「Made in USA 」のイスラム国の
テロ対象にしてしまった!
孫崎享氏インタビュー:岩上安身氏
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孫崎氏「ドイツはアメリカに追従していたらメチャクチャになると危機感を抱き、それで1970年末から独自外交を始めた。そういう流れがあり、自分たちの手で作る意志があったが、日本にはそれがなかった」
岩上「反論はあると思うが、安倍さんはアナクロで、明治の悪いところを持ち出したりしているが、天皇の発言に配慮したり、受け止める姿勢がない」
孫崎氏「天皇の発言を一番聞いていないのも安倍さん。たとえば、今上天皇は『満州事変を勉強しよう』と言ったが、それは満州事変から、政府は天皇を無視し始めたからです」
孫崎氏「公には天皇のために統帥権がある、と言いながら、昭和天皇が軍に反抗しようとすると暗殺をほのめかした。そういう緊迫した状況が満州事変からの歴史だ。今上天皇は、十分わかっています」
岩上「これほど護憲の天皇はいない。戦争に対して憂慮されている」
全文は下記に…
イスラム国は「Made in USA 」安倍総理は奉公人!知らないのは日本国民だけ!支配しているのはイスラエル!/イスラム国に安倍官邸も、後藤と湯川、2名の諜報員を送り込んだ。ドイツも、フランスも、スノーデンも、オバマも…、み~んな安倍官邸の「絶対極秘情報」を完璧に知っちゃてる。知らないのは、日本の国民だけ。てか知らされてない…!
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よく自己責任論というが、
問題は行動ではなく、
日本人だったから
孫崎享氏インタビュー:岩上安身氏
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孫崎享氏インタビュー:岩上安身氏
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これより、2015年1月31日、東京都内で行なわれた「岩上安身による孫崎享・元外務省国際情報局局長インタビュー」の模様を報告ツイートいたします。
岩上「今日は、孫崎さんの私邸にお邪魔しています。孫崎さんは、ご多忙でなかなか捕まらなかった」
孫崎氏「おかげさまで、あちこちから呼ばれて飛び回っていました。ところで岩上さんも、ツイッターが大炎上したとかで大変ですね」
岩上「もう鎮火しました。(イスラム国の日本人人質事件について)元内閣官房副長官補の柳澤協二さんへのインタビューが発端でした。柳澤さんは、高遠菜穂子さんたちのイラクでの誘拐事件(2002年)を、官邸の中で経験されているので、お話をうかがったのです」
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岩上「柳澤さんは当時の体験と照らして、『今回の政府の対応はお粗末だ』とし、なぜ、(安倍総理は1月の中東訪問で)あのようにイスラム国を挑発するような発言をしたのか、という話をされました」
岩上「安倍総理は、昨年(2014年)9月のエジプト大統領との会談でも、『イスラム国を空爆で壊滅を』と言いました。湯川遥菜さんが(2014年8月に)拘束されて以降も、そういう発言を繰り返しているわけです」
岩上「柳澤さんに、この状況での対処法を尋ねたところ、『総理発言のキャンセルは無理、人質を見捨てることもできない。ただ、日本の支援は難民のためなのだから、対イスラム国のために、と書いてある攻撃的な包装紙を取り替えればいい』と話されました」
岩上「対イスラム国、と包装紙に書いたのは安倍総理。『だから、安倍さんがお辞めになれば交渉しやすくなるでしょう』と、柳澤さんはおっしゃった。なるほど、そういう考え方もあるのかと」
