回復による物価上昇ではなく、原油価格の上昇に伴う物価上昇だということです。当然、物価上昇ほどにはサラリーマンの給料は上がらず、増税が重ねられることもあって、サラリーマンの可処分所得は激減し、日本にスタグフレーション(不況のなかの物価上昇)が訪れる可能性も高まってきました。
さらに一番恐ろしいのが、戦争への道です。17日に行われた民主党の代表選挙では、次の内閣の防衛庁長官を務めていた前原誠司氏が勝利しました。
前原代表は、戦力の不保持を規定する憲法9条第2項の改正を表明し、集団的自衛権についても政府の判断で行使する意向を示しました。集団的自衛権というのは、「仲間がやられたら、やりにいく」ということです。つまり、現実問題では、アメリカが戦争をしたら、日本も一緒に戦争に行くということです。
社民党や共産党は憲法9条改悪反対を訴えましたが、選挙戦では、ほとんど議論もされませんでした。自民党と民主党が手を組めば、国会で憲法改正が可決されるのは確実です。国民投票もいまの「国家総動員体制」の下では憲法改正を支持するでしょう。
国軍としての地位を与えられた自衛隊が、いつの日か、戦争に巻き込まれていくのは間違いないと思います。
日本人は、この選挙で大変な選択をしてしまったのではないでしょうか。
始まった・・・・。
総選挙のバタバタで、1週間更新できず、大変失礼しました。
その総選挙ですが、ご存じのとおり自民党だけで296議席、公明党を合わせると3分の2以上の議席を獲得するという小泉自民党の圧勝に終わりました。産経新聞はいち早く「自民党300議席をうかがう」と自民の圧勝を伝えていましたが、私自身、まさかここまで自民党が勝つとは思いませんでした。
ただ、この結果は恐ろしいシナリオを日本にもたらすことになると思います。小泉総理に逆らえる人は誰もいなくなってしまったからです。参議院で郵政法案に反対した造反議員は、一転法案賛成に態度を変えました。きっかけを作ったのは鴻池祥肇元防災担当相でした。鴻池議員は選挙前の9月9日に、与党が過半数を確保すれば郵政法案に賛成する意向を明らかにしました。そして、選挙で自民党が圧勝したことを受けて、13日に、通常国会での郵政法案否決の流れを作った参院旧亀井派会長の中曽根弘文元文相が、再提出される郵政法案に賛成する意向を表明しました。同派では、中曽根氏を含む12人が通常国会で郵政法案に反対しましたが、離党した荒井広幸議員を除く11人が賛成に転じることも明らかにしました。衆院でが与党が3分の2以上を占めたのですから、反対をしても意味がないのは事実です。しかし、政治信条をかけて反対したはずの彼らが態度を豹変させたのは、衆院で行われた小泉総理の造反議員への厳しい処分に震え上がったというのが、本当の原因でしょう。
もっとすごかったのが、衆議院の造反議員の動きです。衆院選で執行部の離党要請に応じず無所属で出馬し、当選した反対派は13人いましたが、その大部分が首相指名選挙で小泉首相を指名し、郵政法案にも賛成する見通しになりました。郵政民営化法案に反対の意向を表明している平沼赳夫元経済産業相も、首相指名では小泉総理を支持することを示唆しています。
自民党執行部は、衆院の造反議員を除名処分とする方針を変えておらず、またその自民党の公認から見放された選挙で勝ち抜いてきたのに、それでも自民党への復党の気持ちを捨てられないのでしょう。自民党という組織の力の強さを、彼らは選挙を通じて身にしみて分かったからなのかもしれません。
いずれにせよ、もはや小泉総理に逆らえる人は誰もいなくなりました。それを受けて、これから一体日本に何が起こるのでしょうか。
私は、①増税、②インフレ、③戦争の3つだと思います。
小泉総理は確かに公共事業を大幅に削減しましたが、行政改革にはほとんど手をつけませんでした。その結果、今年度末の国と地方を合わせた借金は774兆円、GDPの1.5倍にも達する見込みです。そのことに対して財務省は強い危機感を持っています。
福田赳夫元首相の書生から政治家人生を始め、衆院の大蔵委員長や大蔵政務次官も務めた小泉総理は、財務省の一番の理解者です。
