住居費を節約しよう(その2)
住宅を購入すべきか、賃貸で過ごすべきかは、ずっと終わらない論争です。ただ、マネー評論家の人には、賃貸を勧める人の方が多いような気がします。彼らが賃貸を勧める理由は、バブル崩壊後ずっと続いてきた不動産価格の値下がりにあります。確かに、バブルの直後に住宅を買った人は、ひどい目に遭いました。5千万円も出して買ったマンションが値下がりして半額以下になってしまったのに、借金の方は値下がりしません。住み替えようにも今のマンションを売ってしまうと、借金だけが残ってしまうので、マンションを塩漬けにするしかなくなってしまう。そんなことが、あちこちで起きました。
統計でみると、いまでも住宅地の値下がりは続いています。だから、住宅は購入しない方がよいという議論は、一見正しいような気がします。ただ、私は、住宅は買った方がよいと思うのです。その第一の理由は、老後のことです。
昨年行われた年金制度改正で、今後、年金が減らされていくことはみなさんご承知のとおりです。それでは、どのくらい減るのでしょうか。まず、マクロ経済調整スライドという、年金の支え手の減少と平均寿命の伸長に対応するための給付削減がかかります。厚生労働省の推計では、毎年0.9%ずつの削減が、2023年まで続くことになっています。今後18年間続くと、合計で15%年金水準が下がることになります。実は、削減はそれだけでは済みません。年金が支給開始されても、その後年金は物価スライドでしか改善されません。この制度改革は2000年の年金制度改革で、すでに導入されています。厚生労働省の想定では、物価上昇率は1.0%、賃金上昇率は2.1%となっていますから、賃金を基準に考えると、物価スライドだけでは、毎年年金は賃金に対して1.1%ずつ目減りして行きます。65歳で年金の支給を受けはじめてから80歳までの15年間で、こちらの影響でも15%年金の給付水準が下がることになります。
現在のモデル年金は、夫婦二人の専業主婦世帯で月額23万3千円になっています。ここからマクロ経済スライドによる減少分と物価スライドしか行われないことによる目減り分を差し引くと、最終的に年金の月額は、夫婦で16万8千円ということになります。月額約17万円の収入で、家賃を10万円払ったら、残りは7万円。とても生活できる水準ではありません。ところが、自宅があって家賃がかからなければ、この年金は丸々使えます。生活費が7万円と17万円では、天国と地獄でしょう。
私が住宅の購入を勧める第二の理由は、地価の下落傾向に変化が出始めたことです。財団法人日本不動産研究所が発表している市街地価格指数によると、今年3月末の東京区部の住宅地の地価は半年前に比べて 1.5%上昇しました。実はこの値上がりは2004年9月末に続いて2回連続の上昇で、しかも上昇幅は拡大しています。もちろん、都区部以外では地価下落が継続しているので、トレンド変化が起こっているわけではありません。ただ、いままでの一方的な下落ということではなくなってきているのです。
また先日横浜の住宅展示場で話しかけてきた夫婦は「老後のためにアパートを建てようと用地を探しているのだが、最近ほとんど出物がなくなってしまった」と言っていました。私自身もここ1年ほど、ずっと住宅地の個別価格をみてきたのですが、どうも首都圏では底を打ったような気がします。すくなくとも、条件のよい土地が売りにでなくなったということは、私も感じています。
さらに4月21日に日本銀行が「地域経済報告」を公表しました。このレポートは、日銀の各支店からの報告をまとめています。この報告の「不動産取引・地価の動向」という項目で、日銀の各支店は次のような指摘をしています。「業者間では、地価の下げ止まり・反転の『店から面』への拡大を見通す向きもみられる」。(横浜支店)、「神戸市内の立地条件の良い土地には、マンション業者が『砂糖に群がる蟻』のように集まっている」(神戸支店)、「地下鉄延伸や臨海地域開発の動きを背景に住宅地の地価も上昇しており、地価上昇の動きが中心部から周辺部に広がっている」。(福岡支店)
どうやら、地価上昇は東京だけでなく、地方の大都市にも広がっているようなのです。
さらに、日銀が4月28日に公表した「展望リポート」で、今年度の消費者物価上昇率をマイナス0.1%とデフレの継続を予想しましたが、来年度はプラス0.3%と、デフレ脱却を予想しているのです。デフレが解消すれば、地価は急激に上昇します。いまの安い地価は将来の値下がりを織り込んで決まっていますが、デフレが解消して将来の値下がり期待がなくなれば、本来の価格に戻るからです。
実は、私は住宅の購入を勧める理由はもう一つあります。それは、住宅金融公庫のフラット35の登場によって、長期固定金利の住宅ローンが借りられるようになったことです。
ただ、これについては、次回に住宅ローンの問題として、まとめてお話したいと思います。