岩上「それを『柳澤提案』として広めて議論してもらおうと思ったら、ああいう結果(炎上)になってしまった。孫崎さん、高みの見物をしてらしたんですね(笑)」
孫崎氏「いや、私も(ツイッターで)同じようなことを書いたら、いろいろ(クレームを)言ってくる人がいましたよ。でも、今回の事件は、間違いなく安倍首相の発言が引き金になっているんです」
孫崎氏「日本政府は人道支援だと言う。何のための人道支援かというと、イスラム国の脅威を減らすため。イスラム国と戦う姿勢を明確にしているのです。身代金の2億ドル(支援金額と同額)が、それを裏づけている。これは重要なポイントです」
孫崎氏「火をつけたのが安倍さんの発言であれば、首相辞任が最善策かどうかは別にして、安倍さんの責任を真剣に議論しなければいけない。しかし、政治家もマスコミも救出だけに目を向け、原因究明と安倍批判を避けている。それに果敢に向かったのが岩上さん」
岩上「いえ、柳澤さんと古賀茂明さんです。古賀さんはテレビ朝日の『報道ステーション』で安倍首相の責任を指摘し、パリのシャルリ・エブド事件の連帯スローガン『私はシャルリ』を引き合いに『アイム・ノット・アベ』と言うべきだと発言したら抗議が殺到している」
孫崎氏「今回、一番重要なことは、日本が、イスラム国を含む過激派のターゲットになったことだ。後藤さんがイスラム国を刺激したわけではない。後藤さんが日本人だからターゲットになった。よく自己責任論というが、問題は行動ではなく、日本人だったから」
孫崎氏「エジプトや他国にいる日本人が標的になったかもしれない。安倍発言や積極的平和外交などの一連の流れで、イスラム過激派が『日本は武力行使する側、敵になった』と認識したことが一番大きい。日本の取るべき正しい政策なのか、今、議論しなくてはならない」
孫崎氏「それをしないで、人質救出だけに矮小化してしまった。そして自己責任という批判を、別のところに向けている。私は、身代金支払いについて、日本政府が真剣に対応したとは思わない。これは日本だけで考えたことではない」
孫崎氏「米国務省のサキ報道官が『身代金は支払わない。日本政府にも伝えた』と発言した。それを受けて、麻生財務大臣が『われわれはテロに屈する用意はない。身代金を予備費から出すかは考えてない』と言った。財務大臣が考えていないなら、何も動いていない」
孫崎氏「かつての日本は(ダッカ日航機ハイジャック事件で)福田赳夫首相(当時)が『人の命は地球より重い』と言い、人質奪還を優先した。『テロリストに屈しない』とは決して言わなかった。テロリストが悪いのは当然。その上でどう人命を最優先するか」
岩上「たとえば、人質を取った犯人の前で、警察署長が『絶対に屈しない』と大声で言ったら人質は殺されてしまう。犯人を刺激しないように交渉し、隙を見て人質を救出するのが基本ですよね。人命が懸かっている時に、拳を振り上げてはいけない」
孫崎氏「繰り返すが、後藤さんがマイナスなことをしたからではなく、日本人だったから。これから、イラク、エジプト、トルコにいる日本人がターゲットになる可能性が大いにある。そういう状態に日本が追い込まれたと、認識しなくてはいけない」
岩上「それは誰にでもいえるし、世界中で起こり得る。後藤さんが捕まったのが自己責任だったら、もう国家は何も守ってくれないということだ。それなら、国は国民に義務も何も要求するな、と言いたくなる。このリスクを高めている責任を問いたい」
孫崎氏「現在、イスラム国に参加している外国人兵士は2万人。内訳はイギリス600人、ベルギー440人、ドイツ600人、フランス1200人、ロシア1500人、モロッコ1500人、チュニジア300人、アルジェルア250人、リビア600人、エジプト360人、スーダン100人です」
孫崎氏「もし、(有志連合が)イスラム国を潰すことに成功すれば、イスラム国に来た兵士たちは、より強い憎悪をもって自国に戻り、自国でテロ行動を起こすだろう。イスラム国を潰せば済む問題ではなくなったのです」