小泉総理は、今回の選挙で手に入れた強いリーダーシップを財政再建に振り向けていくのは間違いないでしょう。選挙期間中、小泉総理は「サラリーマンをねらい打ちする増税はしない」と主張しましたが、谷垣財務相は早くも選挙後の13日に07年に定率減税を全廃する意向を明らかにしました。また、07年には税制の抜本改革が行われることになっています。今年6月に「個人所得課税に関する論点整理」を発表した政府税調は、07年の抜本改革に向けた答申を11月に出します。消費税増税や給与所得控除の圧縮など、サラリーマンは確実に大増税になるでしょう。しかしそれは仕方のないことなのかもしれません。それに反対した社民党や共産党を、国民は選挙で、さほど支持しなかったからです。
そして、私が密かに心配しているのが、もう一つの財政再建策であるインフレなのです。日銀は9月の金融経済月報で「消費者物価指数は年末にかけてプラス転換する」との見通しを示しました。原油価格高騰の影響で実際に物価上昇の兆しもみえています。税収を確実に伸ばせるインフレは、財務省の望むところなのです。問題は、それが景気回復による物価上昇ではなく、原油価格の上昇に伴う物価上昇だということです。当然、物価上昇ほどにはサラリーマンの給料は上がらず、増税が重ねられることもあって、サラリーマンの可処分所得は激減し、日本にスタグフレーション(不況のなかの物価上昇)が訪れる可能性も高まってきました。
さらに一番恐ろしいのが、戦争への道です。17日に行われた民主党の代表選挙では、次の内閣の防衛庁長官を務めていた前原誠司氏が勝利しました。
前原代表は、戦力の不保持を規定する憲法9条第2項の改正を表明し、集団的自衛権についても政府の判断で行使する意向を示しました。集団的自衛権というのは、「仲間がやられたら、やりにいく」ということです。つまり、現実問題では、アメリカが戦争をしたら、日本も一緒に戦争に行くということです。
社民党や共産党は憲法9条改悪反対を訴えましたが、選挙戦では、ほとんど議論もされませんでした。自民党と民主党が手を組めば、国会で憲法改正が可決されるのは確実です。国民投票もいまの「国家総動員体制」の下では憲法改正を支持するでしょう。
国軍としての地位を与えられた自衛隊が、いつの日か、戦争に巻き込まれていくのは間違いないと思います。
日本人は、この選挙で大変な選択をしてしまったのではないでしょうか。
昨日名古屋に講演で行ったのですが、とても混雑してました。何でも朝の新幹線は満席、名古屋はいまホテルが取れないそうです。その理由は愛知万博。今月25日で最後と言うことで大勢の人が詰め掛けているとか。神奈川県警から交通情報を伝えてくれている三宅和美さんからメールと写真をもらいました。ご本人の許可を貰いましたので、メールを転載します。
〓朝9時に駐車場に着きましたが入れず、豊田市役所付近の駐車場を探して止めました。〓その後電車に乗り、バスを待つこと一時間以上。〓今だ入れず、入場ゲート前で汗だくで待っています。閉幕ギリギリに来たことを後悔しています。〓今12時10分です。何時に入れるのでしょうか?〓三宅和美
m(__)m入場ゲートまであと5メートなのに全然進みません。帰りた~い。12時27分
約4時間やっと入れました。12時50分から入場制限がかかり入れなくなったようです。みんな疲れているのか通路で休んでいます。
ジュースを飲んでアイスクリームを食べました。どこも人でいっぱい。4~5時間待ちはあたりまえの状況です。その中に飛び込んでいく勇気も体力もないので帰ります。親子三人ヘトヘトになった地球博でした。14時27分
※今日愛知万博に行った人は同じような感じだったのでしょう。三宅さんご苦労様でした。
〓朝9時に駐車場に着きましたが入れず、豊田市役所付近の駐車場を探して止めました。〓その後電車に乗り、バスを待つこと一時間以上。〓今だ入れず、入場ゲート前で汗だくで待っています。閉幕ギリギリに来たことを後悔しています。〓今12時10分です。何時に入れるのでしょうか?〓三宅和美
m(__)m入場ゲートまであと5メートなのに全然進みません。帰りた~い。12時27分
約4時間やっと入れました。12時50分から入場制限がかかり入れなくなったようです。みんな疲れているのか通路で休んでいます。
ジュースを飲んでアイスクリームを食べました。どこも人でいっぱい。4~5時間待ちはあたりまえの状況です。その中に飛び込んでいく勇気も体力もないので帰ります。親子三人ヘトヘトになった地球博でした。14時27分
※今日愛知万博に行った人は同じような感じだったのでしょう。三宅さんご苦労様でした。