住宅を購入すべきか、賃貸で過ごすべきかは、ずっと終わらない論争です。ただ、マネー評論家の人には、賃貸を勧める人の方が多いような気がします。彼らが賃貸を勧める理由は、バブル崩壊後ずっと続いてきた不動産価格の値下がりにあります。確かに、バブルの直後に住宅を買った人は、ひどい目に遭いました。5千万円も出して買ったマンションが値下がりして半額以下になってしまったのに、借金の方は値下がりしません。住み替えようにも今のマンションを売ってしまうと、借金だけが残ってしまうので、マンションを塩漬けにするしかなくなってしまう。そんなことが、あちこちで起きました。
統計でみると、いまでも住宅地の値下がりは続いています。だから、住宅は購入しない方がよいという議論は、一見正しいような気がします。ただ、私は、住宅は買った方がよいと思うのです。その第一の理由は、老後のことです。
昨年行われた年金制度改正で、今後、年金が減らされていくことはみなさんご承知のとおりです。それでは、どのくらい減るのでしょうか。まず、マクロ経済調整スライドという、年金の支え手の減少と平均寿命の伸長に対応するための給付削減がかかります。厚生労働省の推計では、毎年0.9%ずつの削減が、2023年まで続くことになっています。今後18年間続くと、合計で15%年金水準が下がることになります。実は、削減はそれだけでは済みません。年金が支給開始されても、その後年金は物価スライドでしか改善されません。この制度改革は2000年の年金制度改革で、すでに導入されています。厚生労働省の想定では、物価上昇率は1.0%、賃金上昇率は2.1%となっていますから、賃金を基準に考えると、物価スライドだけでは、毎年年金は賃金に対して1.1%ずつ目減りして行きます。65歳で年金の支給を受けはじめてから80歳までの15年間で、こちらの影響でも15%年金の給付水準が下がることになります。
現在のモデル年金は、夫婦二人の専業主婦世帯で月額23万3千円になっています。ここからマクロ経済スライドによる減少分と物価スライドしか行われないことによる目減り分を差し引くと、最終的に年金の月額は、夫婦で16万8千円ということになります。月額約17万円の収入で、家賃を10万円払ったら、残りは7万円。とても生活できる水準ではありません。ところが、自宅があって家賃がかからなければ、この年金は丸々使えます。生活費が7万円と17万円では、天国と地獄でしょう。
私が住宅の購入を勧める第二の理由は、地価の下落傾向に変化が出始めたことです。財団法人日本不動産研究所が発表している市街地価格指数によると、今年3月末の東京区部の住宅地の地価は半年前に比べて 1.5%上昇しました。実はこの値上がりは2004年9月末に続いて2回連続の上昇で、しかも上昇幅は拡大しています。もちろん、都区部以外では地価下落が継続しているので、トレンド変化が起こっているわけではありません。ただ、いままでの一方的な下落ということではなくなってきているのです。
また先日横浜の住宅展示場で話しかけてきた夫婦は「老後のためにアパートを建てようと用地を探しているのだが、最近ほとんど出物がなくなってしまった」と言っていました。私自身もここ1年ほど、ずっと住宅地の個別価格をみてきたのですが、どうも首都圏では底を打ったような気がします。すくなくとも、条件のよい土地が売りにでなくなったということは、私も感じています。
さらに4月21日に日本銀行が「地域経済報告」を公表しました。このレポートは、日銀の各支店からの報告をまとめています。この報告の「不動産取引・地価の動向」という項目で、日銀の各支店は次のような指摘をしています。「業者間では、地価の下げ止まり・反転の『店から面』への拡大を見通す向きもみられる」。(横浜支店)、「神戸市内の立地条件の良い土地には、マンション業者が『砂糖に群がる蟻』のように集まっている」(神戸支店)、「地下鉄延伸や臨海地域開発の動きを背景に住宅地の地価も上昇しており、地価上昇の動きが中心部から周辺部に広がっている」。(福岡支店)
どうやら、地価上昇は東京だけでなく、地方の大都市にも広がっているようなのです。
さらに、日銀が4月28日に公表した「展望リポート」で、今年度の消費者物価上昇率をマイナス0.1%とデフレの継続を予想しましたが、来年度はプラス0.3%と、デフレ脱却を予想しているのです。デフレが解消すれば、地価は急激に上昇します。いまの安い地価は将来の値下がりを織り込んで決まっていますが、デフレが解消して将来の値下がり期待がなくなれば、本来の価格に戻るからです。
実は、私は住宅の購入を勧める理由はもう一つあります。それは、住宅金融公庫のフラット35の登場によって、長期固定金利の住宅ローンが借りられるようになったことです。
ただ、これについては、次回に住宅ローンの問題として、まとめてお話したいと思います。