孫崎氏「問題はイスラム国だけではなく、西側諸国への憎悪が増していること。シャルリ・エブド事件後の西側首脳の連帯表明、同紙の800万部の増刷、フランス空母をイスラム国への空爆に使うことなど、全面対決の姿勢になってしまいました」
孫崎氏「フランスには600万人のイスラム教徒が住む。イランやウズベキスタンの大使を務めた私の経験では、イスラム教は偶像崇拝をしないので、肖像画や生き物は描かない。ある流派は鳥の絵の首に線を入れて描き、生きていないことを証明するほど徹底している」
岩上「預言者ムハンマドを描くだけで、とても大きな冒涜になるのに、シャルリ・エブド紙の風刺画はムハンマドを銃弾で撃ったり、むちゃくちゃでした」
孫崎氏「そういう自由が、すべて平等なのかというと違っていて、イスラエル批判を描いたマンガ家は解雇されている。何でもいいわけではない。そういう規制の中で、イスラム教の風刺だけは自由にやるのは、あまりにも偽善的だと思います」
岩上「結局、弱い者いじめ。シャルリ・エブドの前身の雑誌は、故ドゴール大統領を茶化した時には休刊にさせられた。しかし、フランス政府は今のシャルリ・エブドは黙認している。シャルリ・エブドは、今では英雄になってしまった」
孫崎氏「私は政治マンガが好きで、ツイッターでも引用しますが、今、イスラム教への冒涜を容認する政治マンガ一色になった。マンガの世界も追従型になった。強いものに対する抵抗の手段だったのが、迎合の手段になってしまった」
孫崎氏「イスラム対自由主義の緊張のまっただ中、安倍さんは、より慎重を期さなくてはならないのに、火の中に入って刺激しているんです」
岩上「週刊ポストの記事に、安倍首相は『このタイミングで行ける俺は、ツイている。シャルリ事件で目立っているから、世界は安倍を待っているんじゃないかなぁ、と意気揚々に発っていった』とある。どうかしている」
孫崎氏「日本にはイスラム教を知っている人が少ない。自分はイスラム圏に勤務したので(イスラム学者の)井筒俊彦さんのコーランを読んだが、よくないと思った。井筒さんの訳は昔風の上から目線で、現代的な感覚に合わない。最近、新しく出た訳は、まだいいと思う」
孫崎氏「イランにいた時、エジプト大使夫人が、『どの宗教にも奇跡があり、神の力で信じさせる。それが、イスラム教徒にとってはコーランだ。素晴らしい』と言った。コーランは、それほどの完成度を誇るものです」
孫崎氏「その内容は、『宗教を強制してはいけない。もし、敵が逃げるなら追うな。向かって来たら全力で闘え』とある。西側社会が武力で来たら全力で闘うが、それをしなければ、追いかけません」
孫崎氏「つまり、イスラム社会を力で変えることは、おこがましいこと。イラクでは、スンニもシーアもユダヤも共存している。ところが、西側社会が一派だけを支援してバランスを崩してきた。社会の変革を武力で加担することを止めなければ、争いは広がっていく」
岩上「ロシアにはチェチェンがある。コーカサス、中央アジアにもムスリムがいる。チェチェン人は勇猛果敢で、どこに行っても有能なコマンドになる。私はチェチェンの初代大統領のドゥダーエフ氏とは親しくしたが、ロシアは彼を爆殺してしまった」
岩上「西側は、イスラム国をそのままにさせたくない。イギリス、フランスが、サイクス・ピコ協定やサンレモ会議で中東分割をし、イスラエルはパレスチナに植民した。それを取り払って、自由にムスリムが移動できるイスラム帝国を作ると、イスラム国は言っている」
岩上「それは強引な主張で、成り立つとは思えないが、サイクス・ピコ協定の怨念に共感する人は多い。西側は、今でもそれを続けようとしています」
孫崎氏「私は今、日本がなぜ、真珠湾攻撃をしたのかを研究しています。1800年代のイギリスは弱い中国を分割して香港を作ったが、1920年頃になると中国人も目覚めた。イギリスは、もう武力で分割できないことを悟って方向転換したんです」