私はニッポン放送の携帯情報サイトで、毎週その週に起こったことを中心にコラムを書いています。今週から、一週間遅れで、その記事を公開しています。世の中の流れが速いので、だいぶずれてしまうこともありますが、ご容赦ください。なお、最新版は携帯電話からニッポン放送のサイトに行ってください(こちらは有料です)。
本当に踊り場を脱出したのか
9月2日、週末の日経平均株価は、4年2ヶ月ぶりに1万2600円台を回復しました。8月9日に竹中平蔵経済財政担当大臣が「景気は踊り場的状況を脱却している」と語り、日本銀行の福井俊彦総裁も同じ日に「踊り場をほぼ脱却したと判断しうる」と語ったことをきっかけとして、明らかに株価は上昇基調となっています。
内閣府や日銀が「踊り場脱却」と言い、株価も実際に上がっているのですから、国民が「改革によって景気がよくなってきた」と感じても不思議ではありません。しかし、株価の上昇の原因をみると興味深い事実が浮かび上がります。例えば、8月第3週(8月15日から19日)の東証一部の委託売買取引高(全60社)をみると、全体の取引高は132億株でしたが、そのうち個人が69億株、外国人44億株で、全体の85%をこの2部門が占めています。ところが、外国人が2億5千万株の買い越しとなっているのに対して、個人は1億4千万株の売り越しです。しかも投資信託、金融機関、事業法人のすべてが売り越しとなっているのです。
つまり、いまの株式市場は、外国人だけが買いを入れて株価を引き上げているのです。証拠はありませんが、番組でコメンテータの須田慎一郎さんが「株価上昇は小泉再選のための外資からの応援だ」と言っていたことが、数字でも裏付けられるのです。
また踊り場脱却宣言も相当あやしいと私はみています。内閣府や日銀が「踊り場脱却」と判断した最大の根拠は、6月の景気動向指数の劇的改善でした。景気動向指数の一致指数というのは、鉱工業生産指数や大口電力使用量など、景気と連動する11の統計指標をそれぞれ3ヶ月前と比較し、改善した指標の数が11の統計指標のうち何%を占めているのかを示す統計です。
8月5日に発表された6月の景気動向指数の一致指数は100%と、指標に採用されている全ての統計が改善しました。だから内閣府や日銀は「踊り場脱却」と判断したのです。
ただ、その判断は勇み足だった可能性が高いと私は思います。ここ1年ほどの景気動向指数は極めて不安定で、例えば今年1月の一致指数も6月と同じ100%でした。ところが、翌月には36%へと急落しているのです。
今回もそうなる可能性が高まっています。7月の鉱工業生産指数が8月31日に経済産業省から発表されましたが、市場の予想を大きく下回る前月比1.1%減の100.1だったからです。景気動向指数は、生産の動きに大きく影響されるため、7月の景気動向指数が5カ月ぶりに50%を割り込むことが、ほぼ確実になったのです。実際、9月1日付けの読売新聞は景気動向指数を「一致、先行とも50%割れへ」と報じました。
内閣府は景気判断の基準を景気動向指数が50%を上回るかどうかに置いていて、数字を素直に受け取れば、7月の景気は「悪化」という判断になるのです。
また、8月30日に総務省が発表した完全失業率も前月比0.2ポイント悪化し、4.4%となりました。どう考えても景気は悪化に向かっているのです。
ところが、大幅減となった鉱工業生産指数を経済産業省は「横ばい」と評価し、総務省にいたっては失業率の発表に際して「雇用情勢は厳しさが残るものの、改善傾向が続いている」との見方を示しています。前月に比べれば悪化したけれど、前年同月と比べれば、就業者が増え、完全失業者が減っているからというのが、その根拠のようです。しかし、それはこじつけにしか聞こえません。
さらにおかしなことは、毎月、景気動向指数の発表から程なく行われている内閣府の「月例経済報告」が、9月4日現在、内閣府のホームページに「平成17年9月の公表予定日、日時未定」と書かれていることです。メディアのなかでは、選挙後に発表を延ばすのではという観測も出始めています。実際、その可能性は高いでしょう。
都合の悪いデータは発表を遅らせるというのは、昨年の年金制度改革関連法案の採決後に出生率が下がったという統計が発表されたときと同じです。しかし、そういうことは、発展途上国がすることです。
