5日の仕事始めで、NPBの加藤良三コミッショナーは、海外へ有力選手が流出していることについて「彼らの気持ちはわかる。現時点で危機感は持っていない。彼らが抜けても後続は育つ」とコメントしたという。
長らく音無しだったので、まず存命が確認できたことは喜ばしいが、意識は相変わらず常人レベルに達せず、混濁しているようだ。清武騒動の間眠りこけていたために、まだ十分に覚醒していないのだろう。

「彼らの気持ちはわかる」というのは、要するに「俺だって行けるものなら、アメリカへ移籍したい」ということなのか。「彼らが抜けても後続は育つ」は、困窮家庭を見て「親は無くとも子は育つ」と近所のおじさんがと言っているような呑気さだ。NPBで育った最も優秀な人材が流出している現状に危機感を抱かないトップとは一体何なのだろう。

中島裕之に対してニューヨーク・ヤンキース=NYYが提示した条件は、これまでになく過酷なものだったようだ。最初から断らせるつもりだったのか、と思わせる。情報が錯綜している。本人はそれでも行く気があったと言われるが、代理人グレッグ・ゲンスキーが、あまりにも低い条件提示に「1年待った方がいい」とアドバイスしたという。代理人にしてみれば、商売にならないという判断だったのだろう。NYYは井川慶で痛い目にあっている。NPB選手を見る目はMLBでも一番厳しかったのではないか。

青木の場合も予断は許さない。中島よりはレギュラーに近い位置にいるだろうが、年俸は150万ドル程度ではないか。オプションや付帯条件次第では決裂の可能性もあろう。

岩隈にしても、川崎にしてもNPB時代よりも悪い条件で契約を結んだ。

さらにMLBでのキャリアを重ねている選手でも、五十嵐や岡島のようにマイナー契約に甘んじている選手もいる。松井秀喜、福留孝介はいまだに来季のチームが決まらない。川上憲伸や井川慶のようにマイナーに落ちたきり、去就が未定の選手もいる。

このようにMLBがNPB選手を見る目はシビアさを増しているが、それにも拘らず今年以降もNPB選手がMLBを志向する動きは止まらないだろう。来季も何人かのトップ選手がMLBの門戸を叩くはずだ。

それは、今のNPBに閉塞感が強いからだ。観客動員や収益が頭打ちなうえに、球団は相変わらず大企業の子会社だ。赤字を親に補てんしてもらっている。一定のレベルに達した選手は、年俸面でも待遇面でもこれ以上の発展性がない。さらなるステージを求めてMLBを志向するのだ。要するに選手にとって、NPBは魅力がないのだ。







この状況が続けば、NPBには一流の選手はいないという状況になる。TV観戦が中心のファンにとっては、BSやJ-SportsなどでMLBに行った日本人選手を見ることができるからあまり痛痒はないが、球場に足を運んでいたファンにとっては、気が抜けること甚だしい。いつしか、NPBはMLBの二軍という位置づけになってしまうのではないか。

これに危機感を抱かないトップとは何なのだろう。張本勲のように「NPBからMLBへの移籍を規制すべきだ」と暴論を吐く人間の方がまだマシだ。

今の日本は、政府や大企業のトップが「気味が悪いほど無能」だ。NPBのトップもその仲間らしい。今年こそ選手にとってもファンにとっても「魅力あるNPB」に向けて力強い施策を打ち出してほしいと思うのだが、どうやら無理らしい。

このうえは、他の人材に期待しよう。コミッショナー翁には、お体に気をつけて、選手や球団の邪魔をせず、余生をお過ごしいただきたいと願うばかりだ。

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