孫崎氏「それでも当時の日本は植民地支配を続けようとした。同じことがイスラム社会で起こっている。以前は、抵抗する力がなかったので西側が好き勝手できた。武器で抵抗するようになり、イスラム国が出現した。転換期に気づかないと、昔の日本のように負けます」
岩上「おかしいと思うのは、シャルリ・エブド紙はムハンマドを揶揄して、ジハーディストを批判していないこと。キリスト教徒の暴漢を批判する時、キリスト自身を侮辱するだろうか。日本人批判をするのに、天皇を登場させて侮辱するのに近い」
孫崎氏「米共和党議員のロン・ポール氏が『これはファルス・フラッグ(偽旗)。額面のままに受け取れない不審な点がいくつかある』と言っている。今までのジハーディストは自爆する、逃走はしないのだ、と」
岩上「シャルリ・エブド事件の犯人2人は、30発で12人を銃殺。かなりの腕です。逃走過程で身分証も残していた。ユダヤ人食料店を狙ったクリバリ容疑者はイスラム国メンバーを名乗り、双方が食い違う。イエメンのアルカイダからの犯行声明も遅かった」
岩上「その直後、フランス大統領は『対テロ戦争だ』と発言し、フランス版愛国者法や、イスラム国空爆へ空母の派遣など、待っていましたとばかりの反応です。9.11と似ている。孫崎さんは9.11には懐疑的ですが、今回の件についてはどう思いますか?」
孫崎氏「9.11については、それを疑う者を陰謀論者として排除していくメカニズムがある。だから、明確な疑問点を述べることに徹した方がいい。まず、国防省、国務省、ホワイトハウスの幹部が集まるプロジェクト・フォー・ニューアメリカンセンチュリーについて」
孫崎氏「そこが、9.11の前に『第2の真珠湾攻撃を歓迎する』という文書を出している。また、8月にはCIAがハイジャックとテロの可能性、世界貿易センターに関した策謀があるとブッシュ大統領に報告したのに、大統領は関心を示さなかったこと」
孫崎氏「これだけでも疑問がある。テロのような事件は、実行犯から注意をそらすようにするもの。ボストン・マラソンもそうです。あのテロ犯はチェチェン人で、アメリカ社会からの疎外感でやったと言うが、爆発物をどこで作ったのかも判明していない」
孫崎氏「報道されていないが、犯人はボクシングでオリンピック候補になるほどの人物で、アメリカの情報機関と一緒に動いていた可能性が高い。コーカサス独立運動のロシアと闘う者のリクルーターだったという」
岩上「なぜ、アメリカで犯行に?」
孫崎氏「9.11が古くなってきたので、再強化ではないか」
岩上「シャルリ・エブド事件に共通項があるかは別として、大々的に政治利用しようとする意図は明らかだ。これはフランスの大転換。オランド大統領は社会党だが、シラクに比べたらまったく違う」
岩上「2000年、イラクのサダム・フセインがドル決済をユーロに変えようとし、シラク大統領は後押しをした。それがアメリカの逆鱗に触れ、2003年のイラク戦争になったという。結局、再びドル決済に戻しました」
孫崎氏「故橋本龍太郎首相は、ドル国債を売るかもしれない、と言って叩かれた。彼はフランスの財界をとても勉強していた。橋本首相はフランスと連携し、ドル独裁を止めようとしていたんです」
岩上「ユーロにシフトしようと考えていたのですか。石油代金の決済も、先物市場もドル。ドルのアドバンテージは実体より何倍も大きくなっている。また、今回、イスラム国の攻撃に乗らされているフランスなどをみると、とても用意周到な戦略が見える」
孫崎氏「もっと根深いものがあるように思う。2003年、フランスはイラク戦争に大反対をした。当時の外務大臣(ドミニク・ド・ビルパン)は国連で大演説をして首相になり、大統領候補だったが、汚職事件で失脚した。『戦後史の正体』は日本だけではないのです」
孫崎氏「また、ドル一辺倒に批判的だった、社会党でIMF専務理事のドミニク・ストロス=カーンは、大統領になるはずが、ホテルの掃除婦強姦事件で失脚した。彼が大統領になっていたら、今のようなフランスにはなっていないと思う」
