LTO5/6モデル、大容量データを扱う製造業、映像メディア業などでの活用も見込む
ビッグデータ時代に復権?IBMがUSB接続のテープドライブ発売
2014年08月20日 06時00分更新
日本IBMは8月19日、USB 3.0接続に対応したテープドライブ装置「IBM TS2250/TS2260」の出荷開始を発表した。サーバーだけでなくクライアントマシン(PCやMac)にも接続可能で、既存の記録メディアでは扱いづらい製造業や医療機関、映像メディア業などの大容量データ保存需要も見込む。
今回発売されたのは、LTO 5ドライブ搭載のTS2250と、LTO 6ドライブ搭載のTS2260の2モデル。基本構成時のインタフェースは6Gbps SAS×2だが、オーダー時にUSB 3.0×1、6Gbps SAS×1の構成に変更できる。
IBMが無償提供するソフトウェア「LTFS SDE(Linear Tape File System Single Drive Edition)」との組み合わせにより、ドライブをUSB接続したクライアントマシンから、簡単にテープへのファイル読み書きが可能。LTFSはWindows、Mac、Linuxに対応しており、ExplorerやFinderで表示されるテープ内のディレクトリにドラッグ&ドロップ操作ができる。
IBMのテープドライブとして、USBインタフェースの搭載は今回が初めてとなる。TS2260の参考価格(税込)は95万8068円。
“終わった”はずのテープ技術、なぜこれから有望なのか?
発表会で日本IBMの佐々木昭光氏、佐野正和氏は、IBMにおけるテープ製品の開発戦略や最新技術動向と、テープストレージの新たな価値について説明した。
ストレージ製品の研究開発に携わる佐々木氏は、「『テープの役割は終わった』と言われ続けてかれこれ10年、現在はテープの役割が再認識されている」と切り出した。その大きな理由として、ハードディスク(HDD)など他の記録技術と比較した場合、テープ技術には「大きな伸びしろ」が残されているからだ。
佐々木氏によれば、現在、HDDの記憶容量増加は“頭打ち”となっており、今後も年率8~12%程度の容量の伸びにとどまると予想されている。一方、IBMのテープ製品は数年~10年先の製品化を見据えた技術開発ロードマップを持っており、すでに今後も、年率40%で容量を拡大できる見通しが立っているという。
たとえば今年5月、IBMと富士フイルムは共同で、LTOカートリッジ1本に154TBの非圧縮データを記録できる高密度磁気テープの要素技術を確立し、実証に成功したことを発表している。佐々木氏によれば、この技術も10年後には製品化される見込みだ。
佐々木氏は、容量増加だけでなく高速化、利用技術の改善も進むことにより、テープ技術は従来の市場だけでなく、新たな市場でも価値を見いだされるだろうと説明した。「昨今話題のビッグデータは“データそのもの”がビジネス価値となる。(大容量データを安価に保存できる)テープの活用エリアは確実に拡大している」(佐々木氏)。
また佐野氏は、今回発売されたUSB接続LTOドライブのターゲットについて説明した。昨今、企業が扱う業務データは大容量化しているが、テラバイト級のデータを手軽に記録できるメディアはテープかHDDに限られており、容量単価が安く保存も手軽なテープのメリットが生かせる領域があるという。
佐野氏はバックアップ領域における活用例として、クライアントPCの“丸ごとバックアップ”のほか、業務アプリケーションのオーナー(業務部門)が仮想マシンイメージをバックアップする際にも役立つと紹介した。バックアップ以外にも、医療データ、製造業の設計図/仕様書データ、監視カメラデータ、メディア業での映像素材データ、研究機関のデータなどを、テープ単位でまとめて保管する用途にも適していると述べている。