国民の前に正確なデータを示し、その上で国民の判断を仰ぐというのが、先進国としては当然の責務なのではないでしょうか。
本当に踊り場を脱出したのか
9月2日、週末の日経平均株価は、4年2ヶ月ぶりに1万2600円台を回復しました。8月9日に竹中平蔵経済財政担当大臣が「景気は踊り場的状況を脱却している」と語り、日本銀行の福井俊彦総裁も同じ日に「踊り場をほぼ脱却したと判断しうる」と語ったことをきっかけとして、明らかに株価は上昇基調となっています。
内閣府や日銀が「踊り場脱却」と言い、株価も実際に上がっているのですから、国民が「改革によって景気がよくなってきた」と感じても不思議ではありません。しかし、株価の上昇の原因をみると興味深い事実が浮かび上がります。例えば、8月第3週(8月15日から19日)の東証一部の委託売買取引高(全60社)をみると、全体の取引高は132億株でしたが、そのうち個人が69億株、外国人44億株で、全体の85%をこの2部門が占めています。ところが、外国人が2億5千万株の買い越しとなっているのに対して、個人は1億4千万株の売り越しです。しかも投資信託、金融機関、事業法人のすべてが売り越しとなっているのです。
つまり、いまの株式市場は、外国人だけが買いを入れて株価を引き上げているのです。証拠はありませんが、番組でコメンテータの須田慎一郎さんが「株価上昇は小泉再選のための外資からの応援だ」と言っていたことが、数字でも裏付けられるのです。
また踊り場脱却宣言も相当あやしいと私はみています。内閣府や日銀が「踊り場脱却」と判断した最大の根拠は、6月の景気動向指数の劇的改善でした。景気動向指数の一致指数というのは、鉱工業生産指数や大口電力使用量など、景気と連動する11の統計指標をそれぞれ3ヶ月前と比較し、改善した指標の数が11の統計指標のうち何%を占めているのかを示す統計です。
8月5日に発表された6月の景気動向指数の一致指数は100%と、指標に採用されている全ての統計が改善しました。だから内閣府や日銀は「踊り場脱却」と判断したのです。
ただ、その判断は勇み足だった可能性が高いと私は思います。ここ1年ほどの景気動向指数は極めて不安定で、例えば今年1月の一致指数も6月と同じ100%でした。ところが、翌月には36%へと急落しているのです。
今回もそうなる可能性が高まっています。7月の鉱工業生産指数が8月31日に経済産業省から発表されましたが、市場の予想を大きく下回る前月比1.1%減の100.1だったからです。景気動向指数は、生産の動きに大きく影響されるため、7月の景気動向指数が5カ月ぶりに50%を割り込むことが、ほぼ確実になったのです。実際、9月1日付けの読売新聞は景気動向指数を「一致、先行とも50%割れへ」と報じました。
内閣府は景気判断の基準を景気動向指数が50%を上回るかどうかに置いていて、数字を素直に受け取れば、7月の景気は「悪化」という判断になるのです。
また、8月30日に総務省が発表した完全失業率も前月比0.2ポイント悪化し、4.4%となりました。どう考えても景気は悪化に向かっているのです。
ところが、大幅減となった鉱工業生産指数を経済産業省は「横ばい」と評価し、総務省にいたっては失業率の発表に際して「雇用情勢は厳しさが残るものの、改善傾向が続いている」との見方を示しています。前月に比べれば悪化したけれど、前年同月と比べれば、就業者が増え、完全失業者が減っているからというのが、その根拠のようです。しかし、それはこじつけにしか聞こえません。
さらにおかしなことは、毎月、景気動向指数の発表から程なく行われている内閣府の「月例経済報告」が、9月4日現在、内閣府のホームページに「平成17年9月の公表予定日、日時未定」と書かれていることです。メディアのなかでは、選挙後に発表を延ばすのではという観測も出始めています。実際、その可能性は高いでしょう。
都合の悪いデータは発表を遅らせるというのは、昨年の年金制度改革関連法案の採決後に出生率が下がったという統計が発表されたときと同じです。しかし、そういうことは、発展途上国がすることです。
国民の前に正確なデータを示し、その上で国民の判断を仰ぐというのが、先進国としては当然の責務なのではないでしょうか。
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