岩上「昨日、郭洋春立教大学教授にインタビューしました。郭教授は『世界中を貧困にしているのは、IMFと世界銀行』と指摘していたが、まったく、『戦後史の正体・フランス版』だ」
岩上「アメリカがドイツで諜報活動をしていたのが発覚し、メルケルが糾弾して批難轟々だった。そんなドイツだったが、なんと諜報機関は、ドイツ国内で集めた情報をアメリカにあげていたといいます」
孫崎氏「それは十分、考えられる。冷戦が終わって、ゲーレン諜報機関が生き残るためにしたことだろう。そういう意味では、ドイツ国家が出来る前から、最初からアメリカと協力することで設立されていたのです」
孫崎氏「ドイツと日本では敗戦後のスタートラインが違います。日本のスタートは1945年8月15日ではなく、9月2日の降伏文書の締結で『占領軍に言われた通りにする』とした時から。ドイツは最初、国家がなかった」
孫崎氏「イギリス、フランス、アメリカ、ロシアの4ヵ国分割のままでいいと言う中で、ドイツは、どう国を作るか真剣に考えた。アメリカは対ロシアに利用しようとした。中距離弾道ミサイルを配備し、戦わせる図式がありました」
孫崎氏「ドイツはアメリカに追従していたらメチャクチャになると危機感を抱き、それで1970年末から独自外交を始めた。そういう流れがあり、自分たちの手で作る意志があったが、日本にはそれがなかった」
岩上「反論はあると思うが、安倍さんはアナクロで、明治の悪いところを持ち出したりしているが、天皇の発言に配慮したり、受け止める姿勢がない」
孫崎氏「天皇の発言を一番聞いていないのも安倍さん。たとえば、今上天皇は『満州事変を勉強しよう』と言ったが、それは満州事変から、政府は天皇を無視し始めたからです」
孫崎氏「公には天皇のために統帥権がある、と言いながら、昭和天皇が軍に反抗しようとすると暗殺をほのめかした。そういう緊迫した状況が満州事変からの歴史だ。今上天皇は、十分わかっています」
岩上「これほど護憲の天皇はいない。戦争に対して憂慮されている」
孫崎氏「鈴木邦男元一水会代表と天皇陛下論をやった時、『右翼には、あるべき天皇陛下像と現実の天皇陛下像がある。それが違ったら、あるべき天皇陛下の像を追求する』と聞いた。それは、現実の天皇を無視することではないか」
岩上「それは皇太子に対しての、山折哲雄氏(宗教学者)や八木秀次氏(法学者)の攻撃も同じ。八木氏は皇太子に退位せよと言い、何様のつもりだろうか。それが『正論』に掲載される。右翼新聞社が、皇室批判をして、おかしくないか?」
岩上「安倍さんは、今回、(中東訪問を)ウキウキすると言っていた。イスラム国を空爆するという時に、日本は親しい国だけを巡り、援助を配る。この動向を相手は見ていた」
孫崎氏「イスラム国の中のイギリス人600名、フランス人1200名、アメリカ人130名。彼らは西側の動きを見ている人たちです。西側の人間が大勢いるから、日本の動きも詳しくわかっています」
岩上「イスラエルこそが受益者ではないか、と岡真理氏や板垣雄三氏が指摘している。理由の1つは、イスラエルは1967年の第3次中東戦争で占領した土地から撤退する、という国連安保理の決議において、米豪は否決し、フランスは賛成したこと」
岩上「2つ目が、イスラエルを戦争犯罪で裁くための国際刑事裁判所(ICC)への、パレスチナの参加申請の話が吹っ飛んだこと。安倍さんがリブリン大統領、ネタニヤフ首相に和平の仲介を申し入れたら、余計なことをするなと言われた」
岩上「これで国際社会では、去年のガザ攻撃のイメージも払拭されてしまう。イスラエルだけが得をしているのではないか。これについては、どう思いますか」
孫崎氏「イスラム国攻撃で誰が得をするのか。イスラエルとアメリカの軍産複合体だ。陰謀論と思われるかもしれないが、アイゼンハワー大統領が軍産複合体について、『今後、不必要な戦争に行く』と心配した。それで近年、米国家予算の国防経費が削減されています」
孫崎氏「イラク、アフガン戦争は国防経費と別枠にあったが、それも去年でなくなった。昨年の2~3月頃から軍需産業は労働者を解雇し始めた。そこにイスラム国が出てきたので、株価が急騰したのです」
孫崎氏「イスラエルの一番の関心は、周辺諸国をヨルダンのように親イスラエルにしておくこと。シリアは敵対しているので、混乱のままにして、イスラエルに矛先が向かわないようにしておく。それが、アサド政権です」
岩上「中東をずっと火の海にしておくのが戦略で、終着点がない。ある大企業の日本人が、ユダヤ人の先生から、自分の方に矢が向かない状態に身を置くことが処世術だと教えられた、と語っていた。それと、まったく同じだ」
孫崎氏「しかし、どこかで反故がでる。それで躓いたのがヨルダン。人質事件でパイロットのことが出たが、なぜ、パイロットが捕まったのか。イスラム国と闘うためだ。それが国民に知られ、反対勢力が動き始め、揺さぶりはじめた」
岩上「ヨルダンは部族社会。今回、各部族の長たちがアンマンのアブドゥッラー国王宮殿に押しかけ、国王と面会し、パイロットを救出しろと訴えた。しかし、安否が確認できないので進展しない間の悪い状況になっている。今の状況はどう思いますか」
孫崎氏「外人部隊が大勢いて、意思決定が難しい状況。そういう時はタカ派が勝つと思う。殺すかどうかは別にして、イスラム国にとってはヨルダンも揺さぶったので大成功だ。これに呼応し、シナイ半島でも事件が起きました」
孫崎氏「エジプトのシナイ半島で40名近い死者が出た。シナイ半島はヨルダン経由と、もうひとつのイスラエルへの物資の搬入拠点だ。それを、イスラム国と連携するグループが大攻勢をかけた。騒乱はどんどん拡大している」
岩上「警戒が厳しいのですか」
孫崎氏「エジプトにとっての最前線です。攻撃した、そのエジプトの過激グループたちは、シナイ国独立まで言い始めている。イスラム国の影響力が拡大している。ただ、イスラム国の中も一枚岩ではなく、トルコ国境近くでは負けています」
孫崎氏「ところが、今まで負けそうだったイメージのところに、この人質事件が起こった。これで強いイメージを打ち出せた。彼らにとって、緊張があった方がいいんです」
岩上「それでは、人質を殺す確率が高いのですね。もう1点。トルコの方が人質を解放させた実績が多いのに、なぜ、安倍総理はヨルダンに対策本部を置いたのですか。人質交換は、シリアとトルコの国境で行なわれてきたはずです」
孫崎氏「政府にとって一番重要なのは西側(アメリカ)との連携。安倍首相の優先事項は人質解放ではないと思う。ヨルダンはCIAやモサドの拠点で、西側主導の情報を共有できる。本当に解決を図るならトルコだが、トルコに行ったら西側と分離してしまう」
孫崎氏「私がテレビで示した案だが、日本が、トルコかクルドかパキスタンに経済援助をする。彼らは日本のためだったらイスラム国の捕虜兵士を返そうと思う。イスラム国にとっては、後藤さんより兵士の方がいいので、後藤さんを返す可能性あるのではないか」
岩上「先生はその時に、それらの国々を『Aグループ』とおっしゃっていた。今なぜ、トルコとクルド、パキスタンと言われたのですか。それは、アメリカのコントロール下に入っていないからですか?」
孫崎氏「あの時、Aグループと言ったのは名前を出せないからです。Aグループから、日本のある非政府グループに打診があり、政府にもそれを伝えてあるんです。このパイプを持っている日本人はしかるべき人で、名前が出たら無視できない人です」
岩上「それ、スクープネタじゃないですか。官邸は動かないのですか。これは孫崎さんしか知らないのですか。いい案だと思いましたよ。これが潰れて、もし後藤さんが殺されたら、それは怒りますね」
孫崎氏「あまりにも微妙な話だから、他ではできないんです。常岡浩介さんもパイプがあると言っているが、官邸には呼ばれない。しかし、中田考さんは(イスラムの事情に)詳しいですね」
岩上「そのマケインは今、上院議会の軍事委員長になった。かつ、アメリカの上院下院はイスラエルべったりで、彼らの言うことにはすぐ動くとまで言われている。米下院議会はネタニヤフ首相を国務省を通さず呼び、イラン核疑惑の演説をさせました」
孫崎氏「彼はチェイニー副大統領の次に危険な人間。日本と中国の間で核兵器の撃ち合いをさせろ、とまで言っている。私が国際情報局長の時、モニカ・ルインスキー事件があった。その時、クリントン大統領はイラク空爆を求められて躊躇していたのです」
孫崎氏「それで共和党が弾劾し、クリントンは空爆を実行、弾劾が解けた。先頭に立って糾弾したのがマケインだ。1998年、ミュンヘンで欧州とアメリカの安全保障会議があった。イラク攻撃がメインで、ヨーロッパは最初それに反対した」
孫崎氏「それで、マケインが開口一番、『それだったらヨーロッパの一番重要な安全保障にも協力しない。明日、コソボ攻撃から米軍は引き上げる』と発言した。他の米国上院下院議員も同調し、翌日、ヨーロッパはアメリカの攻撃に賛成しました」
岩上「ウクライナ内戦。これの第一の推進者はバイデン副大統領と、ロシアを潰すとまで演説するマケインだ」
孫崎氏「マケインは第2のチェイニーだ。そんなのに安倍さんは脅されて、危ないね。相当強い圧力をかけたはず。イスラエルでやるとはすごい」
岩上「安倍さんはイスラエルと日本の国旗の間で記者会見をさせられ、これまでの中東外交は粉々になってしまった」
孫崎氏「粉々になった代償は、日本の名声がなくなっただけではなく、日本人だから殺す対象になった、ということです」
岩上「今、安倍さんと関係閣僚は『だからこそ、対テロとの闘いが必要』と、日本人が殺されるということを政治利用している。自衛隊が、海外邦人を救出できるよう関連法案を整備し、集団的自衛権を行使しようと発言しています」
孫崎氏「今回のイスラム国人質事件の原因を追及しないで、全政党はみんな黙って、非難もしない。もう、大政翼賛会になっている」
岩上「共産党の池内さおり議員が安倍批判をしたら、志位和夫委員長はそれを咎めて、ツイッターを削除させた。そうだとしたら、非常時には黙れ、と言うことになる。反戦も言えない。これから日本はイスラム国と揉めていくのでしょうか」
孫崎氏「もう日本も、その中でやっていくしかない。それでも日本の国民には、まったく危機感がない」
岩上「ジョン・マケイン、ネタニヤフの動きから考えると、『安倍さんは嵌められた』と板垣さんは言われましたが、どう思いますか」
孫崎氏「そこまではわからないが、イラク戦争ぐらいから、中東学者の大多数の発言権は奪われてしまった。当時、中東学者の8割近くは反対を訴えていた。正しいことを言っているにもかかわらず、彼ら反対者は干されて、復活もしない」
岩上「ところで、イスラム国は純粋なのでしょうか。ロン・ポール研究所の研究員は、『イスラム国を作ったのはアメリカ』と言ってますが」
孫崎氏「アメリカが作った、シリアと闘う支援グループだ。先日、70年安保のリーダーと会ったら、当時は公安が大勢、潜入していたと言う。イスラム国の中には諜報部員もいる。それで過激な行動へと煽動するのです」
岩上「イスラム国はあらゆるところを攻撃するが、イスラエルは攻撃しない。イラク、シリア、トルコを攻撃するが、イスラエルに触れないことばかりやっている。イスラム国指導者のバグダディはモサドのエージェントとまで言われています」
孫崎氏「イラクとシリアの混乱はイスラエルにとっては好ましい、とだけは言える。こういうことになって、『集団的自衛権はおかしい』という議論が国民から出ないとおかしい。安倍首相が火をつけたのは間違いないのですから」
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